ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第46話 剣士と剣豪との出会い

2024年2月23日。

 

レオとシリカがコンビを組んで1年年近くが経過しようとしていた。

 

その間に、色々な出来事が起きた。

 

シリカはレアモンスターの《フェザーリドラ》をテイムし、レオはうっかりで髪染めアイテムを使ってしまい、髪の色が水色になった。

 

その結果、シリカは“竜使い”の2つ名が付き、レオはその流れる様な剣捌きと動きから“流麗”の2つ名で呼ばれるようになった。

 

2人は中層で活動し、偶に野良パーティーに入れて貰っていた。

 

そして、その日も野良パーティーと組んで、《迷いの森》と呼ばれるダンジョンで狩りをしていた。

 

野良パーティーのメンバー全員が手練れだったこともあり、朝からの狩りで多くのコルやアイテムを手に入れられ、回復ポーションが底を尽きそうだったこともあり、夕日が差す頃には全員が主街区に向けて帰ろうとした。

 

その時だった。

 

パーティーに居る長槍を持った女性プレイヤー“ロザリア”があることを言った。

 

「帰還後のアイテム分配だけど、アンタはそのトカゲが回復してくれるし、回復結晶は必要ないわよね」

 

回復結晶のみならず結晶アイテムは、モンスタードロップかトレジャーボックスからでしか手に入らない。

 

攻略組のプレイヤーでも結晶アイテムを頻繁には使わず、回復にはポーション、帰還は徒歩、結晶アイテムを使うのはボス戦や命の危機がある時ぐらいだ。

 

確かにピナはシリカのHPを回復してはくれるが、その回復量は微々たる物。

 

シリカだって結晶アイテムは必要だった。

 

「ちょっと待ってください!」

 

そんなロザリアの発言に、レオが声を上げた。

 

「それじゃあ、あまりにもシリカが不公平すぎます!ピナの回復だって、頻繁に使えるわけじゃないんですよ!」

 

レオの言葉は最もだった。

 

だが、ロザリアは態度を変える気はなかった。

 

「どうせみんなのアイドル“シリカちゃん”は、回復アイテム無くても男共が勝手に回復してくれるでしょ?そんな男共の筆頭たるのはアンタじゃない、レオちゃん」

 

シリカへの皮肉に加え、レオの容姿を揶揄う“ちゃん”付け。

 

流石に他のメンバーたちもあまりいい顔はしなかった。

 

「もういいです!」

 

すると、シリカが声を上げた。

 

「アイテムなんかいりません!もう貴女とは組みませんから!レオ君行こう!」

 

そう言うと、レオの手を取ってパーティーを離れる。

 

せめて森を出るまでは一緒に居ようと言ってくれたパーティーリーダーの言葉も無視し、シリカはレオと共に、ロザリアたちとは違う道を進む。

 

「シリカ!流石にまずいって!」

 

《迷いの森》はその名の通り、プレイヤーを迷わせる。

 

森の中は碁盤の盤上の様に、分割されていて1分おきに隣接するエリアの連結がランダムに変わる。

 

森を抜けるには1分以内に次のエリアに進むか、道具屋で地図を購入してエリアの連結を確認しながら進むしかない。

 

だが、地図はかなり高価であのパーティーでも、持っているのはリーダーだったプレイヤーのみ。

 

その為、レオとシリカの2人は1分以内に次のエリアに進まないといけない。

 

つまり、森を抜けるまで常に走り続けないといけないと言う事だ。

 

それがどれだけ大変なのかシリカにも理解は出来ていた。

 

「分かってる!でも、あたし我慢できないの!あたしだけじゃなく、レオ君の事まで馬鹿にして………!あの人、本当に嫌い!」

 

だが、頭に血が昇ったのに加え、レオの事を侮辱するロザリアの言葉に我慢がならなかった。

 

「シリカ………そうだな、俺もシリカを馬鹿にするあの人のこと嫌いだな」

 

「レオ君……」

 

「ほら、頑張って走らないと森を抜けられないぞ。急ごう、シリカ!ピナも遅れるなよ!」

 

「あ、うん!」「きゅる!」

 

シリカとピナが同時に返事をし、2人と1匹は走り出す。

 

最初は2人もすぐに森を抜けれると思っていた。

 

だが、2人の速さでは森の端から端まで行くのにどれだけ頑張っても1分が経過してしまう。

 

辺りも暗くなって行き、2人は疲労から走るのを止め、森の連結が偶然にも森の出口に繋がるのを期待して歩くも、そんな奇跡に見舞われなかった。

 

日が沈みモンスターの動きが活発したことで、モンスターとの戦闘も多くなった。

 

2人は安全マージンをしっかりと取ってあるため、例え、ソロで5体のモンスターに囲まれても無傷で突破できるだけの力がある。

 

加えてシリカは短剣スキルの熟練度を7割近くマスターしており、レオに至ってはもうすぐ9割に届く。

 

そこにピナのアシストに、1年組んでやって来た連携があれば35層程度のモンスターは2人の敵ではなかった。

 

ただ1つ、遭遇したモンスター“ドランクエイプ”が、HPを回復するスキルを持っていることだけが誤算だった。

 

前に戦った時は数が2体しかいなかったことに加え、一瞬で倒した為、その様な特殊スキルがあることを2人は知らなかった。

 

今、2人の前に居るドランクエイプは4体。

 

レオが前に出て戦い、シリカがサポートするも数の多さと焦りから戦闘でのミスが増え始め、数が少なかったポーションは底を尽き、非常用の結晶アイテムも使い、回復手段が消えた。

 

「レオ君、回復アイテムがもう!」

 

「くそっ!なんとかして突破しないと!」

 

レオはドランクエイプの棍棒を弾き、下がろうとシリカの方を向いた。

 

「ッ!?シリカ!後ろ!」

 

「え?」

 

レオの言葉に、シリカが振り向く。

 

そして、振り向くと同時に突如現れたドランクエイプがシリカを棍棒で殴り飛ばした。

 

「がはっ!」

 

そのまま樹に叩き付けられたシリカは、短剣を手放してしまった。

 

「シリカ!……くっ!」

 

シリカの元に走り出そうとしたレオだったが、その行く手をドランクエイプ3体が阻む。

 

シリカを襲った1体と、残りの1体はシリカの方へ向かう。

 

「シリカ、逃げろ!」

 

レオがそう叫ぶも、シリカは恐怖から動けなかった。

 

ドランクエイプの持つ棍棒がシリカへと振り下ろされる。

 

その瞬間、ピナが雄叫びを上げ、シリカを庇った。

 

ピナの小さな身体はドランクエイプの棍棒によって吹き飛ばされ、地面を転がる。

 

「ピナ!」

 

シリカはようやく体を動かし、ピナの身体を抱き上げる。

 

ピナはつぶらな青い瞳でシリカを見つめ、小さく「きゅる……」と鳴き、その直後、ポリゴンの欠片となって散った。

 

「あ……」

 

ピナが死にシリカは呆然とショックを受けた。

 

手の中には、青白く光る小さな羽だけが残ってた。

 

「ピナ、そんな……!」

 

レオもまた、ピナの死にショックを受けていた。

 

だが、そんな2人の胸中なんか知らないと言った感じに、ドランクエイプは襲い掛かる。

 

「くそっ!」

 

レオは短剣でドランクエイプの棍棒を受け止めようとする。

 

パキンッ!

 

だが、ドランクエイプの一撃はレオの持つ短剣を圧し折った。

 

「しまっ!?」

 

最後の言葉を言う間もなく、レオはそのまま棍棒の一撃で殴り飛ばされる。

 

「レオ君っ!?」

 

「くっ……くそったれ………!」

 

レオのHPはレッドにまで落ちていた。

 

(せめて、シリカだけでも………!)

 

レオはそう思い、ポーチから笛を取り出した。

 

そして、勢いよく笛を吹いた。

 

森に、空気を引き裂く様な高音が響き渡る。

 

すると、シリカに向かっていたドランクエイプは標的をレオへと変えた。

 

レオが使ったのはタゲを集める効果を持った笛で、本来ならタゲを自身に集中させ、その隙を仲間に討ってもらう為に使う物だ。

 

この状況で使う理由はただ1つ、囮になるためだ。

 

「シリカ……今の内に逃げて………!走るでも、転移結晶でも、なんでもいい……!とにかくここから逃げろ………!」

 

レオは前に使っていた短剣を装備し、ドランクエイプと対峙する。

 

「そんな……嫌だよ………嫌だよ、レオ君!」

 

シリカは悲痛の叫びをあげる。

 

(あたしの所為だ………あんな些細なことでヘソ曲げて、パーティーを離脱したのが間違いだったんだ………それだけじゃない、あたしに付き合わせてレオ君まで危険な目に合わせちゃった…………)

 

ドランクエイプの棍棒が、レオに振り下ろされる。

 

シリカは必死に手を伸ばす。

 

(お願いします、神様………あたしはどうなってもいいからレオ君を………あたしの大切なパートナーを助けて!)

 

神様は存在しない。

 

もし本当にいるなら今頃、シリカたちはこのSAOから助けてくれているはずだ。

 

未だにSAOの中に居ることが、何よりの証拠だ。

 

だから、神様は存在しない。

 

だが……………

 

「よく頑張ったな」

 

「後は任せろ」

 

救いの手を差し伸べる者は存在する。

 

突如、レオの背後から現れた赤いコートと黒いコートを纏った2人の男性プレイヤーは、手にした片手剣と刀でドランクエイプを一刀両断して葬った。

 

そのまま。残りのドランクエイプも倒し、レオとシリカの2人は救われた。

 

「レオ君!」

 

助けてくれた2人にお礼を言うよりも、シリカはレオの元に駆け付けた。

 

「レオ君!よかった……無事で………!」

 

シリカは涙を流し、レオに縋りつく。

 

「シリカ……俺は大丈夫……でも、ピナが………!」

 

レオはシリカの手の中にある、ピナの羽を見つめる。

 

「すまなかった」

 

「俺たちがもう少しだけ早ければ………」

 

助けに現れた2人は謝罪を口にした。

 

「いいんです……あたしがバカだったんです………ありがとうございます、助けてくれて………レオ君まで居なくなったらあたし…………!」

 

「俺からも言わせてください。2人のお陰で助かりました、本当にありがとうございます………」

 

大切な仲間であったピナの死を堪え、2人は助けてくれた2人の剣士、カイとキリトにお礼を言う。

 

「なぁ、その羽だけど、なにかアイテム名は設定されてないか?」

 

突然、キリトがそんなことを言い出した。

 

シリカは戸惑いながらも、残された羽をタッチする。

 

すると《ピナの心》とアイテム名が設定されていた。

 

「心アイテムか。なら、まだなんとかなるな」

 

「「え?」」

 

カイの言葉に、2人は同時に声を上げた。

 

「47層の《思い出の丘》って言うフィールドダンジョンに、使い魔蘇生用のアイテムが手に入るんだ」

 

使い魔蘇生。

 

その単語に、レオとシリカは驚きを示すも、すぐに表情を曇らせた。

 

47層。

 

その数字が原因だった。

 

安全マージンの目安は、その階層の数字+10のレベルが最低でも必要となる。

 

レオとシリカのレベルはそれぞれ、レオが47、シリカが44。

 

安全マージンとしてはレベルが10近く足りて無かった。

 

「実費と報酬を貰えるなら、俺たちが行ってもいいんだけど、残念ながら使い魔を亡くしたビーストテイマー本人が行かないと、蘇生アイテムは手に入らないんだ」

 

「いえ、情報だけでも有り難いです」

 

「今は無理でもレベルを上げれば何時かは………」

 

「それがそうもいかないんだ」

 

希望を持ち始めた2人に、カイが申し訳なさそうに言う。

 

「心アイテムは3日で形見アイテムになる。そうなったら、蘇生は出来なくなるんだ」

 

「そんな……!」

 

「それじゃあどうしようも………!」

 

その情報に、2人は更に絶望した。

 

「なぁ、キリト。この前手に入れた奴、この2人に渡してもいいんじゃないか?」

 

「そうだな……俺たちが持ってても意味が無いしな」

 

そう言うと、2人はシステムウィンドウからトレードウィンドウを出し、そこにいくつかのアイテムを入れていく。

 

そして、トレードウィンドウはレオとシリカの前に現れた。

 

シリカの方には《シルバースレッド・アーマー》《イーボン・ダガー》《ムーン・ブレザー》《フェアリー・ブーツ》《フロリット・ベルト》。

 

レオの方には《ユニオン・インナー》《水禍之刃》《星刻ノ衣》《星羅ノ靴》《アビス・チョーカー》。

 

どれもが、一目でわかるレア物の武器と装備だと言うのに気づく。

 

「これを装備すれば5、6レベル分は補えるはずだ」

 

「そんでもって、俺とキリトが同行すれば問題はないだろう」

 

レア装備をくれて、挙句一緒に同行すると言う2人にレオもシリカも驚く。

 

はっきり言って、感謝より警戒心が沸き上がって来る。

 

「あの……どうしてここまでしてくれるんですか?」

 

レオはシリカを後ろに下がらせ、カイとキリトに尋ねた。

 

シリカは今までに自分よりも年上の男に告白されたこともあり、なんなら結婚を申し込まれたことも一度ある。

 

そして、レオも見た目が美少女の為、外見に騙された男に告白されたことがある。

 

中には、男だと告げても「それでもいい」と言う者もいて、その時はかなり恐怖を感じていた。

 

だからこそ、2人を警戒した。

 

「笑わないなら言ってもいいけど……」

 

「笑いません」

 

「同じく」

 

「…………君たちが、妹に似てたから…………」

 

キリトがそう言うと、辺りが沈黙に包まれた。

 

「ぷっ……あははははははははは!キリト、お前なんだよ、そのベタベタな台詞は!」

 

「なっ!笑うなよ、カイ!」

 

「悪い悪い!ま、キリトの理由はそうだとして、俺の理由は、相棒がそう決めたから。それ以上に理由なんてないぞ」

 

「なんだよそれ。自主性がないな」

 

「相棒の気持ちを優先してるんだよ。有り難く思えよ」

 

仲良さげに笑って言い合う2人を見て、レオとシリカは悪い人たちではないと思い、思わず笑った。

 

「君たちまで笑うのか……」

 

「ごめんなさい、あの、あたしシリカって言います」

 

「俺はレオです。何から何までありがとうございます。あの、足りないでしょうけどこれを」

 

レオは画面を操作し、自身の所持金全額を渡そうとする。

 

「いや、俺もキリトも金はいいよ。どうせ余り物の装備だし」

 

「ああ、それに俺たちがここに来た目的とも、多少被らないでもないからな」

 

謎めいたことを言うカイとキリトに、レオとシリカは疑問を持ちながらも最後お礼を言う。

 

「それじゃあ、主街区に戻ろう。俺は周りの警戒するから、キリトは案内頼む」

 

「ああ、分かった」

 

カイがレオとシリカの後ろに立ち、キリトが先頭で地図を広げる。

 

「あ!あのキリトさん!」

 

その時、レオが何かを思い出しキリトに声を掛ける。

 

「ん?どうした?」

 

「あの、さっき俺たちがキリトさんの妹さんに似てるって言ってましたけど…………俺、男です」

 

「……………マジ?」

 

「マジです」

 

キリトは信じられないと言った表情で、シリカを見る。

 

「マジです」

 

シリカにもそう言われ、最後にカイを見た。

 

「カイ、お前は気付いてたか?」

 

「当たり前だろ?渡した装備だって男用の物だし」

 

「……………ふぅ~」

 

キリトは息を一つ吐き、レオを見て、頭を下げた。

 

「すまなかった」

 

「いや、あの、気にしないで下さい。慣れてますから」

 

レオからの許しを貰い、4人は35層の主街区《ミーシェ》へと向かった。

 

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