「父上!母上の料理は美味しいです!」
「そうか。でも、あまり急いで食べるなよ。詰まらせるからな、ノア」
「よく噛んで食べなさい、ノア」
「はい!」
謎の少年“ノア”は、22層のミトとカイの家でミトの料理を食べていた。
あの後、自分たちを父と母と呼ぶノアに、カイはどうして自分たちをそう呼ぶのか尋ねた。
すると、ノアは「2人が俺の父と母だからです、父上!」っと元気一杯に答えた。
そして、ミトが両親は何処にいるのかと聞くと、「目の前に居ます!」と2人を指差して答えた。
どういう事が分からず、一先ず保護と言う形で2人はノアを連れて帰った。
名前に関しては、家に帰った後に尋ねたら答えてくれた。
食事を終えると、ノアは眠くなったのかカイが寝室まで運び寝かせた。
「それで、カイはどう思う?」
「ノアの事だよな。正直、俺にもわからない」
「どうして私たちを親だと思ってるのかしら?」
「記憶喪失で、俺たちに親の面影を見て親だと思ってる……とか?」
「出来過ぎかもしれないけど、一番納得できる理由ね」
「それより、おかしなことがある」
「おかしなこと?」
カイは頷き、話した。
「ミトが料理してるとき、何か手掛かりがあるかもって思ってノアにウインドウを開いて、可視モードにしてもらったんだ。そしたら、装備フィギュアと《アイテム》、《オプション》しかなかったんだ」
「それって本当なの?」
「ああ、おまけにレベルも無く、HPバーもEXPバーも無かった。あと、名前だ。《Noah-ASMAP001》……おかしな名前だった」
「ASMAP………何かの略称かしら………」
2人して考えていると、キリトからカイにメッセージが届いた。
「キリトから?」
こんな時間に何かと思いながらも、カイはメッセージを開く。
『カイ、相談したいことがある。明日、ミトと一緒に家に来てくれないか?』
「キリトなんだって?」
「相談したいことがあるそうだ。折角だし、俺たちもノアのことを相談してみよう。何かいい案を出してくれるかもしれない」
「そうね。じゃあ、今日はもう寝ましょう。流石に、明日も二度寝したらシャレにならないし」
「だな」
寝る為、寝室に向かうとベッドには既にノアが寝ており、2人はノアを挟む形でベッドに入る。
「あのさ、カイ」
「ん?」
「ノアなんだけど、多分1人でSAOに入ってないわよね?」
「だろうな。こんな小さな子供1人でログインさせるとは思えない。親か保護者が居るはずだ」
「だよね…………もし、もしもだよ。親も保護者も居なくて、1人で入ってたら?もしそうだったら、ノアは2年近く1人で居たって事よね。もしそうだったら………私なら耐えられないかも………」
ミトの言葉にカイは思った。
もしミトの言う通り、ノアが1人でSAOにログインして2年近く1人だったら、子供には耐え難く、正常な精神状態を保てないだろう。
もしノアの記憶喪失が心に起因するものだとしたら、カイやミトにはどうすることもできない。
SAOには精神科医は存在しないし、助けを求めるべきシステム管理者もいない。
もしノアを助けるなら、SAOクリアし、現実世界に戻すしか方法はない。
だが、SAOをクリアするにはあと半年は掛かる。
それがカイの見立てて、ミトも同じだと思ってる。
今、カイとミト、それにキリトやアスナが前線を離れているのは4人を含めた一部のプレイヤーのレベルがあまりにも突出して、パーティーのバランスを取るのが難しくなったのもある。
パーティーでのバランスが取れなくなれば、バランス調整の為、攻略も遅れる。
どう頑張っても、現状でノアを救う方法はないに等しかった。
「心配するなって。きっとノアの両親は見つかる。それまでは、俺達でノアの面倒を見るぞ」
「……うん、そうだね」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
それを最後に、2人の会話は終わった。
ミトは間で眠るノアを見る。
「………大丈夫だからね。私たちがちゃんと親を探してあげるから」
気持ち良さそうにスヤスヤと眠るノアに優しく触れる。
「でも……もしもの時は…………」
ミトはそれ以上何も言わず、眠りについた。