その男の名は《ヒースクリフ》
攻略組最強ギルド《血盟騎士団》ギルドリーダーにして、ユニークスキル《神聖剣》の使い手、アインクラッド最強の剣士だ。
キリトはヒースクリフの知恵を借り、事件解決のための糸口を探すことにした。
キリトはヒースクリフへの相談を提案した当事者の為ヒースクリフと会い、そして、連絡はアスナが行ったためアスナも同行することになった。
一方でカイはミトと共に、別方面から事件を捜査することになった。
「それで、私たちはどうするの?」
「ああ。シュミットを当たろうと思う」
「シュミットを?」
ミトは昨夜の怯え切ったシュミットの顔を思い出す。
「今の所、《圏内事件》もといカインズ殺害の関係者と言えるのはヨルコさんや、行方知れずのグリムロック以外だとアイツ以外にはいない」
「確かに。でも、今の時間だと《聖竜連合》も狩りや迷宮区攻略をしてるんじゃない?」
「いや、指輪売却に反対だったカインズが殺された今、シュミットも次は自分が殺されるのではと思ってるはずだ。なら、殺されやすい《圏外》に行く理由はない」
「なるほどね。なら、宿屋に引き籠ってるか。あるいは………」
「大勢の攻略組プレイヤーがいる安全な場所、《聖竜連合》本部での籠城だ」
「でも、どうやってシュミットと会うの?」
《聖竜連合》の本部がある56層に着き、《ホーム》と言うより《
「昨日の今日で、シュミットが俺たちに会ってくれるかと言うと微妙な所だな」
顎に手をやり、カイは考える。
「よし、アイツの手を借りるか」
カイはメッセージウィンドウを開き、《フレンド・メッセージ》を送る。
ちなみに《フレンド・メッセージ》とはフレンド登録してあるプレイヤー、或いはギルドメンバーのプレイヤー、結婚相手のプレイヤーに送れるメッセージで、瞬時に連絡が取れる優れモノだ。
一応名前だけで送れる《インスタント・メッセージ》もあるが、これは相手が同じ層に居ないとメッセージは届かないし、届いたのかどうかも分からないのであまり活用はされない。
カイがメッセージを送って十分後、一人のプレイヤーがカイ達の前に現れた。
「カイ!ミト!久しぶりだな!」
騎士風の装備をした青髪の盾持ち片手剣士は、二人を見るや否や手を振って駆け寄る。
「ああ、久しぶり。ディアベル」
久々の再会に、カイはディアベルとハイタッチをする。。
「カイから連絡が来た時は驚いたよ。基本的に、連絡を取るのは僕からだからね」
「アインクラッドきっての育成ギルドのリーダーとそう簡単に慣れ合えないだろ」
ディアベルは第1層攻略後、キバオウが立ち上げた《アインクラッド解放軍》の前身となった《アインクラッド解放戦線》、そして、リンドの立ち上げた《聖竜連合》の前身となった《ドラゴンナイツ》、両方のギルドから加入要請があった。
当時のディアベルは、攻略組に置いてはカリスマ的な存在だった。
そんなディアベルが所属しているギルドとなれば、そのギルドには箔が付く。
だが、そのことで片方のギルドが力をつけ、攻略組のバランスが崩壊することを恐れたディアベルはどちらのギルドにも所属しない、第三のギルドを立ち上げた。
それが、主に攻略組以外のプレイヤーを育成するギルド《
ディアベルのギルドで育ったプレイヤーはその後、《アインクラッド解放軍》や《聖竜連合》に加入したり(今では解放軍に加入を希望するプレイヤーはいないが)、自身で攻略ギルドを立ち上げたり、あるいは中層で自身のギルドを立ち上げた者など多くいる。
最近では《血盟騎士団》にも加入した者もおり、アインクラッドでは欠かせない存在となっている。
「だからって、毎月膨大なコルをどんっと寄付して去っていくのはどうかと思うぞ。ウチのギルドの運営資金の三割はカイとキリトの二人の寄付じゃないか」
「どうせコルなんて余らせてるからな。後進の育成の為なら惜しまないよ」
「全く……ウチのメンバーも二人にお礼を言いたいって言ってるんだ。次の寄付を持ってくる時は、お茶ぐらいは飲んでいってくれよ」
呆れた笑みを浮かべた後で、カイはミトを見る。
「ミトも久しぶり。この間、《血盟騎士団》への入団希望者を連れて本部に行った時以来だな」
「ええ。あの三人、ギルドでも大活躍中よ。いい人材ありがとう」
ディアベルとミトが互いに握手をし、再会を喜ぶ。
「それにしても、二人が一緒とはね。もしかして、デート中だったかな?」
騎士にしてはあるまじきニヤニヤとした笑みを浮かべ、ディアベルは二人を見る。
デートのワードに、ミトは顔を赤くしそっぽを向く。
「デート中に、他の男呼ぶ奴が居るかよ。頼みがあるんだ」
カイは《圏内事件》の事をディアベルに話し、どうしてもシュミットから話を聞きたいと言う。
「シュミットさんか。確か、彼は半年前ぐらいにウチに来て《攻略組》入りしたいって言ってたな」
「本当か?」
「ああ。レベルやスキル熟練度は中層プレイヤーではそこそこ上って感じだったし、装備に関しては《攻略組》クラスの代物を持っていたから、ウチで訓練してた時期は短かったけど、よく覚えてるよ」
「なら、話は早い。シュミットを呼び出してもらえないか?」
「ああ、待っててくれ」
ディアベルはメッセージウィンドウから《フレンド・メッセージ》を開き、シュミットにメッセージを送る。
ちなみに、ディアベルの人の好さと面倒見の良さもありディアベルの所で育ったプレイヤーの殆どは、ディアベルとフレンド登録している。
その為、アインクラッドでのディアベルは、フレンド数が多く、人脈も広い。
「ダメだな。今日は誰とも会わないと決めてるって言ってる。会ってはくれなさそうだ」
シュミットからの返事を読み上げ、ディアベルがそう言う。
「なら、こう伝えてくれるか。『指輪の件での話があるんだ』と」
カイに言われたことを伝えると、ものの数分でシュミットは《聖竜連合》本部から飛び出し、カイ達に近付く。
「お前たちだったのか………」
酷く怯えた様子のシュミットは、カイとミトの姿を見て安心するもすぐに「場所を変えてくれ」と言ってくる。
「ディアベル、呼び出し助かった」
「これぐらいいいさ。それじゃあ、俺はこれで。カイ、今度は寄付以外でも来てくれよな。ミトもぜひ来てくれ。いつでも大歓迎だから」
そう言い残し、ディアベルは帰って行く。
ディアベルを見送り、カイとミトはシュミットと共に裏路地に入る。
「誰から聞いた?」
「え?」
「指輪の事……誰から聞いた?」
シュミットが顔を青ざめて聞いてくる。
「元《黄金林檎》のメンバーからだ」
そう言うと、シュミットは更に顔を青ざめる。
「………名前は?」
カイは一瞬言ってもいいのか悩んだが、隣にいるミトが頷いたので名前を伝えることを決めた。
「ヨルコさんだ」
「ヨルコ?……そうか、そうだったのか」
ヨルコの名前を出すと、シュミットは安心したように顔色が元に戻り、息を吐く。
「その様子だと、ヨルコさんも指輪の売却に反対していたってのは知ってたみたいだな」
「あ、ああ………」
「だからこそ、同じ売却反対派だったカインズが殺されたと知って自分も殺されるんじゃと思ってたんだな」
そう言うと、シュミットは再び顔を青ざめさせる。
「一応言っておくけど、私たちは《黄金林檎》のリーダー、グリセルダさんを殺した人を探してるわけじゃない。昨日の事件起こした人……もっと言えば、その手口を突き止めたいの。《圏内》の安全を今まで通りに保つために」
「シュミット、グリムロックは何処にいる?仮にグリムロックが犯人じゃなかったとしても、あの槍を作ったプレイヤーである以上、どうしても彼から話を聞きたい」
「し、知らない!」
シュミットは大声で言う。
「本当に知らないんだ!《黄金林檎》が解散してから、一度も連絡は取ってない!昨日まで生きているのかどうかも知らなかったんだ!」
「なら、心当たりでもいい。グリムロックが行きそうな場所やお気に入りのカフェ、当時の情報でもいいから教えてくれ」
カイがそう言って、シュミットは俯く。
「………当時、グリムロックが気に入っていたNPCレストランがある」
シュミットが俯いたまま、ぼそぼそっと話し出す。
「毎日のように行ってたから、もしかしたら今でも…………」
「その店の名前は?」
「店の名前と場所は教える。ただ、条件がある!」
俯いていたシュミットが顔を上げ言う。
「彼女と……ヨルコと合わせてくれ」