ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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剣聖となる者の帰還

午後12時半、迷宮区最上階到着。

 

ここまで来るのに死者が一人も出ずに済んだ。

 

何度が危ない場面に遭遇したりしたが、ディアベルの的確な指揮で何とか切り抜けれた。

 

そして、今、プレイヤーたちは獣頭人身の型が彫られた扉の前にいる。

 

そこで、最終チェックが行われた。

 

チェックが終わるとディアベルが、自分の剣を抜き、空いてる左手を扉に添えた。

 

「さぁ、行こう……!」

 

短く叫び扉を押した。

 

最初にヒーターシールドを持った戦槌使いのプレイヤーが率いるA隊が突入し、次にエギル率いるB隊が左斜め後方から突入。

 

右からディアベルが率いるC隊(カイ含む)と両手剣使いがリーダーのD隊。

 

その後ろにキバオウの遊撃用E隊と長柄武器装備のF隊、G隊が3パーティーで並走する。

 

最後にテンたち4人と3人パーティーが突入。

 

20mほど進むと巨大なシルエットが空中で一回転しながら地響きとともに着地した。

 

青灰色の毛皮に、2mは超える体躯、赤金色に輝く眼。

 

右手に骨斧、左手に革盾、腰に湾刀(タルワール)

 

獣人の王《イルファング・ザ・コボルドロード》が雄たけびを上げ、挑戦者を出迎えた。

 

その雄たけびに、誰もが一瞬委縮し、体が強張った。

 

雄たけびに呼応し、《ルインコボルド・センチネル》も3体召喚される。

 

「主武装は骨斧!副武装は湾刀(タルワール)!《番兵センチネル》3体!情報通り!」

 

そんな中、ディアベルは声を張り上げ、前に出る。

 

「行けるぞ!俺に続け!」

 

 走り出すディアベルに続き、コボルドロードを相手する本隊が突撃する。

 

カイも本隊の1人として、自身の武器《アニールシミター》を抜き放ち続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コボルドロードとの戦いは予想を遥かに上回る形で進行していた。

 

1本目のHPバーはディアベル率いるC隊が、2本目をD隊が、そして、長柄武装のF隊、G隊が現在は3本目のHPバーを半分まで削った。

 

危ない場面と言えば、(タンク)役のA隊、B隊のHPが半減したが危険域(レッド)にまで落ちてはいない。

 

味方同士のHPの管理もできているし、キバオウのE隊とテンたちも余裕をもってセンチネルの相手が出来ていた。

 

問題はなかった。

 

その時だった。

 

コボルドロードが一際けたたましい雄たけびを上げた。

 

そして、持っていた骨斧とバックラーを投げ捨て、腰の武器に手を伸ばした。

 

「副武装の湾刀(タルワール)に変わるぞ!スキル変化は憶えているな!基本は変わらない!《武器を打ち払い喉元を撃つ》だ!」

 

ディアベルが指示を出し、武器を構える。

 

「次で決めるぞ!C隊、前へ!」

 

C隊がラストアタックを仕掛ける。

 

その瞬間、コボルドロードは手にした武器を抜いた。

 

湾刀(タルワール)とは、刀剣の一種で、インドやパキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンに見られる大きく曲がった細身の片刃刀。

 

だが、コボルドロードが抜いた武器は、刃が曲がってはいなかった。

 

「待て、ディアベル!湾刀(タルワール)にしては武器が妙だ!」

 

カイは、武器の様子がおかしいことに気づき、ディアベルに言う。

 

「何!?」

 

カイに言われ、ディアベルが武器に注目する。

 

緩く反った刃、鍛えられ、砥ぎ上げられた鋼鉄の色合い。

 

β時代、多くのプレイヤーを苦しめたその武器の名は刀。

 

「まずい!」

 

武器が違うことに気づき、ディアベルが防御指示を出そうとする。

 

だが、間に合わずコボルドロードはスキルを発動した。

 

刀専用ソードスキル 重範囲技《旋車(ツムジグルマ)》。

 

攻撃を食らったC隊のHPは、半分まで減った。

 

さらに加えて、バットステータス《一時行動不能(スタン)》。

 

コボルドロードは、動けなくなったプレイヤーに向け、刀を振り上げる。

 

そして、その刃が振り下ろされた。

 

「うおおおおおおおおおっ!」

 

だが、そのプレイヤーを庇うようにディアベルが、攻撃を防いだ。

 

ディアベルは寸前で、防御が間に合ったため、《一時行動不能(スタン)》にならずに済んだ。

 

だが、HPは半分まで減っており、後数発攻撃を食らえば終わる状態だった。

 

コボルドロードは再び刀を構え、刀スキル《浮舟》を使う。

 

ディアベルは防ごうと、盾を構える。

 

「ダメだ!」

 

何処からか誰かが叫んだ。

 

何故なら、ディアベルの持つ盾はヒビが入り、耐久値が残りわずかしかないのが分かる。

 

そんな盾で攻撃を受け止めれば、ダメージを受け止めきれず残り半分しかないディアベルのHPは無くなる。

 

コボルドロードの一撃がディアベルを攻撃する。

 

「うおおおおおおおおおっ!!」

 

だが、それより早くカイがコボルドロードに攻撃を仕掛けた。

 

発動直前のソードスキルはソードスキルで打ち消せる。

 

亜人型Mobと戦う時、ディアベルに教えられた方法を使い、カイはディアベルを助けようとした。

 

最初の《旋車》には間に合わなかったが、2撃目の《浮舟》には間に合い、何とかソードスキルをコボルドロードの刀にぶつけるが、アシスト任せに放った技ではスキルキャンセルできなかった。

 

(やっぱり、ぶっつけ本番じゃ無理か!)

 

カイは心の中で悪態を吐く。

 

だが、次にカイが見たのは、自分に刀を向けるコボルドロードの姿だった。

 

《浮舟》はスキルコンボの開始技で、そこから上下からの連撃に、一拍置いて突きを放つ《緋扇》が放たれる。

 

そして、β時代はこのコンボによって倒れるβテスターは後を絶たなかった。

 

「まずっ!?」

 

スキル発動後の為、硬直で動けないカイは防御態勢もとれない。

 

そのまま《緋扇》の上下からの連撃を食らいHPが危険域(レッド)にまで落ちる。

 

次に来る突きを食らえば終わり。

 

(くそっ……!ここで終わりか………!)

 

覚悟を決め、カイは思わず目を閉じた。

 

「グリス!吹っ飛ばせ!!」

 

「あいよ!リーダー!!」

 

その言葉と共にコボルトロードの腹部に強烈な突き技が命中。

 

視線を向けると、其処にはハンマーを射出台(カタパルト)のように構えた灰沢純平ことグリスが佇んでいる。

 

「お前はこっちだ」

 

すると、カイは腹部に衝撃を感じる。

 

カイの腹部に抱き付くように、後ろへと下がらせたのはテンだった。

 

「お前ら!少しの間、そのデカブツを任せるぞ!」

 

「「「「了解、リーダー!」」」」

 

桐ヶ谷和人ことキリト、緋泉彩葉ことヒイロ、緑川菊丸ことヴェルデ、そしてグリスの4人は景気良く返事をし、コボルドロードへと向かって行く。

 

後に下がるとテンは既に下がらせたディアベル、そして、連れて来たカイの口にポーションを突っ込む。

 

「お前、どうして…………」

 

ポーションを飲み終え、カイはフードの下からテンに尋ねる。

 

「あん?テメーのダチ助けるのに、一々理由が居るのかよ………カイ」

 

「お前……!」

 

「気づいてないと思ったか?お生憎様、バレバレだよ。キリトにヒイロ、ヴェルデも気づいてる。グリスは…………多分気づいて無いな」

 

「………純平か、アイツらしいな」

 

カイはフードの下で僅かに笑うと、回復していくHPを見ながらテンを見る。

 

「テン、俺はお前に、いや、お前たちに謝らないと………」

 

カイはテンへ謝罪を口にしようとした。

 

だが、テンは何も言わず、持っていた槍をカイの曲刀へと軽く当てる。

 

軽く響く金属音に、俯いていたカイが顔を上げる。

 

カイは久々にテンの顔を正面から見た。

 

あの時、テンが最後に見せた優しい笑みがそこにはあった。

 

何も言わずともテンは、分かっていた。

 

分かったうえで、カイにチームに戻れと語っていた。

 

カイは、ふと前に視線を向ける。

 

そこにはキリト、ヒイロ、ヴェルデの3人がこちらを見ながら戦っていた。

 

3人も戻って来いと目で語っていた。

 

グリスは戦いに集中しており、こちらを見てないがなんとなくグリスも戻って来いと言ってると思えた。

 

「…………いいのか、こんな俺を………勝手にお前らとの絆を断とうとした俺を、お前らは許してくれるのか?」

 

「絆ってのはよ、お互いが絶たない限り永遠に繋がってるもんだ。お前がいくら俺らとの絆を断とうと、俺らが断とうと思わない限り、何度でも繋ぎ直してやる。何度でも結び直してやる。俺らはまだ、繋がってる」

 

テンはそう言い、手を差し出す。

 

「お前にその気があるなら、戻って来いよ……ダチ公」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しまっ!?」

 

最前線で戦っていたキリトが声を上げた。

 

コボルドロードが《幻月》を使ったのだ。

 

《幻月》は上下ランダムに発動する技で読みが外れることがある。

 

キリトは片手剣スキル《バーチカル》の発動をキャンセルして《アニールブレード》を引き戻し、防御した。

 

だが、それでもキリトのHPは3割以上減った。

 

「キリト君!くっ……このっ!」

 

キリトが膝をついたのを見て、ミトの友人で一緒にパーティーを汲んでいたアスナがコボルドロードの脇腹目掛け《リニア―》を放つ。

 

だが、同時にコボルドロードが《緋扇》の構えを取った。

 

「アスナ、ダメ!」

 

声を出すも、もう間に合わない。

 

既にスキルは発動し、《リニア―》が放たれる。

 

1週間前のリトルネペントに襲われた時のことが、ミトの頭に過ぎった。

 

(守るんだ……!今度こそ、アスナを!)

 

ミトはアスナを庇おうと走り出す。

 

自分の身体を盾にしてでも、アスナを守る。

 

ミトはなんとかコボルドロードとアスナの間に割って入ることが出来た。

 

コボルドロードの持つ刀が、ミトへと迫る。

 

(ここまでか…………最期に、カイに逢いたかったな………)

 

逢えなくなった大好きな人の事を思い出し、ミトは目を閉じた。

 

だが、次の瞬間、強烈な金属音が響いた。

 

「え?」

 

ミトは目を開けた。

 

ミトの視界に入ったのは、フーデットマントを被った1人のプレイヤーだった。

 

そのプレイヤーは手にした《アニールシミター》でコボルドロードの刀を防いでいた。

 

防ぐ際に、マントは斬り裂かれたらしく耐久値は全損し、消滅する。

 

その姿を見たミトは、目から一筋の涙を流した。

 

そして、ミトを守ったその何者かの姿を見たキリト、ヒイロ、ヴェルデはニヤッと笑う。

 

グリスだけはその姿に目を見開き驚いていた。

 

「随分と待たせちまったな、皆……………勝手に勝手を重ねるけど、もう一度、一緒に戦わせてくれ」

 

そう言いカイは、再びチームへと戻った。




いよいよ、次回青メッシュ先輩さんとのコラボ最終回!
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