ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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エピローグ

「カイ………俺は………なんてことを………!」

 

カイと茅場のアバターが消滅後キリトは持っていた“エリュシデータ”を落とし、その場に膝を突いた。

 

「キリト君!」

 

「おい、大丈夫か!」

 

「しっかりしろ!」

 

そんなキリトに、麻痺が解けたアスナとクライン、エギルが駆け寄る。

 

「俺の所為だ……!」

 

「何言ってやがる!カイを殺したのはお前じゃねぇだろ!」

 

「酷なこと言うが、あの時、カイのHPは底を尽いてた………お前の所為じゃ………」

 

「違うんだ………あの時、あそこでソードスキルなんて使わなければ…………!カイは、俺が殺したも同然だ………!俺は、自分の手で相棒を…………!」

 

キリトはそのまま涙を流した。

 

そのキリトに、3人は何も言えなかった。

 

「おい!何してやがる!」

 

「ミトさん、止めて下さい!」

 

「武器を取り上げるぞ!」

 

すると、背後でトバルとレオ、ディアベルの声が聞こえ振り返ると、トバルとレオがミトの腕を抑え、ディアベルがミトから武器を取り上げていた。

 

「離して!お願いだから!」

 

「自殺しようとした奴を離せるかよ!」

 

ミトはカイが死んだことにショックを受け、自ら死のうとしたらしく、それをトバルとレオ、ディアベルが止めたらしい。

 

「だって!カイが……カイが!……カイが居ない世界なんて、私…………!」

 

とうとうミトは泣き出し、体の力が抜ける。

 

そのまま床に座り込んだミトは、涙を流し続けた。

 

「まだ、カイとちゃんと会えてないんだよ………まだ、カイの本当の名前だって知らない………それなのに!」

 

涙を流し続けるミトに、アスナは近寄り優しく抱きしめた。

 

アスナは何も言えなかった。

 

今のミトは、自分の有り得たかもしれない姿だからだ。

 

もし、死んだのがカイではなくキリトだったら、きっと、自身もミトみたいに命を絶とうとしたはずだからだ。

 

だからこそ、気軽に「死ぬな」とは言えなかった。

 

『現在 ゲームは 強制管理モードで 稼働しております。 全てのモンスター及びアイテムスパンは 停止します。 全てのNPCは 撤去されます。全プレイヤーのHPは 最大値で固定されます』

 

その時、自動音声によるアナウンスが流れ出した。

 

『アインクラッド標準時 11月7日 14時55分 ゲームはクリアされました。 プレイヤーの皆様は 順次 ゲームから ログアウトされます。 その場で お待ちください』

 

そのアナウンスと共に、全プレイヤーがログアウトされていく。

 

そして、ミトは泣きながらゲームからログアウトされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何処だここ?」

 

気が付くと、カイは分厚い水晶の板の上にいた。

 

周りは夕日で、赤く照らされていた。

 

「死後の世界……じゃないか」

 

カイは自分の服装が、ボス戦で着ていた物だと言うのに気づきそう結論付ける。

 

試しに右手を下ろすと、メニューウィンドウが開かれ、【最終フェイズ実行中 現在34%完了】と表示がされていた。

 

「なるほど。ナーヴギアが脳破壊のシークエンスを実行してるのか………まさか、誕生日の翌日に死ぬとはな。ま、誕生日が命日にならなかっただけ良しとするかな」

 

そんなことを言いながら、メニューウィンドウを消し、辺りを見渡す。

 

すると、視線の先に《アインクラッド》が崩壊していく姿があった。

 

「中々に絶景だな」

 

いつの間にかカイの隣に一人の男性がいた。

 

それは茅場昌彦。

 

ヒースクリフの姿ではなく、SAO開発者としての姿でそこに居た。

 

「現在、アーガス本社地下五階に設置されたSAOメインフレームの全記憶装置でデータの完全消去を行っている、あと十分でこの世界は消滅するだろう」

 

「あそこに居た人たちは………ミトはどうなった?」

 

「心配には及ばない。先程、生き残ったプレイヤー、6147人のログアウトが完了した」

 

「あの世界で死んだ連中は?」

 

「彼らの意識は帰って来ない。死者が消え去るのは何処の世界でも一緒さ。君とは最後に話をしたくてこの時間を作らせてもらった」

 

「なぁ、どうして、アンタはこんなことを?」

 

カイはその質問を茅場にした。

 

キリトと何度が話し合った、茅場の目的。

 

茅場はこの世界そのものが目的と、デスゲーム初日に言った。

 

だが、その目的がなんなのかカイとキリトは分からなかった。

 

「なぜ、か。私も忘れたよ。なぜだろうな。フルダイブ環境システムの開発を知った時、いや、その遥か昔から私はあの城を、現実世界のありとあらゆる枠や法則をも超越した世界を創ることだけを欲してきた。そして、私は……私の世界の法則をも超える世界を見ることができた。空に浮かぶ鉄の城の空想に私が取りつかれたのは何歳の頃だったかな……。その情景だけは、いつまで経っても私の中から去ろうとしなかった。この地上から飛び立って、あの城に行きたい……長い、長い間、それが私の唯一の欲求だった。私は、まだ信じているのだよ……どこか別の世界には、本当にあの城が存在するのだと……」

 

茅場は真っすぐな目でカイに向けそう言う。

 

その目を見て、カイは思わず思った。

 

自分があの世界に生まれ、1人の少年と出会い、共に良き相棒、良き友となり、最強の剣士を目指す旅に出ることを。

 

多くの友と出会い、弟子を持ち、そして、1人の少女に恋をし、結ばれ、子に恵まれ、いつまでも一緒に暮らす。

 

そんな夢を、思わず思い描いた。

 

「そうだな……そうだといいな」

 

カイは、茅場を見ずにそう答える。

 

その回答に、茅場は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「そうだ。茅場、アンタに言いたいことがいくつがあるんだ。言ってもいいか?」

 

「構わない。言い給え」

 

「よくも人様の誕生日を滅茶苦茶にしてくれたな。お陰で自分の生まれた日に死ぬ思いをしたんだぞ」

 

「そうだったか……それはすまないことをした」

 

「ああ、マジでな。本当なら、その顔を思いっきり殴り飛ばしてやりたいところだよ。………でも、それは勘弁してやる」

 

カイは茅場の方を向き、笑った。

 

「アンタがこの世界を、SAOを作ったおかげで、俺はミトと再会出来た。ミトだけじゃない。相棒(キリト)にも、専属鍛冶師(トバル)にも、弟子(レオ)にも…………本当にいろんな奴と出会えた。全員、俺の大事な友人だ。この世界で出会えた、掛け替えのない大事な奴らだ。だから、その辺は感謝してる。ありがとうな」

 

「………そうか」

 

茅場は短く、そう答えた。

 

「言い忘れていたな。ゲームクリア……それと、誕生日おめでとう、カイ君」

 

茅場は穏やかな表情で、そう言った。

 

「さて、私はそろそろ行くよ」

 

風が吹き、声が掻き消されたと思った瞬間、茅場の姿はそこにはなかった。

 

残された時間、カイは崩壊してゆくアインクラッドを、水晶の板の端に座り、眺めた。

 

「こう見ると、いろんな思い出があるな」

 

そんなことを呟き、カイは思い出に浸った。

 

「キリト、アスナと幸せにな……アスナ、きっとキリトの奴、自分の所為だとか責めるだろうからフォロー頼むぞ………トバル、お前の優しさが嬉しかったよ、リズの想いに早く気づけよ………レオ、本当はもっとお前を鍛えてやりたかったよ、シリカと仲良くな」

 

カイは残されたわずかな時間、届きはしないだろうと思いながらも、全員に言葉を送って行く。

 

リズ、シリカ、ディアベル、クライン、エギル、月夜の黒猫団の皆。

 

全員に言葉を送り、メニューウィンドウを開く。

 

【最終フェイズ実行中 現在94%完了】

 

終わりがもう目前まで迫って来る。

 

「………ミト」

 

最期に、カイは最愛の人へと言葉を送った。

 

「約束守れなくてごめんな。結局、これも渡せずじまいか」

 

カイは懐から、小さな箱を取り出す。

 

そこには、宝石が嵌められた指輪があった。

 

ミトに渡そうと思っていた物だ。

 

現実に帰っても、ミトと一緒にいる。

 

その覚悟の誓いとして、ミトに渡そうとしたものだった。

 

「ま、今となっては渡さなくてよかったかもな。俺、死んだし」

 

そう呟き、箱を閉じて懐に戻す。

 

「ミト、お前の事だからきっと、俺の事を忘れないで居ようとするだろうな。だから、すぐに忘れろなんて言わないよ。でも、いつか必ず前に進んでくれ。そして、幸せになってくれ…………大好きだ、愛してる、ミト」

 

ミトへの言葉を送り、カイは一息入れる。

 

そして、天を仰いだ。

 

【最終フェイズ実行中 現在100%完了】

 

【実行終了】

 

「あーあ………死にたくねぇな」

 

カイは満足そうに笑って、世界の消滅の光と共に消え去った……………………

 




アインクラッド編、これにて終了。

次回からALO編になります。
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