ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

41 / 132
第30話 黒と紅の激突、そして死

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)のプレイヤーを躊躇いなく殺したカイに、ミトは唖然とした。

 

「か、カイ……?」

 

殺人者(レッド)を殺して、全く動きのないカイにミトは声を掛けた。

 

その瞬間、カイが振り向き、刀の切っ先をミトへと向ける。

 

「え?」

 

ミトが驚いていると、カイの刀はミトの横を通り背後から迫っていた殺人者(レッド)の喉に突き刺さる。

 

そして、そのまま横に振り頭を斬り飛ばす。

 

「………コロサナイト」

 

カイはそう呟き、光を失った瞳で前方の、殺人者(レッド)と討伐隊が混戦している場所を見つめ、駆け出した。

 

「待って、カイ!」

 

ミトはカイを呼び止めるも、聞こえてないのかカイはそのまま走り去る。

 

カイは殺人者(レッド)に情け容赦なく刃を振るい続けた。

 

四肢を斬り落とし、身動きを取れなくし、心臓に刃を突き刺す。

 

胴を一刀両断にする。

 

首を斬り飛ばす。

 

SAOはゲームであるため血が噴き出ることはないが、もし血が吹き出ていればカイの身体は返り血で、血塗れになっているだろう。

 

そんなカイに、1人のプレイヤーは恐怖を感じた。

 

そのプレイヤーはプレイヤーカーソルはグリーンだったが、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の一員で、PoHの悪としてのカリスマに魅了されたプレイヤーだった。

 

元々現実の世界に嫌気を差しており、世の中に対し不満を持っていた彼にとって、SAO内で悪の限りを尽くすPoHやザザ、ジョニー・ブラックは憧れの対象だった。

 

自身もそんな最高の悪になりたという思いから、笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の門を叩いた。

 

だが、自分の行いがどれだけ軽率で、愚かだったのかを理解した。

 

目の前でどんどん殺されていく仲間たちに、彼は何もできず体を震わせることしかできなかった。

 

そして、目の前で新たに一人の仲間が殺される。

 

殺人者(レッド)を殺すと、カイはゆっくりと顔を上げ、男を見た。

 

「ひぃ!!」

 

男はカイの目を見て戦意を喪失し、武器を放り捨て両手を上げた。

 

「と、投降する!だからお願いだ!命だけは!」

 

「………ソウイッテ、オマエハナンニンコロシタ?」

 

腹の底から恐怖を感じる様な声が、男の心臓を掴む。

 

「ヒトノイノチヲ、サンザンウバッタオマエタチニ、イキルケンリハ、ナイ!」

 

そして、カイは男の両脚を斬り落とした。

 

「うわああああああああああ!!」

 

男の両脚を斬ったことで、カイのカーソルはオレンジとなる。

 

だが、カイにはその程度関係なかった。

 

「シネ」

 

カイの刀が男の首を撥ねる。

 

その瞬間だった。

 

鋭い金属音が響き、カイの刀は男に届かなかった。

 

カイの刀を受け止めたのは、黒い剣の刃だった。

 

そして、その剣の持ち主はカイの相棒、キリトだった。

 

「カイ止せ!相手は投降の意志を示してるんだぞ!殺すな!」

 

「キリト………?」

 

キリトの姿を見た瞬間、カイの心が揺れ、僅かに憎悪が薄れた。

 

「……投降してもそいつは笑う棺桶(ラフィン・コフィン)。始末するべきだ」

 

「コイツはグリーンだ!まだ殺人をしていない下っ端だぞ!ソイツまで殺すのは間違ってる!」

 

キリトの言う通り、男は笑う棺桶(ラフィン・コフィン)内でも圏内で情報収集したり、獲物を待ち伏せ場所まで誘導するのが主な役割で人を手に掛けたことはまだなかった。

 

だが、そんなことは今のカイには関係がなかった。

 

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)に所属してる以上、ソイツも殺人者(レッド)だ!カーソルの色なんか関係ない!」

 

「………そんなに殺したいのか?コイツを」

 

「…………俺はもう6人殺した。もう後戻りは出来ないんだよ。なら、人殺しは人殺しなりの道を歩むだけだ」

 

「そうか………なら、止めてやるよ!」

 

そう言い、キリトは勢いよくカイの刀を弾き返した。

 

「来いよ、カイ。お前が人殺しの道を歩むって言うなら、俺は全力でそれを止める。それが、相棒としてお前にしてやれる俺なりの行動だ」

 

「………そうかよ。なら俺とお前の仲は、今日限りだ!」

 

カイは一気にキリトとの距離を詰める。

 

キリトも迎え撃つ覚悟で、カイの刀を受け止める。

 

二年近くコンビを組んでいたこともあり、互いの癖や戦法を知り尽くしていたこともあり、二人は数合打ち合う。

 

「そんな………」

 

カイに追いついたミトは、カイとキリトが刃を交えているのにショックを受けた。

 

「……どうしよう……私の所為だ……」

 

ミトは今にも泣き出しそうな表情で、二人を見る。

 

「………カイを止めれなかった………近くに居たのに…………私が動けていれば、こんなことには…………!」

 

カイの暴走は自分の所為だとミトは責め続けた。

 

「そこを………退け!」

 

「退かない!」

 

一進一退の攻防を繰り広げ、互いに鍔競り合う。

 

「いい加減にしろよ!俺はもう戻れないんだ!戻れないなら、せめて誰も死なずに済むようにしたいんだよ、俺は!」

 

「それで全部一人で抱え込むのかよ!お前が一人で苦しんで抱え込もうってしてるのに、俺たちだけ笑って暮らしてろって言うのか!そんなの、認められるか!」

 

キリトの左手の拳が赤いライトエフェクトを纏い、カイに向けられる。

 

「いいから!」

 

右手一本で、剣を操りカイの刀を受け流し、カイの態勢を崩す

 

「いつものカイに戻りやがれ!馬鹿野郎!」

 

体術スキル《閃打》がカイの腹部に当たる。

 

「がっ!?」

 

キリトの放った一撃でカイのHPは3割削られる。

 

「この……舐めるな!」

 

カイは体勢を崩されたまま、キリトに向かって体術スキル《弦月》を使い、蹴り飛ばす。

 

「がっ!?」

 

そして、カイは刀スキル《紫電一閃》を放つ。

 

(!?しまった!)

 

そこでカイは自身の過ちに気づく。

 

体術スキル《弦月》からの刀スキル《紫電一閃》のコンボは、カイが得意とする戦法で亜人型Mobによく使っている手だ。

 

暴走し、冷静でなかったカイはそのコンボをキリトに使ってしまった。

 

幾らキリトと言えども、このコンボを食らえば一溜りもなく、もし、頭や心臓に当たればHP全損は免れない。

 

「避けろ!!」

 

カイが叫ぶ。

 

しかし、キリトが立ち上がろうとした瞬間には剣先はキリトの心臓を捕らえていた。

 

ドスッ!

 

カイの刀が胸元を貫く。

 

だが、貫いたのはキリトの心臓ではなかった。

 

カイの持つ刀《紅雪》の赤い刀身が貫いたのは、ミトだった。

 

「ミ………ト?」

 

「良かった………今度は、止められた…………」

 

「あ、ああ……!ミト、そんな……!」

 

「ごめんね……もっと早く止めてれば………カイを苦しめずに済んだのに………!」

 

「黙ってろ!」

 

カイは慌てて刀を抜き、急いでポーチから回復結晶を取り出しミトのHPを回復させようとする。

 

「ヒール!」

 

だが、エラー反応によりミトのHPは回復しなかった。

 

それはミトのHPが全損していることを示していた。

 

「そんな……ミト……俺の所為で……!」

 

「気にしないで、カイ」

 

ミトはカイを優しく抱きしめ、語り掛ける。

 

「大丈夫、だから」

 

いつもの笑顔でミトはそう言った。

 

そして、ミトのHPは底を尽き、ポリゴンの欠片となって消えた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。