ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第36話 決闘

翌日の午前9時10分。

 

《強制起床アラーム》で目を覚ましたカイとキリトの二人は、1分もかからずに身支度を整え、最前線74層《カームデット》の転移門前でミトとアスナが来るのを待っていた。

 

「……来ないな」

 

「……あの二人にしては珍しいな」

 

カイとキリトが待ち合わせに指定した時間は9時。

 

現在は待ち合わせ時間を10分過ぎている。

 

「リアルなら、こんな時スマホのアプリか携帯ゲーム機で時間潰すんだけどな……」

 

「ゲーム内でゲームしたいとか、どんだけゲーム好きなんだよ」

 

そんなことを話ながら時間をつぶしていると、転移門が起動した。

 

ようやく来たかと思い、二人は転移門の方を見る。

 

「避けてぇぇぇぇぇぇ!!」「どいてぇぇぇぇぇぇ!!」

 

何か小言の一つでも言ってやろうかと思っていると、転移門から飛び出すように現れたミトとアスナはそう叫び、カイとキリト目掛け飛んできた。

 

「うわああああああ!!」

 

「なっ!ミトぉ!?」

 

キリトは行き成り現れたアスナに成すすべなく激突され、派手に地面を転がった。

 

カイは咄嗟に腕を広げ、ミトを抱き止めた。

 

「おっと、ミト大丈夫か?」

 

「う、うん、ごめん。ありがとう」

 

腕の中にいるミトにそう尋ねると。ミトは顔を赤くして離れる。

 

「いてて、ん?なんだ、これ?」

 

アスナに押し倒されたキリトは、運悪くアスナの胸部の鎧の下に手を入れており、アスナの胸を揉んでいた。

 

キリトはそれがなんの柔らかさなのか分からず、2度3度揉む。

 

「や、や―――――!」

 

「ぐぼあああああああああ!!」

 

アスナは絶叫し、キリトを《体術》スキルのおまけ付きで殴り飛ばした。

 

殴り飛ばされたキリトは、地面に数回叩き付けられ止まる。

 

キリトはゆっくりと起き上がり自分を殴った人の正体を見る。

 

アスナは胸を両手を交差させて庇い、キリトを睨みつけてる。

 

その状態を見てキリトは自分が何を揉んだのか理解した。

 

「お、おはよう」

 

冷や汗を流しながら片手を上げて挨拶をすると、アスナはキリトに殺気を込めた目で睨んだ。

 

その時、また転移門が起動し、誰かが来た。

 

アスナは慌てて立ち上がりキリトの後ろに隠れ、ミトも同様にカイの後ろに隠れた。

 

現れたのはクラディールとコユキだった。

 

クラディールとコユキの二人は、キリトとカイの後ろに隠れているアスナとミトを見て眉を寄せた。

 

「アスナ様!勝手なことをされては困ります!さぁ、ギルド本部にまで戻りましょう」

 

「ミト様もですよ!私と共に、ギルド本部まで行きますよ!」

 

「嫌よ!今日は活動日じゃないでしょ!」

 

「私もアスナも今日はオフの予定よ!ギルドに行く理由はないわ!」

 

「だいたい、なんでアンタ朝から家の前に張り込んでるのよ!?」

 

「こんなこともあろうかと、私は一か月前から《セルムブルク》で早朝より護衛の任に付いておりました!」

 

「そ……それ、団長の指示じゃないわよね?」

 

「私の任務はアスナ様の護衛!それは当然ご自宅までの護衛も」

 

「含まれないわよ!」

 

クラディールのストーカー発言に、アスナは嫌悪を露わにして怒鳴る。

 

「コユキ、私言ったわよね!貴女にプライベートにまで口出す権利はないって!」

 

「ミト様の言う通り、確かにそんな権利私にはありません。でも、考えてみると、私はミト様の護衛です!それはつまりミト様の名誉を守ることも含まれます!そんな、寄生者(パラサイト)野郎なんかと一緒に居ればミト様の名誉は確実に傷つきます!汚点になるんです!」

 

「いい加減にしなさい!そろそろ本気で怒るわよ!」

 

「ミト様が一般プレイヤーならまだしも、ミト様は《血盟騎士団》の第二副団長です!それならそれ相応の振る舞いや、付き合いをしてもらわないと困るのです!」

 

「私はギルドの広告塔じゃないのよ!」

 

ミトもコユキの態度に、本気で怒鳴り出す。

 

「とにかく、本部まで戻りますよ!」

 

「さぁ、ミト様。早く本部に!」

 

クラディールとコユキの二人は、アスナとミトの二人に手を伸ばす。

 

だが、二人を守る様にカイとキリトが動いた。

 

キリトはクラディールの腕を掴み、カイはミトを抱き寄せコユキから距離を取った。

 

「悪いな。お宅の副団長さん、今日は俺の貸切なんだ。安全は俺が責任持つ。だから、本部にはあんた1人で行ってくれ」

 

「貴様のような《ビーター》に、アスナ様の護衛が務まるか!私は栄光ある《血盟騎士団》の」

 

「アンタよりは務まるさ」

 

喧嘩腰になるキリトとクラディール。

 

「何の真似ですか?寄生者(パラサイト)風情が邪魔しないで貰えます?」

 

「悪いが俺が先約なんだ。ミトは今日1日、俺と過ごすんだよ」

 

「《ビーター》だけに留まらず、ミト様にまで寄生するつもりですか?」

 

「安心しろよ。少なくとも、俺は何処の誰かと違ってプライベートにまで寄生したりはしないさ」

 

カイもコユキ相手に一歩も引かず、ミトを守る。

 

「それだけ大口叩けるなら、それを証明する覚悟もあるんだろうな」

 

「寄生虫野郎が。どっちが上か思い知る必要がありそうですね」

 

クラディールとコユキは、メニューウィンドウを操作し、カイとキリトに決闘(デュエル)申請をしてきた。

 

「………いいのか?」

 

「ギルド内で問題になったり……」

 

「団長には私から言うわ」

 

「悪いけど、コユキにちょっとお灸据えてもらえる……」

 

アスナとミトからも許可をもらい、二人はデュエルを承諾した。

 

最初に、キリトとクラディールの二人が決闘(デュエル)を行った。

 

キリトとクラディールは距離を取り向かい合う。

 

クラディールは腰から両手剣を抜いて構え、キリトも背中から片手剣を抜く。

 

《血盟騎士団》所属のプレイヤーと《黒の剣士》キリトが闘うともあってギャラリーが集まり出す。

 

そして、二人が向かい合って暫くし、二人がほぼ同時に走り出し、スキルを発動した。

 

クラディールが発動したのは《アバランシュ》、キリトは《ソニックリープ》だ。

 

威力なら《アバランシュ》が上だ。

 

武器の攻撃同士がぶつかると威力が高い方に有利な判定が出される。

 

この場合、キリトの技は弾かれ、クラディールの攻撃によりキリトは負ける。

 

互いの武器が当たるとつんざくような金属音が響いた。

 

そして、キリトとクラディールは互いの位置を変えるように移動していた。

 

そして、二人の中間に何かが刺さった。

 

それは、剣先だった。

 

見ると、クラディールの両手剣は真ん中から折れていた。

 

システム外スキル《武器破壊(アームブラスト)

 

スキルの出始めか出終わりの攻撃判定が無いときにその武器の構造上、弱い位置・方向から強烈な打撃を当てることで起こる技だ。

 

「武器を変えて仕切り直すなら付き合うけど………もういいんじゃないか?」

 

クラディールは悔しそうに顔を歪め小声で「アイ・リザイン」と言った。

 

そして、キリトの勝利が決まった。

 

それと同時に歓声が起きた。

 

するとアスナがクラディールに話をした。

 

「クラディール、《血盟騎士団》第一副団長として命令します。本日を以て護衛の任を解任。別命があるまでギルド本部にて待機。以上」

 

その命令にクラディールは悔しそうにしながら、別の両手剣を装備し、転移門から転移した。

 

「ふん、これだから男は使えないんですよ」

 

すると、コユキは負けたクラディールを見下すようにそう言い、前に出る。

 

今度はカイとコユキの決闘(デュエル)だ。

 

カイは待機状態になっていたメニューウィンドウからコユキとの決闘(デュエル)を承諾する。

 

「今度は《紅蓮の剣豪》の決闘(デュエル)か」

 

「その2つ名、もう古いぞ。今は《焔の剣聖》だ」

 

ギャラリーから、そんな声が聞こえる。

 

カイの2つ名は、《紅蓮の剣豪》から《焔の剣聖》となっている。

 

笑う棺桶(ラフィン・コフィン)討伐作戦以降、カイの戦闘を見た者はカイの斬撃で焔を幻視()たという者がおり、また傍にいると熱を感じると言う者もおり、《紅蓮の剣豪》改め《焔の剣聖》と言う新しい2つ名になった。

 

(剣聖とか、明らかに名前負けしてるよな)

 

カイはそんなことを想いながら“焔群”の柄を握る。

 

コユキは片手剣を鞘から抜き構える。

 

「証明してやりますよ、そんな男より私の方が優れているっての。この決闘(デュエル)で私が勝てば、ミト様も目を覚ましてくれる。私だけが……ミト様を守れるんだってことを!」

 

何処か狂気を孕んだセリフを言うコユキ。

 

(こんな奴が、ミトの傍にいたのか……ミトも大変だな)

 

カイは背後のミトを見る。

 

ミトは、カイに対して頷く。

 

その目には、カイの勝利を確信する光があった。

 

(《剣聖》には名前負けしてるけど、ミトの期待を裏切る訳には行かないな)

 

軽く笑みを浮かべ、カイはコユキを見る。

 

カイの視線の先はコユキに向けられているが、カイが見ているものは決して変わらなかった。

 

決闘(デュエル)開始のカウントが徐々に減り、0になる。

 

コユキは《ウォーパル・ストライク》を発動し、一気にカイとの距離を詰める。

 

その速さに、カイは驚く。

 

(速いな……《攻略組》でもかなりの実力者だな)

 

コユキがミトの護衛を自負するだけあって、それなりの実力者だと思っていたカイだが、これなら最前線のボス戦でも活躍できるだろうと思った。

 

「(……でも)キリトやアスナよりは遅いな」

 

小声でそう呟く様にそう言い、カイは《ウォーパル・ストライク》を躱した。

 

「………え?」

 

《ウォーパル・ストライク》が躱されるとは思ってなかったらしく、コユキは驚く。

 

そして、カイは無防備となったコユキの懐から刀を向け、そのまま首に刃を当てる。

 

「この状態なら、どんなスキルを使っても俺の方が先に刀を振れる。アンタの負けだ」

 

状況は、カイが少しでも刀を振ればコユキの首を斬る状態。

 

《初撃決着》モードの為、最初に攻撃をヒットさせたら勝利するので、HPが全損する恐れもない。

 

つまり、その気になればカイはコユキを決闘(デュエル)で負かすことができる。

 

それをしないのは、コユキ自身に敗北を認めさせないとこの場が収まらないと思ったからだ。

 

「ふ、ふざけるなよ!」

 

するとコユキは怒鳴り出した。

 

「お前、答えろ!どんな卑怯な手を使った!」

 

「卑怯って……そんなことしてない」

 

「嘘だ!何かしらのチートを使ったんだ!でなきゃ、私が負けるなんてあり得ない!答えろよ!この卑怯者が!」

 

みっともなく喚き散らすコユキに、ギャラリーは眉根を寄せ始める。

 

「コユキ」

 

そんなコユキに、ミトが声を掛ける。

 

「ミト様!ミト様ならわかりますよね!この男が卑怯な手を使ったって!でなきゃ、私が負けた理由に説明が付かないって!」

 

「コユキ、残念でしょうけど貴女の負けよ」

 

「……え?」

 

「カイは卑怯な手なんか使ってない。純粋に、自身の実力で貴女の一撃を躱した。貴女と彼には、それだけのレベル差と実力差があるの。にも関わらず、それを認めず、相手を非難する行い………《血盟騎士団》の団員としての自覚が無さすぎるわ」

 

ミトからそう言われ、コユキは息を呑む。

 

「時には相手を認めることも大事よ。攻略組トップギルドに所属するプレイヤーなら、それを肝に銘じなさい」

 

そこで、ミトは一拍置き、コユキにある命令を下した。

 

「コユキ《血盟騎士団》第二副団長として命令します。本日を以て護衛の任を解任。別命があるまでギルド本部にて待機。以上」

 

その命令に、コユキはショックを受けたのか俯き、無言で片手剣を腰の鞘に収め、転移門から去って行った。

 

「ごめん、カイ。嫌な役割頼んじゃったわね」

 

「別にいいさ、これぐらいお安い御用だって」

 

刀を収めつつ、カイはミトに笑いかける。

 

「さて、あの子にああ言った手前、ミトにおんぶにだっこじゃ駄目だな。今日はいつもより頑張るとするかな」

 

「なら、今日1日前衛でもしてもらおうかしらね」

 

「いや、流石に1日ずっと前衛ちょっと……」

 

「冗談よ。前衛は交代でしましょう」

 

ミトとカイは笑い合い、キリトとアスナの二人と合流し迷宮区へと向かった。

 

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