ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第38話 青眼の悪魔

遅めの昼食を終え、食後のお茶を呑み一息入れてると、ガチャガチャと鎧を鳴らす音と足音、話し声が聞こえ、カイとキリトは音の聞こえた方を警戒する。

 

だが、現れた6人のパーティーはカイとキリトの知ったパーティーだった。

 

そのパーティーはギルド《風林火山》のパーティーで、その中には友人でギルドリーダーのクラインが居た。

 

「おおっ!キリトにカイじゃねぇか!」

 

2人の顔を見ると、クラインは笑顔で駆け寄り声を掛ける。

 

「まだ生きてたか、クライン」

 

「元気そうでなによりだ」

 

立ち上がり、カイとキリトもクラインに近寄る。

 

「相変わらずだな、お前らも。今日は、他にもツレがいる……のか……」

 

荷物を片付け立ち上がったミトとアスナを見て、クラインは固まった。

 

「おい、どうした?ラグってんのか?」

 

「しっかりしろって」

 

クラインの肩を揺らし声を掛けると、意識を取り戻したクラインは腰を直角に曲げ、右手を差し出した。

 

「は、初めまして!クライン、24歳独身!彼女募集ちゅっ!!?」

 

変なことを口走りそうになったクラインに、キリトは脇腹に強めの一撃を入れる。

 

その程度なら攻撃判定にはならず、キリトのカーソルはグリーンのままだ。

 

それを皮切りに、他の5人も駆け寄り、ミトとアスナに自己紹介を始める。

 

「ま、まぁ悪い連中じゃないから!」

 

「程よく仲良くしてやってくれ」

 

男どもを抑え、ミトとアスナにそう言うとクラインが復活し、カイとキリトの首根っこを摑まえる。

 

「おい、キリト!カイ!一体どういうことだよ!?お前らがあんな美少女と!」

 

「いや、これには訳が……」

 

「ミトと一緒に居るのにお前の許可が居るのかよ?」

 

尋問と言う名のじゃれ合いをする3人に、ミトとアスナも思わず笑顔になった。

 

「こんにちは、暫く彼らとパーティー組むのでよろしく」

 

「同じく。よろしくね」

 

2人の言葉にクライン達は、カイとキリトに羨望と嫉妬の眼差しを向ける。

 

そんな時、また新たな足音と鎧の音が聞こえ、そちらに視線を移す。

 

黒鉄色の鎧に濃緑色の戦闘服。

 

その戦闘服は、《アインクラッド解放軍》の者だった。

 

「軍の連中だ」

 

「第1層を支配してる連中がなんで?」

 

「25層以降攻略に参加せず、組織強化をしてる連中がどうして最前線に?」

 

《風林火山》のメンバーが後ろでそう言う中、《軍》のパーティーは安全エリアへと入る。

 

「休め!」

 

先頭に立っていたリーダーらしき男が号令をかけると、全員がへたり込むように座る。

 

リーダーは前を向きカイ達を見る。

 

「私は《アインクラッド解放軍》所属、コーバッツ中佐だ」

 

「キリト、こっちは相棒のカイだ」 

 

「うむ、君たちはもうこの先まで攻略はしているのか?」

 

「ああ、ボス部屋までマッピングしてある」

 

「では、そのマップデータを提供してもらいたい」

 

「提供だと!?テメー、マッピングする苦労が分かってんのか!?」

 

傲慢な態度のコーバッツにクラインが声を上げた。

 

「我々は君ら一般プレイヤー解放のために戦っている!諸君が協力するのは当然の義務である!」

 

「何が解放だ!25層以降、攻略に参加しなかった分際でよく言えたな!」

 

「落ち着け、クライン」

 

一触即発になりそうだった空気をキリトが制した。

 

「どうせ、街に戻ったら公開する情報だ。構わない」

 

「俺もキリトに賛成だ。欲しけりゃくれてやるよ」

 

「おいおい、そりゃ人が良すぎるぜ、キリト、カイ!」

 

「マップデータで儲ける気は無い」

 

クラインを宥めてキリトは、マップデータを渡した。

 

「協力感謝する」

 

「ボスに挑むならやめといた方がいい」

 

「それは私が判断する」

 

キリトの言葉に耳も貸さずにコーバッツは部下達を立ち上がらせ、先に進んだ。

 

「大丈夫なのかよ、あの連中」 

 

「ぶっつけでボスに挑むことはないと思うけど」

 

「でも、あの噂もあるし……」

 

「噂?どんなだ?」

 

ミトが噂と言い、気になりカイが尋ねる。

 

「《軍》が方針変更して、再び攻略を行うって噂。資材の蓄積に現を抜かしてる所為で、末端のプレイヤーから不満の声が上がってるから、戦果を挙げてその不満を消そうとしてるらしいのよ」

 

「だからってボスに挑むとは思わないが………」

 

「なら、一応確認だけするか?」

 

キリトの提案にカイが同意し、ミト、アスナ、クライン、そして《風林火山》のメンバーも賛同した。

 

途中何度がモンスターとバトルになり、ボス部屋付近に着くのは安全エリアを出てから30分後だった。

 

「《軍》の連中とはすれ違わなかったな。この先はボス部屋だろ?なら、転移結晶で帰っちまったんじゃねぇか?」

 

「それならいいんだが、あの噂を聞いた後だとな……」

 

「あああぁぁぁぁぁぁ………!」

 

その時、ボス部屋のある方向から悲鳴が聞こえた。

 

「今の悲鳴って!」

 

「まさか……!」

 

「カイ!行くぞ!」

 

「ああ!」

 

キリトとカイが走り出し、続いてミトとアスナが走り出す。

 

ボス部屋に向かうと、ボス部屋の扉は開いており、中で《軍》のプレイヤーが戦っていた。

 

「おい!大丈夫か!」

 

ボスである《グリームアイズ》は右手に握った斬馬刀を振り回し、《軍》を蹴散らす。

 

人数を確認すると先ほどより二人少ない。

 

「何をしてる!早く転移結晶を使え!」

 

「だ、ダメだ!クリスタルが使えない!」

 

「な…!?」

 

今までにないボス部屋の仕様に全員が息を呑んだ。

 

「我々《解放軍》に撤退の二文字は有り得ない!戦え、戦うんだ!」

 

「バカ野郎!」

 

「おい、どうなってんだよ!」

 

クラインたちも遅れて辿り着き、キリトが簡単に状況を伝えるとクラインは顔を歪めた。

 

「どうにかできないのかよ!」

 

今ここでカイ達が切り込めば退路は開ける。

 

だが、下手すれば誰かが死ぬ。

 

「全員突撃!」

 

コーバッツがHPが限界まで低い二人を下がらせ、残りの八人で四人に列を作り突撃をするよう指示を出す。

 

「やめろ!」

 

あまりにも無謀な攻撃に、キリトが叫んだ。

 

八人で一斉に飛びかかれば満足にソードスキルを発動することもできない。 

 

本来なら、一人ずつダメージを与え、スイッチして戦うべきだ。

 

《グリームアイズ》は、突撃してきた《軍》のプレイヤー目掛け、息を吐いた。

 

息にもダメージ判定があるらしく、八人が怯む。

 

そこに、すかさず《グリームアイズ》の斬馬刀が突き立てられる。 

 

《軍》のプレイヤーは吹き飛び、地面に転がる。

 

そして、今度は斬馬刀を振り上げるように構える。

 

刃は、倒れているコーバッツに向けられていた。

 

「ふっ!」

 

その瞬間、カイは飛び出し《紫電一閃》を使い、《グリームアイズ》の斬馬刀の軌道をずらした。

 

お陰で、斬馬刀はコーバッツに当たるスレスレで地面に刺さった。

 

「早く撤退しろ!」

 

「ふ、ふざけるな!そんなことが出来るか!我々は「仲間を死なせるつもりか!それが、ディアベルの教えか!」っ!?」

 

ディアベルの名に、コーバッツが反応する。

 

カイはコーバッツの事を知っていた。

 

コーバッツは、ディアベルが《希望の騎士団(KoH)》を立ち上げた時の最初の教え子、所謂ディアベル塾第1期生だ。

 

「さっさと撤退しろ!俺1人で抑えるのも限界があるんだ!」

 

振り下ろされる斬馬刀を、“焔群”で受け止めつつ、カイが叫ぶ。

 

「くっ……!動ける者は動けぬ者を抱えろ!撤退だ!」

 

コーバッツは撤退の指示を出し、僅かに動けるプレイヤーが動けないプレイヤーを抱え動き出す。

 

だが、筋力値の問題なのか将又恐怖で力が入らないのか、上手くいかなかった。

 

(耐えろ……!俺が潰れたら、《軍》の連中がやられる……!耐えるんだ……!)

 

腕に力を籠め、斬馬刀を抑え続けるも、とうとう限界が来てカイは膝を突いた。

 

(ここ……までか……!)

 

死を覚悟した、その時だった。

 

「はあああああああああ!!」

 

ミトが下から鎌を振り上げ、斬馬刀を弾き飛ばした。

 

「ミト!」

 

「ごめん!すぐに動けなかった!大丈夫!?」

 

「ああ、なんとかな」

 

立ち上がり、辺りを見渡すとキリト、アスナ、クライン、《風林火山》のメンバーも来て

手伝っていた。

 

《風林火山》のメンバーは動けない《軍》のメンバーの撤退を手伝っており、カイ達は数人で《グリームアイズ》を撤退完了まで相手にしないといけない。

 

だが、《グリームアイズ》の強さではカイ達に死人が出るのは分かり切っていた。

 

(出し惜しみする暇はないか……!)

 

カイはある決断をし、キリトに叫ぶ。

 

「キリト、アレを使うぞ!」

 

「アレをか!でも、今は……!」

 

「このままじゃ死人が出る!俺はやるぞ!」

 

「カイ………分かった!アスナ、ミト、クライン!頼む、10秒だけ持ち堪えてくれ!」

 

キリトの言葉にアスナ、ミト、クラインは頷き、《グリームアイズ》の攻撃を防ぎ続ける。

 

その間、キリトは素早くメニューウィンドウを操作する。

 

カイもメニューウィンドウを操作するが、キリトよりも早く操作を終える。

 

「よし!ミト、アスナ、クライン!下がれ!」

 

カイの言葉を合図に、3人が下がる。

 

カイは刀を構え、一気に走り出す。

 

《グリームアイズ》はカイに向けて(ブレス)攻撃をする。

 

青白い輝きを持つ(ブレス)が、カイを包む。

 

「カイっ!?」

 

カイがやられたのではと思い、ミトが声を上げる。

 

その瞬間、青白い噴気を割く様に業火を彷彿させる焔が上がった。

 

「え?」

 

その光景にミトは驚いた。

 

そして、焔は噴気を掻き消しその中から、カイが現れた。

 

「これでも……食らえ!」

 

カイの刀が赤いライトエフェクトを纏う。

 

そのライトエフェクトは徐々に大きくなり、そして、焔へと変わった。

 

「う……そ……」

 

ミトは思わずそう呟いた。

 

ミトだけじゃなく、アスナもクラインも嘘だと思った。

 

カイの2つ名《焔の剣聖》は、カイの斬撃で焔を幻視し、熱を感じたことから付いた。

 

決して本当に焔が出てるわけでなく、カイの気迫と愛刀“焔群”の透き通る様な赤い刀身により、そう見えるだけだ。

 

だが、紛れもなく今のカイの刀には焔が纏わり付いていた。

 

カイの焔を纏った斬撃は《グリームアイズ》の腹を深く抉る様に斬りつける。

 

『GYAOOOOOOOOOOOO!!』

 

痛みを感じてるのか、《グリームアイズ》が絶叫を上げる。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

カイは雄たけびを上げ、焔の斬撃で《グリームアイズ》を斬り上げる。

 

《グリームアイズ》が大きく仰け反る。

 

「カイ、いいぞ!」

 

そこで準備を終え、タイミングを計っていたキリトが飛び出す。

 

「スイッチ!」

 

仰け反った状態でも、《グリームアイズ》は斬馬刀を突き出すように、キリトに攻撃を仕掛ける。

 

キリトはその攻撃を右手に握った“エリュシデータ”で軌道をずらし、そして、背中に現れたもう一つの剣“ダークリパルサー”を、抜きざまに切り上げた。

 

クリーンヒットの為、《グリームアイズ》のHPが目に見えて減少する。

 

本来、右手と左手に片手剣を握った状態だとイレギュラー装備状態となってソードスキルは発動しない。

 

「スターバースト……………ストリーム!」

 

だが、キリトの両手に握られた剣はライトエフェクトを纏っていた。

 

発動されたソードスキルから幾つもの斬撃が繰り出され、星屑の様に飛び散るエフェクトフラッシュが空間を支配する。

 

そして、最後の一撃が《グリームアイズ》の胸の中央を貫き、《グリームアイズ》のHPは消し飛び、体はポリゴンの欠片になって消えた。

 

「………終わった……のか?」

 

キリトはそう呟き、その場に倒れこんだ。

 

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