ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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今回の話にも、前に書いたシリカとレオの出会いの話同様、劇場版ソードアート・オンラインプログレッシブでの来場者特典のボイスドラマの要素が入ってます


第51話 かつての恩人

何十秒、何分………下手したら何時間か気を失っていたかもしれない。

 

それが、目を覚ましたリズの最初の感想だった。

 

穴はかなり深いらしく、穴の出口まで80メートルはあると見られる。

 

「おい、目ぇ覚ましたならどいてくれねぇか?」

 

すると、下から声が聞こえ見ると、そこにはトバルが居た。

 

「うわっ!ご、ごめん!」

 

慌てて上から降り謝るリズにトバルは「気にすんな」と言って、ポーチからハイ・ポーションを2つ取り出す。

 

「ほら、飲めよ」

 

「あ……ありがとう」

 

お礼を言い、ポーションを飲みじわじわと回復するHPを見る。

 

「さてと、どうやって脱出するか………」

 

HPの回復を終えると、トバルは上を見上げそう言う。

 

「え?転移結晶使えばいいじゃない」

 

「こんなあからさまな罠だぞ?そう簡単に脱出できるわけがない。それに、結晶無効化エリア独々の雰囲気も感じる。結晶アイテムは使えねぇだろう」

 

「そ、そんな!」

 

リズはまさかと思い、転移結晶を使ってみるも転移結晶は起動しなかった。

 

「嘘………それじゃあ、どうするのよ?」

 

「一応、キリトとカイの奴に55層のここに行くことは伝えてある。2、3日も音沙汰なければ様子を見に来るぐらいはするはずだ」

 

そう言うと、トバルはその場に座り込み、アイテムウィンドウから、携行炉と金床、ハンマーを取り出し、適当な金属素材(インゴット)を取り出す。

 

「ちょっと!こんな状況だってのに、剣作ってどうするのよ!?」

 

「こんな状況だからこそ、落ち着いて普段してることをするのが一番なんだよ。焦った所で、脱出できる訳でもないからな」

 

そう言い、トバルは熱された金属素材(インゴット)を金床に起き、刀を打ち始めた。

 

そんなトバルに呆れ、リズは穴からの脱出方法を模索し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駄目ね。どれも全然無理」

 

1時間後、万策尽きてリズは地面に寝転がった。

 

フレンド機能のメッセージは、迷宮区やダンジョンでは使えないので助けを呼べず、おまけにフレンド追跡機能も使えない。

 

なら、ドラゴン狩りに来たパーティーに助けてもらおうかと思ったが、穴からでは来ているかもわからないし、何より80メートルも深いこの場所からじゃ声も届かない。

 

「ちょっと、アンタもなにかアイディア出しなさいよ」

 

まだ刀を打ってるトバルに、リズがそう言うと、トバルは少しだけ腕を止め、考える。

 

「そうだな………大量の短剣を作って、それを壁に刺して足場にして昇っていくとか?」

 

「…………馬鹿なの?」

 

「だな。そもそも、手持ちの金属素材(インゴット)じゃ、作れても50本。この高さじゃ、例え100本あっても穴には届かねぇな」

 

そして、トバルは剣の製作を再開した。

 

数時間後、日が暮れて完全に夜中になった。

 

穴の中を照らすのは、トバルの携行炉の火とトバルが出したランタンの灯のみだった。

 

トバルは適当に作ったスープを口に時折含みつつ、黙々と刀を打ち、リズはトバル手製のスープと干し肉とパンで簡単な食事を摂り、トバルから渡された寝袋に入って、トバルの仕事の様子を見ていた。

 

「ねぇ、1つ聞いてもいい?」

 

すると、リズはそんなことをトバルに聞いた。

 

「なんだ?」

 

手を止めず、トバルが聞いて来る。

 

「あのさ、どうしてあの時、私を助けたの?死ぬ可能性だってあったのに」

 

その質問に、トバルは腕を止め、手にしたハンマーをゆっくり下ろす。

 

スープを一口飲み、そして、口を開いた。

 

「俺が同行を依頼したんだ。それで死なれるのは御免だったからだよ」

 

「………そっか」

 

トバルらしい理由だなっと思い、リズは寝ようと目を閉じた。

 

「それにな」

 

だが、まだ理由があったらしくリズはもう一度目を開いた。

 

そして、トバルと目が合った。

 

トバルは、驚くほど優しい目をして、リズを見ていた。

 

「あんなにいい剣作るんだからな。死なせたくねぇって思うのが、鍛冶師だろ?」

 

「え?」

 

「リズの作ったあの剣。確かに、キリト……俺の友人の1人な。アイツの要望の剣じゃなかったけど、スピード型の剣士なら、喉から手が出るほど欲しい性能の剣だ。それに、店で並べられた剣、どれもお前の手製だろ?剣1本1本から伝わって来たよ、お前の剣に対する想いと優しさがな」

 

「………そんなの、分かるの?」

 

「普通は分からねぇだろうな。だが、これでもSAO初日から鍛冶師として腕を磨き続けてたんだ。それなりに見る目はあると思うぜ」

 

そう言って、トバルはハンマーを握り直す。

 

「俺はもう少し、刀打ってから寝る。ちょっとうるさいだろうけど、日課なんでな」

 

「いいわよ、別に。じゃあ、おやすみ」

 

リズは寝袋の中で体の向きを変え、トバルに是中を向けて目を閉じる。

 

「ああ、おやすみ」

 

トバルがランタンの灯を消し、とうとう穴の中の光は携行炉の火だけになる。

 

リズはトバルが刀を打つ音を子守唄代わりに、眠り始めた。

 

不思議と、その音がリズにとって心地よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リズは、またあの夢を見た。

 

SAOがデスゲームとなったあの日、リズはその事実を受け入れられずその場に座り込んでいた。

 

それから3週間、リズは街の宿屋に閉じこもるか、目的もなく街を歩き回った。

 

だが、そんなことしてもリズの中で現実感は湧いて来ず、見るもの全てが、そして自分自身さえも偽物なのではと思うようになった。

 

偽物ならモンスターとの戦闘だって怖くない。

 

そして、リズは3週間ぶりにフィールドに出た。

 

SAOの初日も、デスゲームだと言うことを告げられる前は平気でモンスターを狩っていたのだから大丈夫。

 

そう思い、いざモンスターと戦闘してみるも動ぎはちぐはぐで、狙った場所に攻撃を与えれなかった。

 

序盤で遭遇する弱小モンスターの《グリーン・ワーム》相手にHPを半分も減らされパニックになり、リズは持っていたメイスを放り捨て、街へと逃げた。

 

唯一の武器を失い、買い直すコルもない。

 

最後に唯一出来ることは、自殺をし、本当に現実に帰れないのかを確かめることだった。

 

もし嘘なら、そのまま目覚めるだけ。

 

だが、もし本当だったら?

 

そう思うと、怖くて自殺なんて出来なかった。

 

結局、またしても目的もなく街を歩き出す。

 

その時だった。

 

道の真ん中を、2人の少女が歩いていた。

 

栗色の髪に腰に細剣(レイピア)を差した少女と、紫の髪に背に大きな鎌を背負った少女。

 

その少女は、リズみたいに項垂れていなかった。

 

ただ真っすぐ前を見て、胸を張り、互いに笑い合いながら街の出口、フィールドへと向かっていた。

 

戦いに行くんだ。

 

リズはそう思った。

 

そして、無意識にリズは自身の腰に手を伸ばしていた。

 

そこに武器のメイスはない。

 

その瞬間、リズは後悔に襲われた。

 

モンスターが怖くて逃げたのは仕方ない。

 

だが、武器を投げ捨てたのはダメだった。

 

(あれは、この世界でたった1つ、あたしが唯一握れる本物なんだ!)

 

確かに、このデスゲームで見る物は全て偽物かもしれない。

 

自身も、ただのデータの集合体で偽物かもしれない。

 

食事も、モンスターとの戦闘も偽物かもしれない。

 

だとしても、あの時、自身で握り締めてモンスターと戦ったあの武器だけは、本物だ。

 

そう思うと、リズは走り出しフィールドに出た。

 

自分の武器を回収する。

 

《グリーン・ワーム》と戦闘した場所はうろ覚え、武器自体耐久値が無くなり消えてるかもしれない。

 

武器もなく素手の状態でモンスターに襲われるかもしれない。

 

それでも、あの武器を探そう。

 

そして、もし見つけることが出来れば…………自分も、あの2人みたいにこの世界でも、真っすぐ前を向いて生きていけるかもしれない。

 

そう思った。

 

30分以上フィールドを歩き回り、リズはようやく見覚えのある場所を見つけた。

 

(この辺にあるはず…………!)

 

辺りを見渡し、必死にメイスを探す。

 

だが、探し始めた直後、《グリーン・ワーム》表れが、リズを襲った。

 

「きゃっ!?」

 

《グリーン・ワーム》の攻撃により、HPが減らされる。

 

それでも、リズはメイスを探す。

 

(何処……何処にあるの……!)

 

そうしてる間にも、《グリーン・ワーム》の一撃がリズを倒した。

 

リズはHPがレッドになり、その場に倒れこむ。

 

(………ごめんね、見つけてあげれなくて)

 

自分の武器に心の中で謝罪し、リズは目を閉じた。

 

その瞬間、パリンッ!っとガラスが砕ける様な音がした。

 

目を開けると、《グリーン・ワーム》は倒され、そこには1人プレイヤーが立っていた。

 

《グリーン・ワーム》を背後から倒したらしく、男は座り込むように倒れていたリズを見下ろしていた。

 

「おい」

 

男は、右手に曲刀を持ち、左手に持ったメイスをリズに見せる。

 

「これ、お前の武器か?」

 

男の問いに、リズは頷いた。

 

「この辺で拾ってな。アンタ何か探してたし、そうかと思ったんだよ」

 

そう言って、メイスをリズへと差し出す。

 

「耐久値がヤバかったから、勝手に回復させといた。じゃあな」

 

そう言って男は、フィールドを奥へと進もうとした。

 

「あ、あの!」

 

リズはその男を呼び止めた。

 

だが、男は止まらなかった。

 

それでも、リズは声を上げた。

 

「ありがとうございます!あたし、頑張ります!」

 

何を頑張るのか分からないが、とにかくリズはそう言いたかった。

 

去って行く男は、片手をあげる。

 

その姿が、リズには何処か応援してくれてるように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?…………あれ?あたし………そっか………穴の中か」

 

目が覚めたリズは寝袋から起き上がり、欠伸を一つして寝袋を出る。

 

「よう、起きたか」

 

すると、トバルが地面を掘りながら声を掛けて来る。

 

「うん、おはよう……何してるの?」

 

「見つけたんだよ、例の金属をな」

 

「へ~…………ええ!?」

 

トバルの台詞に、リズは慌ててトバルに近寄る。

 

「ほらよ」

 

そう言って、トバルが彫っていた場所を見ると、そこには両掌からはみ出る程の大きさの金属素材(インゴット)があった。

 

アイテム名は《クリスタライト・インゴット》。

 

「昨日、寝ようかと思ったらなんか地面で光る物を見つけてな。試しに掘ったら、コイツがあったんだよ。で、そこで気付いたんだ」

 

そう言ってトバルは笑う。

 

「山に住む白竜は、水晶を餌とし、腹の中で精製する。つまり、この金属素材(インゴット)はあのドラゴンの排泄物だったんだよ。そんで、この穴はトラップじゃなくて、ドラゴンの巣だ」

 

「な、なるほど…………」

 

お目当ての金属素材(インゴット)が排泄物だとは思わなく、リズは引きつった笑みを浮かべる。

 

「で、一晩掛けてこの辺の金属素材(インゴット)は全部集めた。かなりの数だし、半分はリズの所で使ってやってくれ」

 

「あ、ありがとう」

 

元が排泄物の金属素材(インゴット)と言うことに、若干抵抗を感じるも新しい素材に内心喜んでもいる。

 

「さて………あとはどうやって帰るかだな」

 

金属素材(インゴット)を手に入れても帰る手段がないと、どうしようもない。

 

「おーい!誰かいるかー!」

 

「いたら返事しろー!」

 

その時、頭上から声がした。

 

聞き覚えのある声に、トバルが上を見上げる。

 

「キリト!それに、カイ!」

 

そこにはキリトとカイの姿が小さく見えた。

 

「トバル!無事だったか!」

 

「急に連絡取れなくて心配したぞ!」

 

「ああ!悪いが、ロープを下ろしてくれ!ここから出られないんだ!」

 

「少し待っててくれ!カイ!近くの水晶にロープを固定してくれ!」

 

「分かった!」

 

頭上で、キリトとカイの2人が、トバルとリズを助けるために動き出す。

 

「これでここを出られる。後は武器を作るだけだな」

 

「そうね…………ん?」

 

ようやく脱出が出来る。

 

そんな時、リズはある疑問が沸き上がり、そして、顔を青ざめさせた。

 

「ねぇ、トバル」

 

「どうした?」

 

「ここってドラゴンの巣なのよね?」

 

「多分だが、その可能性は高いだろうな」

 

「じゃあさ、巣なのにどうして昨日の夜、居なかったのかしら?」

 

「…………夜行性だから?」

 

「ならさ………今って危なくない?」

 

リズの言葉に、トバルも青褪める。

 

「キリト!カイ!逃げろ!」

 

トバルは慌てて、頭上の2人に叫ぶ。

 

「え?」

 

「急にどうした?」

 

「ドラゴンは夜行性だ!昼にはここに戻る!ドラゴンが来るぞ!」

 

トバルの言葉に、キリトとカイも青褪める。

 

そして、再びあの雄叫びが聞こえた。

 

ドラゴンは穴目掛け、急降下し、穴の底に降り立った。

 

自分の巣に、侵入者が居た為がかなり怒ってるらしく、咆哮を上げ、トバルとリズを威嚇する。

 

「ちっ!リズ、後ろに下がってろ!」

 

トバルは刀を抜き、臨戦態勢に入る。

 

が、その瞬間、あることに気づいた。

 

「まさか…………イチかバチかだ!」

 

そう言うと、トバルはリズの手を掴んで走り出す。

 

「ちょ、ちょっとっ!?」

 

ドラゴンは、トバル達目掛け爪を振り下ろす。

 

トバルはそれを刀で受け流すと、そのまま滑り込み、ドラゴンの尻尾の付け根に刀を深く突き刺した。

 

ドラゴンは甲高い叫びを上げ、そして、飛び上がった。

 

「きゃああああ!!?」

 

「掴まってろよ!」

 

トバルは右手で刀を掴み、左手でリズをしっかりと抱きしめる。

 

数秒そうしてると、2人はドラゴンによって外に飛び出た。

 

「おらよっ!」

 

トバルはそのまま右手のみの力で、刀を抜く。

 

そのままリズはトバルに抱きしめられたまま落下し、トバルがうまい具合に衝撃を殺しながら滑るように着地する。

 

そのままトバルはリズを抱きしめたままドラゴンを見る。

 

ドラゴンは尻尾の痛みから解放され、そのまま巣へと戻った。

 

金属素材(インゴット)の取り方は分かった。これで、もう狩られることはないだろう。後は、ゆっくり休んでくれ」

 

トバルは帰って行ったドラゴンにそう言う。

 

「さてと、俺らも帰るか」

 

リズを離し、トバルがそう言う。

 

「そうね。…………ねぇ、トバル」

 

「ん?」

 

「ふふ……何でもないわ。ただ呼んだだけ」

 

「なんだそりゃ?変な奴だな」

 

トバルはそう言い、走って駆け寄って来るキリトとカイを見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、これが………!」

 

リズの店に着くと、トバルは手に入れた金属素材(インゴット)をキリトに見せる。

 

キリトは感激して、金属素材(インゴット)に触れる。

 

「ああ、そうだ。《クリスタライト・インゴット》。それなりに、良い物だ。これで、お前の剣を作ってやるよ」

 

「助かる!早速作ってくれ!」

 

キリトは興奮気味にそう言う。

 

「ああ、任せとけ。リズ、工房貸してくれ」

 

「ええ、いいわよ」

 

リズからの許可を取り、トバルは片手剣作製に入る。

 

炉に入れ熱された《クリスタライト・インゴット》を金床に置き、ハンマーを下ろす。

 

心地よい音が工房に広がる。

 

トバルは真剣に、目の前の金属のみに向き合い、一心不乱に叩く。

 

己の命を注ぎ込み、最強の一振りを作らんとするその気迫に、リズは飲み込まれていった。

 

そして、200回以上叩いたかと思うと、金属素材(インゴット)が目映い光を発し、形を変えていく。

 

光が収まると、そこには1本の剣があった。

 

刀身は薄く、細剣(レイピア)程ではないが細く、片手剣にしてはやや華奢にも思えるその剣は、《クリスタライト・インゴット》の性質を引き継いだのか、目映いほど白い。

 

その剣を持ち、トバルが鑑定する。

 

「“ダークリパルサー”。暗闇を払う者って感じだな。初耳だから、情報屋名鑑には載ってない剣だろう」

 

そう言い、キリトに渡す。

 

キリトは、2度、3度剣を振り、感覚を確かめる。

 

「おお……!重い……!それでいて手に馴染む!いい剣だ!」

 

新たな剣に、キリトは喜びの声を上げる。

 

「ふぅ……まぁまぁな剣が打てたな」

 

トバルは一息つき、そう言う。

 

「まぁまぁって、“エリュシデータ”に匹敵する剣作って置いて、それはないだろ?」

 

「この程度で満足できないって言ってんだよ。俺が求めるのは最強の一振りじゃねぇ、究極の一振りだ」

 

向上心の塊のような事を言うトバルに、カイは呆れた様に笑う。

 

「カイはどうする?ついでに打ってもいいぞ?」

 

「そうだな……いや、まだ“紅雪”を使っていきたいし、まだいい。近いうちに頼むよ」

 

カイはそう言ってキリトを見る。

 

キリトはまだ新しい剣に喜んでいた。

 

「キリト、そろそろ戻るぞ」

 

「お、ああ!そうだな!トバル、本当に助かった!これ、報酬な!」

 

そう言い、キリトは大量のコルをトバルに渡し、カイと共に去って行った。

 

「あ、そう言えばどうして同性能の片手剣がもう1本欲しかったのかしら?」

 

キリト達が去った後、ふとリズがそう言った。

 

「ああ……気になるが、別にいいだろ。俺は仕事をするだけだからな」

 

そう言い、トバルはリズの方を見る。

 

「昨日と今日はご苦労だったな、リズ。それじゃあな」

 

トバルはリズの店を出ようと、出口に向かう。

 

「ええ、じゃあね」

 

トバルはそれ以上何も言わず、振り返らず片手を上げた。

 

リズは、その後ろ姿を見て、あることに気づいた。

 

昔、自身を助け、自身のメイスを拾ってくれたプレイヤー。

 

それがトバルだと。

 

「トバル!」

 

リズはトバルを思わず呼び止めた。

 

行き成りの大声に、トバルは思わず止まった。

 

「なんだよ、急に?」

 

「えっと………」

 

リズは色々言いたかった。

 

だが、何から話していいか分からなかった。

 

「………また会いましょう」

 

色々考えて、ようやく出た言葉が、ソレだった。

 

その言葉に、トバルはポカンっとした。

 

「………ああ、そうだな。またな」

 

だが、それ以上何も言わず「くっくっ」と笑い去って行った。

 

「まぁ………まだまだ時間はあるか」

 

リズはそう呟き、頬は僅かに熱を帯びていた。

 

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