ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第26話 謎解きは黒幕登場の後で

「これはこれは、《紅蓮の剣豪》様じゃねぇか」

 

カイの登場に、PoHは殺意を込めて面白そうに言う。

 

「よぉ、出来ることならアンタらとは会いたくなかったけど、そうもいかないみたいだな」

 

「ふっ、冷静を装っているが分かるぞ。お前から、俺らに向ける殺意にも似た憎悪がな」

 

PoHの言葉に、カイはますます刀を握り締める手の力を強める。

 

「これ以上、お前と話す言葉なんて持ち合わせてない。早く消え失せろ」

 

「ンの野郎……!余裕かましてんじゃねぇーぞ!状況分かってんのか!」

 

ジョニー・ブラックがナイフを振り回し騒ぎ出すが、PoHが片手で制する。

 

「獲物を前にしてお預けとは釣れないな。お前を殺して、後ろの3人を殺すこともできるぜ。いくらお前が相手でも、俺たち3人相手に勝てると思ってるのか?」

 

「思ってねぇさ。だが、対毒ポーションは飲んだし、《対毒》スキルもある。回復結晶も溜め込んであるし、10分間は抑える自信はある。それに、1人じゃないしな」

 

突如、蹄の音が聞こえる。

 

その音はどんどん近づきカイ達の近くまで来ると、馬が後ろ脚だけで立ち上がり、鋭く嘶いた。

 

騎手は、馬上から振り落とされて「いてっ!」と毒づきながら尻餅をついた。

 

その騎手は立ち上がるとカイ達を見回して、手綱を引いて馬の頭を来た方向に向けさせると、その尻を軽く叩いた。

 

それでレンタルが解除され、黒馬は走り去っていく。

 

騎手はキリトだった。

 

「よう、PoH。久しぶりだな。まだその趣味悪い格好してんのか」

 

「………貴様に言われたくねぇな」

 

挨拶代わりに、PoHを挑発するキリトに、PoHは殺意を込めて言葉を返す。

 

「遅いぞ、キリト」

 

「しょうがないだろ。この世界の馬って操作が難しいんだから」

 

そう言い、キリトは背中の剣を抜いて構える。

 

「さて、これでこっちは2人。キリトも条件は同じだ。これで、20分は耐えれる。それだけの時間があれば、《攻略組》の応援が駆けつけるには十分だな」

 

「《攻略組》30人を、3人で相手できるか?」

 

「……Suck」

 

PoHは舌打ちをし、《友斬包丁(メイド・チョッパー)》を仕舞う。

 

「……《黒の剣士》、《紅蓮の剣豪》。貴様らだけは、いつか必ず地面を這わせてやる。大事なお仲間の血の海で転げさせてやるから、期待しといてくれよ」

 

そう言い残し、PoHはジョニー・ブラックとザザに撤退の合図をし、去って行った。

 

去る直前、カイの傍を通ったザザは通り際に、カイに向けて囁いた。

 

「次、合う時までに、そのコートを、脱いでおけ、お前を、お前の仲間の血で、染めてやる」

 

「やってみやがれ。その時は、返り討ちにしてやるよ」

 

互いに殺気をぶつけ合い、ザザはPoHたちの後を追った。

 

「さて、また会えてうれしいよ、ヨルコさん」

 

「カインズとは一応初対面になるな。初めまして」

 

2人にそう言うと、ヨルコは申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「すみません、全てが終わったら皆さんには改めて謝罪に向かうつもりでした。信じてもらえないでしょうけど………」

 

「信じるさ。だからこそ、フレンド登録をしてくれたんだろ?」

 

カイはそう言い、シュミットに近寄る。

 

「麻痺はもう大丈夫そうか?」

 

「ああ、なんとかな………カイ、それにキリト。助けてくれたことは礼を言う。だが、どうして奴らがここに来ると分かったんだ?」

 

「分かったって言うより、あり得ると推測したんだよ。ヨルコさん、カインズさん。2人ははグリムロックに武器を作ってもらう時、今回の計画の事を全部話したんじゃないか?」

 

カイに尋ねると、二人は頷いた。

 

「最初、グリムロックさんは気が進まない様でした。もう彼女を安らかに眠らせてあげたいって」

 

「でも、僕らが必死に頼み込んだら、ようやくあの武器を作ってくれたんです。届いたのは、僕じゃない方のカインズさんが亡くなった日の、3日前です」

 

「残念だけど、アンタたちの計画に反対したのはグリセルダさんの為じゃない。《圏内PK》なんて派手な事件を演出し、大勢の注目を集めたら、いずれ誰かか気づいてしまうと思ったからなんだ。結婚によるストレージ共通化が、離婚ではなく死別で解消された時………その中のアイテムがどうなるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

およそ30分前。

 

《圏内PK》の手口も分かり、これ以上は自分たちが首を突っ込む必要はないと判断した4人は、例のレストランへと向かい、夕食を食べようとしていた。

 

「ねぇ、キリト君とカイ君は、レアアイテムがドロップした時はどうしてる?」

 

注文して料理を待っていると、アスナがそんなことを二人に着てきた。

 

「そうだな………俺はそう言うのが嫌でソロでやって行こうと思ってたからな。カイとコンビを組んでる今だと、カイの戦闘スタイルに合ってる奴なら、カイに譲ってるな」

 

「俺もキリトが使えそうな奴ならキリトに譲ってるぞ。それ以外なら自分の物にしてる」

 

そう言い、カイはミトとアスナに尋ねる。

 

「ちなみに、《血盟騎士団》ではどうしてるんだ?」

 

「うちはドロップした人の物って決めてるわ」

 

「SAOには戦闘経過記録(コンバットログ)とかないから、誰がどんなアイテムをドロップしたかは自己申告でしょ?隠匿とかのトラブルを避けるにはその方がいいしね。それに………そう言うシステムだからこそ、この世界での結婚には重みが出るのよ」

 

アスナの言葉に、キリトとカイ、ミトはアスナを見る。

 

「結婚したら、二人のアイテムストレージは共通化されるでしょ。それまで隠そうと思ったことが、結婚したことで隠せなくなる。ストレージ共通化って凄くプラグマチックだけど、同時にロマンチックだと私は思うわ」

 

「「プラグマチック?」」

 

聞きなれない単語に、カイとキリトは思わず聞き返す。

 

「実際的って意味よ」

 

そんな二人に、ミトが答える。

 

「実際的?SAOでの結婚が?」

 

「だってそうでしょ?ある意味、身も蓋もないじゃない。ストレージ共通化なんて」

 

「なるほどな……………なぁ、離婚したらストレージ内のアイテムってどうなるんだ?」

 

ふと、キリトがそのようなことを言い出した。

 

「えっと……確か、色々オプションがあるのよ。自動分配とか、交互にアイテムを選択するとか……他にも色々……」

 

「ちょっと気になるな。ヒースクリフに聞いてみてくれよ」

 

キリトに言われ、アスナがヒースクリフにメッセージを送る。

 

すると、1分程度で返信が来た。

 

内容は、アスナが言ったように自動等価分配、交互選択分配などに加え、パーセンテージで偏らせた自動分配もできるとのことだった。

 

『ちなみに、どうしても離婚がしたい時に無条件で離婚する方法もある。取り分が自分が0%、相手が100%に設定した時のみ可能となる。その時、離婚成立時、相手のストレージ内に収まりきらないアイテムは全て床にドロップされる。キリト君、そしてカイ君。もし一方的に離婚されそうになったら、宿屋の個室に待避しておくことをお勧めするよ』

 

ヒースクリフからの返信の最後にそのような一文が残されており、キリトはその部分が気になるのか何度も繰り返し言う。

 

「自分0、相手100……自分0、相手100…………あああああ!!」

 

突如大声を上げ、キリトが立ち上がる。

 

「きゅ、急にどうしたのよ!?」

 

「ある……自分100で相手0にする方法がある」

 

「「「え?」」」

 

「死別だ。結婚相手が死んだ瞬間、ストレージ共通化は無くなって、本来のストレージ要領になる。そうなると、持ち切れない分は床にドロップされる。つまり…………」

 

一拍置き、キリトが続きを言う。

 

「《黄金林檎》のリーダー、グリセルダさんが何者かに殺された時、グリセルダさんのストレージ内にあったレア指輪は、グリムロックのストレージに残るか、足元にドロップされる」

 

「それって………!」

 

「指輪は誰にも奪われていない………!」

 

「いや、ある意味奪われてる。グリムロックは、自身のストレージ内の指輪をグリセルダさんの死を使って奪ったんだ………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グリセルダさんのストレージは、同時にグリムロックのストレージでもあった。だから、グリセルダさんを殺したとしても、指輪は手に入らない。グリセルダさんを殺した時点で、グリセルダさんが装備していた物以外は、全部グリムロックの物になるからだ」

 

キリトの語った話に、全員が息を呑む。

 

「シュミット、お前は計画の片棒を担いだ報酬で、指輪売却の時に得たコルの半分を貰った。そんなことが出来るのは指輪を手に入れたグリムロックだけだ」

 

「じゃあ、あのメモの差出人はグリムロックなのか………まさか、グリセルダを殺したのも……!」

 

「いや、殺害は汚れ仕事専門の殺人者(レッド)に頼んだんだろう。自身でやって、もし圏外に運んでる途中に、グリセルダさんが目を覚ましたら取り繕えなくなるからな」

 

「でも、グリムロックさんが犯人なら、どうして私たちの計画に載ってくれたの?」

 

「計画を全部話したんだろ?なら、それを利用して、今度こそ指輪事件を闇に葬るつもりだったんだ」

 

「そうか……だから殺人ギルドの連中がここに………」

 

「でも、どうして………!どうしてグリムロックさんがグリセルダさんを殺そうとするの………!あの二人はいつも一緒で……グリムロックさんはいつもニコニコしてて………なのにどうして!」

 

「それは………本人から直接聞こう」

 

「見つけたわ」

 

「ほら、キリキリ歩きなさい」

 

そこで、アスナとミトの二人に武器を突き付けられ、一人の男が現れた。

 

「やぁ、シュミット君、久しぶりだね。カインズ君とヨルコ君は、私にあの武器の作成を頼みに来た以来かな?」

 

鍔の広い帽子を被り、銀縁の丸眼鏡を掛けた男、その名は《グリムロック》。

 

ギルド《黄金林檎》のサブリーダーで、《グリセルダ》の夫だった。

 

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