プロローグ
2024年11月7日
ミトこと兎沢深澄はベッドの上で目を覚ました。
重い瞼を開き、明るい光が差し込んだことで、思わず目を顰めた。
そして光に目が慣れてくると、今度は体を動かし、起き上がる。
体が重く鉛の様に動かなかったが、ミトはそれでも必死に体を起こし、今度は頭にあるソレ、ナーヴギアを取った。
辺りを見渡し、そこが病院の一室であることが分かる。
無意識に自体の胸に手を当てると、鼓動を感じた。
「生きてるんだ…」
そう呟くと、少しずつ思考がクリアになっていく。
そして、涙を流した。
あの世界で流していた涙の続きなのか、涙は止まることを知らず流れ続ける。
「カイ…………!」
ずっと会いたかった大事な友達、そして、あの世界で再会し結ばれた恋人“カイ”の名前を呟く。
カイはもう、何処にもいない…………………
その後、病院中が騒がしくなる声を聞き、ミトの病室にも医師と看護師がやって来た。
体の異常の有無を聞かれ、健康状態をチェックされ、ミトは多少の衰弱はあるも健康であると判断された。
1時間後には、ミトの両親も駆けつけ、両親はミトが無事なことに涙を流し、抱きしめた。
ミトはそんな両親に、「心配かけてごめんなさい」と「ただいま」と言った。
目を覚ました次の日、ミトの下に一人の男性が来た。
男は自分は《総務省SAO事件対策本部》の者だと名乗った。
彼らは被害者たちの病院の受け入れ態勢を整えたり、極僅かなプレイヤーデータのモニターを行っており、モニターをしていた結果、レベルと存在座標からミトが《攻略組》の上位プレイヤーであることを知り、一体何があったのかを聞きに来た。
ミトは知り合い情報と引き換えに知っていることを全て話す事を条件に出した。
だが、その情報を願うが、その中にカイの名は無かった。
カイの死を目の前で見ていたのもあるが、それを聞き、カイの死を確かなものにするのが怖かったからだ。
男は数分間携帯でやり取りをすると、ミトに情報を話した。
『結城明日奈さんは所沢の医療機関に収容されている。だが、彼女はまだ覚醒しておらず、全国でも同様のプレイヤーが300人近くいる』
その情報は、ミトの耳を疑う物だった。
(それじゃあ………カイは何のために死んだの…………?)
カイが死んだのは、全てはゲームをクリアする為。
ミトを含めた、大切な友人たちを現実へと返すためだ。
それなのに、アスナがまだ目覚めていない。
それだけでなく、まだ300人近いプレイヤーも目を覚ましていない。
まるでカイの死が無意味だったと言われてる様な気がした。
「まだ……終わってないんだ………」
ミトは思わずそう呟く。
デスゲームはまだ終わってない。
アスナを含め未だに目覚めぬ300人のプレイヤーが目覚めない限り、ゲームは終わらない。
そして、ゲームが終わらない限り、カイの死は一生無意味のままだった……………