ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第34話 護衛

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐作戦》から二ヶ月近く経過した。

 

最前線は74層となり、アインクラッド全体の4分の3近くまで攻略が進んでいた。

 

「スイッチ!」

 

「はああああああ!!」

 

74層迷宮区で、カイとキリトは迷宮区攻略とレベリングに勤しんでいた。

 

「キリト、そろそろ帰ろうぜ」

 

時間も丁度良くカイは新しい愛刀“焔群”を鞘に収めつつ、キリトに言う。

 

「そうだな。帰るか」

 

キリトも“エリュシデータ”を背中の鞘に戻し賛成する。

 

「この調子なら、今週中には74層は突破できそうだな」

 

「できれば今年中に、80層までは到達したいけど………」

 

「75層、クォーターポイントか」

 

「ああ。25層、50層同様強力なボスモンスターが配置されてるはずだ」

 

二人して攻略のことを話しながら、迷宮区を出ると近くの茂みで何かが動くのにキリトが気付く。

 

キリトは立ち止まり、無言でカイに目配せする。

 

カイは頷き、ピックを取り出す。

 

キリトもピックを抜き、そのまま投擲スキル《シングルシュート》を茂みに向けて放つ。

 

すると、茂みの中から何かが飛び出し、その姿を露わにする。

 

その瞬間、待ち構えていたカイが同様に《シングルシュート》を打ち、ピックはその何かを仕留めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、キリト!カイ!なんだよこれは!?」

 

50層《アルゲート》にあるエギルの店で、本日の取得アイテムの売買をしてもらおうと手に入れたアイテム一覧をエギルに見せると、エギルはそう声を上げた。

 

「S級のレア食材、《ラグー・ラビットの肉》じゃねぇか!それも2つも!どんな幸運(LUCK)してんだよ!」

 

茂みから飛び出したのは《ラグー・ラビット》と呼ばれる滅多に遭遇しないレアモンスターで、倒すとS級食材アイテム《ラグー・ラビットの肉》をドロップする。

 

キリトとカイはそれを見事倒し、更には本来は1つしかドロップしないS級食材を2つもドロップした。

 

食べたことのないS級食材に、最初はカイもキリトも大喜びするもよくよく考えて二人共《料理》スキルを持っていない為、こうしてエギルの店で換金することにした。

 

「売っちまっていいのか?お前ら、金には困ってないだろ?自分らで食おうとは思わなかったのか?」

 

「そりゃ思ったさ」

 

「この先、また食えるかどうかも分からないしな」

 

「でも、俺もカイも《料理》スキルなんて取ってないし、それにS級食材を扱える程スキルを上げてる奴も心当たりが………」

 

「キリト君、カイ君」

 

その時。2人の背後から声が聞こえた。

 

振り向くと、そこにはアスナが居た。

 

アスナを見るなり、キリトはアスナの手を掴みこう言った。

 

「シェフ捕獲」

 

「な……なによ」

 

訝しげな顔になって後ずさるアスナだが、少し嬉しそうだ。

 

それが面白くないのかアスナの後ろに居る長髪を後ろで束ねた痩せた男が、キリトに殺気に満ちた視線を向けている。

 

「アスナ、確か《料理》スキル持ってたよな?今、いくつだ?」

 

「《料理》スキル?それなら、先週完全習得(コンプリート)したけど?」

 

「「なっ!?」」

 

非戦闘系スキルを完全習得(コンプリート)したと言うアスナに、カイもキリトも驚きを隠せずに居た。

 

それもそのはず、スキルの熟練度はスキルを使うことで遅々とした速度で上昇する。

 

戦闘職のプレイヤーなら、メインで使う武器の熟練度を完全習得(コンプリート)していてもおかしくはない。

 

だが、アスナは戦闘職のプレイヤーでありながら、非戦闘系スキルを完全習得(コンプリート)した。

 

それには途轍もない時間と情熱を費やしているのだ。

 

「その腕を見込んで頼みがある」

 

そう言うと、キリトはアスナにアイテムウィンドウにある《ラグー・ラビットの肉》を見せる。

 

「え!《ラグー・ラビットの肉》!?S級のレア食材じゃない!」

 

「取引しないか?こいつの調理をしてくれたら、一口「は・ん・ぶ・ん!」………分かったよ、取引成立。というワケだ。エギル、取引は中止だ」

 

「い、いいけどよ。なぁ、キリト、俺達ダチだよな?俺にも味見ぐらい……」 

 

「感想を800字以内で書いてきてやるよ」

 

「そ、そりゃあないだろ!」

 

嘆くエギルを他所に、カイ達は店を出る。

 

「なぁ、アスナ。今日、ミトは一緒じゃないのか?」

 

「うん。今日は、迷宮区で新人のレベリングに付き合ってるの。多分そろそろ終わるはずだけど………」

 

「そうか。キリト、俺ちょっとミトに用事あるから《ラグー・ラビットの肉》は2人で食ってくれ」

 

「え?いいのか?」

 

「俺はまたの機会に頼むよ。それじゃあアスナ」

 

カイはアスナに近寄り、こっそり耳打ちする。

 

「お膳立てしてやったんだから、少しは距離縮めろよ」

 

「なっ!?」

 

「それじゃあキリト、また後でな」

 

キリトとアスナに別れを告げ、カイは迷宮区へと再び向かった。

 

迷宮区に着くと、ちょうど《血盟騎士団》のパーティーが迷宮区から出てくるのが見えその先頭には見慣れた紫髪の鎌使いの姿があった。

 

「あ、カイ!」

 

ミトはカイの姿を見つけると嬉しそうに小走りで駆け寄ってくる。

 

「こんなところで会うなんて偶然ね。どうしたのよ?」

 

「ちょっとミトに用があってな」

 

「私に?」

 

「ああ、実は……」

 

そこまで話し、カイはまだ他の《血盟騎士団》の団員がいることを思い出す。

 

ミトも気づき、カイに少し待つように言って団員の方を振り返す。

 

「今日のレベリングは終了よ!各自解散!ポーションや結晶アイテムの使用数の報告は忘れない様に!」

 

ミトの指示に、団員たちは返事をし帰って行く。

 

「コユキ、貴女も帰っていいわよ」

 

ミトは、最後に残った少女にもそう言った。

 

「ダメですよ、ミト様!ミト様を《圏外》に!それも、素性の知らない不審者なんかと一緒に置いて行けません!」

 

コユキと呼ばれた少女は、カイを睨みつけそう言う。

 

「大丈夫よ。彼は私の友人だから。彼と二人で話があるから、今日の護衛はもういいわ」

 

「駄目ですよ!友人だからと油断したら最後、ミト様が男の毒牙に掛かってしまいます!それに、もしモンスターにでも襲われたらどうするんですか!」

 

「それなら大丈夫よ。カイは私よりもレベル高いし」

 

「なっ!?こんな男が、ミト様よりレベルが上!?そんなの信じられません!てか、貴方……よく見れば《寄生者(パラサイト)》野郎じゃないですか!」

 

コユキはカイを指差しそう言う。

 

「ミト様、こんな奴と一緒に居たらミト様の経歴に傷がついてしまいます!こんな《ビーター》の腰巾着なんかとの関わってはいけません!いくらレベルが高く経って、実力が伴ってなきゃ意味なんて「コユキ」

 

捲し立ててカイを侮辱するコユキに、ミトは静かに怒気を露わにする。

 

「それ以上の侮辱は許さないわよ。それに、私のプライベートにまで口を出す権利はないでしょ。分かったらもう帰りなさい。これは副団長命令よ」

 

「う…………分かりました………」

 

ミトに怒られ、コユキはしゅんと小さくなり歩き出す。

 

「……この寄生虫野郎が。ミト様に手を出したら、私が殺してやりますからね」

 

カイの横を通り過ぎる際に小声でそう言い、コユキは去って行った。

 

「ごめんね、カイ。嫌な思いさせて」

 

「いや、気にしないさ。それより、彼女は?」

 

「言った通り、私の護衛。アスナが少し前に、1人の時に嫌なことが何度も起きたって話を参謀職の耳に入ってね。それで、ギルドの幹部全員に護衛を一人付けることになったのよ。で、コユキは私の護衛に志願してきたの」

 

「そうだったのか。随分と慕われてるんだな」

 

「慕われるのはいいけど、ちょっと行き過ぎなのよ。正直な話、少し参ってるのよ」

 

「大変そうだな。じゃ、うまいものでも食おうぜ」

 

ようやく本題に入り、カイは笑う。

 

「今日、キリトとラグー・ラビットを見つけて肉が2つ手に入ったんだ」

 

「え!?《ラグー・ラビットの肉》が!S級のレア食材じゃない!それが2つだなんて……!」

 

「ラッキーだろ?それで、ミトも《料理》スキル持ってただろ?半分食べてもいいから、料理してもらおうかなって」

 

「任して!ついこの間、《料理》スキル完全習得(コンプリート)したから!」

 

「アスナに続いて、ミトも完全習得(コンプリート)してたのかよ」

 

「まぁね。それじゃあ、私の家に行こうか。どうせ、カイが拠点にしてる宿じゃ、ちゃんとした調理場所なんてないでしょ?」

 

「ごもっとも」

 

二人で笑い合い、カイはミトの案内の元、ミトの家へと向かった。

 

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