ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第22話 涙

ヨルコの身体が砕け散るのを見て、カイは怒りを露わにした表情で外を確認する。

 

開いていた窓、そしてヨルコの背中に刺さっていた投げナイフ(スローイング・ダガー)

 

その事から、外から攻撃を仕掛けられたのは分かった。

 

そして、宿屋の向かい側にある建物の屋根にフーデッドローブを纏った襲撃者、プレイヤーが居た。

 

そのプレイヤーはカイに姿を見られると、屋根を伝って逃げ出す。

 

「逃がすか!」

 

「ちょ!カイ、待て!」

 

キリトが呼び止めるもカイには聞こえず、カイは一気に跳躍して向かいの屋根に飛び移る。

 

「くそっ!アスナ、ミト!シュミットを頼む!」

 

キリトは背後の二人にそう伝え、カイ同様向かいの屋根に飛び移る。

 

そして、襲撃者と、それを追うカイを追った。

 

「カイ!一旦落ち着くんだ!投げナイフ(スローイング・ダガー)で、ヨルコさんのHPは全損した!どう考えてもあり得ない!もしかしたら、《圏内の無効》以外にも《即死》の効果もある可能性がある!もし一撃でも食らえば………!」

 

「それがどうした!ようやく犯人を見つけたんだぞ!命を惜しんでる場合か!」

 

冷静さが欠けているカイは大声で怒鳴る。

 

それと同時に、襲撃者は懐からある物を出す。

 

それは転移結晶だった。

 

「転移する気か!させるかよ!」

 

カイは腰のベルトから投擲アイテムのピックを三本抜き、襲撃者に投げる。

 

しかし、カイのピックはすべてが紫色のシステムタグに阻まれ、襲撃者に当たらなかった。

 

キリトはせめて転移先を聞き逃さまいと聴覚を研ぎ澄ます。

 

だが、その瞬間、教会の鐘が鳴り、襲撃者が最低限の音量で発した声は搔き消された。

 

「逃がすか!」

 

カイは刀を抜刀し、襲撃者を背後から襲い掛かる。

 

が、カイの刀の刃が当たる瞬間、襲撃者は転移し、刀はそのまま襲撃者が立っていた場所に振りおろされる。

 

「っ…………くそっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

襲撃者を捕らえられなかったカイは、キリトと共に屋根を降り、宿屋まで歩いて戻った。

 

宿屋に着くと、キリトはヨルコの命を奪った投げナイフ(スローイング・ダガー)を回収する。

 

「キリト、そいつを俺によこせ」

 

「………断る」

 

「トバルの奴に鑑定してもらうだけだ」

 

「俺はまだ何も言ってないぞ」

 

そう言い、キリトは投げナイフ(スローイング・ダガー)を自身のアイテムストレージに入れ、カイを見る。

 

「試す気なんだろ?このダガーが、本当に圏内で、それも一撃でHPを全損させるのかを」

 

キリトがそう言うと、カイは不機嫌そうに舌打ちをする。

 

「悪いが、今のカイに渡しておけない。俺が預かる」

 

そう言い、キリトは宿屋へと入っていく。

 

その後に続いて、カイも宿屋へと入る。

 

部屋のロックを解除し、中に入るとミトとアスナの二人は武器を構えていた。

 

「馬鹿っ!無茶して!」

 

「それで………どうだった?」

 

アスナから怒られ、ミトから襲撃者の事を聞かれる。

 

キリトは首を小さく振って答える。

 

「逃げられた。転移結晶で何処かの層に転移したんだ。転移場所を聞こうにも、教会の鐘の音に搔き消されて男か女かも分からない………グリムロックなら男かもしれないが………」

 

「違う」

 

シュミットが頭を抱え、顔を青ざめさせながら言う。

 

「グリムロックは、背が高かった………それに、あのフーデッドローブ……間違いない、アレはグリセルダの物だ。彼女は、街に行く時はいつもあんな地味な格好をしていた……指輪を売りに出たあの日も………!さっきのあれは彼女だ……はは、そうだよな、幽霊ならなんでもアリだよな。《圏内》で人を殺すのも、楽勝だよな」

 

乾いた笑いをし、シュミットがそう言う。

 

その瞬間、カイはシュミットの胸倉を掴み引き寄せる。

 

「おい、シュミット。今すぐ教えろ」

 

「な、なにを………!」

 

「グリムロックの行きつけの店、そう言う条件だろ」

 

カイの荒々しい態度にアスナは驚いた。

 

キリトはそんなカイを止めようとした瞬間、ミトがさきに動いた。

 

「ちょっとカイ!落ち着いて!」

 

カイの手を掴み、シュミットを解放させるとミトはカイに問い掛ける。

 

「ヨルコさんを殺されて、犯人も捕らえれなくて悔しい気持ちは分かるけど、今こそ冷静にならないと」

 

「……冷静?冷静なんかになれる訳ないだろ!」

 

とうとうカイはミトに向かっても怒鳴り出した。

 

「目の前でヨルコさんが殺されたんだぞ!カインズの時とは状況が違う!守れる位置に居たんだ!あの時、俺は誰よりもヨルコさんの近くに居た!なのに守れなかったんだ!俺は間に合わなかったんだ!」

 

そう言い、カイはシュミットを見る。

 

「早く教えろ。グリムロックの、行きつけの店を!」

 

怯えるシュミットは、言葉を震わせながらその店の名を言う。

 

店の名を聞いたカイが振り向くと、キリトが入り口の前で陣取って居た。

 

「何のつもりだ、キリト」

 

「それはこっちのセリフだ。何するつもりだ、カイ」

 

「店の前で張るんだよ、グリムロックが現れるまで」

 

「グリムロックの顔も知らないのに、どうやるんだ?」

 

「襲撃者を追ってる時に、それなりの距離で近付いた。背丈と体格で判断すればどうにかなる」

 

「その後は?プレイヤーに視線をフォーカスしても、初対面の相手じゃ名前まで分からないぞ」

 

「グリムロックらしき人物を見つけたら、デュエルを仕掛ける。そうすれば、名前の確認はできるだろ」

 

「ちょっと待って、カイ君!」

 

カイのやり方に、アスナが声を上げた。

 

「それは明らかなノーマナー行為よ!そんなことしたら君の立場が!」

 

「それ以外に方法なんてないだろ。いいからどけ、キリト」

 

「それを聞いて退くと思うのか?悪いけど、今のお前を行かせるわけにはいかない。相棒としても、友としても」

 

「そうか……どかないなら勝手にしろ。方法は、いくらでもあるからな」

 

そう言い、カイは転移結晶を取り出す。

 

「お前!?」

 

「俺は、この事件の犯人を絶対に許せないんだよ、キリト」

 

カイはそう言い、グリムロックの行きつけの店があると言う20層の主街区の名を言おうとした。

 

だが、カイは主街区の名を言わず固まった。

 

「………ミト、離れろ」

 

転移しなかったのは、ミトの所為だった。

 

ミトはカイに正面から、強く抱き付いていた。

 

転移結晶は一つに付き一人までしか転移が出来ない。

 

もし、転移結晶を使う時に他のプレイヤーに接触されているとエラー反応となり、使用が出来ない。

 

「嫌だ」

 

カイに離れろと言われても、ミトは離れようとしなかった。

 

「いいから離れろ。これじゃあ転移できない」

 

「嫌だ!」

 

今度は大きな声で拒否をした。

 

「ミト!いい加げ!?」

 

「いい加減にしろ」、そう言おうとしたカイだったが、言葉が出なかった。

 

何故ならカイを見上げるミトの両目からは涙が零れていた。

 

「ミト……どうして………」

 

何故ミトが泣いているのか分からないカイは、思わずそう尋ねる。

 

「だって………カイがまた何処かに行きそうで、私…………!」

 

カイに縋り付く様にして泣くミトは、話し出す。

 

「昨日からカイがずっと様子が変で…………そんなカイ見てたら不安が押し寄せて来て………カイがカイじゃなくなりそうだから…………!」

 

ミトの涙を見た時点でカイの頭の血は下がっていたが、ミトの話を聞きカイは自分が冷静でなかったことを悟り、そしてどれだけの不安をミトに与えていたのかを自覚した。

 

そんなカイの様子を見てキリトは「はぁ~」っと息を吐く。

 

「流石に泣いてる女の子相手を振り解く程、カイは悪い奴じゃないよな」

 

カイに近付きキリトは言う。

 

「なぁ、カイ。俺やアスナにはともかく、ミトには説明してやる必要があるんじゃないか?」

 

「……………そうだな。ミト、話すよ全部」

 

カイはそう言って、ミトを抱きしめる。

 

「俺がどうしてここまで殺人に対して冷静で居られないのか。その理由は……………あの日、お前の所に行かなかった理由にも繋がるんだ」

 

カイの言葉に、ミトは驚きカイを見上げる。

 

「キリト、アスナ。この際、お前たちにも聞いて欲しい。大切な友人として、俺の過去を」

 




次回、カイの過去について明かします。
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