ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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コラボ最終話です!


剣聖と道化師

「ぶっ飛べ!」

 

カイは受け止めていたコボルドロードの刀を弾き返し、そのままコボルトロードとの距離を取る。

 

「やっと帰って来たな、馬鹿カイ」

 

「馬鹿な相談役の復活だね」

 

「ですが、そこで驚いてる馬鹿ゴリラよりはマシな馬鹿ですよ」

 

「「違いない」」

 

「ちょっと待て!馬鹿なゴリラってなんだ!?俺は馬鹿でもゴリラでもない!ちょっと頭の弱い、バナナが大好きな人間だ!」

 

「「「え?人間だったの?」」」

 

「そんな反応するな!」

 

こんな時でもコントをするキリト達に、カイは困ったように笑う。

 

「懐かしいだろ?」

 

そんなカイに、テンが槍を担いで隣に立つ。

 

「ああ、涙が出そうなぐらいにな。それで、こっからどうする?」

 

《アニールシミター》を抜き、カイはコボルドロードを見る。

 

コボルドロードは、カイ達を睨みつけ、咆哮を上げる。

 

レイドパーティーメンバーのHPの回復は殆ど終わっているが、士気が絶望的だった。

 

前情報と違うボスの使用武器、更に新たに出現した番兵(センチネル)、そして、指揮官のディアベル一時離脱。

 

それにより、前線は崩壊寸前。

 

数十秒もたてば、完全に崩壊し、死亡者が出る。

 

「このままじゃまずい。なんとかして立て直さないと」

 

「でも、どうしたら………」

 

生半可な指示では、余計に混乱させることになる。

 

その為、何か短く、強烈な一言を言わなければならない。

 

その時だった。

 

「全員、ちゅうううううううううもおおおおおおおおおおおおおく!!」

 

ディアベルが、ボス部屋全体に響き渡る声を出した。

 

その声に全員が驚き、混乱する声が消える。

 

どう言うわけか、コボルドロードも驚き、動きが止まったように見える。

 

「これより、第1層フロアボス討伐作戦、最後の指示を伝える!」

 

そう言うと、ディアベルはゆっくりとした足取りで、キリトの隣に立ち、キリトの肩に手を置いた。

 

「現時刻をもって、前線指揮を俺から彼に移行する!彼の指示の下、ボスを倒せ!」

 

ディアベルが出した指示に、周りは一瞬困惑する。

 

ここまでボスと戦ってこれたのは、ディアベルの指示があったからだ。

 

その指揮権を急にキリトに任せられる。

 

不安が出ないのがおかしかった。

 

「俺は従うぞ!」

 

最初に賛成の声を上げたのは、エギルだった。

 

「それに、彼にはボスのスキルの知識がある!ディアベルがそう言うなら、それに従うまでだ!」

 

エギルが賛同した事で、他のプレイヤーたちの不安は一気に消え、消えかけていた士気は再び盛り返した。

 

「キリトさん、ここからは貴方に全てを任せる。指揮、頼めるか?」

 

「………この状態で断れると思ってるのか?」

 

キリトは乾いた声で笑い、立ち上がる。

 

「奴を包囲すると、範囲攻撃が来る!B隊は無理にスキルを迎え撃たないで、防御に徹しろ!」

 

「了解!」

 

指示をもらったエギルはB隊のメンバーを引き連れ、コボルドロードの攻撃を防ぐ。

 

「D隊はB隊に向かおうとする番兵センチネルを引き離してくれ!引き離したら、E隊と協力し撃破!F隊は、D隊、E隊の支援!A隊はB隊のリカバリーができるように、ボスのパターンをよく見てくれ!C隊は合図と共に全力攻撃!合図はディアベルに一任する!ディアベル、行けると思ったら全力でソードスキルを叩きこんでくれ!G隊はC隊の支援に!クソ運営(茅場晶彦)に目にもの見せてやれ!」

 

「「「「「運営ザマァ!!」」」」」

 

キリトの指示に、全員が従い、着実にコボルドロードにダメージを与えていく。

 

その時、コボルドロードのHPが赤くなった瞬間、一人のプレイヤーが足をもつらせてコボルドロードを囲む形になってしまった。

 

「まずい!範囲攻撃が来るぞ!」

 

キリトが叫ぶも、既にコボルドロードが《旋車》を使おうと動作に入ろうとした。

 

「間に合え!」

 

キリトが飛び出し、《ソニックリープ》を使い、コボルドロードが《旋車》を出すのを妨害した。

 

そして、コボルドロードは、人型モンスター特有のバットステータスの《転倒》状態になった。

 

「今だ!C隊、全力攻撃!」

 

ディアベルの合図でC隊全員が、ほぼ同時に縦斬り系のソードスキルを放つ。

 

コボルドロードのHPががりがりと削られた。

 

後一回当てれば倒せるのにコボルドロードは立ち上がり、攻撃の動作に入った。

 

「くっ、削り切れなった!」

 

ディアベルは悔しそうに歯ぎしりする。

 

硬直により、C隊は動かなかった。

 

「テン!ミト!グリス!ヴェルデ!ヒイロ!それにアスナ!今日は全員カイをサポートだ!カイの復帰祝いだ!」

 

「とか言って、ちゃっかりとLA(ラストアタック)ボーナスを手に入れるつもりでしょ」

 

「し、しないよ!そんなこと!」

 

「やりかねぇな。キリトなら」

 

「やりかねませんね」

 

「というかやるだろうね」

 

「やりそうよね。キリトくんって空気読めないとこあるし」

 

「アスナまで!?」

 

「ま、日頃の行いだな、キリト」

 

「久々の再会なのにカイも酷い!?」

 

カイとアスナにまで言われるとは思っていなかったらしく、キリトは驚きを隠せない。

 

相変わらずのやり取りをしながらもコボルトロードの猛攻を躱し、全員は応戦し続ける

 

「ちっ…!さすがに固い…!こうなりゃ、とっておきを披露してやらぁ!」

 

「タンクは任せとけ!」

 

「行くよ!テン!カイ!」

 

「あいよ!」

 

「ああ!」

 

グリスが刀を抑え、アスナとヴェルデが《リニアー》で攻撃。キリトが《ソニック・リープ》を放ち、ヒイロが《リーバー》で真上から斬りかかる

 

「今だっ!」

 

ミトが叫ぶと同時に彼女が鎌を振り被り、その先にいたテンとカイが風圧で前に押し出される

 

「おりゃあああああああ!」

 

「うおおおおおおおおお!」 

 

《アニールランス》と《アニールシミター》が光り輝き、コボルトロードに攻撃を叩き込む。

 

槍スキル《ヘリカル・トワイス》

 

曲刀スキル《トレブルサイズ》

 

同時に回転攻撃を叩き込み、最後に槍と曲刀を振り被り、ありったけの力を込め、叩き付ける。

 

それでも、コボルドロードのHPはまだ僅かに残っていた。

 

「行け、キリト!」

 

「復帰祝いはまだ今度でいいから、決めて来い!」

 

「任せろ!」

 

最後にキリトが飛び出し、片手剣縦二連撃の《バーチカル・アーク》でトドメを指す。コボルトロードはポリゴンとなり、バリンッ!と砕け散った。

 

同時に後方の番兵(センチネル)も砕け散り、長い初陣に終止符が打たれた。

 

コボルドロードが消え、周りには静寂が漂った。

 

誰もが緊張に包まれた。

 

もしかしたら、βテストの時と違うとこがあるかもしれない。

 

だが、何も起こらない。

 

そしたら、急に目の前に獲得経験値と分配されたコルが表示された。

 

それを見て確信した。

 

勝った。

 

まわりもそれを見たらしく歓声を上げた。

 

「よし、キリト。第2層へ行ったら、直ぐにLA(ラストアタック)ボーナスをコルに換金しようぜ」

 

「するかっ!」

 

「なにっ!お前ら!こいつ、手柄を独り占めにする気だ!」

 

「なんだとっ!?キリトのくせに上等じゃねぇか!表に出ろ!」

 

「グリスさん、今は外ですから既に表ですよ。それはそうとキリトさん、独り占めはよくありませんね。どうでしょう?ここは僕が一先ず、預かるというのは」

 

「預かってどうするつもりなんだ?」

 

「無論、最後は売ります」

 

「結局は売るんじゃないか!!」

 

「大丈夫、あとで似たようなヤツを買っておけばいい。キリトさんはバカだから、気付かない」

 

「ヒイロくーん?本人がいるのによくもまぁ、ぬけぬけとそういうことが言えるよなぁ?お前は」

 

「………居たんだ」

 

「居たわっ!!!」

 

「どんまい、元気出せよ。キリト」

 

「慰めるなっ!バカテン!!」

 

漫才にも似た相変わらずなやり取りを続ける面々。

 

しかし、その楽しい雰囲気も長くは続かなった

 

「なんでや!」

 

「キバオウ……?」

 

「どうしたんだ?急に」

 

「急にもへったくれもあるかい!お前らは見てへんかったんか!こいつらは、ボスの使うスキルのこと知ってたんやぞ!?おかしい思わへんのか!」

 

「い、言われてみれば…」

 

「まさか!アイツら、全員がβテスターなのか!?」

 

「βテスターでパーティを組んでたのか!?卑怯だぞ!」

 

キバオウの発言に周りが騒めき出す。

 

彼が何故、今のような事を言ったのか理解出来ないキリト達であったが背後に佇むソウテンだけは不敵に笑っていた

 

そんなテンを見て、カイは先程キバオウとテンが何やらコソコソと話をしていたのを思い出す。 

 

「……テン。まさか、お前の仕業か?」

 

「さあ、なんのことやら。ただまあ?この場を平和的に収めたいんなら……どうするかは分かるよな?キリト」

 

「……ったく、相変わらずだな。うちのリーダーは。仕方ないから、その策略にまんまと嵌ってやるよ」

 

「さっすが。おめぇさんのそういうとこ、嫌いじゃないぜ?」

 

「うわっ…出た。相変わらず、自が出ると胡散臭さを増すな、お前は」

 

「うっせ」

 

ソウテンとキリトの会話を聞き、ミト達も全てを理解したらしく、二人が口を開くのを黙って待つ。

 

しかし、アスナは違った

 

「ちょっと待って!β時代の情報は私達も攻略本で得ていたわ。あのボスの情報について大きな差はなかったはず。ただβ時代と同じだと思い込んだ私達が窮地に陥りそうになった時、彼はもっと先で得ていた知識を応用して教えてくれた。そう考えるのが自然じゃない?」

 

「俺もそう思う。それに、攻略本には情報はあくまでβ時代の物で、正式版とは差異があると注意もあった。俺たちは、その注意を忘れ、偵察戦を怠った。彼等に感謝こそすれ、批難するのは違うだろ」

 

「いいや違うね、アルゴとかいう情報屋とそいつはグルだったんだ。元βテスター同士共謀して、善意のふりをして俺達を騙して、自分たちだけ美味しいところを掠め取っていこうとしたんだ」

 

ディアベルのパーティーメンバーのシミター使い《リンド》がアスナ、エギルに物申す。

 

自分の仲間が恩人を悪く言うのを許せず、ディアベルは彼に歩み寄る

 

「待ってくれ!彼等は悪くない!俺だ!俺が悪いんだ!だから、責めるなら俺を!俺を責めてくれ!」

 

「ディアベルはん。すまんけど…邪魔させへんで」 

 

だが、キバオウがディアベルを抑えた

 

「ぐっ……!き、キバオウさん…な、なにを…」

 

「ソウテンはんとの約束や。あんさんを悪者には出来ひん、許してや」

 

キバオウがディアベルの口をふさぐ、其れが合図だったのか、ソウテンがキリトの肩を叩く

 

「あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」

 

突如、響く笑い声。全員がキリトの方に視線を向けた

 

「元βテスターだって?俺をあんな素人連中と一緒にしないで貰おうか。いいか。SAOのCBT(クローズドベータテスト)はとんでもない倍率の抽選だったんだぜ。受かった1000人のプレイヤーで何人、本物のMMOゲーマーがいたと思う?殆どが、レべリングも知らない初心者だった。あんたらの方が100倍マシだぜ。だが、俺は……いや、俺たちは違う」

 

「βテスターの時に誰も到達出来なかった層まで到達したキリトさんから事前に刀スキルのことを聞き、対策を立てていた。いやぁ…実に滑稽でしたよ。情報に踊らされる貴方たちは」

 

「全くだぜ、思わず笑いそうになっちまった。どいつもこいつも何でも鵜呑みにしちまうんだからよぉ」

 

「ホントだね。それでもゲーマーなの?笑いを通り越して、欠伸が出そうだよ。特にディアベル…だっけ?君は面白かったよ、ボスに襲われた時なんか最高だった」

 

「ここだけの話、私たちの狙いは最初からLABラストアタックボーナスだったのよ。茶番に付き合ってくれてありがとう、ビギナーのみなさん」

 

キリト、ヴェルデ、グリス、ヒイロ、ミトの順に元βテスターへの矛先が自分たちへ向くように誘導していく

 

今回の作戦は攻略を最優先とするチームを作り上げ、テスターへの怒り全てを彼等が背負うというモノだ。ディアベルは知らなかったがキバオウには事前にソウテンが取り引きの対価として、要求していた。故に最初、彼が叫んだのは芝居であった

 

「ふざけるな!やっぱり、お前らが悪いんじゃないか!」

 

「最低な奴らだな!揃いも揃って!」

 

「俺たちはお前らの操り人形じゃないぞ!そこでへらへらしてる奴もグルか!?この道化野郎!」

 

「道化……いいね、その響き。なら、俺は今から、こう名乗ろう」

 

道化。

 

その単語に反応したソウテンが笑みが更に不敵で軽薄な微笑に変わる

 

アイテムストレージを開き、現れた仮面を顔の上半分に冠る

 

「我々は彩りの道化(カラーズ・クラウン)、リーダーを務めますは槍使いにして、道化師クラウンの名を冠する、ソウテンにございます」

 

「同じく片手剣使いのキリト。βテスターにしてチーター、略してビーターとでも名乗ろうか。これからは、元βテスターと一緒にしないでもらおうか」

 

「同じくハンマー使いのグリスだぜ!誰からの喧嘩でも買ってやる!まあ、返り討ちにしてやるがな!」 

 

「同じくヴェルデ。我が武器は細剣、それと情報。貴方たちの行く末が我々の旅路の邪魔にならぬ事を深くお祈り致しております」

 

「同じく曲刀使いのヒイロ。我等がリーダーの命に従い、今をもって、アンタらは単なるプレイヤーからビギナーへ格上げだ。良かったね」

 

「同じく鎌使いのミト。金輪際、私たちに関わらないことをオススメしておくわ。そうそう…言い忘れてたけど、私もβテスターよ」

 

テンたちがそう言い終えると、テンはストレージから同様の仮面を取り出し、カイへと向ける。

 

カイはその仮面を受け取ろうとしたが、一瞬躊躇する。

 

(本当に、今の俺がこれを受け取ってもいいのか?一方的にこいつらを遠ざけていたのに…………)

 

カイは思わず、テンを見た。

 

そんなカイの心情を察してか、テンは仮面の下でほくそ笑む。

 

「ダチの所に戻るのに理由なんて、帰りたい、それだけで十分じゃねぇか?」

 

テンに言われ、カイは目を見開き、そして笑い、仮面を受け取った。

 

「最後に、曲刀使いのカイ。リーダーの命により、これより彩りの道化(カラーズ・クラウン)へと復帰する。ディアベルとその仲間よ、楽しかったぞ、お前らとの友達ごっこはな」

 

ディアベルの仲間たちは、ここまで一緒にやって来たカイが、テンたちの仲間だったことを知り、ショックを受けていた。

 

そんなことを意に返さす、カイはテンたちの隣に立つ。

 

「如何でしょう?この錚々(そうそう)たるメンバー。其れでは今回はこの辺りで幕引きと致しましょう。ご静聴とご歓声に感謝を申し上げます、観客の皆様(ビギナー)たち」

 

テンを中心に深々と御辞儀する面々、全員が全てをまるで嘲笑うかのような表情を浮かべている

 

「第2層の転移門は俺たちが有効化(アクティベート)しといてやる。精々、ゆっくりと来るんだな」

 

「あっ、でも初見のModとかに殺されないようにね。そうなっても私たち、助けてあげないから」

 

「じゃ、そういう訳で」

 

第2層へと続く階段を上がっていくソウテン達。

 

その後姿に誰も何も言わなかった

 

それはまるで彼等の誕生を祝うかのように

 

道化の仮面を冠った、六人を見送るかのように

 

彩りの道化(カラーズ・クラウン)

 

後々にアインクラッドで名を轟かせる小規模ギルド、これはその一団が誕生した記念すべき日

 

「で……有効化(アクティベート)ってなに?」

 

「知らずに言ってたのかよっ!?」

 

「やっぱり、テンは可哀想な頭ね。だから、可哀ソウテンなのよ」

 

「やめろ!へんな造語を作るな!定着したら、どうする!」

 

「安心しろよ、俺たちはお前がどんなに可哀想でもリーダーだと思ってるからよ。おとぼけソウテン」

 

「全くです。例え、可哀想で馬鹿野郎だとしても僕たちのリーダーは貴方だけですよ。おバカリーダー」

 

「そうだよ。誰が何と言おうがリーダーはリーダーだよ、迷子しか取り柄がないけど」

 

「お前ら、バカにしてるだろ!?」

 

ワイワイギャーギャーと騒ぐそんな彼らを、カイは眺めながら笑う。

 

「ねえ、カイ」

 

そんなカイに、ミトが声を掛ける。

 

「ミト………すまなかったな。今まで連絡の一つもしないで………」

 

「………ううん、カイとまた逢えた………それだけで十分だよ」

 

そう言うとミトはカイに抱き付く。

 

カイもミトを抱きしめ返す。

 

そんな2人をテンたちが見る。

 

「後は若いお2人に任せるとしますか」

 

「邪魔者は退散だな」

 

「馬に蹴られたくないしね」

 

「貴方も行きますよ。グリスさん」

 

「え?どういうことだ?あ、ちょっと!首根っこを掴むなって!」

 

騒ぎながら去って行くテンたち。

 

すると、テンは最後に振り返った。

 

「カイ、例の奴。期限なしって言ったけど、やっぱ期限付けるわ」

 

「は?」

 

「期限は今日だ。じゃ、そう言う事で」

 

「あ、おい!」

 

カイはテンを呼び止めるも、テンはそそくさと去って行く。

 

「カイ、例の奴って?」

 

「えっと、だな…………はぁ~………あのな、ミト。俺、お前の事が————」

 

その先の言葉は、カイとミトしか知らない。

 

だが、ミトは顔を真っ赤にし、両手で口を押え、数秒震えた後、カイへと思いっきり抱き付いた。

 

その様子を、どこかのネズミの情報屋が見ていたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったのか、テン」

 

第2層へと向かう途中の階段で、キリトがテンに聞く。

 

「なにがだ?」

 

「ミトさんの事ですよ」

 

「リーダーだってミトさんの事好きなのに、良かったの?」

 

「なにっ!?テン、お前、ミトが好きだったのか!?」

 

グリスを除き、全員がテンがミトに対して好意を持っていることに気づいていた。

 

そのテンが自分の気持ちを押し殺して、ミトをカイに譲った。

 

確かにミトはカイの事が好きだし、カイもミトを好きでいる。

 

そして、キリト達もカイの事を好いているし、カイとミトの2人がそう言う関係になるのに文句はない。

 

しかし、今日までミトを支えていたのは、間違いなくテンだった。

 

だが、それではあまりにもテンが可哀想過ぎる。

 

それがキリト達の想いだった。

 

「いいんだよ。確かに、俺はミトが好きだ。でも、それと同じぐらいカイが好きなんだよ」

 

そう言って、テンはキリト達より一歩前に出て振り向く。

 

「俺は、アイツらに幸せになってほしいんだ。なら、あの2人が付き合うのはこれ以上ないぐらいいい事だ。そう思わないか?」

 

テンの台詞に、キリト達はぽかーんとし、そして、笑った。

 

「全くお前らしいな、テン」

 

「今回ばかりは、慰めてあげますよ」

 

「リーダー、後で焼き鳥上げる」

 

「よく分かんねぇけど、この次があるってテン!」

 

三者三様の慰めを貰い、テンは笑う。

 

「別に慰めなんていらねぇよ。てか、大変なのはここからだぞ」

 

「「「「は?」」」」

 

「カイが戻って来たって事は、アレも復活する」

 

「あ、アレだと!?」

 

「冗談ですよね!?」

 

「冗談じゃない。ミト考案のカイの大好きな鍋、マヨネーズ鍋がな!」

 

マヨネーズ鍋。

 

鍋に大量のマヨネーズを入れ、それを人肌に温めた物の中に、あらゆる具材を投入し作るテンたちの一番嫌いな鍋だ。

 

「あんな犬の餌が復活するなんて………!」

 

「この世で一番の兵器だぞ、あれは!?」

 

「鼻に来るマヨネーズ臭に、マヨネーズの味しかしない具材…………思い出すだけで胃の中がぐるぐるする………」

 

「カイが居なくなってから、月1で出されたよな…………」

 

「食べたくなかったけど、あの時のミトさんの表情を見ると………」

 

「残せませんからね」

 

「パスタに絡めてもマヨネーズ味だったな。アレ…………」

 

「これからは週1で出されるな」

 

今後の食卓への不安を抱えつつ、全員がカイの復帰を喜んでいるのには違いは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あり得たかもしれない、もしもの世界線に於ける出会いと再会の物語。…お楽しみいただけましたか?其れでは、今宵の舞台は……此れにて、幕引きと致しましょう」




青メッシュ先輩が、向こうの作品の設定でカイのプロフィール書いて下さいました。



カイ(kai)/神里伊緒

年齢:18

「焔の剣聖」異名を持つ刀使いの少年。

小規模ギルド「彩りの道化(カラーズ・クラウン)」の相談役

炎を彷彿させる赤いコート、赤く透き通るような輝きを放つ刀が特徴的な出立ち。
怒りを打つけ捲るソウテン達の抑止力とも呼べる存在で、彼等の相談役という重要な立ち位置を確立している

基本的には傍観者の常識人枠ではあるが好物のマヨネーズを馬鹿にされると怒り狂う生粋のマヨラーであり食に拘りがあるメンバーと喧嘩に発展することも少なくない。

ミト、キリトには劣るがゲーム好きでもありSAO正式サービスは最高の誕生日プレゼントとも言える

現実の彼は天哉達との出会いから一年後、家庭の事情でカラーギャング「吏可楽流(リベラル)」から脱退。

その際に天哉と拳で語り合い、彼に敗北。「ミトへの告白」という約束と共に「いつでも帰って来い………ダチ公」という再会の約束を交わし、SAOで彼等と再会した後に約束通り、「彩りの道化(カラーズ・クラウン)」へと正式に加入した
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