ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第4話 翡翠の街《スイルベーン》

樹海を通り過ぎ、とうとう風妖精族(シルフ)領の《スイルベーン》が見える。

 

「あれが《スイルベーン》ね」

 

「真ん中の塔の根元に着陸する………ところでだが」

 

急に何かを思い出したのかジークが声を掛けてくる。

 

「ミト、ランディングのやり方は分かるか?」

 

暫くの沈黙の後、ミトは顔を強張らせた。

 

「………分からない」

 

「……………ミト」

 

ジークは申し訳なさそうに表情を浮かべ、口を開く。

 

「すまない」

 

「すまないじゃないけど!?」

 

ミトの叫びを聞かなかったことにし、ジークは急減速を始める。

 

「ノア!しっかり掴まってて!」

 

「は、はい!」

 

ミトはノアに掴まっておく様に言い、塔へとぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジーク……次、こう言う機会があったら着地の仕方も教えて上げなさい」

 

「すまない……本当にすまない………」

 

幸いなことに、ミトは受け身を取ることが出来たのでHPが全損することは免れた。

 

減ったHPを見ながら、ミトはジークにジト目をして言う。

 

ジークは、ただ謝るしかできなかった。

 

「HPを回復してやりたいが、生憎俺は回復魔法が使えないんだ」

 

「いいわよ。そこまでしてもらうのは悪いし」

 

そう言って、ミトは上着のポケットを叩く。

 

「ノア、無事?」

 

「は、はい……無事です。しかし、驚きました………」

 

ノアはポケットから顔を出し、驚いた表情をする。

 

「ノアも申し訳ない。俺の友人と出会えればいいんだが………とりあえず、ポーションで回復を」

 

そう言い、ジークはポーチからポーションを取り出そうとする。

 

「そ、そんなバカなあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

すると頭上から声が聞こえ、3人は上を見上げる。

 

すると、黒い服のプレイヤーが塔に激突していた。

 

「私も、人目にはあんな風に見えてたのね」

 

「そのようだな」

 

暢気に会話してると、塔に激突したプレイヤーはそのまま落下し、地面に落下する。

 

「イテテ………!」

 

その黒いプレイヤーは、地面にぶつかった衝撃で動けていなかった。

 

咄嗟に受け身を取った為、HPの全損は免れたみたいだった。

 

「君、大丈夫か?」

 

落ちて来たその人物に、ジークが声を掛ける。

 

「あ、ああ……なんとかな………」

 

黒いプレイヤーは体を起こしながらそう言う。

 

「キリト君、大丈夫!?」

 

すると、風妖精族(シルフ)の少女が降りて来て、その黒いプレイヤーに安否を尋ねる。

 

「キリト?」

 

ミトは、その名前に反応をした。

 

「リーファ、無事だったか」

 

「あ、ジーク!貴方も無事だったのね!」

 

リーファと呼ばれた少女は、ジークを見ると安心したような表情をする。

 

「ああ、なんとかな。レコンはどうした?」

 

「レコンはやられたわ。ごめん、私がついて居ながら」

 

「いや。リーファの所為じゃない。あの状況では、パーティーの全滅だって有り得た。そんな中、俺とお前が生き残った。十分な成果だろう」

 

「……そうね。ジークの言う通りだわ」

 

仲良さげに話すジークとリーファに、ミトは知り合いなのかなと思う。

 

「それより、リーファ。酷いじゃないか、お陰で飛行恐怖症になる所だったぞ?」

 

リーファに対し、キリトが恨みがましい顔で言った。

 

「ごめんごめん、お詫びに回復してあげるから」

 

「そうだ、リーファ。ついでに、彼女も回復してやってくれないか?」

 

「あ、そう言えば、その人は?」

 

「彼女はミト。彼女に命を助けられたんだが………生憎、ランディングのやり方を教えて無くて塔に激突したんだ。すまないが、頼めるか?」

 

「いいわよ。それじゃあ、ミトさん。キリト君の隣に立って」

 

「ええ、わかったわ」

 

ミトはリーファに言われた通り、キリトと言うプレイヤーの隣に立つ。

 

「それじゃあ、行くわよ」

 

そう言うと、リーファは右手を上げ、呪文らしきものを唱える。

 

すると、2人に青い雫の様な物が降り注ぎ、減ったHPを回復させる。

 

「おお、凄い、これが魔法か………」

 

「初めての感覚ね」

 

初めての魔法にミトは興味深そうにする。

 

「で、ところでだけど……」

 

「ああ、そうだな」

 

ミトとキリトと言うプレイヤーは互いに顔を見合う。

 

「キリトなの?」「ミトなのか?」

 

互いに沈黙する。

 

「「やっぱりキリト(ミト)か!」」

 

2人はそう叫び、笑い合った。

 

「森に放り出された時、どうしようかと思ったけど合流出来て良かったぜ!」

 

「それ私も!正直、森に転送した時はどうしようかって思ったわ!」

 

2人で和気藹々と喋ってると、リーファとジークが声を掛けて来る。

 

「キリト君、ミトさんとは知り合いだったの?」

 

「ああ、友人だよ」

 

「ミト、どうやら友人の様だな。出会えたのなら良かった」

 

「ええ、お陰様でね」

 

ミトはそう言い、リーファに向き合う。

 

「改めて、ミトよ。キリトが世話になったわ」

 

「リーファって言います。こちらこそ、ジークがお世話になりました」

 

「ジークだ。どうやらリーファの危ない所を助けてもらったようだ。礼を言わせてくれ」

 

「キリトだ。気にしなくていいさ。俺も、ALOの戦闘がどんなものか知りたかったしな」

 

4人は自己紹介を終えると、突如、キリトの娘“ユイ”がキリトの上着の胸ポケットから、ノアと同じ《ナビゲーション・ピクシー》の姿で飛び出した。

 

「ミトさん!」

 

「ユイちゃん!ユイちゃんも、出てこれたのね」

 

久々のユイとの再会に、ミトは喜ぶ。

 

「私もってことは、ノアも!?」

 

「ええ。そうよ。ほら、ノア。ユイちゃんよ」

 

ミトがポケットに居るノアに声を掛ける。

 

すると、ノアは恐る恐る顔だけ出しユイを見る。

 

「や、やぁ……ユイ。息災だっただろうか?」

 

何処か気まずそうに片手を上げて言うノア。

 

「ノア……良かったです!」

 

そんなノアに、ユイは涙を流しながらも、キリトの胸ポケットから飛び出し、ミトのポケットに入っているノアに抱き付いた。

 

「また……また会えました!ノア、会いたかったです!」

 

「う、うむ……」

 

ユイに抱き付かれ、困惑しながらノアはミトを見る。

 

そんなノアに、ミトはただ笑顔で答えた。

 

ミトの笑顔を見て、ノアは諦めたように息を吐き、ユイの頭を撫でた。

 

「久しぶりだな、ユイ。俺も、また君に会えて嬉しいぞ。またよろしく頼む」

 

「はい!こちらこそ!」

 

ノアとユイの再会に、ミトもキリトもホロリと涙を流す。

 

「え?《プライベート・ピクシー》ってあんなに感情豊かなの?」

 

「よく分からないが、喜ばしい事なのは確かだな」

 

リーファは、ノアとユイの行動に驚きながらも疑問を持ち、ジークはよく分かってないが良い事なのだと察した。

 

その後、リーファもキリトに助けられたお礼に一杯奢るつもりだったらしく6人はリーファとジークの行きつけの酒場兼宿屋へと向かった。

 

「リーファちゃーん!ジーク!」

 

その時、後ろから誰かがジークとリーファに声を掛けた。

 

「ああ、レコン」

 

「お前も帰って来れたのか」

 

「無事だったんだ。流石はリーファちゃんにジーク………って、影妖精族(スプリガン)闇妖精族(インプ)!?」

 

ミトとキリトを見るや否や、レコンは警戒し、腰の短剣を握る。

 

「ああ、大丈夫よ。この人たちが助けてくれたの」

 

「リーファはキリトに、俺はミトに助けられたんだ」

 

「へっ?」

 

唖然とするレコンを余所にリーファはレコンを指差す。

 

「こいつはレコン。私たちのフレンドなんだ」

 

「よろしく、俺はキリトだ」

 

「ミトよ。よろしく」

 

「あ、どうも」

 

レコンは2人に握手をし、頭をぺこぺこ下げる。

 

「って、いや、そうじゃなくて!大丈夫なの?この2人、スパイとかじゃ」

 

「大丈夫よ。スパイにしてはキリト君、天然ボケ過ぎるし」

 

「うわ、ひでぇえ……」

 

さり気なくキリトは落ち込んでいた。

 

「ミトも大丈夫だろう。それに、恩人を疑うような真似はしたくない」

 

「嬉しいこと言ってくれるわね」

 

リーファとジークに保証されるも、レコンは疑わしそうに2人を見るも咳払いしてから口を開いた。

 

「シグルドたちはいつもの酒場で席取ってるよ。分配はそこでやろうって」

 

ALOではPKされたり、死亡するとアイテムの30%をランダムにロストするか、相手に奪われるが、保険枠と言うものがあり、あらかじめ設定したアイテムは死亡しても生き残ってる仲間の元に預けられる。

 

その為、ジークたちのパーティーも貴重なレアアイテムは保険として設定し、生き残ったリーファとジークが持っている。

 

「あ、そっか……ん~、あたし今日はいいわ」

 

「俺も今日は遠慮する」

 

「え!来ないの?」

 

「助けてもらったお礼とお詫びに一杯奢る約束してるんだ。じゃ、お疲れ」

 

そう言うと、リーファはレコンに稼ぎのアイテムを全て渡し、キリトとミトに付いて来るように言って、先に行く。

 

「そう言う訳だ。レコン、俺とリーファの分も残りの皆で分けてくれ。それじゃあ」

 

ジークもレコンにアイテムを渡して、リーファの後を追う。

 

ミトとキリトも足早に2人を追った。

 

2人の後を追い、《すずらん亭》という店に着く。

 

「さっきのはリーファの彼氏?」

 

「恋人さんなのですか?」

 

席に着くなり、キリトとユイはそんな質問を、リーファにした。

 

「はぁ!?違うわよ!パーティーメンバーよ!」

 

キリトとユイの質問にリーファは慌てて否定する。

 

「でも、その割には仲良さそうだったじゃない」

 

「リアルでも知り合いっていうか、私とジーク、レコンは学校の同級生なの…………それじゃあ、改めて、助けてくれてありがとう。それと、迷惑かけてごめん」

 

「今日は俺達で奢らせてもらうから、好きなだけ注文してくれ」

 

2人はお言葉に甘え、食べたいものを注文する。

 

飲み物として頼んだ香草ワインで乾杯し、注文したものを食べながら話す。

 

「それにしても、えらく好戦的な連中だったな。ああいう集団PKはよくあるのか?」

 

「元々、火妖精族(サラマンダー)風妖精族(シルフ)は仲悪いんだ。だが、ああいう集団PKは最近だな」

 

「きっと………近いうちに世界樹攻略を狙ってるんだと思う」

 

リーファの言葉に、ミトとキリトが反応を示す。

 

「それだ。その世界樹について教えてほしいんだ」

 

「そう言えば、そんな事言ってたね。でも、なんで?」

 

「世界樹の上に行きたいのよ」

 

「……それは、全プレイヤーがそう思ってるよ。っていうか、それがALOのグランドクエストなのよ」

 

「と言うと?」

 

「ALOは空を飛べることを売りにしてるが、滞空制限がある。どんな種族も連続で飛べるのは十分が限界だ。だが、世界樹の上にある空中都市に最初に到達して、《妖精王オベイロン》に謁見した種族は全員、《アルフ》っていう高位種族に生まれ変われる。そうなれば、滞空制限はなくなり、いつまでも、自由に空を飛ぶことが出来る。だからこそ、全種族プレイヤーは、世界樹を目指すんだ」

 

「「なるほどね(な)」」

 

ジークの説明に、注文したタルトとクッキーを齧りながら、キリトとミトは納得する。

 

「世界樹の上に行く方法は?」

 

「世界樹の根元がドームになっていて、そこが空中都市の入口になってるの。でも、そのドームを守ってるNPCのガーディアン軍団が凄い強さなの」

 

「そんなに……」

 

「オープンして1年経つが、未だにあの世界樹の半分を超えた種族は居ない」

 

「何か、キークエストとか見落としてるとか、単一の種族じゃ攻略できないとかなんじゃないの?」

 

ミトの指摘に、リーファが笑う。

 

「いいカンしてる。クエスト見落としはいま躍起になって検証してるわ。でも、後者は絶対に無理ね」

 

「どうしてだ?」

 

「だって矛盾してるもの。『最初に到達した種族しかクリアできない』クエストを他の種族と協力して攻略しようだなんて」

 

「………じゃあ、世界樹を攻略するのは、無理ってことか?」

 

「あたしはそう思う。でも、諦めきれないよね。いったん飛ぶことの楽しさをしっちゃうとね。例え、何年かかっても、きっと」

 

「「それじゃ遅すぎるのよ(んだ)!」」

 

ミトとキリトが同時にそう叫んだ。

 

急に叫んだミトとキリトに、ジークとリーファも驚く。

 

「パパ、ミトさん」

 

「母上、キリトさん」

 

ユイとノアが2人を宥めるように、声をかける。

 

「……ごめん」

 

「……すまない。でも、俺たち、どうしても世界樹の上に行きたいんだ」

 

「……なんで、そこまで?」

 

「人を……探してるんだ」

 

「人を?どういうことだ?」

 

「……簡単には説明できない」

 

「でも、そうしないといけないの」

 

キリトとミトは悲しそうな顔をして言う。

 

「ありがとう、リーファ。色々教えてもらって助かったよ。御馳走様、ここで最初に会ったのが君でよかった」

 

「ジークもありがとう。情報提供、感謝するわ」

 

そう言い、キリトとミトは席を立ち上がる

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。世界樹に……行く気なの?」

 

「まさか、2人だけで突破しようと考えているのか?」

 

「ああ。この眼で確かめないと」

 

「無茶だよ、そんな……。ものすごく遠いし、途中で強いモンスターもいっぱい出るし、そりゃ君も強いけど………」」

 

心配そうに言うリーファだったが、そこでジークが驚きの事を言い出す。

 

「よし。なら、俺も同行しよう」

 

「「「え……?」」」

 

ジークの行き成りの言葉に、全員が驚く。

 

「いや、でも、会ったばかりの人にそこまで世話になる訳には……」

 

「構わない。助けられた恩人へのお礼が、一杯奢るだけでいいのかと考えても居たからな。世界樹までの案内、俺がしよう。それに、近いうちに領を出ようと考えていた。いい機会だ、同行させてくれ」

 

「……じゃあ、頼もうかな?」

 

「お願いできる?」

 

ジークの迷いない目に、キリトとミトはそう尋ねる。

 

「ああ、喜んで」

 

ジークはそう言い、キリトとミトと握手をする。

 

すると、それを見ていたリーファが立ち上がった。

 

「ちょっとジーク!貴方、何考えてるの!?」

 

「リーファ、今急に決めたことだから驚くのは無理もないが、お前も領を出ようと考えていただろう?」

 

「そうだけど……だからって急すぎるでしょ!」

 

「……すまない。だが、もう決めたことだ」

 

固い決意を持って、ジークはそう言う。

 

「リーファ、すまないがシグルドやサクヤに、俺が抜けることを伝えて貰って「——も行く」……リーファ、今なんと?」

 

何かを呟く様に言ったリーファに、ジークが尋ねる。

 

「あたしも行くって言ったの!」

 

「「え?」」

 

「り、リーファ!?お前、急に何を!?」

 

「急なのはジークも同じでしょ!それに、領地を出るのが遅いか早いかなんて些細な問題よ!とにかく、あたしも行くから!キリト君とミトさんもいいよね!」

 

「あ……ああ、リーファも良ければ」

 

「こっちとしては有り難いけど……」

 

キリトとミトは押されるように頷く。

 

「よし!じゃあ、明日の午後三時にここでね。あたし、もう落ちなきゃいけないから。ログアウトには上の宿屋を使ってね。また明日!」

 

そう言い残し、リーファはログアウトした。

 

「リーファの奴、急にどうしたんだ?」

 

リーファの行動に、ジークは疑問に思うも、ミトとキリトはなんとなく察しが付き、何も言わなかった。

 




次回は、現実でのジークとリーファの会話になります
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