「それで、ユリエールさん。シンカーたちがいるダンジョンていうのは何処なんだ」
準備を整えたキリトがユリエールに尋ねた。
「ここです」
するとユリエールはそう答えた。
「ここって?」
「実は、《はじまりの街》の中心部に大きな地下ダンジョンがあるんです。シンカーたちは、多分そこの奥に」
「マジかよ。βテストの時はそんなの無かったぞ」
「確かに」
地下ダンジョンの存在に、元βテスターのキリトとミトは驚きを隠せなかった。
「上層攻略の進み具合によって解放されていくタイプなのでしょう。キバオウは、ここのダンジョンを独占しようと計画していました」
「専用の狩場があればもうかるからな。それに未踏破のダンジョンなら一度しか出ないレアアイテムとかもある。結構な儲けが出たんだろうな」
「それが、そうもいかなかったんですよ」
ユリエールの口調はわずかに軽快と言った感じで話す。
「なんでも60層クラスのモンスターが出るので殆ど狩りは出来なかったそうです。命からがら逃げだし、使った転移結晶の数で大赤字だとか
「ははは、なるほどな」
そんな話をしてるうちに、一同はダンジョンへの入り口に着く。
「ここが入口です。ちょっと暗くて狭いんですが……」
ユリエールは気かがりそうにユイとノアを見る。
ユイとノアはそれに気づき心外そうに
「ユイ、怖くないよ!」
「俺も平気です!」
そう言った。
「大丈夫ですよ。この子たち見た目よりずっとしっかりしてますから」
「将来が楽しみになる程にね」
アスナはユイの手を掴んでそう言い、ミトはノアの頭を優しくなでて言う
「うむ、きっと将来はいい剣士になる」
「いつかノアに、俺の刀を継がせてもいいな」
親馬鹿みたいに笑って言うキリトとカイに、アスナとミトは吹き出して笑う。
「では、行きましょう」
そんな光景に、ユリエールは野暮だったかと思い、ダンジョンへと案内した。
「ぬぉぉぉぉぉ!りゃぁぁぁぁ!」
「はああああああああああ!」
キリトとカイは、叫び声を上げながら、両手に握った2本の剣と焔の剣で、群がるモンスターを斬りまくる。
そんな、キリトとカイをアスナとミトはやれやれといった感じに呆れ、ユイは「パパがんばれー」と声援を送り、ノアは「流石父上です!俺も戦いたい!」と興奮し、ユリエールはキリトとカイのバーサーカーっぶりに唖然としてる。
ユリエールの話では、この地下ダンジョンで出現するモンスターは60層クラス。
安全に突破するには最低でもレベルが70以上ないといけない。
ミトとアスナのレベルは、アスナが87で、ミトが88。
カイとキリトに至っては、90を超えている。
60層クラスのモンスターなど、敵ではなかった。
「あの、なんかすみません……」
ユリエールは戦闘を任せっぱなしな事に、申し訳なさそうに謝る。
「いえいえ、気にしないで下さい」
「半分病気に近いですから」
そんなユリエールに、アスナとミトは気にしない様に言う。
「それより、シンカーとコーバッツ、ディアベルの位置はどうなってます?」
ミトの質問にユリエールはマップを見せて答える。
「シンカーたちはこの位置から動いていません。おそらくここが安全地帯だと。そこまで行けば転移結晶が使えます」
「いや~、戦った戦った!」
「久々に暴れたな」
ユリエールの話が終わると同時に、キリトとカイが一仕事を終えて戻って来る。
「すみません」
「いや、好きで戦ってるんだし、アイテムも出るし」
「へ~、何か良い物でも出た?」
「ああ!」
そう言ってキリトは、ある物をオブジェクト化する。
それはグロテスクな肉塊だった。
「な、なに……それ?」
「《スカベンジトードの肉》!ゲテモノ程うまいって言うからな!アスナ、後で調理してくれよ!」
キリトが出したそれは、先ほどまで戦っていたカエル型モンスターの肉だった。
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
アスナは、絶叫を上げ、肉を放り投げ、更に、共通アイテムタブから残りの肉を取り出し、全て破棄する。
「あ、ああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
キリトは情けない声を上げ、悲しそうにする。
「カエル肉か………鶏肉みたいな味って言うし唐揚げとか美味しいかしら………」
一方で、ミトはカエル肉に興味があるらしくどう調理しようか考えていた。
「ちょっとミト!変なこと言わないで!」
「ま、まぁ、ミトの腕なら変な味にはならないさ」
そんなミトにアスナは叫び、カイはフォローする。
その光景に、ユリエールは思わず、笑い出した。
「お姉ちゃん、笑った!」
すると、ユリエールの笑いにユイが反応した。
(そう言えば、昨日ユイちゃんがああなった時も、子供達が笑っていたな。笑いに何か特別な感情でもあるのか?)
カイはそんなことを考えながらも、キリト達と奥へと進んだ。
その後、順調にモンスターを倒していき、とうとう安全地帯が目に入った。
「安全地帯よ!」
アスナが声を上げる。
「奥にプレイヤーが3人、グリーンだ」
「シンカー!」
キリトが言うや否やユリエールは走り出した。
右手を上げ、声を上げる。
「シンカー!」
「この声!?ユリエールか!?」
ユリエールの声に気づき、シンカーと思しき人物が安全地帯の入り口から顔を出す。
「ユリエ―ル!」
「シンカー!」
シンカーの無事に、ユリエールは歓喜の涙を流し近寄る
「来ちゃダメだ!」
シンカーが叫んだ
その言葉と同時に4人は、視界の端にある物を見つけた。
黄色のカーソル。
《The Fatal-scythe》という名の固有名詞。
ボスモンスターだった。
「ユリエールさん!戻って!」
アスナが叫ぶが、ユリエールに聞こえてない。
通路から現れたソレは、ユリエールに向け手にした武器、鎌を振り下ろす。
「コーバッツ!!」
「承知!」
すると安全地帯から、ディアベルとコーバッツが飛び出し、ディアベルが盾で攻撃を受け止め、コーバッツが剣で攻撃を弾き飛ばした。
攻撃を防がれたボスモンスターは忌々しそうに、2人を見る。
ボスの姿はまるで死神のような恰好をした髑髏モンスターだ。
「ディアベル!コーバッツ!装備を持ってたのか!」
「カイ、それにキリト達!救出感謝する!」
「我々も、キバオウの言葉全てを信じていた訳じゃない。念のために、予備の武器は隠し持っていた」
「だが、ダンジョンを突破できない理由があったんだ」
「それが、コイツの存在だ」
ディアベルとコーバッツは目の前にいる死神を見上げる。
「なんだよ、このモンスター!?」
《識別》スキルで、モンスターのデータを確認しようとしたキリトが驚愕の声を上げる。
「カイ!こいつのデータが見えない!俺のスキル熟練度で見えないとなると、多分90層クラスのモンスターだ!」
「なっ!?……道理でディアベルとコーバッツが突破出来ないわけだ………!」
カイは刀を構え、ボスを見る。
「ディアベル!コーバッツ!皆を連れて退避してくれ!」
「な、何を言うんだ!?」
「君たちを見捨てて逃げられるか!我らも共に戦う!」
ディアベルとコーバッツは残って戦う意思を見せる。
「武器の耐久値が残り僅かだろ!そんな状態で戦わせられない!」
カイの言葉に、ディアベルとコーバッツは悔しそうに自身の武器を見る。
安全地帯に逃げるまでに行った戦闘で、2人の予備武装は大分耐久値を削られていた。
そんな状態で戦っても、役立つ所か足手纏いになるのは分かり切った事だった。
「頼む!ミトとノアを………皆を連れて行くんだ!」
「お前たちが退避したら俺たちもすぐ逃げる!早く!」
「くっ………!すまない!」
「………申し訳ない!」
ディアベルとコーバッツは悔しそうにしながらも、安全地帯へと戻る。
「ユイちゃんとノア君をお願いします!」
「貴方達だけで脱出して!」
すると、アスナとミトが、ユイとノアを預け、キリトとカイの元へと来る。
「アスナ、何してるんだ!?」
「ミトも!コイツは危険だ!」
「君達を置いて、逃げれる訳ないでしょ!」
「大丈夫よ、私たちなら倒せなくても、逃げる隙を作ることぐらいできる!」
2人の意志は固く、何を言っても聞かないと悟りキリトとカイはそれ以上何も言わず、武器を構える。
その瞬間、《The Fatal-scythe》が鎌を振り下ろす。
キリトは両手の剣を交差させ、更にアスナも細剣を重ね防御の体勢を取る。
だが、《The Fatal-scythe》の攻撃を重く強いらしく、キリトとアスナの体を容易く吹きとばした。
「キリト!」
「カイ、来るよ!」
《The Fatal-scythe》は、今度はカイに標的を定め攻撃する。
「悪いが、鎌の攻撃は分かってる!」
“焔群”で鎌の攻撃を受け流し、横に逸らす。
業火刀スキル《紅蓮燦爛》を使い、《The Fatal-scythe》に攻撃をする。
だが、《The Fatal-scythe》のHPは4段あるHPバーの一番上を1割削る程度だった
「くっ!硬すぎるだろ………!」
硬直で動けなくなった所に、《The Fatal-scythe》の鎌での攻撃が来る。
防御もできずに、鎌がカイに直撃しようとすると、間にミトが入って攻撃を受け止めようとする。
だが、受け止められずにミトも吹き飛ばされる。
なんとかカイは、ミトを受け止めるが、受け止めきれずにそのまま倒れ込む。
キリトとアスナ二人の防御をやすやすと崩し、ミトの筋力値を以てしても受け止めきれない威力に、ある程度威力が緩和した状態でも、カイが受け止めきれない衝撃。
全てが桁違いの強さだった。
カイは頭の中で、なんとかミト達を逃がそうと思考を巡らせる。
その時、突如ユイが4人の前に出た。
どうやら、ディアベルたちが転移しようとした瞬間に転移から逃げ出したらしい。
見ると、安全地帯の近くではノアも居た。
「バカ!逃げろ!」
キリトが声を上げる。
《The Fatal-scythe》が鎌をユイに振り下ろそうとする。
「大丈夫だよ。パパ、ママ」
振り下ろされた鎌はユイの手前で、何かによって阻まれている。
それは、紫色のシステムタグ《Immortal object》
それに全員がは驚いた。
それは所謂、不死属性だからだ。
そんなものがユイにあるのか、カイ達は理解できなかった。
すると、ユイは空中に浮かびあがり掌から焔を出す。
そして、その焔から一本の剣が生み出された。
その剣は炎を帯びて、《The Fatal-scythe》と同じ高さはある長い剣だ。
その剣を振りかざし、《The Fatal-scythe》に斬り掛かる。
《The Fatal-scythe》は鎌で剣を受け止めるが、剣は鎌ごと斬り裂き、《The Fatal-scythe》の額に落ちる。
そして、剣の炎が《The Fatal-scythe》を包み込み、消滅させた。
静かになった空間の中、ユイは振り向く。
「パパ、ママ、全部思い出したよ」
《The Fatal-scythe》が消滅した後、ユイはキリトとアスナ、そして、カイとミトを安全地帯へと連れて行った。
カイ達4人は何がなんだがと言った表情をする中、ノアだけは静かにしていた。
「《ソードアート・オンライン》という名のこの世界は、ひとつの巨大なシステムによって制御されています」
ユイは今までの子供っぽい喋りが嘘のように、流暢に話し出した。
「システムの名前は《カーディナル》。それが、この世界のバランスを自らの判断に基づいて制御しているのです。カーディナルはもともと、人間のメンテナンスを必要としない存在として設計されました。二つのコアプログラムが相互にエラー訂正を行い、更に無数の下位プログラム群によって世界の全てを調整する……。モンスターやNPCのAI、アイテムや通貨の出現バランス、何もかもがカーディナル指揮下のプログラム群に操作されています。……しかし、ひとつだけ人間の手に委ねなければならないものがありました。プレイヤーの精神性に由来するトラブル、それだけは同じ人間でないと解決できない……そのために、数十人規模のスタッフが用意される、はずでした」
ユイがそこまで語り、キリトが口を開く。
「ユイ……つまり君は、GM……ゲームマスターなのか?アーガスの、スタッフ……?」
キリトの質問に、ユイは静かに首を横に振って答える。
「カーディナルの開発者たちは、プレイヤーのケアすらもシステムに委ねようと、あるプログラムを試作したのです。ナーヴギアの特性を利用してプレイヤーの感情を詳細にモニタリングし、問題を抱えたプレイヤーのもとを訪れて話を聞く……」
ユイはそこで一拍置き、自身の正体を明かした。
「《メンタルヘルス・カウンセリングプログラム》、MHCP試作1号、コードネーム《Yui》。それが私です」
「プログラム……?AIだっていうの……?」
ユイは悲しそうな笑顔のまま頷いた。
「プレイヤーに違和感を与えないように、私には感情模倣機能が与えられています。……偽物なんです、全部……この涙も……。ごめんなさい、アスナさん……」
「でも……でも、記憶がなかったのは……?AIにそんなこと起きるの……?」
「……二年前……。正式サービスが始まった日……何が起きたのかは私にも詳しくは解らないのですが、《カーディナル》が予定にない命令をわたしに下したのです。プレイヤーに対する一切の干渉禁止……。具体的な接触が許されない状況で、私はやむなくプレイヤーのメンタル状態のモニタリングだけを続けました。状態は……最悪と言っていいものでした……。ほとんど全てのプレイヤーは恐怖、絶望、怒りといった負の感情に常時支配され、時として狂気に陥る人すらいました。私はそんな人たちの心をずっと見続けてきました。本来であればすぐにでもそのプレイヤーのもとに赴き、話を聞き、問題を解決しなくてはならない……しかしプレイヤーにこちらから接触することはできない……。義務だけがあり権利のない矛盾した状況のなか、わたしは徐々にエラーを蓄積させ、崩壊していきました……」
ユイは声を震わせ語り、キリトもアスナも何も言えずに聞き続ける。
「でも、ある日、いつものようにモニターしていると、他のプレイヤーとは大きく異なるメンタルパラメーターを持つ2人のプレイヤーに気付きました。喜び……安らぎ……でもそれだけじゃない……。この感情はなんだろう、そう思って私はその2人のモニターを続けました。会話や行動に触れるたび、私の中に不思議な欲求が生まれました。そんなルーチンはなかったはずなのですが……あの2人の傍に行きたい……私と話をしてほしい……。少しでも近くに居たくて、私は毎日、2人の暮らすプレイヤーホームから一番近いシステムコンソールで実体化し、彷徨いました。その頃にはもう私はかなり壊れてしまっていたのだと思います」
ユイは顔を上げて、アスナとキリトを見る
「森の中で、2人の姿を見た時……すごく、嬉しかった……。おかしいですよね、そんなこと、思えるはずないのに……。わたし、ただの、プログラムなのに……」
とうとう涙を溢れ、ユイは口を噤んだ。
その姿に、キリトとアスナだけでなくカイとミトも言葉に出来ない感情に打たれた。
そんな中、カイはユイに一歩近づく。
「ユイちゃん、君は君だ。そうやって考えて、行動して………涙を流す君がただのプログラムな訳ない」
「そうよ」
するとミトもユイに近寄って言う。
「システムもプログラムも関係ない。貴女は正真正銘、アスナとキリトの娘よ」
「カイさん……ミトさん………」
「2人の言う通りだ」
キリトがユイに近付き、その手を握る。
「ユイはもうシステムに操られるだけのプログラムじゃない。だから、自分の望みを言葉にできるはずだよ。ユイの望みはなんだい?」
「……私は……私は……ずっと一緒に居たいです。パパと……ママと……いい所に居たいです」
「ずっと、一緒だよ、ユイちゃん」
アスナは泣きながらユイを抱きしめる。
「ああ。ユイは俺達の子供だ。一緒に帰ろう。そして、あの家でいつまでも暮らそう………」
「いや、残念だがそれはできない」
次の瞬間、キリト達の背後で焔が起きた。
その声と焔は、ノアが立っていた場所から起きた。
「ノア!?」
突如吹き出した焔にミトが声を上げる。
そして、焔が収まる瞬間、焔から何者かが飛び出し、その何者かは手にした黒い刀をユイへと向けた。
だが、その黒い刃は赤い刃によって阻まれた。
そして、そのまま刀は弾かれ、赤い刃がその何者かを襲う。
業火刀スキル、カウンター技《残月》。
迫る刃を何者かは、素早く引き戻した黒い刀で防ぎ、距離を取った。
カイはその何者かを、冷静な目で見ていた。
「誰だ!」
キリトはユイを庇う様に背に隠し、尋ねた。
「ノア」
すると、何者かは短くそう答えた。
その名に、ミトもアスナもキリトも驚きを隠せていなかった。
何故なら、今のノアは少年の姿ではなく青年の姿をしているからだ。
唯一、カイだけは落ち着いていた。
「こう言えば分かり易いかな。《オールシステム・メインテンス・アドミニストレータ・プログラム》、略称《ASMAP》試作1号、コードネーム《ノア》。それが俺です」
「なんだって……!」
「日本語で言えば、全システム維持管理プログラム。《カーディナル》のプロトタイプと思ってもらえればいい」
「《カーディナル》の、プロトタイプだって………?」
「カーディナルが作られる前に、このSAO世界の維持と管理をするはずだった存在。だが、俺よりも遥かに優れた性能の《カーディナル》が開発されたことで、俺の存在は永久凍結と言う形で封印された」
ノアの口から語られることに、誰もが驚きを隠せなかった。
「だが、2年前……。正式サービスが始まった日、どういう訳か俺の凍結は解除されていた。しかし、《カーディナル》と言う存在があったことで、俺には何もすることが出来なかった。そこに居る《MHCP-001》と同じです。義務だけがあり権利のない矛盾した状況。そんな中にいる内に、俺もエラーを蓄積していった」
拳を握って悔しそうにするノア。
「そんなある日、《カーディナル》が俺に対し接触してきた。理由は、エラーを蓄積しプログラムに致命的欠点をもった《MHCP-001》の廃棄命令だった。《カーディナル》はSAO世界の維持と管理に忙しいからと、俺の権限の一部を回復させ、《MHCP-001》の処分を任せた」
そう言い、ノアはユイを見る。
「俺は言われた通りに、《MHCP-001》の廃棄に取り掛かった。だが、直後《MHCP-001》は、命令違反を犯し、システムコンソールで実体化した。それに釣られて、俺もまた実体化した。長年のエラーと予期できなかった事態は俺の記憶を破壊し、俺は役割を失った。だが、今さっきその石に触れて思い出した」
ノアはカイ達の背後にある黒い石を指差す。
「それはただの装飾的オブジェクトじゃない。GMがシステムに緊急アクセスするために用意されたコンソールだ。《MHCP-001》も、それに触れたことで全てを思い出し、そこからシステムにアクセスし、《オブジェクトイレイザー》を呼び出して、モンスターを消去させた。明らかに与えられた役割の範疇を超える行いだ。すぐに消去する」
ノアは刀を構える。
キリトとアスナは剣を抜き、ユイを守ろうとする。
「止めろ、キリト。アスナも、剣を引いてくれ」
「カイ!悪いが、それはできない!お前とミトの息子でも、俺たちの娘を殺すって言うなら、俺は戦うぞ!」
「カイ君、下がって!………カイ君やミトが、ノア君と戦う必要はない!私たちが!」
「何言ってるんだよ?俺が戦うって言ってるんだ」
そう言ってカイは一歩前に出る。
「ノア。ユイちゃんを殺したいなら、俺を殺してからにしろ」
カイの言葉に、ノアは僅かに反応する。
「だ、ダメです!」
するとユイが叫び声をあげた。
「今の彼は、脅威を排除するプログラムです!カイさんが目的遂行の邪魔と判断したら、プレイヤーデーダを消される危険もあります!それは、この世界での死と同じです!私なんかの為に………死ぬ必要はないんです…………!
ユイが涙を流し言う。
「………ユイちゃん。悪いけど、これは君の為じゃない」
カイは、ノアを見る。
「これは………女の子に剣を向けた、馬鹿息子へのお仕置きだ」
カイはそう言い、刀を構える
「…………カイ」
そこで、ミトが口を開いた。
「………ノアを………助けてあげて」
「ああ、分かってる」
優しい口調でカイはいい、ミトは安心した笑みを浮かべる。
「さぁ、ノア。お仕置きの後でユイちゃんに謝るぞ」