ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第2話 妖精の国へ

キリトからのメール通り、ミトはすぐにエギルの店へと向かった。

 

煤けたような黒い木造で、小さなドアの上に金属製の看板があり、《DiceyCafe》と刻まれている。

 

扉を押し開けると、カランっとベルの音が響く。

 

カウンターにはエギルがおり、そして、カウンター席にキリトが居た。

 

「よぉ、久しぶりだな。ミト」

 

「ええ、久しぶりね。エギル」

 

久々の再会に、ミトとエギルは軽く挨拶を交わす。

 

「さて、エギル。役者は揃った。あの写真について話してくれ」

 

「そうね。その為に、来たのよ」

 

「分かってるって。その前に、コイツを見て欲しい」

 

そう言い、エギルはカウンター下から何かを取り出し、ミトとキリトの前に置く。

 

「これって……ゲーム?」

 

「《アミュスフィア》っていうナーヴギアの後継機対応のMMOだ」

 

「ってことは、これも、VRMMOか」

 

キリトが手に取り、パッケージに掛かれたタイトルを読み上げる。

 

「あるふ……へいむ……おんらいん?」

 

「アルヴヘイムって発音するらしい」

 

「意味的には、妖精の国って所かしら」

 

「妖精?なんかほのぼのしてそうだな。まったり系か?」

 

「そうでもないぜ。どスキル制。プレイヤースキル重視。PK推奨」

 

「どスキル制?」

 

聞いたこと無い言葉に、ミトが聞き返す。

 

「いわゆる《レベル》が存在しないらしい。各種スキルが反復で上昇するだけで、HPもたいして上がらない。戦闘もプレイヤーの運動能力依存で、ソードスキルなし、魔法ありのSAOってところだ」

 

「PK推奨ってのは?」

 

今度は、キリトが質問をする。

 

「プレイヤーはキャラメイクでいろんな種族を選ぶわけだ。違う種族ならPKできるんだとさ」

 

「確かにハードだ。だけど、そんなマニア向け仕様じゃ、人気で無いだろう」

 

「それがそうでもない。今、大人気だそうだ。理由は《飛べる》からだそうだ」

 

「「飛べる?」」

 

ミトとキリトがハモる。

 

「妖精だから、翅がある。フライト・エンジンとやらが搭載されていて、慣れると自由に飛びまわれる」

 

「凄いな、翅はどう制御するんだ?」

 

「さあな。だが、相当難しいらしい。初心者はスティック(タイプ)のコントローラーで操るんだとさ」

 

飛ぶと言う未知の体験に、ミトとキリトは思わずゲーマーとしての血が騒ぎ、挑戦したいと思ってしまった。

 

だが、すぐにそんな雑念を捨てエギルに問う。

 

「それで、このゲームとアスナがどう関係してるんだ?」

 

エギルは、再びカウンター下から何かを取り出す。

 

今度は例の写真を印刷した物だった。

 

「どう思う?」

 

「……似ている」

 

「そうね」

 

「やっぱりそう思うか」

 

「早く教えてくれ、ここは何処なんだ!」

 

キリトが大声を上げてエギルに問い詰める。

 

「その中だよ。アルヴヘイム・オンラインの」

 

エギルは手元にあるパッケージを引っくり返し、後ろのイラストの真ん中にある樹を指差す。

 

「世界樹、と言うんだとさ。9つの種族に分かれたプレイヤーは世界樹の上にある城に、他の種族に先駆けて到着する事を競ってるんだ」

 

「なら、飛んで行けばいいんじゃ……」

 

「滞空時間があって、無限には飛べないらしい。でだ、体格順に5人のプレイヤーが肩車をして多段ロケット方式で樹の枝を目指した」

 

「ははは、なるほど。馬鹿だけど頭いいな」

 

「だが、ぎりぎりで到着できなかったそうだ。でも、到達高度の証拠に5人目が何枚か写真を撮った。その1枚に巨大な鳥籠が写ってた」

 

「鳥籠?」

 

「そいつをぎりぎりまで引き延ばしたのが、その写真だ」

 

「でも、どうして、アスナがゲームの中に?」

 

キリトがもう一度パッケージを見ると、いきなり険しい顔になった。

 

「ミト!これを見ろ!」

 

キリトに言われ、ミトはキリトの手元のパッケージを見る。

 

そこには、《レクト・プログレス》の名があった。

 

「これって!」

 

「ああ………恐らくだが、ここに行けば………」

 

ミトとキリトは互いに頷き合う。

 

「エギル、これ、貰って行ってもいいか?」

 

「構わんが、行く気なのか?」

 

「この目で確かめる」

 

エギルは心配そうにキリトを見る。

 

キリトも心では、何かまた嫌なことが起きるのではと思ってる。

 

だが、キリトはその恐怖を振り払うかのように笑う。

 

「死んでもいいゲームだなんてぬるすぎるぜ」

 

「はぁ………こんな事だろうとは思ったよ」

 

そう言い、エギルはもう1つALOのソフトを出す。

 

「ミト、持って行きな」

 

「エギル、いいの?」

 

「ああ。俺も着いて行きたいが、都合が悪くてな。すまないが、お前たちだけで行くんだ」

 

「ありがとう」

 

ミトはお礼を言い、ソフトを鞄に仕舞う。

 

「ハードを買わなきゃな」

 

「ナーヴギアで動くぜ。アミュスフィアはナーヴギアのセキュリティ強化版でしかないからな」

 

「そいつは助かる」

 

「ありがたい話ね」

 

本来なら、ナーヴギアは危険なものとされ、帰還した全てのSAOプレイヤーから回収しているが、ミトとキリトは密かに隠して持っていた。

 

「助け出せよ。アスナを。でないと、俺たちの戦いは終わらない」

 

「ああ、いつかここでオフをやろう」

 

「必ず連れ戻してくるわ」

 

3人は拳を合わせそう言い、ミトとキリトは店を出た。

 

家に着くと、ミトはすぐさま親の都合を確認した。

 

ミトの両親は共働きで、よく家を空けてることが多い。

 

幸いにも、今日はミトの母親は夜遅くまで帰って来ないし、ミトの父親も泊まりの仕事で明日まで帰って来ない。

 

それを確認し、ミトは自室へと向かった。

 

コートを脱ぎ、ソフトを取り出し、ナーヴギアの電源を入れ、ROMカードをスロットに挿入する。

 

そして、ベッドに横になりナーヴギアを被る。

 

「カイ………お願い、力を貸して」

 

祈る様に呟き、ミトは2年ぶりにあの言葉を唱えた。

 

「リンク・スタート!」

 

暗闇の世界に飛び、そして、虹色のリングを潜り抜けるとアカウント情報登録ステージについた。

 

『アルヴヘイム・オンラインへようこそ。最初に、性別と名前を入力してください』

 

柔らかい女性の声で、案内される。

 

性別は女で、名前は愛着のある《Mito》と入力した。

 

『それでは、種族を決めましょう』

 

「そう言えば、9つの種族が居るんだっけ。どれがいいのかしら」

 

碌に下調べをしてなかった為、ミトはどれにするか悩んでいた。

 

闇妖精族(インプ)………これにしよう」

 

ミトは目に付いた闇妖精(インプ)に決めた。

 

理由としては、髪の色が紫色かかってるからだ。

 

『それでは、闇妖精族(インプ)領のホームタウンへ転送します。幸運をお祈りします』

 

その言葉を最後に再び光の渦に巻き込まれ、次に感じたのは浮遊感だった。

 

そして、ミトは高山地帯にある洞窟を使った闇妖精族(インプ)領の真上にいた。

 

徐々に中央の洞窟に近づいて行く。

 

すると、急に映像がフリーズした。

 

あちこちでポリゴンが欠け、ノイズが走る。

 

「な、何!?」

 

喚く暇もなく、再び落下し、暗闇の中に落ちていく。

 

そして、ミトは森の中に落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、風妖精族(シルフ)領 首都《スイルベーン》近くの古森。

 

そこに1人のプレイヤーがいた。

 

黄緑色の髪に、背には細身の両手剣を背負ったそのプレイヤーは困り顔で辺りを見渡す。

 

「しまったな……リーファとレコンと逸れてしまった」

 

つい先ほどまで、一緒に狩りをしていたパーティーメンバーを思い出す。

 

いつも通り、顔見知りとなった仲間4人とリアルでも知り合いのリーファとレコンの7人で中立域のダンジョンを巡っていたら、火妖精族(サラマンダー)の8人パーティーに遭遇し、戦いとなった。

 

その混戦の中、彼は仲間と逸れ、現在1人で行動していた。

 

「まずいな……回復ポーションも心許ない。ここで襲われたら一溜りもないな。ここは俺だけでも《スイルベーン》に戻った方がいいかもな」

 

彼はそう判断し、背中にある翅を確認する。

 

飛行力が回復した証である、薄緑色の燐光が翅を包んでいた。

 

「よし、行くか」

 

そう言い、コントローラーを使用せずに飛ぶ、ALOの一流戦士の証“随意飛行”で彼、“ジーク”は夜の空を飛んだ。

 

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