ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第39話 ユニークスキル

キリトは倒れて数秒で目を開けた。

 

「いててて………」

 

「バカッ………!むちゃして…!」

 

起き上がったキリトにアスナは凄い勢いで首にしがみついた。

 

「…あんまり締め付けると、俺のHPがなくなるぞ」

 

冗談っぽく言うキリトにアスナは怒ったようにハイ・ポーションを口に突っ込む。

 

「カイも早く回復して!(ブレス)攻撃、直撃だったでしょ!」

 

「ああ、分かってる」

 

カイもミトにハイ・ポーションを渡され、HPを回復させる。

 

「生き残った連中の回復は済ませたが、2人死んだ」

 

「そうか、ボス戦で犠牲者が出たのは67層以来だな」

 

「こんなのが攻略っていえるかよ。死んじまったら何もならないだろうが」

 

そう言ってクラインは深いため息を吐く。

 

「そりゃそうと、キリト、先のはなんだ!?カイも、刀が焔を纏ってたしよ!」

 

「言わなきゃダメか?」

 

「秘密って訳にはいかないか?」

 

「当たり前だろ!」

 

「………エクストラスキルだよ。《二刀流》」

 

「……同じくエクストラスキル《業火刀》だ」

 

どよめきが《軍》の生き残りとクライン達の間に流れる。

 

「しゅ、出現条件は!?」

 

「分かってたらもう公開してる」

 

「俺だってそうだ」

 

「てか、《二刀流》はなんとなくどんなスキルか分かるけどよ。《業火刀》ってどんなスキルなんだ?」

 

「見ての通り、斬撃に焔を纏わせる。《業火刀》専用ソードスキルとソードスキルの威力上昇、あと炎傷状態の付与と継続ダメージ。それから、亜人型Mobもとい対人特攻だな」

 

「対人特攻?」

 

「ああ。4足歩行型Mobより亜人型Mobの方が与ダメージ量が大きかったんだ。試しにキリトとデュエルした時も、通常よりも与ダメージが大きかった。まぁ、絶対とは言い切れないけど、多分そんな感じのスキルだ」

 

クラインにそう言うと、クラインは少し考えて口を開く。

 

「《二刀流》に《業火刀》……出現条件も分からないとなると、それって《ユニークスキル》なんじゃねぇのか?」

 

「恐らくな」

 

「それにしても水臭ぇじゃねぇかよ。こんな必殺技隠してるなんてよ」

 

「出し方が分かってれば隠したりしないさ。だけど、まったく心当たりがないんだ」

 

「それに、こんなレアスキル持ってるなんて知られたら、しつこく聞かれたり……いろいろあるだろ…」

 

「ネットゲーマーは嫉妬深いからな。俺は人間出来てるからともかく、妬み嫉みはあるだろう、それに……」

 

クラインはそこで言葉を噤み、キリトにしっかりと未だに抱き付いてるアスナと、カイの事が心配なのかカイのコートの袖を不安げに掴んでいるミトを意味ありげに見やり、にやにやと笑った。

 

「……まぁ、苦労も修行のうちと思って頑張りたまえ、若者よ」

 

そう言って軽くキリトとカイの肩を叩き《軍》の方を向く。

 

「私は……私は何をしてたんだ………部下を二人も死なせて……これでは……ディアベル殿に顔向けができん!」

 

コーバッツは蹲り、涙を流して自分の行いを悔やんでいた。

 

「なぁ、コーバッツよ。辛い気持ちは分かるが、悔やんでも仕方ないだろ。悔やんでも、死んだ奴らは戻っては来ない。生き残った俺たちは死んでいった奴らの分まで生きて戦う義務があるんだ!しっかりしろ!」

 

悔やむコーバッツにクラインはそう言うが、コーバッツは何も言わない。

 

「今のコーバッツに、俺たちの言葉は届かない」

 

「でもよぉ、放って置いたら自殺しちまいそうだぞ。なんとかしねぇと」

 

「安心しろ。適任を呼んである」

 

カイがそう言うと、ボス部屋入り口から誰かが現れた。

 

「カイ!」

 

「ディアベル、こっちだ!」

 

カイは、万が一のことを考えコーバッツの説得役にディアベルに連絡を取り、来てもらう様に頼んでいた。

 

「すまない、説得のつもりだったんだがちょっと状況が変わった」

 

「どういうことだ?」

 

カイはここまでの出来事をディアベルに話し、ディアベルは無言で聞き続けた。

 

「なるほど、状況は分かった。俺に任せてくれ」

 

そう言うと、ディアベルはコーバッツに近寄り、膝を付く。

 

「久しぶりだな、コーバッツ」

 

「ディアベル殿……申し訳ありません。私は、貴方の教え子として、栄えあるディアベル塾第1期生として、貴方から教わった騎士道を胸に《軍》での活躍を誓いました。だが、私は愚かでした!私は騎士としてあるまじき行動をした!その所為で部下を2人も死なせた!私は、ディアベル塾の看板に泥を塗ったのです!」

 

コーバッツは涙を流し、ディアベルに謝罪をした。

 

「それどころか、《軍》が腐敗していくのに気づかなかった。……このボス攻略で見事勝利すれば、元の《軍》に戻れるかと期待したが………はは、結局私は騎士にはなれなかったのですな」

 

全てを諦めたかのようにコーバッツは笑った。

 

「いや、そんなことはない」

 

そんなコーバッツに、ディアベルが声を掛ける。

 

「コーバッツ、例え戦果なくとも、君にはできることがある」

 

「ですが……私1人足掻いた所で…………」

 

「1人じゃ……ないですよ」

 

すると、後ろに居たコーバッツの部下の1人がそう言った。

 

「俺もいます。俺も、かつての《軍》を取り戻したいんです!」

 

「そうですよ!俺、隊長に付いて行きます」

 

「俺もです!」

 

「自分も!」

 

「お前たち…………」

 

口々にコーバッツに着いて行くと言った《軍》のメンバーに、コーバッツは驚きを隠せなかった。

 

「隊長。隊長は忘れているかもしれませんが、ここにいる俺たち全員、かつて隊長に命を救われた者です」

 

「な、に……?」

 

「隊長は当時から人助けをしてましたからね。隊長にとって、俺たちは助けたプレイヤーの1人かもしれません。でも、俺たちにとっては命の恩人なんです」

 

「隊長は忘れても、俺たちは忘れません」

 

「「「「「「「「「《人道の騎士》コーバッツ殿を」」」」」」」」」

 

かつて呼ばれていた自身の異名。

 

《アインクラッド解放戦線》が《アインクラッド解放軍》となる前の事が、コーバッツの頭に浮かび上がる。

 

「コーバッツ。君は、1人じゃない。………死んでしまった2人もきっと君が再び立ち上がるのを願っているはずだ。だから、もう一度頑張るんだ」

 

「…………《人道の騎士》、か。もう錆びれた名だな…………だが、その名もまだ使えるだろう」

 

そう言い、コーバッツは立ち上がった。

 

「私は、今の《軍》に反旗を翻すことを宣言する!よって、《アインクラッド解放軍》コーバッツ隊は現時刻を以て解散とする!お前たち、私と共に来る覚悟はあるか?」

 

「勿論です!俺たちは、そのためにここにいるんですから!」

 

「一生お供します!!」

 

「隊長なら、いえ、《人道の騎士》様ならいつかそう言うと信じていました!」

 

「…そうか………なら、これからはお前たちは私の部下ではなく、友だ!共に、《軍》を、いや《アインクラッド解放戦線》を取り戻す!」

 

「「「「「「「おおおおおおおおおおお!」」」」」」」

 

「手始めにギルドに戻り、宣戦布告をする!」

 

「「「「「「「おおおおおおおおおおお!」」」」」」」

 

そして、部下だった者たちは回廊に出て次々と転移結晶で転移していった。

 

「ディアベル殿、いえ、ディアベルさん。お陰で目が覚めました。錆び付いた名ではありますが、《人道の騎士》として今一度立ち上がります」

 

「ああ、頑張ってくれ、コーバッツ。何かあれば遠慮なく行ってくれ、手を貸すよ。騎士としてね」

 

「はい!」

 

ディアベルと話し終え、今度はカイの方を向く。

 

「貴方がディアベルさんの言ってたカイさんだったんですね。失礼な言動申し訳ありません」

 

「俺は気にしてないさ。それより、これから大変だと思う。何かあったら言ってくれ。俺も手を貸す」

 

「ありがとうございます」

 

最後に一礼し、コーバッツも転移結晶で去って行った。

 

「………どうやら、一件落着みたいだな」

 

「そうだな」

 

「それじゃあ、俺達は75層の転移門をアクティベートして行くけど、お前はどうする?」

 

「任せていいか?俺はもうヘトヘトだ」

 

「分かった!ゆっくり休めよ」

 

そう言ってクラインはギルドメンバーと一緒に次の層に続く扉を開けた。

 

「じゃあ、俺も帰るとするよ」

 

「ああ。来てくれて助かった、ディアベル」

 

「礼には及ばないさ。しかし、《軍》の腐敗。思った以上に酷いことになってるんだな。早急に事を進めないとな」

 

「なにかあるのか?」

 

「いや、こっちの話さ。それじゃあな!」

 

そう言いディアベルも去って行った。

 

そして、フロアボスの居なくなった部屋にはカイとミト、キリトとアスナの4人だけが残された。

 

「俺たちも帰るか。キリトは……暫くそのままだな」

 

「みたいだ」

 

「じゃあ、先帰ってるからな」

 

キリトに手を振って、カイは未だに袖の裾を掴んでるミトと共に部屋の外に出る。

 

そこから転移結晶で転移しようとしたら、ミトがカイに背中から抱き付いた。

 

「ミト?」

 

「怖かった……」

 

ミトは体を震わせて、カイに言う。

 

「カイがボスの(ブレス)に直撃した時、カイが死んだんじゃないかって思って私………」

 

「………やれやれ、俺はミトに心配を掛ける天才だな。ごめんな」

 

カイは体の向きを変え、ミトを正面から抱きしめ、頭を撫でる。

 

「………カイ。私、ギルド休む」

 

「え?」

 

「休んで、カイの傍にいる。いいよね?」

 

「………むしろ、俺の方から頼むよ。傍に居てくれ」

 

「……うん」

 




㊗コーバッツに二つ名贈与
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