ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第55話 《はじまりの街》へ

「父上、おはようございます!」

 

翌朝、カイが目覚めるとノアは既に起きており、カイの上に乗っていた。

 

「ノア……寝ている人の上には乗ったらいけないぞ……」

 

「はい、気を付けます!」

 

「よし、いい子だ」

 

ノアに降りてもらい、カイはノアの頭を撫でてそう言う。

 

「ミト……お母さんはどうした?」

 

「母上ならご飯を作ってます!父上を起こすように頼まれました!」

 

「うん、そっか。なら、行くか」

 

「はい!」

 

(子供が出来たらこんな生活なんだろうなぁ………)

 

元気よく居間に戻るノアを見つめ、カイはそう思った。

 

三人で食事を摂り、食後のお茶を飲んでるとカイは口を開いた。

 

「ノア、今日は父さんと母さんの友達の所に行こう」

 

「父上と母上の友達ですか?」

 

「そうよ。2人共良い人だから、きっとノアともすぐ仲良くなれるわ」

 

「それは楽しみです!早く行きましょう!」

 

「待ちなさい。その前に、着替えるわよ」

 

ノアの今の服装は白いTシャツに黒の半ズボン。

 

10月に入ったアインクラッドでは、少々肌寒さを感じる格好だった。

 

ミトは、アイテムウィンドウから、長袖の赤いセーター、紺の長ズボンを取り出し、ノアのアイテムウィンドウに入れ、装備フィギュアへとドロップする。

 

「母上、暖かいです!」

 

「そう、良かったわ」

 

「それじゃあ、行くとするか」

 

ノアを間に挟み、手を繋いで家を出る。

 

「それにしても……」

 

「どうした?」

 

「カイ、自分の事、父さんって呼んでたわね。私の事も母さんって言ってたし」

 

「………そうだな。ノアを見てると、なんかそう思っちゃってさ」

 

「……そうね。私もそう思う」

 

楽しそうに歩くノアを見て、2人は言う。

 

歩いて30分ぐらいで、キリトとアスナの家に着き、扉をノックする。

 

「カイ、それにミトも。よく来てくれた。とにかく、上がってくれ」

 

「その前に、キリト。紹介したい子がいるんだ」

 

そう言い、カイは後ろにいるノアを前に出す。

 

「この子は?」

 

「この子はノア。実は記憶喪失なんだ。俺とミトの事を親だと思ってて、ついでに相談に来たんだよ」

 

「ノアです!父上と母上がお世話になってます!」

 

ノアは礼儀正しくキリトに挨拶した。

 

「驚いたな……」

 

ノアにキリトは驚きを示した。

 

「だろうな。正直、俺もミトも何がなんだが」

 

「俺たちと同じ状況だったのか?」

 

「………え?」

 

キリトに見た方が早いと言われ、家の中に案内されると部屋にはアスナとアスナの隣に1人の少女が居た。

 

「キリト、あの子は?」

 

「あの子はユイ。俺とアスナの娘だ」

 

キリトの話によると、昨日、キリトとアスナは22層の森に、幽霊が出ると言う噂を聞いて散策に向かい、その時に少女“ユイ”を保護したとのことだ。

 

そして、ユイはキリトとアスナの名前が上手く発音できなかった為、キリトをパパ、アスナをママと呼んでいる。

 

「状況的には似てるな」

 

「ああ。2人のウィンドウも似た作りになってる。名前の、MHCPとASMAPの違いはあるがあまり意味はないだろうな」

 

「何かの略称なんじゃないかってミトは言ってたけど、キリトは心当たりないか?」

 

「う~ん………悪いがないな」

 

キリトが腕を組んでそう答える。

 

「そうか………キリトはこれからどうするつもりだ?」

 

「ユイの両親、あるいは保護者を探す。とりあえず、今日は《はじまりの街》に行こうと思う」

 

「《はじまり街》か………そう言えば、《はじまりの街》にある教会で、子供のプレイヤーを保護してるって聞いたな」

 

「本当か!?」

 

「ああ。レオから聞いた話だ。レオも最初の1ヶ月はそこで暮らしてたらしいし、今でも顔を出しに行ってるから、まだ保護はしてるんだと思う」

 

「なら、その教会を当たろう」

 

キリトは方針を決め、後ろでミトと話してるアスナに声を掛けようとした。

 

「そしたら、ユイちゃんがパパと同じのがいいってキリト君用に辛い味付けにしいたサンドイッチを食べて、辛いの我慢して美味しいって」

 

「ノアったら、カイを起こしてって頼んだら、飛び乗って起こしたのよ。本当に元気一杯で」

 

2人は自分の子供自慢をしていた。

 

一方で、ノアとユイはと言うと………

 

「そしたら母上が、こう鎌で父上の首にガッとやったんだ!虐めるのはダメだが、あの速さには感動した!」

 

「凄ーい!ユイもガッてやりたい!」

 

ノアが昨日のミトとカイのやり取りを自慢げに語り、ユイははしゃいでいた。

 

「なんかママ友の会みたいなことしてるな」

 

「子供たちも子供たちで友好関係築いてるし……」

 

結局、2人はその様子を眺めつつ、最近の事を話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミトとアスナの会話が終わると、時間が良かったので6人で昼食をとってから、《はじまりの街》へと向かった。

 

「随分と久しぶりだな」

 

「最後に来たのは何時だったか、憶えて無いな」

 

「ねぇ、ユイちゃん。見覚えのある建物とかある?」

 

「ノアはどう?」

 

「んー、分かんない」

 

「ありません!」

 

アスナとミトが、ユイとノアに聞くも二人は首を振って答える。

 

「まぁ、《はじまりの街》は広いからな」

 

「教会まで歩いて行く道すがら、思い出すだろう」

 

全員で頷き合い、教会へと向かう。

 

その道中、辺りを見ていたアスナが口を開いた。

 

「ねぇ、キリト君。《はじまりの町》には今、何人ぐらいのプレイヤーがいるの?」

 

「確か生き残ってるのが約6000人で、軍の連中を含めて約3割が残ってるらしいから、大体2000人弱はいるはずだな」

 

「それにしては人が少なくない?」

 

アスナの言う通り、ここに来るまでにすれ違ったプレイヤーは両手の指で数えるぐらいしかおらず、街は元気のいいNPCの声が響くが空しく響くだけだった。

 

「教会に行けば何か分かるかも知れないな。もしかしたら、ミサの日かもしれないしな」

 

「ははは、そうかもね」

 

四人で笑い合い、ユイとノアは歩き疲れたのかキリトとカイが背負って、ゆっくりと歩きながら教会を目指す。

 

暫く歩くと教会が見えた。

 

教会ではモンスターの特殊攻撃《呪い(カーズ)》の解呪や対アンデットモンスター用に武器の祝福などを行うことができる。

 

魔法の存在しない、このSAOの中ではかなり神秘的な部類だ。

 

キリトが扉の前に立ち、ノックするが何の返事もない。

 

再度ノックするが同じだった。

 

今度は強く叩くが変わらなかった。

 

扉を開け、中を覗くが誰の姿も見えなかった。

 

「留守なのかな」

 

「いや、いるぞ。右の部屋に3人、左に4人、2階にも何人かいるな」

 

「索敵スキルって壁の向こうの人数まで分かるの?」

 

「熟練度980からだけどな」

 

「攻略の時はいつもお世話になったな」

 

居るのは分かったので今度は声を掛けた。

 

「すみませ~ん。人を探してるんですけど」

 

「誰かいませんか?」

 

すると、扉から女性の声が聞えた。

 

「あの……《軍》の方ではないんですか?」

 

「俺達は軍の人間じゃありません。上の層から降りてきました」

 

扉が開き、中から黒縁眼鏡を掛け、腰には短剣を装備した女性が現れた。

 

《軍》のプレイヤーは常に制服を着て、重装備なので、私服で武装のしてない四人は一目見れば、《軍》のプレイヤーではないことが分かる。

 

女性はカイ達を見ると安堵の顔をした。

 

「よかった……《軍》の徴税部隊じゃないんですね……」

 

「実は、私たち上の層から来て」

 

「上の層!?ってことは本物の剣士!?」

 

甲高い少年の声が聞こえ、扉が勢いよく開く。

 

奥から何人かのプレイヤーが現れやってくる。

 

出てきたプレイヤーは皆12~14歳っといった子供ばかりだった。

 

「なーんだ、剣の一本も持ってないのかよ。なぁ、上から来たんだろ?武器とか持ってないのかよ?」

 

そのうちの1人の子供が、装備をしてない4人に失望の色を見せ、カイとキリトにそう聞いて来た。

 

「こら!お客様に失礼でしょ!」

 

そんな子供に、女性が怒る。

 

「いいですよ、別に。俺の武器は出せないけど、それ以外ならいいぞ。キリトも、なんか出してやれよ」

 

「ああ、いいぞ」

 

カイとキリトは、ストレージ内に入れっぱなしになっている武器をいくつか取り出し見せる。

 

次々と出される武器に、子供たちは目を輝かせて触ったり、持ったりする。

 

「すみません、本当に……あの、こちらにどうぞ、お茶をお出しするので」

 

女性に案内され、6人は教会の一室に案内される。

 

「それで、人を探してると言う事でしたね」

 

女性はお茶の用意をしながら、そう聞いて来る。

 

「あ、失礼しました。私はサーシャと言います。一応、この教会で子供たちの保護と面倒を見ています」

 

サーシャから自己紹介され、4人も自己紹介し、ユイとノアを紹介する。

 

「実は、人探しって言うのはこの2人の家族なんです」

 

「2人共記憶喪失みたいで……」

 

「記憶喪失……そうだったんですね」

 

「装備も服以外は持ってなかったから、上層で暮らしていたとは考えれないんです」

 

「教会の方で、この2人に見覚えとかってありますか?」

 

その問いに、サーシャはユイとノアの2人を見る。

 

「教会で保護している子ではないですね。ここには、今20人ぐらいの子供たちが暮らしています。恐らく、この《はじまりの街》で暮らしている子供は全員此処にいると思います」

 

「そうなんですか?」

 

「はい。この2年間、毎日1エリアを回って取り残された子がいないか確認してるので、間違いないかと」

 

「2年間毎日……凄いですね」

 

カイがそんなことを口に出す。

 

「そんなことありません。私も、最初はこのゲームをクリアするためにフィールドで戦ってたんですけど、ある日、街の隅で蹲ってる子供を見つけたんです。そしたら、居ても立っても居られなくて、その子に話しかけ宿屋で一緒に生活を始めたんです。それから、他にもそんな子供がいると聞いて、街中にいる子供たちに声を掛け始めて、気が付いたらこんなことになってて…………本当に、上層で戦ってる人たちに申し訳ないです」

 

「そんなことないですよ」

 

サーシャの話を聞き、カイがそう言った。

 

「子供たちだって、こんな状況で不安で一杯だったはずです。そんな中、サーシャさんの存在がどれだけ頼もしかったか………。恐怖で動けなくて、泣き出しそうだった時、声を掛けてくれたのが嬉しかった。レオが、そう言ってました」

 

「レオ君のこと知ってるんですか?」

 

「ええ。恥ずかしながら、彼の師匠をしてまして。この教会の事も、レオから聞いたんです」

 

「そうだったんですね……レオ君は、元気でやってますか?」

 

「ええ。相棒のシリカと一緒に頑張ってますよ」

 

「そうですか……シリカちゃんも元気そうでよかった……」

 

レオとシリカの近況を知り、サーシャが嬉しそうにする。

 

「あの、立ち入ったことを聞くようですけど、毎日の生活費とかって……」

 

ふと、アスナがそんなことをサーシャに聞いた。

 

教会の客室を常時借りてるなら、1日100コルは必要になる。

 

「私の他にも、ココを守ろうとしてくれてる子は多いんです。そう言う年長者の子は、フィールドに出ているので、日々の食事代はなんとかなってるんです。それと、1ヶ月に1回、レオ君とシリカちゃんが来て食材を置いてってくれるんです。元々、レオ君が教会を出たのも、教会にいる子供たちの為に生活費を稼ごうとしたのが始まりだったんです」

 

「そうだったのか……レオらしいな」

 

「それにしても、フィールドでモンスターを狩って稼ぐのは自殺行為だと思ってる人が殆どなのに凄いなぁ」

 

「そう言うのもあって、私たちはこの街の平均プレイヤーより稼いでるんです………だから、最近目を付けられちゃって………」

 

表情を曇らせるサーシャに、キリトが理由を尋ねようとした。

 

「サーシャ先生!」

 

その時、部屋の扉が勢いよく開き、1人の少年が飛び込んできた。

 

「こら!扉はちゃんとノックしなさいって言ってるでしょ!それに、お客様に失礼でしょ!」

 

「それどころじゃないよ!ギン兄ぃ達が、《軍》の連中に捕まっちゃったんだ!」

 

「場所は!?」

 

サーシャは、別人のように毅然と立ち上がり、場所を聞く。

 

「東五区の道具屋の裏の空き地。軍が十人ぐらいでブロックしてて」

 

そこまで聞くと、サーシャは部屋を出て行った。

 

「兄ちゃん!兄ちゃんたちの武器、貸してくれよ!」

 

すると、話を聞いてた少年がそう言ってきた。

 

「あの武器があれば《軍》の連中もビビって逃げるよ!だから、お願い!」

 

必死に頼んでくる少年に、キリトは優しく声を掛ける。

 

「残念だけど、あの武器は重すぎて君達では使えないんだ」

 

「そ、そんな………!」

 

「だから、俺たちが助けに行くよ。こう見えて、滅茶苦茶強いからさ、俺たち」

 

そう言ってキリトはアスナ、カイ、ミトを見る。

 

3人は頼もしく頷く。

 

そして、教会を飛び出し、東五区の道具屋の裏の空き地へと向かった。

 

「子供たちを返して!」

 

目的地に着くと、サーシャがすでに到着しており、《軍》のプレイヤーたちと対峙していた。

 

「おお、保母さんの登場か」

 

「人聞きの悪い事、言わないで欲しいねぇ。こっちは社会常識ってのを教えてやってるのさ」

 

「そうそう。市民には納税の義務があるってな」

 

《軍》の男たちは、ゲラゲラとチンピラみたいな笑いをするも、サーシャはそれを無視する。

 

「ギン!ケイン!ミナ!そこにいるのね!」

 

「サーシャ先生!助けて!」

 

「三人共、お金なんていいから全部渡しなさい!」

 

「そ、それが、こいつら金だけじゃダメだって」

 

「あんたら随分税金を滞納してるそうだな。金だけじゃ足りないんだよ」

 

「装備に防具、何もかも全て渡してもらおうか」

 

男たちの下卑た笑いに全員が、《軍》の連中が何をしようとしてるのか理解した。

 

少女を含む子供たちに、着衣も解除しろと要求している。

 

その事に、ミトとアスナの2人は殺意に似た憤りが芽生えた。

 

「そこを……通して!」

 

サーシャが腰の短剣に手を掛ける。

 

それより早くに、キリトとアスナが動いた。

 

距離を取って、助走をつけ跳躍し、軽々と《軍》の連中の頭上を飛び越えた。

 

「なっ!?」

 

キリト達の行動に、《軍》のプレイヤーが驚く。

 

「もう大丈夫だから、装備を戻して」

 

子供たちの元に着くと、アスナは優しく声を掛ける。

 

「おいおい、何だお前たちは?」

 

「我々、《軍》の任務を妨害するつもりか!」

 

「まぁ、待て」

 

《軍》の連中が騒ぎ立てる中、リーダー格らしい男が仲間を宥めて前に出る。

 

「お前ら、見ない顔だが《軍》に楯突くのがどういうことか分かってるのか?」

 

腰の剣を抜き、刀身をぺたぺたと手で叩く。

 

太陽の光に反射された刀身が光りから、一度も損傷も修理をしてない感じの輝き方なのが分かる。

 

「それとも何だ?圏外に行くか?」

 

その言葉にアスナは怒りを感じ、いつの間にか装備した《ランベントライト》を抜いていた。

 

「お……お…?」

 

男は状況が呑み込めないのか口を半開きにしてた。

 

その瞬間、アスナが細剣スキル、下位技《リニアー》を発動し、攻撃した。

 

《リニアー》は細剣の基礎中の基礎の技でそこまで強くない。

 

ましてや圏内ではありとあらゆるダメージは《犯罪防止コード》によってシステムの障壁で阻まれる。

 

だが、攻撃者のパラメーターとスキルが上昇するにつれて、システム作動時のシステムカラーの発光と衝撃音は大きくなり、ソードスキルの威力によっては多少のノックバックがある。

 

ノックバックによって吹き飛ばされた男は驚いた顔をする。

 

「安心して、圏内だからHPは減らないわ。少しノックバックがあるくらい。でも、圏内戦闘は心に恐怖を刻み込む」

 

そう言ってもう一度《リニアー》を放つ。

 

男は吹き飛ばされながらも声を上げる。

 

「お、お前ら!見てないでなんとかしろ!」

 

 男の指示で次々と《軍》のプレイヤーは剣を抜く。

 

が、アスナが剣を構え、一睨みすると、それにビビってしまい逃げ出す。

 

「逃がすと思った?」

 

すると、《軍》のプレイヤーたちの退路を断つようにミトが《イクシオン・サイス》を構えていた。

 

「悪いけど、私もアスナも。アンタたちを逃がすつもりはないから」

 

そう言い、両手鎌スキル、範囲技《ランペイジロード》で《軍》のプレイヤーを吹き飛ばす。

 

「うわっ!」

 

「な、なんなんだ!?」

 

「や、やめてくれ!」

 

「た、助けっ!」

 

男たちは声を上げるも、ミトとアスナは関係なしに攻撃をする。

 

数分後には、数人の《軍》のプレイヤーが、虚脱して倒れていた。

 

「「ふぅ」」

 

アスナとミトは同時に一息つく。

 

「す、すげー」

 

すると、捕まっていた少年が声を出した。

 

「すげーよ、姉ちゃんたち!」

 

「かっこよかった!」

 

子供たちに囲まれ、褒められ、ミトとアスナは照れくさそうに笑う。

 

「どうだ?ママは凄いだろ?」

 

キリトはそんな光景を眺め、背負っているユイに尋ねる

 

「みんなの……みんなの、こころが……」

 

だが、ユイはキリトの言葉が届いてないのか、宙を見上げ、右手を伸ばしていた。

 

「ユイ!どうしたんだ、ユイ!!」

 

様子のおかしいユイに、キリトが叫ぶ。

 

「ユイちゃん……何か、思い出したの!?」

 

アスナもあわてて駆け寄る。

 

「……あたし……あたし……あたし、ここには……いなかった……。ずっと、ひとりで、くらいとこにいた……」

 

ユイが顔をしかめた次の瞬間

 

「うあ……あ……あああ!!」

 

ユイの体が激しく揺れ、高い悲鳴を上げる。

 

身体が硬直した様に強張り、そして、気を失った。

 

アスナはユイを心配し、抱きしめる。

 

「何だよ……今の……」

 

先程のユイの光景に、キリトはそう零す。

 

「何が……起きたの?」

 

ミトは何が起きたのか理解できず、カイに尋ねる。

 

「分からない……ユイちゃんが急に………」

 

そうとしか言えず、カイは無意識に隣にいたノアの腕を掴む。

 

「ノア、大丈夫か?」

 

ノアに声を掛けるも、返事がない。

 

カイは、ノアの方を見る。

 

ノアはユイの光景に驚きも、恐怖も感じていなかった。

 

ただ、無言でユイを見ていた。

 

その姿に、カイは何故か得体のしれない寒気を感じた。

 

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