ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第31話 確固たる意志

「そんな、ミト………!俺は、俺はなんてことを!」

 

誤ってミトを殺してしまったことに、カイは膝を付く。

 

そして、無意識に手にした刀を自身の首へと持って行こうとした。

 

「カイ、早まるな!」

 

キリトが大声でそう叫び、ある物を取り出す。

 

手の平で握れるサイズの大きさの、七色に輝く宝石だった。

 

「蘇生!ミト!」

 

キリトの手にしたそれは、砕け散りポリゴンの欠片になる。

 

そして、散らばった欠片は再び集まり、人の形を形成する。

 

それはミトだった。

 

「………ミト?」

 

「………ん?あれ?私………助かったの?」

 

辺りを見渡し、ミトは自分が助かったことに気づく。

 

「良かった………本当に、良かった………!」

 

ミトが助かったことに、カイは安堵し涙を流す。

 

「ふぅ、間に合って良かったよ」

 

キリトは立ち上がり、カイとミトに近寄る。

 

「キリト、もしかして貴方が?」

 

「ああ。持っていて助かったよ」

 

キリトが使ったのは《還魂の聖晶石》と言うアイテムで、SAOに唯一存在する蘇生アイテムだ。

 

このアイテムはメニュー画面から使用を選択するか、手に持って「蘇生+《プレイヤー名》」を言うことで、対象プレイヤーが死亡してから10秒間以内なら対象プレイヤーを復活させることができる。

 

このアイテムは、2023年の12月24日に、キリトとカイ、そしてクライン達《風林火山》とディアベルたち《希望の騎士団(KoH)》のパーティーでクリスマス限定のモンスターを討伐し、キリトがドロップしていた。

 

クラインやディアベルも、キリトとカイはコンビだから二人が持つのがいいとのことで、キリトはその言葉に甘えて、《還魂の聖晶石》を貰っていた。

 

「まさか、こんなタイミングで使うとは思ってもなかったけどな」

 

「…………キリト、俺………すまなかった」

 

「たっく。本当に世話の焼ける相棒だよ、お前は」

 

キリトは困った様な、安堵した笑みを浮かべカイを見る。

 

「それで?折角の感動のシーンなのに、のぞき見とは随分悪趣味だな」

 

そう言い、キリトは背後にいる何者かに声を掛ける。

 

「覗かれたくなかったら、こんな戦場のど真ん中で青春劇繰り広げるんじゃねぇよ!」

 

「…………」

 

現れたのは愉快そうに笑っているジョニー・ブラックと、不愉快そうに無言でいるザザだった。

 

「見えていてもスルーするのが常識じゃないか?ま、お前たちに常識を説いた所で無駄か」

 

キリトは溜息を吐き、愛剣《エリュシデータ》を構える。

 

「ミト、カイを連れて下がってくれ」

 

「ちょっ何言ってるのよ!相手はジョニー・ブラックとザザよ!一人で戦える相手じゃ!」

 

「今のカイを一人にはできないだろ。頼む、数分ぐらいなら俺一人でもやれる」

 

「………分かったわ」

 

ミトはそう言うと、カイの手を取り後ろへと下がった。

 

「ミト待て!キリトが……!キリト!」

 

後ろへと連れて行かれるカイを見送り、キリトはジョニー・ブラックとザザの二人と対峙する。

 

「しっかし、面白いものがみれたぜ。殺人嫌いが殺人を犯すとか、最高のエンターテイメントだなぁ、ザザ!」

 

「くだらない……俺は……奴を……殺したかった……だが……今の……アイツは……殺す……価値が……無い」

 

「ま。ザザはそうだろうけどさ。俺としては傑作も傑作、大傑作!見て見たかったぜ、アイツがぶっ壊れた時の顔がよぉ!態々殺されに行くように部下の一人を嗾けた甲斐があったぜ!」

 

ジョニー・ブラックのその言葉に、キリトは反応した。

 

「おい、ジョニー・ブラック。それはどういう意味だ?」

 

「あ?どうもこうも、言葉通りさ!《紅蓮の剣豪》が忌み嫌う殺人を《紅蓮の剣豪》自らが行う!最高に面白いだろ?」

 

「なんでそんなことをした?」

 

「ハッ!理由なんてねぇよ、ただ気になったから試した。それだけさ」

 

「…………そうかよ」

 

そう言い、キリトは素早くメニューウィンドウを操作する。

 

そして、キリトの背中に新たな剣が現れ、キリトはそれを抜く。

 

その白銀の剣の名は、《ダークリパルサー》。

 

《エリュシデータ》とは別の、キリトのもう一つの愛剣だ。

 

「お前らだけは、俺が倒す」

 

キリトは2人、特にジョニー・ブラックに対して静かに怒気を向け、剣を振るう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミトに連れられ、カイは後方に下がる。

 

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》との戦闘は殆ど鎮静しており、後はまだ抵抗を続けているプレイヤー相手に戦っている。

 

「ミト!何があったの!」

 

すると、指揮を執っていたアスナがやって来る。

 

「ミトのHPが無くなって驚いてたのに、急にまたHPが現れてもう何がなんだが………」

 

「そのことは後で説明するから。それより、今キリトが奥でジョニー・ブラックとザザ相手に一人で戦ってる。すぐに向かわないと」

 

「キリト君が!?なら急がないと!」

 

「アスナ。アスナはこのままここに残ってて、私が助けに行くから」

 

「え!?で、でも!」

 

「お願い。今のカイを一人にはできない」

 

ミトはそう言い、カイを見る。

 

「カイ」

 

座り込んでいるカイと目線を合わせ、ミトは言う。

 

「カイはもう戦わなくていいよ」

 

「え?」

 

「カイは、ずっと苦しんでたよね。それでも、攻略組の一員として頑張って戦ってきた。今回だってそう。本当は人を殺す事になるかもしれないのに、私達を死なせたくないからって参加した。でも…………カイが苦しむぐらいなら、もう戦わなくていい。私が、カイの分まで戦う。だから、もういいんだよ」

 

「…………ミト」

 

「アスナ!カイをお願い!」

 

「ちょっミト!」

 

走り去っていくミトを追い掛けようにも、カイの様子がおかしい事と、カイのプレイヤーカーソルがオレンジになっている事が気になりアスナは動けなかった。

 

「カイ君、大丈夫?」

 

「………アスナ、ごめん。俺の所為だ」

 

謝るカイに、アスナは何かを感じ取りミト同様目線を合わせる。

 

「カイ君、何があったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キリト!」

 

ミトは二振りの片手剣を巧みに操り、ジョニー・ブラックとザザ相手に激戦を繰り広げるキリトの元に辿り着く。

 

キリトはミトが来たことに気づき、大ぶりの攻撃を放ち、ジョニー・ブラックとザザの二人を自分から遠ざける。

 

「ミト!カイは?」

 

「アスナに任せて来た!そっちは大丈夫?」

 

「ああ、なんとかな!とりあえず、ザザの相手を任せていいか?ジョニー・ブラックは俺が相手する!」

 

「構わないけど、大丈夫なの?」

 

ジョニー・ブラックとザザ。

 

この二人の実力はほぼ同じぐらいだが、ジョニー・ブラックは毒を使ってくるため、少しでも攻撃を食らえば戦闘不能になり殺される。

 

その危険は、キリトも承知だった。

 

「コイツだけは、絶対に許せないんだ!こいつは、俺が必ず倒す!《対毒》スキルはあるし、対毒ポーションも飲んである!心配するな!」

 

「分かった!なら。こっちは任せて!」

 

ミトは愛鎌を手に、ザザへと攻撃を繰り出す。

 

ザザは針剣(エストック)を手に、ミトの攻撃を受け止める。

 

「《死線》か……お前を殺せば……《紅蓮》は……本気になるか……試して……やろう……」

 

「それはどういう意味?」

 

「貴様に……語る理由は……無い……ただ……俺は……戦いたい……だけだ……本気の殺意を……ぶつけてくる……奴と」

 

「あっそ。でも、お生憎様。カイはアンタとは戦わないし、アンタはここで終わるの。この後、牢獄に行くからね!」

 

ザザの針剣(エストック)を弾き、ソードスキルを放つ。

 

ザザは後ろに飛び退き躱す。

 

そして、連続突きのソードスキルでミトに攻撃を仕掛ける。

 

ミトは武器防御スキルを発動し、ザザの攻撃を防ぐ。

 

ザザは接近しミトに攻撃を仕掛けるも、ミトはザザと一定の距離を保ち続けながら戦闘をする。

 

ザザの武器、針剣(エストック)は、攻撃力は高くはないもののスピードがあり、また急所に当て、クリティカルを発生させることで一撃の威力を高めることができる。

 

対してミトの武器、両手鎌は攻撃範囲が広く、攻撃力が高いが、その分小回りが利かず、懐に潜り込まれると反撃が難しいため、ミトは一定の距離を保って戦う必要があった。

 

「本当に……アイツは……来ないんだな……」

 

数分程戦っていると、ザザは突然そう言い出した。

 

「だから何?アンタには関係ないでしょ」

 

「関係は……無い……だが……残念だ」

 

落胆の声を出すザザに、ミトは怒りを覚える。

 

「人1人……殺すだけで……暴走して……正気になったかと……思えば……戦いを放棄する……本当に……残念だ……殺して……やりたかったのに……あんな臆病者だった……とはな」

 

「いい加減にしなさいよ!」

 

ミトがザザに対し怒鳴る。

 

「カイの事、何も知らないくせに好き勝手言うんじゃないわよ!カイが、今までどれだけ苦しんでいたのか………苦しみの中でどれだけ頑張ってたか………それも知らずに、カイを臆病者呼ばわりするな!」

 

ミトは渾身の一撃、両手鎌スキル《グリムゾンロード》を放つ。

 

現時点での、ミトが使える上級のソードスキルだった。

 

《グリムゾンロード》は、単発で頭上から大きく振り被った一撃を放つだが、発動動作が分かり易いという欠点がある。

 

だがミトは、自身のレベルやステータスの補正、加えて敏捷値や筋力値を利用したシステム外スキル《スキルブースト》を使えば、躱すことはできないのが分かっていた。

 

「ふっ……掛ったな……!」

 

ザザはそう呟き、針剣(エストック)を構える。

 

そして、ソードスキルの《スピカ・キャリバー》が放たれる。

 

5連撃の突きの内、三連撃ががミトの鎌にぶつかり、発動直前だったミトのソードスキルは打ち消された。

 

「しまっ!」

 

そして、無防備となったミトに残りのに連撃の突きが当たる。

 

「がっ!」

 

2連撃の突きは、ミトの鎌を弾き飛ばし、ミトは衝撃でその場に倒れる。

 

「ふっ!」

 

さらに、ザザが追撃としてミトの両目を斬りつける。

 

「ぐっ!」

 

「視界を……封じた……これで……お前は……戦えない……」

 

(やられた……!武器は!武器は何処……!)

 

見えない状態で手探りで愛鎌を探すも、近くにはないらしく手は何も掴まなかった。

 

武器を探すのは諦め、投げナイフを抜くもザザが何処にいるのかは、分からなかった。

 

「ミト!気を付けろ!ザザはお前の「おっとさせねぇよ!」

 

キリトがザザの位置を教えようとするも、ジョニー・ブラックが横入りし、邪魔をする。

 

ザザはミトの背後に立っていた。

 

「お前が死ねば……アイツも……本気を出すかもな……!」

 

ザザの一撃がミトに振り下ろされる。

 

ミトは背後の気配を感じ取り振り向く。

 

だが、既に遅くザザの針剣(エストック)はミトの首を狙った。

 

キンッ!

 

金属音が響いた。

 

「お前は……!」

 

ザザが驚きの声を上げる。

 

しかし、その言葉には僅かに喜びを帯びていた。

 

「ミトに………手ぇ出すんじゃねぇ!」

 

ザザの針剣(エストック)を受け止めたプレイヤーは、刀を一閃し、ザザの武器を弾くと同時に、ザザを後退させる。

 

「やっときたな………《紅蓮の剣豪》カイ……!」

 

ザザは、ようやく表れたカイを前にそう声を上げた。

 

カイは先程と打って変わって、確固たる意志を持った目でザザを睨み、ミトを守るため立っていた。

 




死んだのに、蘇ってすぐに戦いに行くミトってメンタルヤバくね?
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