ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

60 / 132
第49話 鍛冶師のパーティー

「そんなこと言われたら嬉しいわよね」

 

「強くなりたい理由が自分の為ともなればね」

 

「子供のくせにレオは立派ね」

 

ミトとアスナ、リズはそんな感想を言った。

 

「それからは、ずっとレオ君の事ばっかに目が行っちゃって………戦闘の時もレオ君に見惚れてモンスターの攻撃受けちゃったり、日常の何気ない仕草でもキュンってなったり、何度か宿の部屋が空いてないって嘘を言って一緒の部屋に泊まったり………」

 

歯止めが利かなかくなったのか、とうとう聞かれてない事まで語り出したシリカだった。

 

「って、あたしだけに語らせないで下さいよ!」

 

数分後、ようやく色々語り過ぎたことに気づいたシリカは、顔を真っ赤にし叫んだ。

 

「ほら!次はリズさんの番ですよ!」

 

「ええ~?私は良くない、別に」

 

「駄目ですよ!ほら、話してください!」

 

「ああもう、分かった。分かったから落ち着きなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2024年6月22日

 

その日、リズはいつも通りの時間に起き、店の開店準備を始めた。

 

早い段階から鍛冶スキルを鍛えていたことが功を成し、48層に店を構えてからも多くの固定客がリズの作った武器を愛用し、メンテナンスを頼んでいる。

 

開店前から店の前で待っていた常連客に朝の挨拶をし、これから狩りに向かう者や迷宮区の攻略に向かう攻略組の武器をメンテし送り出すと、依頼の入ってるオーダーメイドの武器の作製を始める。

 

炉に高価な金属素材(インゴット)を入れ、十分に熱せれたら取り出し、金床に置く。

 

そして、愛用のハンマーで叩く。

 

武器の製作には、作りたい武器の製作スキルを使い一定回数叩くだけでいい。

 

更に、出来上がる武器の品質はランダムだが、気持ちや気合が左右されるのではと思い、リズは心を込めて1回1回丁寧に打つ。

 

そして、最後の1回を打とうとした瞬間だった。

 

「リズ、おはよー!」

 

「邪魔するわよ!」

 

「おわっ!?」

 

行き成り入って来た2名のプレイヤーに驚き、最後の1回を打ち損じ、ハンマーは金床を叩く。

 

「アスナ……ミト………」

 

入ってきた闖入者は、アスナとミト。

 

リズにとっては、それこそ48層に店を構える前からのお得意様で、攻略組として名を馳せた後も常連客として訪れる親友たちだ。

 

「あ、ごめん。次から気を付ける」

 

「同じく」

 

「そのセリフ、聞き飽きたわよ」

 

そう言い、リズは叩き損ねた金属を再び炉の中に入れる。

 

「それで、今日はどうしたの?」

 

「武器を砥いで欲しくて来たの。はい、お願い」

 

アスナはそう言い、腰に差してる細剣(レイピア)“ランベントライト”をリズへと渡す。

 

「私も。折角だし、ついでにお願い」

 

そう言い、ミトも背中に背負っている両手鎌“イクシオン・サイス”を渡す。

 

「この間砥いだばっかじゃない。まだ早いんじゃないの?」

 

「そうなんだけど、ピカピカにしておきたくて」

 

「ほら、こういうのって気分が大事でしょ」

 

「ふぅん?」

 

そう言うアスナとミトを、リズは改めて見る。

 

2人の格好はいつもと変わらない《血盟騎士団》の制服だが、アスナは耳に小さな銀のイヤリングを、ミトは同じデザインの銀の髪留めを付けている。

 

「なんか怪しいわね……てか、今日って平日でしょ?ギルドの仕事は大丈夫なの?」

 

「今日はオフにしてもらったんだ」

 

「私もアスナも、ちょっと人と会う約束しててね」

 

「ふ~ん…………男?」

 

リズがそう聞くと、アスナは分かり易く狼狽えた。

 

「そうよって言ったらどうする?」

 

ミトは意地悪そうな笑みを浮かべ言う。

 

「へ~アスナはともかく、あのミトに男が出来るとはねぇ」

 

「残念だけど、私もアスナもまだ一方通行の片想いよ」

 

「ちょっとミト!?」

 

あっさりとバラすミトに、アスナが叫ぶ。

 

「なんか意外ね」

 

アスナとミトはアインクラッド最強ギルド《血盟騎士団》のサブリーダーを務めている美少女だ。

 

言い寄る男はそれこそ、星の数ほどいる。

 

だからこそ、その逆パターンであることに、リズは驚いた。

 

「ちなみに、どんな人なのよ」

 

「う~ん、変な人かな。掴み所がないって言うか、マイペースって言うか………そのくせに滅茶苦茶強いし」

 

「良い人よ。優しくて頼りになって………でも、少し危なっかしくてね。しっかり手を掴んでないと、何処かに消えちゃいそうでその辺は少し怖いかな。あと、滅茶苦茶強いわね」

 

「あんたらより強いの?それなら、だいぶ候補は絞られるわね」

 

「もう!想像しなくていいから!それより早く砥いで!」

 

「そうだった!時間も迫ってるし、早くお願い!」

 

「はいはい、分かりました」

 

そう言い、リズは2人の武器を手に回転砥石の前に移動する。

 

アスナの細剣(レイピア)“ランベントライト”、ミトの愛鎌“イクシオン・サイス”。

 

どちらもリズが製作した武器で、リズの今まで作り上げた物の中でも最上級の名品である。

 

最高級の金属素材(インゴット)に最高級のハンマー、最高級の金床、高いスキル熟練度を以てしても、ランダムパラメーターの所為で、これほどの武器を作り上げられるのは3ヵ月に1度あるかどうかだ。

 

砥石で磨く作業も、武器を作るのと同じで一定時間砥石に武器を当てればいいのだが、やはりおざなりに扱うことは出来ず、ましてや自分が作った最高級の武器ともなれば砥石作業も丁寧に行う。

 

「はい、出来たわよ」

 

「ありがとう、リズ」

 

「いつも助かるわ」

 

アスナとミトは代金を支払い、綺麗に磨かれた愛剣、愛鎌を受け取る。

 

「毎度。今度、そのお相手連れてきなさいよね」

 

「そ、そのうちね」

 

「ま、気が向いたら考えてあげるわ」

 

そう言い、2人は楽しそうに出て行った。

 

「恋、か………いいなぁ……」

 

楽しそうに恋をしている2人が、羨ましくなり思わずそう呟く。

 

その直後、頭を振り、炉で熱し直していた金属を金床に置き、雑念を振る様にハンマーを振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の6月23日。

 

オーダーメイドの依頼を終え、少しばかり寝不足気味だったリズは、うたた寝をしていた。

 

その時、リズはある夢を見ていた。

 

それは、この世界から出られなくなって暫く経った後に起きた事で、週1のペースで見続けている夢だった。

 

圏外フィールドで座り込むリズ、そんなリズの前に立つ右手に曲刀、左手にメイスを持った男はリズを見下ろしていた。

 

『おい……』

 

男が口を開き、声を発する。

 

『起きてくれないか?』

 

その言葉に、リズは驚いた。

 

何故なら、いつもと違う言葉だったからだ。

 

どうして今日に限って、いつもと違う言葉なのか疑問に思った。

 

「なぁ!起きやがれって!」

 

「うわっ!?」

 

耳元で叫ばれるように起こされ、リズは飛び跳ねるように立ち上がる。

 

「すみませんでした!いらっしゃいませ!」

 

条件反射の様に繰り出される、いらっしゃいませに、接客が染みついてると思っていると、目の前にいる男に気づく。

 

「えっと、武器をお探しでしょうか?」

 

「いや、俺は客じゃねぇ」

 

男、トバルは言う。

 

「友人に片手剣の製作を頼まれたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ?片手剣を作れだと?」

 

その日の朝、トバルはキリトにそう言われた。

 

「ああ、この剣と同等、あるいは以上の性能で1本欲しいんだ」

 

そう言って、キリトは背中に吊ってる剣“エリュシデータ”を指差す。

 

「なんでだよ?“エリュシデータ”は50層のフロアボスのLA(ラストアタック)で手に入れた魔剣じゃねぇか。強化すりゃ90層までは余裕で戦える代物だぞ?なのに、同等以上の性能の剣をもう1本ってのはおかしくないか?」

 

キリトの話を聞きながら制作した刀を鑑定しつつ、「駄目だな」と呟く。

 

「相変わらず、拘りが強いな」

 

「いいんだよ。どうせ、半分趣味でやってるようなモンだ。仕事以外じゃ、自分(テメー)が満足出来る物が出来るまでやり直すだけだっての」

 

そう言い、刀を金属素材(インゴット)に戻す作業を行い、金属素材(インゴット)を仕舞う。

 

「ま、作ってやってもいいぞ」

 

「本当か?助かる!」

 

「その代わり、実費と報酬は出してもらうからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな訳で、これぐらいの代物と同等以上の剣を作らなきゃらならない」

 

トバルはリズに“エリュシデータ”の性能の数値を写したスクショを見せる。

 

「はぁ……同業者の方でしたか。つまり、委託製作の依頼ですか?」

 

「違ぇよ。俺は自分の仕事は1から10まで自分でやることをモットーにしてんだ。例え、自分以上に腕の立つ鍛冶師が居たとしても、委託製作なんてしねぇさ」

 

そう言い、トバルはリズを見て言う。

 

「俺が頼みたいのは同行だ。俺が今からする素材集めのな」

 

「はぁ、素材集めですか…………はあああああああ!!?」

 

素材集めをすると言う、トバルにリズは驚く。

 

何故なら武器を作る際に必要な金属素材(インゴット)を鍛冶師自ら採りに行くとは聞いたことがないからだ。

 

確かに銅や鉄などの希少価値の低いものぐらいなら、自身で採りに行く鍛冶師もいるが、基本は高レベルのプレイヤーに実費と報酬を払って採ってきてもらうのが普通だ。

 

にも関わらずトバルは、自分で依頼されたオーダーメイドに使う金属素材(インゴット)を採りに行くと言うのだ。

 

「アンタ馬鹿なの!そんなの、自殺行為じゃない!」

 

「なんで、アンタに馬鹿呼ばわりされなきゃいけねぇんだよ?自殺行為だろうとなんだろうと、これが俺のやり方だ」

 

「だからって、唯の鍛冶師が自分から希少価値の高い金属素材(インゴット)を採りに行くなんて聞いたことないわよ!ちょっと待ってなさい!」

 

そう言い、リズは壁に飾ってあった剣を持ってくる。

 

「これ!この剣なら、その友人の要望にも応えられるはずよ!」

 

そう言われ、トバルは剣を受け取り、調べる。

 

「………こりゃスピード(タイプ)の剣だろうが?アイツが欲しいのは、重さと鋭さ重視のパワー(タイプ)の剣だ。要望1つも満たしてねぇだろ。こんなモン、渡せるかっての」

 

その剣は、リズが店売りしている物の中では、最上級の剣。

 

その剣を、こんな物扱いされた途端、リズはとうとうキレた。

 

「こんなモノですって!?あたしが丹精込めて作った剣を、こんなモノ呼ばわりするなんて!アンタ、最低ね!」

 

「……そりゃ悪かった。でもな、俺の友人が欲しい剣と全然違う剣を渡してくるアンタもアンタだろ?モノが良ければ、依頼人の要望はどうでもいいと思ってるのか?」

 

リズの言う事は正論だし、トバルの言う事も正論だった。

 

「分かったわよ!アンタのそのやり方、拝見してやろうじゃない!その代わり、少しでも無理と判断したら、撤退だからね!その時は、その剣で我慢してもらうから!」

 

「なんでお前の判断で退かなきゃならねぇんだよ。……でも、いいぞ。どの道、鍛冶師には同行して欲しいしな」

 

そう言いトバルは、メニューウィンドウを操作する。

 

そして、リズの前にパーティー申請のメッセージが届く。

 

「トバルだ。金属素材(インゴット)を手に入れるまでの間だが、よろしく頼むぞ」

 

「リズベットよ!こちらこそ、よろしくトバル」

 




トバルはオーダーメイドの依頼が来ると、依頼人の要望に合った金属素材(インゴット)を自ら採りに行って、剣を作ります
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。