《血盟騎士団》の第一副団長《閃光》のアスナ。
そして、《血盟騎士団》の第二副団長《死線》のミト。
二人はとにかく有名だ
その有名具合は、ファンクラブが出来るほどだ。
だからこそ、迷宮区攻略を終え食事しに来た《攻略組》、夕食の為に下の層からやって来た《中層プレイヤー》は二人の姿を見かけると思わず立ち止まったり、振り返ったりする。
そして、そんな彼女たちの隣を歩く黒いコートを着た胡散臭いプレイヤー《黒の剣士》キリトと、赤いコートを着た同じく胡散臭いプレイヤー《紅蓮の剣豪》カイを見て、目を剥く。
明らかに目立っているこの状況にアスナは一刻も早く目的の店に向かいたいが、その店を知ってるのはキリトとカイのみの為、おとなしく二人に着いて行く外ない。
一方でミトはと言うと、あまり気にしてないのか平然と隣にいるカイと世間話をしている。
ようやく辿り着いた店に入っても、店の中にいたプレイヤーからの視線が集まり、外では平然としていた流石のキリトも、気疲れを見せる。
にも関わらずカイとミトの二人はと言うと、どこ吹く風と言った具合にスルーしていた。
NPCのウエイトレスに案内され、四人は席に着き一息入れる。
「…………ありがとう」
注文を終え、運ばれてきたお冷を呑んでいると可聴域ギリギリのボリュームでアスナがそう言った。
「護衛してくれて」
「あ、いや、まぁどういたしまして」
普段、攻略会議であーだこーだと言い合っているでの、キリトは思わず噛んだ。
そんなキリトにアスナはくすりと笑う。
「あんなにたっぷり寝たの久々かも。最近は三時間ぐらいで目が覚めちゃうし」
「それって、アラームとかじゃなくて?」
「うん。………団員のレベリングの事とか、フィールドボスやフロアボスの偵察戦・攻略戦とか、攻略会議の進行とか色々あって寝たくても頭が寝ようとしないって言うのかな。不安があって寝れないんだ」
「………そうなのか?」
カイはアスナたちに聞こえない様に、向かいの席にいるミトにこっそり尋ねる。
「そうみたい。はっきり言って、《
「ミトは平気そうだな。同じ副団長なのに」
「まぁ、慣れれば簡単だし」
そう言うミトに、カイは流石だなっと思った。
「あー……なんだ……また外で昼寝したくなったら言えよ。護衛なら、いつでもしてやるから」
照れ臭そうに言うキリト。
「そうね。また今日みたいな日には、お願いしようかな」
そんなキリトに、アスナはまた笑いそう言った。
「……ま、大丈夫そうだな」
「みたいね」
そんなアスナを見て、カイとミトは少し安堵する。
そこで、NPCウエイトレスがサラダを運んでくる。
卓上に置かれたサラダボウルから謎の野菜たちを掴み、各々の皿に取り、仕上げに謎のスパイスを振り掛け、頬張る。
「思うんだが、栄養とか関係ないのになんで生野菜食べてるんだ?」
味のする謎の野菜を食してると、キリトはフォークに刺した野菜を見ながら言う。
「美味しいじゃない」
アスナはフォークに刺したレタスっぽい何かを上品に食べながら言う。
「まずいとは言わないけど………マヨネーズが欲しい」
「あー、それは確かにね。私もサラダにはドレッシング掛けたいかも」
「そう言えば、SAOって調味料の種類が乏しいよな。色々あると食事の楽しみも増えるんだけどな」
「欲しいとなると、ソースとか……ケチャップとか………」
「あ!あとはアレだな!醤油!」
「「「それだ」」」
キリトの発した醤油のワードに、カイ、ミト、アスナは同時にキリトを指差し同意した。
その光景が何故か面白く思え、四人は同時に吹き出した。
そして、そのまま笑い合う…………と思われた。
「きゃああああああああ!!」
外から女性の悲鳴が聞こえた。
その瞬間、先程まで和み合っていた四人は、一瞬で険しい顔つきとなり席を立ち上がる。
そして、四の五の言わずレストランを飛び出した。
悲鳴が聞こえたと思われる広場に着くと、四人は信じ難い光景を目の当たりにした。
広場では何人ものプレイヤーが教会を見上げ、恐怖に慄いていた。
教会の二階中央の飾り窓から、フルプレート・アーマーを着込み、頭には大型のヘルメットを被った男性プレイヤーがロープに吊るされていた。
しかし、プレイヤーたちが恐怖していたのは男が首を吊っていることにではない。
SAOではロープアイテムによる窒息はない。
プレイヤーたちが恐怖しているのは、その男の胸に刺さった
《圏内》ではデュエル以外にHPを減らす方法はない。
故に《圏内》ではHPが全損し、死ぬことはないし、そもそも《圏内》ではどんな攻撃もシステムによって阻まれる。
にも可関わらず、その男の胸には
そのことから、
「何してる!早く抜け!」
キリトがそう言うも、筋力値が足りないのか、恐怖で力が入らないのか、
「ミト!アスナ!教会へ行ってくれ!もしPKなら、犯人はまだそこに居るはずだ!」
カイはミトとアスナにそう言う。
最初の悲鳴が聞こえてから、まだそれほど時間は経っていない。
もし、これがPKなら今、教会に向かえば犯人と鉢合わうことになると考え、カイは二人に教会へ行くように言った。
「分かったわ!」
「こっちよ、ミト!」
二人はすぐに教会の中に入る。
「キリト!俺が縄を斬る!下で受け止めてくれ!受け止めたら、回復を!」
「了解!」
カイが走り出すと同時に、キリトは回復結晶を手に走り出す。
カイは、筋力値と敏捷値に物を言わせたシステム外スキル《
腰の刀に手を伸ばし、男を吊るしている縄を斬ろうとする。
「………っ!!」
その瞬間、男の目が、強く見開く。
そして、教会の鐘が鳴り、男は何かを呟いた。
それと同時に、無数のガラスが砕け散るような音とポリゴンの欠片たちが爆散した。
カイは刀を抜かないまま、そのまま地面に降り立った。
「………間に合わなかった………俺は……また間に合わなかったのか………!」
誰にも聞こえない様な震える声で、カイはそう呟いた。
その呟きは、誰にも聞こえなかった。
この時点でカイは、《紅蓮の剣豪》と言う二つ名を持ってます