引っ越しや確定申告などがあり、更新が止まってました。
再び再開します。
そして、予定していたジークとリーファの現実での話は、次回になります。
展開的に、先にこの話をするべきと判断しました。
「取り敢えず、リーファの言った通りここの宿屋で部屋を取ってログアウトしてくれ。自身の領地以外では即時ログアウトは出来ない。そうなれば、PKや盗みの対象になるからな」
リーファの行動に驚きを隠せなかったジークだったが、一先ずは置いといてログアウトした。
その後、残されたミトとキリトは2人の言われた通り、上の宿屋で部屋を取った。
「じゃあ、また明日な」
キリトはミトとノアにそう言い、ユイと共に部屋に入ろうとした。
「キリト、ちょっと待って」
すると、ミトがキリトを呼び止めた。
「ユイちゃん、ちょっとキリトと話があるから、少しの間だけノアの相手頼めるかしら?」
「パパとですか?いいですよ!ノア、お話しましょう!」
ユイはミトの頼みを快く承諾し、ノアに駆け寄る。
「じゃあ、ノア。少しの間、ユイちゃんと一緒に居てね」
「はい、母上!」
ノアはそう言い、ユイと共にミトの取った部屋へと入る。
「ミト、話ってなんだ?」
「あまり人に聞かれたくない話だから、部屋に入りましょう」
ミトにそう言われ、キリトは大人しくミトを部屋の中へと入れる。
「なんだが懐かしいわね」
宿屋の部屋を見て、ミトはそう呟く。
簡素なベッドと机、椅子があるのみの安宿屋。
SAOに居た頃、最初の頃はこんな感じの部屋にお世話になったとミトは思う。
後はもうメニューウィンドウを開き、《Log Out》をタップすればミトはすぐ現実に帰れる。
だが、その前にミトはどうしてもキリトと話したいことがあった。
「それで、話ってなんだ?」
キリトは椅子に腰かけ、ミトに尋ねる。
「その剣の事よ」
そう言い、ミトはキリトの背中にある武器を指差す。
「さっきはリーファやジークが居た手前、聞けなかったけど………それ、《ダークリパルサー》よね?」
キリトの背中にある薄く細い刀身が特徴的な白い片手剣《ダークリパルサー》。
SAOでキリトが愛用していた二振りの内の一つだ。
「ああ、どういう訳かデータが破損したアイテム群に紛れて無事だった」
「ちなみにだけど、理由に心当たりは?」
ミトがそう尋ねるが、キリトは首を横に振る。
「そっか……私の《イクシオン・サイス》と言い、キリトの《ダークリパルサー》と言い………一体どうなってるのかしら?共通してるのは、どちらもオーダーメイドの品ってことだけだし………」
「………いや、違うんだ」
ミトがそう口にしたら、キリトがそう言いだした。
「え?違うって?」
「………残ってたのは、《ダークリパルサー》だけじゃないんだ…………《エリュシデータ》も残ってた」
《エリュシデータ》。
それは、キリトがSAOで使っており、キリトこと《黒の剣士》を象徴する黒い片手剣だ。
第50層のフロアボスの
トバル曰く、しっかりと強化すれば90層まで使える剣とのことだ。
「オーダーメイドの剣だけじゃなく、ドロップ品のレア武器まで………一体どういう基準で残ってるのよ」
「それは、俺にも分からない。でも、どスキル制のPK推奨ゲームなら重要なのは武器の性能とプレイヤースキルだ。世界樹に向かうなら、都合がいい」
「………そうね」
キリトの意見に、ミトは賛成だった。
正直な所、若干チートっぽく思ってしまうが四の五の言ってる場合ではない為、その言葉を飲み込んだ。
「でも……どうして《ダークリパルサー》なの?」
「え?」
「どうして……《エリュシデータ》の方を使わないの?」
《ダークリパルサー》は、キリトがユニークスキル《二刀流》の為に、トバルに用意させた《エリュシデータ》と同等の性能を持つ剣。
だが、やはり数値を比較すると、《エリュシデータ》に軍配が上がる。
《エリュシデータ》を使うか、《ダークリパルサー》と一緒に《二刀流》を使う。
しかし、キリトはどちらの選択も取らず、《ダークリパルサー》を使っている。
ミトはその理由を、キリトに尋ねる。
キリトはその質問に口を噤むが、暫く沈黙して口を開いた。
「あの剣は………カイを刺した剣だ……」
キリトの口から放たれた言葉に、ミトは思わず息を呑んだ。
「向き合わないといけない事だってのは分かってる。でも、《エリュシデータ》を握ると、カイの背中を刺した時の事を思い出すんだ」
キリトは自身の掌を見つめて言う。
「すまない……ミト………」
申し訳なさそうに目を伏せるキリトに、ミトは暫し沈黙し溜息を吐く。
「キリト……私がどうしてALOに来たか分かる?」
「え?」
唐突にミトから質問され、キリトは顔を上げる。
「なんでそんなことを………」
「いいから……それで、分かる?」
「……アスナを助ける為、なんじゃないのか?」
「ええ、それもあるわ。でも、それだけじゃない。私はね、カイの死を無駄にしたくないの」
「え?」
「カイは、最後まで決して諦めなかった。茅場明彦を倒して、全プレイヤーをデスゲームから解放する。例え、自分のHPが底を尽いて、自身が現実に帰れないとしても、私や貴方を、自分の大切な仲間を現実に返そうとした。でも…………まだ目覚めてないプレイヤーが大勢いる」
ミトはそう言うと、悔しそうに壁を殴った。
「許せないのよ………まるでカイの死は無駄だって言われてるみたいで。でも、アスナを救う事が出来れば、もしかしたらまだ目覚めない他のプレイヤーも救うことができるかもしれない。……………カイは、もういない。なら、せめて私はカイの死を意味あるものにしたいの。アスナを、まだ目覚めないプレイヤーたちを目覚めさせて、本当の意味でSAOを終わらせる。それが………私がALOに来た理由よ」
ミトの言葉を聞き、キリトは頭の中で復唱した。
(カイの死を無駄にしたくない、か………)
キリトは暫し無言になり、そして、勢いよく自身の頬を叩いた。
その行動に、ミトは少し驚いていた。
「そうだな………アスナを救って、SAOを終わらせる。それが、カイの相棒としての最後の務めなのかもな」
そう言うキリトの表情は、少し明るかった。
「ええ。そして、カイの恋人としての、私の最後の務めよ」
そんなキリトに、ミトは笑みを浮かべて言う。
「ミト……正直、俺はまだカイを刺した自分を、カイが死ぬ原因となった俺の行動を、俺自身まだ許せない。それでも、真の意味でSAOを終わらせたい。だから、力を貸してくれないか?」
「言われなくてもアスナは私の親友。最初からそのつもりよ。むしろ、私の方からお願いするわ。アスナを救うのを、SAOを終わらせるのを………カイの死を意味ある物にするために、力を貸して」
「ああ、勿論だ」
2人は握手を交わし、笑い合った。