「ミト、どうしてここに………」
「アスナが教えてくれたの。キリトが訓練に行って、一緒に行った人たちの反応が消えたから何かが起きたって。それで、カイの事を追ったら、55層じゃなくて45層に居たからそれで」
そう言い、ミトはカイを優しく下ろした。
そして、倒れているコユキの方を見て、目つきを鋭くさせる。
「コユキ、これは一体何の真似かしら?」
コユキはゆっくりと立ち上がって言う。
「ミト様………私は、ミト様のためにやってんですよ。ミト様に這い寄る薄汚い寄生虫の駆除を。だって、ミト様はそんな奴より、私と居るべきなんです。私とずっと一緒に………!愛してるんです、ミト様………!」
「そう………貴女が私にそう言う感情を向けているのは分かってた。でも、私は貴女の想いに応えれないわ。それにね…………」
ミトは鎌を構え、言う。
「カイを殺そうとした貴女を、赦せるほど私は優しくないの」
そう言い、走り出しコユキに攻撃を仕掛ける。
ミトの攻撃は、コユキに当たりコユキのHPは一気に半分にまで落ち、その場に尻餅をついた。
「え?ミト様?」
コユキは何故自分が攻撃されるのか分からないらしく、ミトを見る。
「はは、ヤダなぁミト様。こんな危ない冗談は止めてくださいよ。そうだ、ミト様。覚えてますか?このダンジョン、私とミト様が初めて出会って場所なんですよ。あの時、ミト様が私を助けてくれた。あの時から、私とミト様は一緒になる運命だったんですよ?ミト様にもわかりますよね?」
「…………コユキ、悪いけどあれは運命じゃない。ただの偶然よ。偶然、未処理のトラップがないか私に団長が巡回の指示を出して、そこにトラップの囮にされた貴女が居た。ただそれだけのこと。それに………貴女の気持ちなんて分かりたくないわ。自分の事しか考えない気持ちなんてね」
ミトからの拒絶。
それがショックだったのか、コユキは固まった。
「でも、まだ貴女には償いのチャンスがあるわ。大人しく《黒鉄宮》の牢獄に行って反省を」
「………嘘だ」
「……コユキ?」
「噓だ嘘だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ嘘だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ…………嘘だ!」
コユキは勢いよく立ち上がり、ミトに攻撃をした。
「ぐっ!?」
「ミト様は…………そんなこと言わない!ミト様は優しいんだ!私を嫌いになるはずなんて無いんだ!あり得ないんだ!ミト様は………私を受け入れてくれるんだ!私を、愛してくれるんだ!」
子供の様に癇癪を起し、剣を振り回すコユキ。
「コユキ、落ち着きなさい!これ以上は!」
「私を愛してくれないミト様なんて、ミト様じゃない!偽物だ!本物を返せよ!偽物野郎!」
コユキの攻撃が、ミトの鎌を弾き飛ばす。
「死ね、偽物!」
コユキの剣が、ミトの心臓に向けられる。
その瞬間、カイは動き、コユキの剣を防いだ。
そして、そのままコユキの剣を弾き、コユキを斬り飛ばした。
《業火刀スキル》、カウンター技《残月》。
その一撃で、コユキのHPはレッドになり、残り数ドットで止まった。
《残月》はカウンター技であると同時に、急所に当たったりクリティカルが発生しても相手のHPを必ず残す技でもある。
それにより、コユキのHPは無くならなかった。
動けなくなったコユキをロープで拘束する。
「ミト、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。それにしても………」
ミトは縛られ気を失ってるコユキを見る。
「私の所為だ」
「ミト、それは違う」
「ううん、私の所為だよ。私はコユキの気持ちに気づいてた。でも、私はそれを無視した。歪んだ愛情であっても慕われるのが嬉しかったから、拒絶して、関係が壊れるのが怖かった。コユキの事、自分の事しか考えてないって言ったけど、私も自分の事しか考えて無かった。その所為で、カイが危険な目にあった………!」
ミトは涙を流して言う。
「私、カイの傍に居られない……居る資格なんてないよ………!」
「ミト……」
泣くミトを、カイは抱きしめた。
「カルマ回復クエスト受けた時の事、憶えてるか?あの時、ミトが俺に言った言葉。ミトは忘れてくれって言ったけど、俺はずっと覚えてるんだ」
「俺はミトとならずっと一緒に居たい。ミトだから、傍に居て欲しい」
ミトの顔を見ながらカイは言う。
「ミト、好きだ」
「あっ……!」
カイの告白に、ミトは驚いた。
そして、先ほどまで泣いていたのに、今度は顔を赤くした。
カイはミトの返事を待たず、そのまま顔を近づけ、ミトにキスをした。
兎に角ミトの事が愛おしく、ミトを自分の物だと主張したかった。
行き成りのキスにミトは驚くも、すぐさまそのキスを受け入れた。
今のミトの視界には、カイからのハラスメント行為により、《ハラスメント防止コード》発動を促すシステムメッセージが表示されている。
だが、そんな物お構いなしにミトはカイとのキスを味わう。
時間にして僅か数秒程のキス。
しかし、カイとミトには何分にも何時間にも感じるほどのキスだった。
2人の唇が離れる。
恥ずかしさが一気に込み上げ、ミトはカイの胸に顔を埋める。
カイはミトの頭を抱えるように抱きしめ、耳元で囁く様に言う。
「なぁ、ミト。今夜、一緒に居てもいいか?」
カイの言葉に、ミトは無言で頷いた。
その後、応援に駆け付けた《血盟騎士団》によってコユキは、《黒鉄宮》の牢獄へと送られ、カイとミトは事の顛末をヒースクリフへと報告した。
その際、キリトとアスナも同席し、キリトの口からクラディールが《
最も、クラディールが死んだ今、真相は分からずじまいだ。
そして、4人はギルドへの不信を理由にカイとキリトは退団、ミトとアスナは一時退団を申請した。
ヒースクリフは暫し黙考をし、そして退団を了承した。
だが、その時ヒースクリフは「君たちはすぐに戦場に戻ってくるだろう」と言って、謎の微笑を浮かべていた。
その後、キリトはアスナと共に手を繋いでアスナの家へと向かい、カイもミトと手を繋いでミトの家へと向かった。
家へ着くなりミトはすぐさま私服に着替え、料理を始めた。
そんな様子に、カイは「少しぐらい休んでもいいのに」と思いながらも、料理をしているミトの姿を見つめた。
料理が出来て食事をすると、ミトは「やっぱり《ラグー・ラビットの肉》には敵わないわね」と苦笑していたが、カイは十分だと言って料理を堪能した。
食後にお茶を飲み、適当な雑談をしていると時刻は21時になっていた。
時間に気づくと、ミトは急に黙り出し、カイはどうしたのかと見つめる。
「よし」
すると、ミトは意を決したのか立ち上がり、部屋の電気を消した。
「み、ミト?」
ミトの急な行動に、カイは驚く。
すると、今度は急に服を解除して、ミトは下着姿となった。
「なっ!?」
これまた急な行動に、カイは驚き椅子から転げ落ちそうになった。
「あの、さ……あんまりじろじろ見られると恥ずかしいんだけど……」
「わ、悪い!」
慌ててそっぽを向くカイ。
「カイも……準備してよ……私だけなんか馬鹿みたいじゃん……」
ミトのその言葉と、自分がミトを抱きしめた時、何と言ったかカイは思い出し、ようやくミトの行動がなんなのか理解した。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「え?」
「いや、その……そんなつもり、一切なかったんだ………」
「………は?」
顔を赤くしていたミトは一瞬で、真顔となった。
「本当にただ一緒に居たいなって思っただけで、そういうことするつもりは…………」
「…………そう言う事は」
「……はい?」
「思っても口に出すな!」
羞恥とは違う、怒りで顔を赤くしたミトからの全力の正拳突きがカイに直撃する。
犯罪防止コードによって、拳はカイには届かなかったがカイは思いっきりビビっていた。
「わ、悪い!てか、そう言う事ってできるのか?」
「……本当に知らないのね」
ミトは呆れた様に、自分の身体を手で隠しながら言う。
「オプションメニューの一番深い所に、《倫理コード解除設定》ってのがあって、それを解除すると出来るの」
「そ、そうだったのか………」
SAOの知らないシステムに、カイは少しだけ感心し頭を掻く。
「…………なぁ、ミト。俺なんかで、いいのか?」
「………うん」
カイの問いに、ミトは静かに答えた。
「………分かった」
カイはそう言うと、オプションメニューから《倫理コード》を解除した。
その行動に、ミトは再び顔を赤くし、ドキッとした。
「ミト」
優しくミトの名を呼び、近付き、カイはもう一度キスをした。
今度は《倫理コード》を解除していた為、ミトの視界に煩わしい《ハラスメント防止コード》発動を促すシステムメッセージは現れなかった。
「ちょ、ちょっと待って!」
キスを終えると、ミトは慌てた様子でカイから離れる。
「そのさ……勢いで脱いじゃったけど、ここじゃなくて寝室でお願い……」
「………ああ、分かった」
カイはミトをお姫様抱っこで抱え、寝室へと移動した。
暫く経って、一線を越えたカイとミトは同じベッドで横になっていた。
ミトはカイの隣で静かに寝息を立てており、カイはそんなミトを見ていた。
ミトの髪が、ミトの口に入りそうだったのでカイはミトの髪を払い除ける。
すると、ミトは目を開けた。
「悪い、起こしちゃったか?」
「んん、平気」
そう言い、ミトは体を起こす。
カイも体を起こしミトを見る。
「なぁ、ミト。なんか色々飛ばし気味になっちゃったけど、俺、まだミトからの返事、聞いてないんだけど」
「……あ」
カイはミトに好きだと言ったが、ミトはそれに対しての返事をしてなかった。
「ここまでしといて、今更聞くのは反則じゃない?」
「だとしても、ミトの口から直接聞きたい。ダメか?」
「馬鹿………好きだよ、私もカイの事、大好き」
「ありがとう、ミト」
ミトにお礼を言い、カイはミトを抱き寄せる。
「なぁ、ミト。少しだけでいいから、前線から離れないか?」
「え?」
「結構前に、キリトと22層の探索した時、東西エリアで森と湖に囲まれた良い場所を見つけたんだ。モンスターも出なくて、割と拠点にしてる中層プレイヤーも多いんだ。そこに、いくつかログキャビンが売りに出されてたからさ、そこで一緒に住もう。それと………」
「………それと?」
カイが次に何を言うのか、ミトには察しが付いていた。
にやにやとした顔でそう聞くミトに、カイは笑った。
「ミト、お前分かってて聞いてるだろ?反則じゃないか?」
「さっきの仕返しよ。それで………続きは?」
「………ミト、結婚しよう」
「うん、喜んで」
カイからのプロポーズに、ミトはとびっきりの笑顔でそう答えた。