ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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今回の話は、劇場版ソードアート・オンラインプログレッシブでの来場者特典のボイスドラマの話となります。

少し話が変わっていますが、ご了承ください


第45話 ビーストテイマーになる少女と剣聖の弟子になる少年

良い事と悪い事は交互に起きる。

 

何かの本で読んだのか、誰かから聞いたのか憶えて無いがシリカはいい事や悪い事が起きた時は、自分にそう言い聞かせて来た。

 

そんなシリカにビックリするような知らせが届いたのは、SAOがデスゲームとなる1ヵ月前の事だった。

 

抽選で1名にナーヴギアが当たる懸賞に、何となく応募したらそれに当選したのだ。

 

当選通知のメールが来た時は、詐欺が何かと疑い何度も文面を読み返し、ようやく本当なのだと知った時は、飛び上がるほど喜んだ。

 

貯めていたお年玉でSAOのソフトも購入し、シリカは仮想世界へと足を踏み込んだ。

 

だが、良い事の後と悪い事は交互に起きる。

 

そんなジンクスが襲い掛かった。

 

突如、茅場明彦からSAOからのログアウトの不可と、HPの全損は死を意味すると告げられた時、シリカは「そんな」や「まさか」と言った言葉がより、「やっぱり」と言う言葉が浮かんだ。

 

自分のジンクスの所為で、10000人ものプレイヤーがデスゲームに巻き込まれた。

 

そんな訳もないのに、当時のシリカはそう思い込んでしまい悲鳴を上げた。

 

それから約1ケ月間、シリカは転移門広場の片隅でずっと蹲っていた。

 

「君、どうしたの?」

 

そんなシリカにある人物が声を掛けた。

 

全身をしっかりとした防具で着込み、腰には店売りの短剣を強化したものを差し、歳はシリカと同じぐらいの長い黒髪の可愛い顔をしたプレイヤーだった。

 

そのプレイヤーに話す元気もなく、シリカはただ黙っていた。

 

「もしかして、行く所がないの?」

 

その問いに、シリカは頷いた。

 

「なら、良い所がある。君みたいな子供たちが集まってる教会があるんだ」

 

シリカを案内すると言い、そのプレイヤーはシリカを立ち上がらせた。

 

案内され、シリカが着いたのは東7区の川べりにある教会だった。

 

「ちょっと待ってて」

 

そう言うと、プレイヤーは教会の扉をノックした。

 

「はい、どちら様ですか?」

 

扉を開けて出てきたのは、黒縁眼鏡を掛けた女性だった。

 

「久しぶりです、サーシャさん」

 

「レオ君じゃない。今日はどうしたの?」

 

「実はさっき転移門広場で………」

 

レオと呼ばれたプレイヤーは、教会に居た女性プレイヤー“サーシャ”にシリカを見つけて、連れてきた経緯を話した。

 

その間、シリカは開いてる扉の隙間や近くの窓から、教会の中を確認していた。

 

中には、シリカと同じ年頃の子、或いはもっと年下の子なんかも居た。

 

その様子を見たシリカは、恐怖を感じた。

 

(もし、ここでも虐められたら………!)

 

シリカは現実世界で、クラスメイトから虐めを受けていた。

 

何も最初から虐められていた訳じゃない。

 

学校は好きだったし、友人も沢山居た。

 

だが、親友だと思っていた子に、自身の将来の夢を打ち明けてから、全てが変わってしまった。

 

学校に行けば無視され、持ち物を隠され、足を引っかけて転ばされることもあった。

 

あんなに優しかった友人たちも、親友だった子も一瞬にして、シリカの事を裏切った。

 

「なぁ、サーシャさんがここで暮らしていいってさ」

 

レオがシリカの方を向きながらそう言った。

 

(この子だって………きっとあの子たちと同じように………)

 

裏切る、そう思った瞬間、シリカは勢いよく走って逃げだした。

 

「あっ!!ちょっと!」

 

レオが呼び止めるも、シリカは止まらず逃げた。

 

逃げたシリカは、再び転移門広場まで戻って来た。

 

その時、細い路地の先で何かを見つけた。

 

「ピナっ?」

 

それは灰色の毛の猫だった。

 

その猫の姿が、現実でシリカが勝っている猫とそっくりだった。

 

シリカはその猫を追い掛けた。

 

走って何処かに向かう猫の後をシリカは、必死に追い掛けた。

 

路地を右へ左へと進み、積み上げられた木箱を乗り越え、倒れた柱の下を潜り、川に掛かった橋を渡り、何時しか自分が街の何処にいるかも分からなくなっていた。

 

小さな石階段を上ると、猫は石塀を覆う蔦の中へと消えた。

 

蔦をかき分けると、そこには小柄な子供がギリギリ通れるぐらいの穴が開いており、シリカはそこを潜った。

 

潜った先は、四方を石塀と建物の壁で囲われた小さな庭のような場所だった。

 

石畳の半分は雑草に覆われ、四隅に生えてる樹も手入れはされておらず、追い掛けてきた猫の姿も見当たらなかった。

 

「ピナ……何処……?」

 

不安げに猫の名前を呼び、庭の中央まで歩く。

 

すると、突如石畳が崩れ、シリカは落下した。

 

悲鳴を上げる間もなく、シリカは恐怖から目を瞑り、体を丸めた。

 

そして、背中を地面に打ち付け、シリカの視界の左上のHPバーがぐいっと減る。

 

どうやら地下は圏外だったらしく、シリカはそれ以上HPが減らないことを祈った。

 

シリカのHPバーはちょうど半分ぐらいの所で減るのが止まり、それを確認するとゆっくりと立ち上がり、辺りを確認する。

 

地下室らしいその部屋の壁には壊れた本棚が並べられており、蜘蛛の巣が張って埃が舞っていた。

 

圏外ではある物のモンスターはいないらしく、シリカは安堵するが、同時に地上に出る為の扉や階段が見当たらなかった。

 

上を見上げるとうんざりする程に高い天井があり、そこに空いた穴から陽の光が差していた。

 

「誰か!助けて下さい!」

 

シリカは上に向かって助けを求めた。

 

暫く必死に呼び掛けるも、とうとうシリカは助けを呼ぶのを諦めた。

 

(どうせ……誰も助けてくれない………)

 

そのまま座り込み、膝を抱える。

 

(きっとこのまま、誰かが第100層に到達して、ラスボスを倒さない限り、あたしはずっとここに一人ぼっちなんだ………それどころか……ずっと………)

 

涙が溢れ出し、嗚咽が漏れる。

 

「会いたいよ………帰りたいよ………お母さん………お父さん……ピナぁ…………!」

 

今まで吐いてこなかった弱音が出た。

 

その時だった。

 

突如、自分に影が落ちた。

 

「え?」

 

思わず、上を見上げた。

 

逆光で分かりずらいが、誰かがそこに居た。

 

「君、大丈夫か!?」

 

それはレオだった。

 

「待ってて!今そっちに行く!」

 

一瞬、レオの姿が消え、そして、ロープが落ちて来た。

 

「よっと!」

 

レオはそのロープを伝い、地下へと降りて来る。

 

「もうちょっとで………!」

 

飛び降りても平気なぐらいの高さになり、レオはロープを放して飛び降りようとした。

 

その瞬間、突然ロープが千切れた。

 

「ちょっ!?」

 

ロープが千切れたことにレオは驚き、そのまま頭から地下に落ちた。

 

「だ、大丈夫!?」

 

シリカは慌ててレオに駆け寄った。

 

「イテテ……うわっ、HP減ってる……ここって圏外なのかよ………」

 

レオはそう言い、ポーションを取り出して飲む。

 

「はい」

 

そして、新しいポーションを取り出してシリカへと渡す。

 

「あ……いいの?」

 

「いいよ。それに、君もHPが減ってるでしょ?」

 

「……ありがとう」

 

お礼を言い、ポーションを受け取る。

 

「それにしても、参ったなぁ………」

 

レオは天井の穴を見上げ、頭を掻く。

 

「サーシャさんには追いかけることは言ってあるけど、ココの場所が分かるかどうか………やっぱり、誰かがここを見つけるまで待つしかないかな………」

 

「ごめんね……あたしの所為だよね………」

 

「え?」

 

「あたしなんかを追い掛けて来て、こんな酷い目にあって………私の所為だよ………」

 

空になったポーションの瓶を握り締め、シリカが謝る。

 

「それは違うよ」

 

レオの言葉にシリカは顔を上げた。

 

「良い事も悪い事も、全部は自分の行動が招いた結果でしかない。俺がこうして地下に落ちたのも、アイテムの耐久値の確認を怠った所為!そこに、君の所為だなんてモノないよ。それに、良い結果でも、悪い結果でも後悔さえしてなければそれでいい!俺はそう思う!」

 

自信満々にそう言うレオに、シリカは呆然とした。

 

「少なくとも、君を助けに来た行動は、結果だけ見れば悪い事だけど、俺に後悔はないよ」

 

そう言い優しく笑うレオに、シリカは再び座り込んだ。

 

「ちょっ!大丈夫!?」

 

行き成り座り込んだシリカに、レオは驚き声を掛ける。

 

「うん、大丈夫……なんだが、腰が抜けちゃって……アハハ」

 

レオの言葉に元気づけられたのか、シリカは少し明るくなり笑う。

 

その時、シリカは自分の足元に光る何かを見つけた。

 

摘まみ上げると、それは1枚の銀貨だった。

 

表面には100の数字があり、100コル銀貨であることが分かった。

 

思わず辺りを見渡すと、少し離れた位置にもう1枚落ちていた。

 

「ねぇ、アレ!」

 

シリカはレオに声を掛け、銀貨を指差す。

 

「これって………ナイスだ!跡を追おう!」

 

レオに言われ、シリカとレオは銀貨の跡を追う。

 

落ちている銀貨を回収していくと、その先にはガラクタに埋もれるようにしてランドセルぐらいの大きさの宝箱があった。

 

恐る恐るふたを開けると、その中には20枚ほどの銀貨と、赤い鞘に収められた短剣があった。

 

レオは銀貨よりも短剣に興味があるらしく、短剣を手に取り調べる。

 

「凄い……!この短剣、第1層で手に入る中だと、かなり性能が高い……!」

 

短剣の性能に驚くも、レオは更にハッとする。

 

「そうだ!宝箱があるってことは、何処かに地上に出る為の出口があるはずだ!」

 

「え!?それじゃあ!」

 

「ああ、出られるぞ!」

 

レオとシリカの二人は地下室を隈なく探した。

 

そして、壁の本棚に隠されるように地上に向かう階段を見つけた。

 

階段を見つけ、ハイタッチをすると二人は階段を上って、地上へと出た。

 

外は既に夕方となっており、地上に出ると、あの猫が夕日の日差しの中、待ち構えていた。

 

猫はにゃ~っと一鳴きして、何処かへと去って行った。

 

「ありがとう」

 

猫に向かって、シリカはお礼を言った。

 

「あの猫、知ってるの?」

 

「うん、そもそもあの地下室に落ちたきっかけがあの猫を追い掛けたからなんだ」

 

「なるほど。多分、あの猫は隠しクエストみたいなものなんだろう。猫を追い掛けると見つかる宝探しクエストみたいな」

 

レオの推測に、シリカはなるほどって頷く。

 

「あ、そうだった、はい、これ」

 

そう言ってレオは、先程の短剣をシリカへと渡す。

 

「え?」

 

「君の短剣。地下室から俺が持ちっぱなしだったからね」

 

「でも……いいの?」

 

レオも短剣を使っているので、このレア物の短剣はレオだって欲しいはずだ。

 

にも関わらず、レオはその短剣をシリカに差し出した。

 

「だって、最初にクエストを最初に見つけたのは君だし、あの銀貨も見つけたのは君だ。だから、あの宝箱の中身は自然と君の物だよ」

 

レオはそう言い、シリカの手に短剣を握らせる。

 

「あ、ありがとう!」

 

「いいよ、お礼なんて」

 

レオは笑顔でそう言い、体を伸ばす。

 

「それで、教会に戻る?戻るなら、送るけど」

 

レオの問いに、シリカは少し沈黙した。

 

そして、ふとあることが気になってレオに尋ねた。

 

「君は、あの教会に住んでないの?」

 

シリカはレオの装備が、“はじまりの街”で籠ってた人にしては整っていることから、教会に住んでないのではと思いそう尋ねた。

 

「俺?まぁ、最初の頃は住んでたんだけど、今は違うかな」

 

「そうなの?」

 

「ああ。聞いてるかどうか知らないけど、ついこの間、第1層のフロアボスが攻略されたのは知ってる?」

 

レオの言葉にシリカは驚いた。

 

言われて、つい最近、転移門広場が騒がしかったことを思い出した。

 

「あの騒ぎ、第1層がクリアされたからだったんだ」

 

「俺さ、その知らせになんか希望が持ててたんだ。もしかしたら、この世界から脱出出来るんじゃないかって。流石に、攻略をしようと思える程じゃないけど、この世界で生き抜くために頑張らないとって思ってさ」

 

そう言い、レオは夕日を眺める。

 

「それに、俺が稼げば教会に居る皆の食事代も出せるしね!」

 

自分と同じぐらいの歳にも関わらず、強さを秘めるレオにシリカは胸が高鳴った。

 

(あたしも……この子みたいになりたい………!)

 

そんな感情が、シリカの心の内に沸き上がった。

 

「あの!」

 

「ん?」

 

「その、良かったらなんだけど、あたしも一緒に着いて行ってもいいかな?」

 

強い決意を秘めたシリカの瞳に、レオは少し呆然とするもすぐに笑顔となった。

 

「ああ!俺も、1人で旅するのは心許なかったし、喜んで!」

 

そう言い、レオは手を差し出す。

 

「自己紹介がまだだったな。俺はレオ。君は?」

 

「あたしはシリカ。よろしくね、レオちゃん」

 

こうして、レオとシリカの2人はコンビとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それが、あたしとレオ君の出会いです」

 

一通り、レオとの馴れ初めを話し、シリカは一息つく。

 

「良い事も悪い事も、自分の行いの結果か」

 

「それに、いい結果も悪い結果も、後悔が無ければいい。いい言葉ね」

 

「その言葉に、私あたし元気付けられちゃって。今では、どんなことが起きても、後悔のない生き方をしようって決めたんです」

 

「それにしても、シリカ。アンタ、レオの事、最初はちゃん付けだったのね?」

 

「あ、それは………実を言うと、レオ君の事、最初女の子だと思ってて。後から指摘はされました」

 

「確かに、何も知らない人からしたらレオ君って女の子っぽいよね」

 

「私も最初は勘違いしたわね」

 

4人で笑ていると、そこにリズが追い打ちを掛けた。

 

「それで、シリカは何時からレオが好きなのよ?」

 

「う……忘れてると思ったのに……」

 

あわよくば、出会いもとい馴れ初め話で忘れていないかと期待したがしっかり覚えておりシリカは悔しそうにする。

 

「レオ君の事が好きになった……と言うより、好きだと気付いたのは、カイさんとキリトさんと初めて出会った時なんです」 

 

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