ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第3話 妖精との戦い

「キャッ!」

 

森の中に落下したミトは、軽い悲鳴を上げる。

 

「イタタッ」

 

腰を押さえながら立ち上がり、辺りを見渡す。

 

闇妖精族(インプ)のホームタウン………じゃないわね」

 

突如送り込まれた森の中で、ミトはそう呟く。

 

「そうだ、ログアウトボタンは……」

 

アナウンスで聞いた通りに左手を振り、メニューウィンドウを出す。 

 

メニューを操作し、一番下に《Log Out》のボタンを見つける。

 

「あった」

 

安堵の溜息を付き、試しに押してみる。

 

すると、《フィールドでは即時ログアウトはできません》と表示が出て《YES》《NO》の表示が出た。

 

ミトは《NO》を押し、今度はステータスを覗く。

 

「え?」

 

思わず口から短い言葉が漏れた。

 

《Mito》の名前の下に闇妖精族(インプ)なる種族名、HPとMPがあり、それぞれ400と80と初期設定だ。

 

ここまでは良かったが、その下にある取得スキル欄には複数のスキルが入っていた。

 

《両手鎌》《識別》《体術》《投剣》といった戦闘系スキルから、《料理》などの生活系スキルがあった。

 

しかもいくつかは完全習得されていて、他のスキルは800~900代になっている。

 

「一体どういうこと?」

 

バグかと思ったが、よく見るとスキルの数値に見覚えがあり、ミトは少し思案する。

 

《両手鎌》1000

《武器防御》1000

《戦闘時回復》882

《軽金属装備》1000

《投剣》954

《体術》912

《軽業》899

《料理》1000

 

「あ、SAOと同じだ」

 

ようやく、その数値全部、ミトがSAOで習得していたスキルの熟練度と同じだと言うのに気づく。

 

いくつか欠損しているスキルもあったが、確かにミトが習得していたスキルだ。

 

「どうなってるの?ここはSAOの中なのかしら?」

 

不安を抱き、今度はアイテムウィンドウを出す。

 

そこには漢字やアルファベット、数字の羅列が並んでいた。

 

「うわ、文字化けしてる。多分、これはSAOで私が持ってたアイテムね」

 

そう思いながら、画面をスクロールさせると、ミトはある物を見つけた。

 

「嘘……どうしてこれが………!」

 

文字化けしてるアイテム群の中で、2つだけ文字化けしてない物があった。

 

《イクシオン・サイス》と《ASMAP-001》。

 

ミトがあの世界で愛用していた鎌と、カイとの息子であるノアの心。

 

その2つが無事だった。

 

「まさか………!」

 

ミトは《ASMAP-001》をタップし、炎の形をしたオブジェクトを取り出す。

 

そして、震える指で2度タップする。

 

すると炎の様な明るい赤色の光が迸り、数秒後、光が収まるとそこにはミトとカイの息子、ノアが立っていた。

 

「………ノア?」

 

「ん?………母上?」

 

久しぶりに呼ばれた名に、ミトは目頭が熱くなり、ノアへと抱き付いた。

 

「ノア!良かった……また会えた!」

 

「母上………お久しぶりです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノアとの再会を果たし、暫く経つとミトはノアにあることを告げた。

 

「ノア、今から言う事をよく聞いて」

 

そして、ミトはノアにカイが死んだことを話した。

 

「そんな………父上が………」

 

「ごめんね、ノア。カイを救えなかった………ダメな母親で、ごめんね………」

 

「………いえ、母上が謝る必要はありません。父上は、きっと最後の時まで母上の事を想っていたに違いありません。父上が決めた事なら、それを尊重するのが息子である俺の役目です。だから、謝らないで下さい」

 

「ノア………ノアは凄いな。私よりずっと大人だね」

 

「父上と母上の子ですから!」

 

ノアは腰に手を当て、胸を張って答えた。

 

「そっか。それでなんだけど……ノア、いくつか聞きたいことがあるの」

 

カイの死を伝え、ミトはノアにここまでの経緯を語った。

 

SAOプレイヤーの内、300人近い人間が未だに意識が戻らない事。

 

そして、その中にアスナが居ること。

 

アスナと思しき人物が、このALO内に監禁されてること。

 

ミトは、キリトと共にアスナを救う為ALOに来た事。

 

最期に、スキル熟練度と文字化けしなかった《イクシオン・サイス》の事。

 

それらを伝えると、ノアは少し目を閉じ、静かになった。

 

数秒後、目を開きミトを見る。

 

「解りました、母上。どうやら、このALOはSAOのサーバーをコピーした物です。俺がこうしてSAOの時と同じ姿で再現できているのが、何よりの証拠です。また、セーブデータのフォーマットもほぼ同じな為、共通するスキルの熟練度は引き継がれたんでしょう。HPとMPは形式が違うから引き継がれなかったみたいです。所持アイテムは、ALOとは別物なので全て破損したと思われます」

 

「ちょっと待って。それが本当なら、どうして《イクシオン・サイス》は無事だったの?」

 

ミトはアイテム欄にある《イクシオン・サイス》を見つめ、尋ねる。

 

「う~ん、考えられることとしてはALOに《イクシオン・サイス》が存在していて、そのまま引き継がれたと言う事ですね」

 

「そんなまさか………アレは、リズが作ったオーダーメイドで世に2つとない武器よ。それが偶々ALOにも存在するなんて………あり得ないわ」

 

「ですが、それ以外に可能性は思いつきません」

 

「う~ん、取り敢えず武器の件は一旦保留ね。このアイテム群、やっぱ破棄するべき?」

 

「はい。スキル熟練度に関しては、プレイ時間と比較すれば不自然ですが、システム的には問題ありません。ただ、破損したアイテムに関しては、エラー検知プログラムに引っ掛かるといけないので、破棄するべきです」

 

「分かった………ねぇ、《イクシオン・サイス》はどうかしら?」

 

《イクシオン・サイス》が無事だった理由については保留になったが、武器として使っていいのかは別問題だったので、ミトはノアに尋ねる。

 

「それも問題はないです。《イクシオン・サイス》は、完全にALO内に存在するアイテムとなっているので、大丈夫です」

 

「そう。分かった」

 

ミトは頷き、破損したアイテム群を処理し、初期装備の片手剣を外し、《イクシオン・サイス》を装備する。

 

「ところで、ノアはこの世界だとどうなってるの?」

 

「俺ですか?」

 

ノアはSAOでは全システム維持管理プログラム、通称《ASMAP-001》、としてSAOの維持と管理をするはずだった。

 

最もその役割は、《カーディナル》が行うことになり、ノアはその役割を果たすことはなかった。

 

「どうやら、この世界のプレイヤーサポート用の疑似人格プログラム、《ナビゲーション・ピクシー》と言う存在らしいです」

 

そう言うと、ノアの身体は再度光り、今度は体長10㎝ぐらいの、背中に半透明の翅が2枚生えた、緑色の服を着た姿になった。

 

「これが《ナビゲーション・ピクシー》の姿みたいです!」

 

「あら、随分と可愛らしい姿になったわね」

 

「か、可愛らしい………男としては、可愛いよりカッコよくありたいです………」

 

「今のノアはカッコいいより、可愛いが勝る時期よ」

 

そう言い、ミトはノアに手を差し伸べる。

 

ノアはその手に乗り、ミトはそのまま肩に載せる。

 

「さて。ここで止まってる暇はないわ。ノア、世界樹って所に行きたいんだけど、ナビ頼める?」

 

「任せてください、母上!」

 

ノアがそう言った次の瞬間だった。

 

突如、森の奥から風妖精族(シルフ)のプレイヤー、ジークが転がる様に飛び出て、それを追う様に火妖精族(サラマンダー)が飛んで来た。

 

「ん?なぜここに、闇妖精族(インプ)が?もしや追放者(レネゲイド)か?」

 

「ああん!?おいおい、今日はついてるぜ!初心者(ニュービー)の、それも女じゃねぇか!これは、お楽しみ決定だな!」

 

ミトもとい闇妖精族(インプ)が居ることに疑問を持つジークと、ミトもとい女性プレイヤーが居ることに興奮する火妖精族(サラマンダー)

 

第一印象として、火妖精族(サラマンダー)は最悪だった。

 

そして、ミトはそんな火妖精族(サラマンダー)に怒り心頭だった。

 

「ねぇ、そこの両手剣持ってる人」

 

ミトは背負っていた鎌を構え、風妖精族(シルフ)に尋ねる。

 

「あの男、私が狩ってもいいかしら?」

 

「いや、流石にそれはキツイと思うぞ?相手の装備から、かなりの実力者だ。初心者の君では、勝つのは………」

 

「なら、無理だと思ったら割込みでもなんでもしていいわよ?ま、私が勝つけどね」

 

鎌を手に、ミトは火妖精族(サラマンダー)の前に立つ。

 

「おいおいおい!初心者(ニュービー)が鎌なんか使って大丈夫なのかよ!鎌はな、使い辛い武器№1なんだぜ!使いこなすには、地獄の様な反復練習が必要なんだよ!初心者(ニュービー)が、一朝一夕で使える代物じゃねぇんだよ!まぁ、武器のランクだけは高いみたいだけど、ALOじゃ本人の腕次第なんだよ!」

 

「良く喋る口ね。ま、どんな武器でも使い手次第ってのは賛成ね。それと……」

 

ミトがそう言った次の瞬間、ミトは既に火妖精族(サラマンダー)の懐に居た。

 

「へぇあ!!?」

 

「こっちは2年間、毎日鎌を振り回してたのよ」

 

その言葉を最後に、ミトは高速で火妖精族(サラマンダー)を斬り裂き、首、胴、脚と体を3分割にした。

 

「ぐあああああ!?」

 

火妖精族(サラマンダー)は悲鳴を上げ、身体が炎に包まれ、小さな炎になった。

 

「何、この小さい炎?」

 

「それは、残り火(リメインライト)だ。倒されたプレイヤーの意識はまだそこにあって、猶予時間内に蘇生魔法か蘇生アイテムを使うことで復活させれるんだ。だから、炎が残ってる間は、余計なことを言わずにいるのがいい」

 

「へー」

 

そう言われミトは暫く黙っていると、炎は消滅し消えた。

 

「取り敢えず、危ないところ助かった。正直、ポーションが残り僅かで、余計な戦闘は避けたかったんだ」

 

「お礼ならいいわ。あの火妖精族(サラマンダー)の言動にイラついただけだし」

 

「そうか。だとしても、助けられて恩返しもしないのは俺の道理に反する。せめて、一杯奢らせてくれないか?」

 

「そうね………それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうわ。こっちも情報とか欲しかったし」

 

「情報?」

 

「ええ。特に、あの樹についてね」

 

ミトは遠くに見える、世界樹を見てそう言う。

 

「樹とは、世界樹の事か?」

 

ジークの問いに、ミトは頷く。

 

「いいだろう。こう見えて俺は結構古参だ。それなりの情報を期待してくれ」

 

そう言い、ジークは手を差し出す。

 

「自己紹介が遅れた。俺は“ジーク”。見ての通り、風妖精族(シルフ)だ。もう一度になるが、助けてくれたこと感謝する」

 

「ミト、闇妖精族(インプ)よ。そして、この子がノア」

 

ミトはそう言って、肩に居るノアを紹介する。

 

「ノアです!母上共々、よろしくお願いいたします」

 

「ふむ……随分と礼儀正しい妖精だな。こちらこそ、君の母上に命を助けられた。感謝する」

 

ノアに頭を下げるジークがおかしく、ミトは思わず笑う。

 

「じゃあ、少し遠いが、北の方に中立の村がある。そこまで行こう」

 

「あれ?でも、スイルベーンって街の方が近いんじゃない?」

 

ミトはマップを開きながら、尋ねる。

 

「確かに近いが、あそこは風妖精族(シルフ)領だ。領内では、君から風妖精族(シルフ)を攻撃できないが、逆は可能だ。つまり……危険だ」

 

「大丈夫よ。倒せなくても制圧する技ぐらいあるから。それに、いざとなったらジークが私の身分を保証してくれればいいでしょ?」

 

「なるほど……一理ある。ならば、街にいる間は俺と行動を共にしてくれ。流石に、俺の目が届かない範囲では、どうしようもないからな。では、行こう」

 

そう言うとジークは背中からは翅を出す。

 

「あ、そう言えば飛べるんだっけ。あれ、でも飛ぶにはコントローラーが居るんじゃ……」

 

「ん?……ああ、コントローラーを使わなくても飛べるんだ。“随意飛行”と言って、イメージで空を飛ぶんだ。と言っても、ふわっと飛ぶ感じではなく、背中から仮想の骨と筋肉が伸びてると想定して、それを動かす。そうだな………ドラゴンが空を飛ぶ時をイメージすると分かり易いだろう」

 

あまり分かり易くないイメージだが、ミトには通じたらしく、ミトは少し背中を内側に収縮するように動かす。

 

すると、わずかに体が浮いたが、すぐに翅は動きを止めて、地面に降りてしまった。

 

その感覚を忘れないうちにもう一度動かすと、今度は高く浮いた。

 

「やった!浮いたわ!」

 

「うむ、その調子なら大丈夫そうだ。少し、この辺りを飛んで慣れてみてくれ。飛行時間に気を付けてな」

 

ジークに言われ、ミトは空を飛び、飛行に慣れる練習をする。

 

数分後には、ミトは“随意飛行”を完全に物にし、空を縦横無尽に飛んでいた。

 

「ここまで上達が早いとはな。流石の腕だ」

 

ジークはそう言い、空を飛んでミトに近寄る。

 

「では、《スイルベーン》に向かおう。ついて来てくれ」

 

ジークの案内の元、ミトはノアと共に《スイルベーン》へと向かった。

 




何故、ミトの愛鎌《イクシオン・サイス》が無事だったのか。

その理由は、いずれ明かします
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