ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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お久しぶりです。

投稿再開です。

いよいよラフコフ討伐戦 完です


第32話 見るもの

「カイ君、何があったの?」

 

ミトが去った後、アスナはカイと目線を合わせカイに尋ねた。

 

「………ミトを、殺したんだ」

 

カイは包み隠さず、アスナに全てを話した。

 

弾みで殺人者(レッド)を手に掛けた事を。

 

自棄になり更に殺人者(レッド)を殺したことを。

 

挙句、まだグリーンだったプレイヤーを殺そうとした事を。

 

それをキリトに止められ、そのままキリトと斬り合い、殺しそうになった事を。

 

そして、キリトを殺そうとした自分を止めようとミトが死んだことを。

 

「笑えるよな……殺人嫌いの俺が殺人を犯して、自棄になって殺しまわり、挙句相棒まで殺そうとした。…………そして、ミトも殺した。お前たちの言う通りだった………俺は今回の作戦に参加すべきじゃなかったんだ。いや………そもそも攻略組として戦うことも、お前たちと関わること自体、するべきじゃなかったんだ」

 

涙を流し、俯き言うカイにアスナはカイの頬を両手で挟んで無理矢理顔を上げさせた。

 

「しっかりしなさい!!」

 

大きな声で言われ、カイは驚き涙が引っ込んだ。

 

「私もキリト君も、ミトも貴方が心配で今回の作戦に参加するべきじゃないって言ったわ!でも、それはカイ君の心が壊れたりしないかが心配で言ったの!だけど、貴方は私たちを失うことが一番怖いから今回の戦いにも参加したんでしょ!男の子なら、最後までその言葉に責任持ちなさい!」

 

「…………でも、俺はミトをこの手で……」

 

「でも、まだ失っていないでしょ」

 

アスナはミトが走って行った方を指差し言う。

 

「ミトはまだ生きてる。失ってなんかいない。キリト君だってまだ無事よ。カイ君は、まだ失っていない。戦う意思だって失ってない」

 

アスナの言葉に、カイは右手に握り締められている愛刀“紅雪”を見る

 

「ミトの言う通り、カイ君がもう戦いたくないならそれでもいいよ。でも、まだ戦うなら………ううん、ミトを守りたいなら立ちなさい!今自分が何をしたいのか、何を見るべきなのか!ここではっきりさせなさい!」

 

アスナの言葉に、カイは刀を握り直し立ち上がった。

 

「すまなかった、ありがとう、アスナ」

 

アスナにそう言い残し、カイはミトの後を追った。

 

「………気を付けてね」

 

カイを見送り、アスナは再び戦場へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイ……なの?」

 

カイの声にミトはそう尋ねた。

 

「………ああ」

 

カイは暫しの沈黙を以て、短く答えた。

 

「どう……して……」

 

再び戦場に戻って来たカイに、ミトは驚きを隠せなかった。

 

「………その話は後だ。今は、こっちが先だ」

 

カイはミトの方を振り向かず、ザザを見たままそう言う。

 

「カイ!」

 

キリトはジョニー・ブラックを引き剥がし、ミトを間に挟む形でカイと背中合わせになる。

 

「大丈夫なのか!」

 

「……ああ。キリト」

 

「なんだ?」

 

「ザザの相手は俺に任せてくれ」

 

「……いいのか?」

 

「あんなことして、俺を信じれないだろう。でも、信じてくれなくていい。こいつは、一方的な頼み事だからな」

 

「………変なこと言うな、カイは」

 

キリトは“エリュシデータ”を持った右手で器用に額を掻き言う。

 

「俺とお前の間に、信じる信じないなんてものがあると思ってるのかよ、相棒?」

 

キリトはそう言い、再びジョニー・ブラックへと攻撃を仕掛けた。

 

「……ありがとう、キリト」

 

小さな声で礼を言い、カイはザザに刀を向ける。

 

「…………はぁ」

 

ザザは小さく溜息を吐いた。

 

「随分と詰まらなさそうだな。お望み通り、相手してやるってのに」

 

穏やかな口調のカイに、ザザは更に詰まらなさそうにする。

 

「俺は……あのお前と……戦いたかった……俺たちに……炎の様な……憎悪を……向ける……お前と……今の……お前は……ただの残り火だ」

 

「……そりゃ期待に沿えなくて悪いな。だがな、残り火だって放置すりゃデカくなるぞ」

 

「なら……俺が……消してやる……!」

 

ザザが飛び出し、針剣(エストック)で攻撃を仕掛ける。

 

「ミト、そこから動かないでくれ!」

 

カイはミトにそう呼び掛け、ザザと剣を交える。

 

ザザの素早い刺突を全て往なし、カイはザザの腕や足を狙い、刀を振る。

 

先程の戦いと違い、敵の機動力や戦闘力を奪う戦い方。

 

その姿には、あの自棄になり人の命を奪う戦い方は微塵も感じられなかった。

 

(なんだ……この戦い方は……)

 

そんなカイの戦い方に、ザザは不満を抱いた。

 

ザザが、カイと剣を交え合うのは、これが初めてじゃない。

 

自身が、“赤目のザザ”として名を馳せた時から、幾度なくカイとザザは戦い合った。

 

その時のカイは、一心にザザ達殺人者(レッド)に憎悪を向け刃を振るっていた。

 

そんなカイに、ザザは心が躍っていた。

 

ザザの現実(リアル)は、ザザにとって息苦しかった。

 

総合病院のオーナーをしている医者の家に長男として生まれるも、虚弱体質で後継ぎとしては頼りないとされ、その後に生まれた弟ばかりに期待を寄せる父親が嫌いだった。

 

それ以上に、誰も自分を見てくれない現状、まるで存在しないように扱われる現状が辛かった。

 

だが、SAOは違った。

 

SAOなら現実の虚弱体質関係なしに動け、そして、殺人のセンスを見出し自身を必要としたPoH、ウザいながらも相棒として隣にいるジョニー・ブラック。

 

そして、自分を見てくれるカイ。

 

いつしかザザは、カイが自分に憎悪を向けている時に生を感じていた。

 

そんなカイと殺し合い、自分が殺せば、自分は更に生を感じられる。

 

自分の存在を証明できるのだと。

 

だが、今のカイにはそんな憎悪は感じられなかった。

 

ミトを殺そうとして、カイが庇いに来た時、ザザはカイが再びあの憎悪を向けてくれるのではと喜んでいた。

 

しかし、カイから憎悪は感じられなかった。

 

(向けろよ……あの皮膚が……焼け付くような……!強い憎悪を……!向けろ!)

 

とうとう不満は爆発し、ザザは《リニアー》を放った。

 

下級のソードスキルではあるが、ザザのレベルとシステム外スキル《スキルブースト》を以ってすれば、それは光速にも匹敵する速さとなる、が、カイは《リニアー》を躱した。

 

だが、ザザの狙いはカイではなかった。

 

カイの腕前ならザザ程度のリニアーを躱すのは容易い。

 

無論、それはザザも分かっていた。

 

ザザが狙っていたのはミトだった。

 

ミトはザザの攻撃が深く、視力がまだ回復しきっていなかった。

 

ザザは《リニアー》を使えば、カイが躱すと分かっていた。

 

そして、《リニアー》のスピードで一気にカイとの距離を取り、ミトへと向かう。

 

(この女だ……!この女を殺せば……アイツは……もう一度あの憎悪を……!あの燃える様な……憎悪と殺意を……向けてくれる!だから……死ね……女!)

 

ザザの刃がミトの心臓目掛け放たれる。

 

「おい」

 

その瞬間、ザザは背後で熱を感じた。

 

SAO内ではダンジョン内で熱を感じるのは二つのパターンがある。

 

1つは松明とかの照明アイテム。

 

もう1つはMobのブレス系の攻撃。

 

だが、照明アイテムは洞窟ダンジョンと言った暗いダンジョンで使用するもので、ザザ達《笑う棺桶(ラフィン・コフィン)》が根城にしているダンジョンは当てはまらない。

 

そして、ブレス系の攻撃をするMobも中型~大型と言った物だけ。

 

こんな低層ダンジョンでは、まず出現はしない。

 

だが、ザザは間違いなく熱を感じた。

 

ザザは思わず振り返った。

 

そこにはカイが居た。

 

「お前の事なんて、お見通しなんだよ。お前なら、あの時点で《リニアー》を使う選択なんて取らない。なら使う理由は俺との距離を取るため。そして、距離を取るのはミトを殺す為、だろ?」

 

そう言い、カイはザザへと刃を向ける。

 

ザザは確かに見た。

 

カイの刀身に炎が纏わり付くのを。

 

だが、SAOに魔法は存在しない、無論属性を付与させる付与魔法(エンチャント)もない(一部例外あり)。

 

それでも、ザザは炎を見た。

 

そして、カイのその瞳も。

 

カイは自分に刃を向けている。

 

だが、憎悪も殺意も無かった。

 

カイの瞳は、ザザを見ていなかった。

 

カイは、護るべき者(ミト)だけを見ていた。

 

「くっ………俺を……俺を見ろ……《紅蓮の剣豪》!」

 

「……悪いが、俺はもう見る者を間違えない。今の俺にはな………」

 

カイは優しい眼差しで、ザザの背後のミトを見つめる。

 

「ミト以外、何も見えてないんだよ」

 

その言葉を最後に、カイの一撃はザザの身体を斬った。

 

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