ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第14話 本音

「皆聞いてくれ」

 

ある日の夜。

 

いつも通りの戦闘訓練と狩りを終え、宿屋に帰るとケイタが全員を一つの部屋に集めた。

 

その中には、カイとキリトもいた。

 

「実は、今日の狩りでなんと20万コル貯まった。それで、僕たちのギルドホームを買おうと思うんだが、どうだ?」

 

「おぉ、いいじゃねーか!!」

 

「いいね!いいね!」

 

家を買う話で皆は大いに盛り上がった。

 

「なぁ、サチの装備を整えるのは?」

 

すると、ササマルがそう提案してきた。

 

「え?別にいいよ」

 

「遠慮すんなって」

 

「いつまでもテツオ一人に前衛は任せられないだろ?今は、キリトやカイがいてくれるけど、二人は《攻略組》だ。いずれは最前線に戻る。それまでに、少しでも強くならないと」

 

「でも……」

 

そういうサチの顔は明らかに曇っていた。

 

話し合いの末、結局ギルドホームを買うことになった。

 

その日の夜、カイとキリトは最前線へと向かい、レベリングしていた。

 

攻略に参加してなくともレベリングを怠れば、その分後が辛くなる。

 

二人は昼間は《月夜の黒猫団》達の戦闘訓練をし、夜は自身の強化のために最前線へと赴いていた。

 

「なぁ、キリト。この間、28層が突破されて、今は第29層。流石にもう攻略に戻るべきだと思う」

 

「それは分かってる。でも………」

 

「ケイタ達が………いや、サチが心配か?」

 

「……ああ」

 

キリトは、サチが本音では前衛をやりたくないと思っているのではと思っている。

 

さらに言うと、前衛処か戦闘すらしたくないと思っていると、思っている。

 

レベルは安全マージンをしっかり取り、スキル熟練度も上がり、そう簡単には死ななくなった。

 

それでも、人は恐怖を感じる。

 

サチはその恐怖から、戦闘をしたくない。

 

それがキリトが思っていることだった。

 

「確かに、俺から見てもサチは戦いに向いてる性格じゃない。数字だけ見るなら《攻略組》に来るのも夢じゃない。だけど………」

 

カイも分かっていたらしく、困った顔をする。

 

「取り敢えず、明日、ケイタがギルドホーム買いに行くって言ってたし、その後でサチのこと伝えてみるか」

 

「そうだな………」

 

迷宮区でのレベリングを終え、現在の宿となってる20層へと向かう。

 

戻った時、ケイタからメッセージが届いた。

 

『サチが宿から居なくなった。僕たちは迷宮区の方を探してみる。キリトとカイも探して見てくれ』

 

ケイタからのメッセージを見て、索敵スキルから《追跡》を発動し、サチを探した。

 

サチは町の中に居た。

 

最近手に入れた隠蔽能力付きのマントを羽織り、蹲っていた。

 

「サチ」

 

「こんな夜中に何してるんだ?」

 

「キリト!?カイ!?ど、どうしてここが?」

 

「《索敵》スキルの派生スキル、《追跡》だ」

 

「フレンド登録してるプレイヤーなら、余程の時間が経っていなければ後を追えるんだ」

 

「そうなんだ……流石は《攻略組》だね」

 

「隣……いいか?」

 

サチに聞くとサチは頷いた。

 

サチとの間にかなりの距離は開けるも、二人は近くに座り話しかけた。

 

「一緒に戻ろう。皆、心配してる」

 

「今なら謝れば許してくれるぞ、きっと」

 

二人の言葉にサチは何も言わない。

 

1分か2分そうしているとサチが口を開いた。

 

「私ね……逃げたいの」

 

「………逃げるって何から?」

 

「モンスターから、ギルドの皆から………この世界から」

 

その言葉に、二人は冷や汗を流す。

 

「それって、死ぬって事か?」

 

「……それもいいかもね。……ゴメン、嘘。死ぬ覚悟があるならここにいないよ。……最近、死ぬのが怖くて寝れないんだ。どうして、こうなっちゃったのかな?なんで、ゲームで死ななくちゃいけないの?こんなことに何の意味があるの?」

 

「サチ、ゴメン。苦しんでいたのに、怯えていたのに……ゴメン。」

 

キリトはサチに謝罪をした。

 

サチは驚いた顔をしてキリトを見る。

 

「キリトが謝る必要は無いよ。私の方こそゴメン。宿から抜け出して、皆に迷惑かけて、こんな愚痴みたいなこと言って。聞いてくれてありがとう。戻ろう」

 

未だに暗い表情のサチは、無理して笑顔を作り立ち上がる。

 

「逃げちゃえばいいだろ」

 

そんなサチに、カイはそう言った。

 

「え?」

 

「戦うのが怖いんだろ?なら、逃げればいい。逃げるのは、卑怯な事じゃないんだ」

 

「で、でも………ギルドの皆が………」

 

「ケイタ達は仲間だろ?なら、自分の思ってること素直に言うんだ。あいつらは、優しい連中だ。サチが嫌だと言えば、無理強いはしないさ」

 

そう言い、カイは立ち上がり、キリトの傍まで行く。

 

「それで何か言われた時は、俺とキリトも一緒になって謝ってやるよ。な、キリト」

 

「全く、お前って奴は………でも、そうだな。一度、ケイタ達と話し合ってみたらどうだ?戦闘職じゃなくても、この世界で生き抜く方法は沢山あるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、サチを連れてカイとキリトはケイタ達の所に戻った。

 

「サチ!無事だったか!」

 

「良かった!何かあったんじゃないかって心配してたんだ!」

 

「どこかに行くなら、書き置きぐらい頼むぜ」

 

「でも、本当に良かった」

 

ケイタ達はサチが無事だったことに安堵し、喜んでいた。

 

「皆、サチから皆に言いたいことがあるんだ」

 

キリトはそう言って、サチに話をすることを進める。

 

「その………あのね、私…………前衛したくないんだ」

 

サチの言葉に、ケイタ達は固まった。

 

「本当は、戦いもしたくない。死ぬのが………怖いの………でも、皆《攻略組》を目指してるから、こんなこと言ったら、皆の気持ちに水を差すようで怖くて言えなくて…………だから、頑張ろうって思ってたけど、やっぱり怖いの…………!」

 

振り絞る様にサチの口から言葉が出てくる。

 

いつの間にか、涙が零れ始め、涙声交じりに言う。

 

ケイタ達が無言になった。

 

数分の沈黙が続くと、ケイタが口を開いた。

 

「サチ……すまなかった」

 

ケイタは頭を下げ、そう言った。

 

「俺たち……いや、俺はサチが何も言わないのを良いことに、サチも同じ気持ちだなんて思って、勝手なこと言ってた。すまない!」

 

「ケイタだけの所為じゃねぇよ!俺たちだって、一度もサチの気持ちを聞こうとしなかったんだ!俺らだって同罪だよ!」

 

「ごめん、サチ。お前がそんな気持ちだったなんて考えたこともなかった……すまない!」

 

「それなのに、僕たちだけ目指せ《攻略組》なんて言って、盛り上がって………本当にごめん!」

 

ダッカ―とササマル、テツオの順に頭を下げる。

 

「皆…………」

 

「サチ、今までごめん。今日からは、サチのやりたいことをやってくれ」

 

ケイタは優しくサチにそう言う。

 

「…………私、生産職がやりたい」

 

サチがそう言った。

 

その言葉に、またしてもケイタ達は驚く。

 

「子供の頃から、何か作るってことしたかったんだけど私不器用だから諦めてたんだ。でも、やっぱり諦めきれなくて………だから、この世界で何か作りたい………」

 

サチが自分の本音を打ち明けた。

 

「いいじゃねぇか!」

 

そう言ってダッカーが声を上げる。

 

「生産職とかスゲー楽しそうじゃん!」

 

「《月夜の黒猫団》ブランドとか立ち上げるのも面白そうだな!」

 

「サチが作って、僕らが材料集めとか!」

 

「おっ!いい役割分担だな!」

 

「こらこら、お前ら落ち着けって!まずはサチが何を作るか話し合わないと!」

 

ワイワイと騒ぎ出すケイタ達に、サチはぽかんとする。

 

「皆……いいの?」

 

「いいもなにも、サチがやりたいんだろ?なら、それをやろう」

 

「どうせなら、みんながやりたいことやるのが一番だしな!」

 

「ブランド立ち上げて、アインクラッド中を盛り上げるのも悪くないだろ!」

 

「《攻略組》のプレイヤーが僕らの作ったものを持っているとか考えると、ワクワクするよ!」

 

「皆………ごめん………ありがとう!」

 

その日の夜、宿屋の一室から明かりが消えることはなく、ずっと騒ぐ声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一週間後。

 

カイとキリト、そして、《月夜の黒猫団》は転移門広場まで集まっていた。

 

「それじゃ、俺とキリトはもう行くな」

 

「皆、これから頑張ってくれ」

 

カイとキリトは今日、最前線へと戻り攻略を再開することになった。

 

ケイタ達はその見送りをしに来ている。

 

「キリト、カイ。いずれ僕たちはアインクラッドを騒がせるブランドを立ち上げる。その時は、よろしく頼むよ」

 

「《攻略組》のプレイヤー達に宣伝よろしくな!」

 

「友達価格でお買い得にしてやるよ」

 

「その時が来たらお得意様になってくれな」

 

ケイタ、ダッカ―、ササマル、テツオが二人に握手をして別れの挨拶をする。

 

「キリト、カイ。二人にこれ」

 

最後にサチが、そう言って、二人にある物を差し出した。

 

「この間、取ったばかりの《装飾》スキルで作ったブローチ。まだスキル熟練度低くて、不格好な形だけど、私の初めての作品、二人に受け取ってほしいの」

 

サチの手には赤い宝石のブローチと、黒い宝石のブローチがあった。

 

荒削りの様なカットが目立つブローチだったが、カイとキリトは嬉しかった。

 

カイは黒い宝石のブローチを、キリトは赤い宝石のブローチを受け取り、それを装備画面のアクセサリーにセットする。

 

来ているコートの胸元に、ブローチが付けられる。

 

「どうだ?」

 

「似合ってるか?」

 

「ああ、よく似合ってる」

 

「初めての作品にしては上出来だな!」

 

「キリトの黒いコートに赤い宝石が映えるな」

 

「カイの赤いコートに黒い宝石も映えるね」

 

「もっと上手くなったら、新しいのプレゼントするね」

 

「その時は、コルを払うよ」

 

「これでも十分な出来なのに、それ以上の物をタダで貰うのは申し訳ないからな」

 

そう言い、全員が笑う。

 

「じゃあな、皆!」

 

「また会おうな!」

 

「ありがとう、キリト、カイ!」

 

「お前たちとの1ヶ月楽しかったぞ!」

 

「いつでも遊びに来いよな!」

 

「待ってるよ!」

 

「キリト、カイ!ほんとうにありがとう!私、頑張るから!」

 

5人に見送られ、カイとキリトは目頭が熱くなるのを感じ、転移門を潜る。

 

「キリト、絶対クリアしないとな」

 

転移門を潜り、最前線に来るとカイはキリトの方を見ずに言う。

 

「ああ、そうだな………」

 

キリトもカイの方を見ずにそう言う。

 

互いに、同時に鼻を啜り、笑い合う。

 

「よし、行こう!相棒!」

 

「ああ!」

 

二人は胸元のブローチを輝かせ、最前線へと繰り出した。

 

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