ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第10話 《ルグルー回廊》での戦闘

中立地帯の森から飛んで数分後、ミト達は洞窟の入口へと到着した。

 

「ねぇ、この洞窟ってなにか名前はあるの?」

 

洞窟の中を覗きながら、ミトが尋ねる。

 

「《ルグルー回廊》って言う名前だ。ルグルーは鉱山都市の名前だな」

 

「洞窟の名前よりも、この暗さだよ。灯り魔法がいるわ」

 

「え?暗いの?私には明るく見えるけど」

 

「ああ、それはミトの種族が闇妖精族(インプ)だからだ。闇妖精族(インプ)は闇魔法の適性が高いのと同時に、暗視や暗中飛行に長けてるんだ」

 

「なるほど。だから、私はこの暗い洞窟でも割と見えてるのね」

 

「そうだ。キリト君、魔法スキルは上げてる?」

 

リーファがキリトにそう尋ねる。

 

「ああ。一応、初期設定のヤツだけなら」

 

影妖精族(スプリガン)の魔法に、暗視効果のある魔法があるはずだからそれ使って」

 

「分かった。えーと………魔法ってどうやって使うんだ?」

 

ここまでずっと物理戦闘しか行ってこなかった為、魔法の使い方が分からずキリトは首を傾げる。

 

「パパ、マニュアルぐらいは見ておいた方がいいですよ」

 

見かねたユイがキリトに魔法の使い方と暗視能力付加魔法のスペルを教える。

 

キリトはユイが教えてくれるスペルをたどたどしく言い、魔法を使うと、仄白い光の波動が広がり、ミト達の体を包む。

 

すると、全員の視界が急に明るくなった。

 

「暗視能力付加魔法か。影妖精族(スプリガン)の魔法も捨てたもんじゃないわね」

 

「うわ、その言い方、なんか傷付く」

 

「だが、使える魔法は暗記しといた方がいい。どんな魔法であっても、それが生死を分ける状況がないとも限らないからな。俺も大して魔法は使わないが、戦闘で咄嗟に使える魔法をいくつか習得してるしな」

 

「ちなみに言うと、上級魔法は20ワードはあるからね」

 

「それ本当?覚えるの大変そうね」

 

「そうでもないぞ?スペルの意味を覚えて、後は効果と関連付けて記憶すればいい」

 

「そんな英語の勉強みたいな………俺、ピュアファイターでいいよ」

 

「私も魔法はいいかなぁ」

 

ミトとキリトは魔法に対して消極的に言う。

 

「泣き言わない!って、メッセージだ。ごめん、ちょっと待って」

 

すると、リーファ宛にメッセージが届いたらしく、一行は立ち止まり、リーファはメッセージを開く。

 

「レコンから?」 

 

送り主はレコンからで、何かあったのかと思う。

 

『やっぱり思った通りだった!気を付けて!s』

 

メッセージはそこで終わっており、最後にはSとだけあった。

 

「………なんだこりゃ?」

 

「リーファ?どうかしたのか?」

 

疑問の声を上げたリーファにジークが話しかける。

 

「レコンから変なメッセージが来たのよ」

 

「変な?どんな感じだ?」

 

「なんか、やっぱり思った通りだったとか、気を付けてとか……あと、Sって最後にあるの」

 

「S?」

 

「うん。Sってなんだろ?S……エス……さ…し…す……う~ん」

 

「………まさか」

 

ジークは顎に手をやり、何かを考え、ふとそう呟いた。

 

「何か心当たりでもあるの?」

 

「いや…昔、テレビの警察特番で組織のスパイや内通者をSと呼ぶって言ってたんだ」

 

「それで?」

 

「レコンは、シグルドが気になると言ってた。杞憂だと思うが、もしかすると」

 

ジークがその続きを言おうとした瞬間、ユイとノアが後方を向く。

 

「パパ、接近する反応があります!」

 

「モンスターか?」

 

ユイの言葉に、キリトは剣に手を掛ける。

 

「いえ、プレイヤー反応です!数は14!」

 

ノアが早口でそう言う。

 

「14!?…………嫌な予感がするわ。隠れてやり過ごそう」

 

「でもどこに?」

 

「そこはお任せを」

 

そう言うとリーファはミト達を連れて壁の窪みに入る。

 

そして、魔法を使い、目の前に薄いベールみたいなのを張った。

 

「喋るときは最低のボリュームで。魔法が解けちゃうから」

 

リーファの指示にミトとキリトは頷く。

 

「もうすぐ視界に入ります」

 

ユイの言葉に固唾をのんで待つ。

 

「あれ、何かな?」

 

「え?まだ何も見えてないけど?」

 

「プレイヤーじゃない、赤くて小っちゃい蝙蝠みたいな……」

 

キリトの言う通り、小さい蝙蝠みたいなのが飛んでいた。

 

すると、リーファは行き成り通路に飛び出す。

 

「お、おい、どういした?」

 

「あれは高位魔法のトレーシング・サーチャーよ!潰さないと!」

 

リーファは素早く詠唱をし、掌からエメラルド色に光る針を無数に発射し、蝙蝠を倒す。

 

「走るよ!」

 

「また隠れるのは駄目なのか?」

 

「トレーサーを潰したのはもう向うにもバレてる!それに、あれは火属性の使い魔。てことは」

 

火妖精族(サラマンダー)か!」

 

わき目もふらず必死に走り、とうとう、湖に囲まれた中立の鉱山都市へ繋がる橋を渡る。

 

「どうやら逃げ切れそうだな」

 

「油断して落こっちないでよ」

 

その時、ミト達の後ろから飛んで来た光線が都市の城門の前に落ち、巨大な壁を生み出した。

 

それを見てミトとキリトが武器を抜き、斬り掛かる。

 

が、攻撃は軽々と弾かれ、2人はそのままノックバックで後ろに吹き飛ぶ。

 

「ムダよ。これは土魔法の障壁だから物理攻撃じゃ破れないわ」

 

「もっと早く言ってくれよ………」

 

「壊せないの?」

 

「攻撃魔法を沢山打ち込めば壊せるけど……」

 

「向こうは時間くれる気は無いみたいだ」

 

ジークが後ろを向きながら、背中の剣を抜刀する

 

後ろからガチャガチャと金属音が聞こえる。

 

「湖に飛び込むのはありか?」

 

「無理よ。ここには超高レベルの水竜型モンスターがいるの。水妖精族(ウンディーネ)の援護なしに飛び込めば自殺行為よ」

 

「なら、戦うしかないな」

 

「ええ、でも、これだけ高レベルの土魔法を火妖精族(サラマンダー)が使えるってことは、よっぽど手練れのメイジが混ざってるわ」

 

全員武器を構えると、とうとう火妖精族(サラマンダー)の姿が見えた。

 

最初の3人が分厚い鎧やタワーシールドで固めた重戦士、残りは全員ローブを着たメイジだった。

 

「3人共、ここは俺のサポートに回ってもらえるか?俺の後ろで回復役に徹してもらいたい。その方が俺も思いっきり戦える」

 

キリトは覚悟を決めた様に、《ダークリパルサー》を握り締める。

 

「何言ってんのよ」

 

そんなキリトに、ミトが待ったを掛け後ろからキリトを蹴る。

 

「ぐえっ!?」

 

「そんな猪突猛進スタイルで勝てる訳ないでしょ?」

 

「ミトだって、割かし俺と似たスタイルだろ?」

 

「私は状況を考えて使い分けてるの」

 

そう言い、ミトは《イクシオンサイス》を構える。

 

「リーファ、ジーク。この状況で考えられるアイツらの手って何かわかる?」

 

「え?」

 

「奥にいる11人は全員格好的に魔法使いでしょ?悔しいけど、魔法に関しては私もキリトも素人なの。でも、リーファとジークは魔法戦の経験がある。だから、この状況で奴らが仕掛けて来る戦法は何?」

 

「えっと、多分距離と地形から考えてホーミング系の魔法を使ってくることはないと思います。この状況なら、普通の魔法でも十分当たる可能性がありますから」

 

「それと、単体魔法より範囲魔法を仕掛けてくると思う。その方が効率的だからな。だから、奴らに接近すれば味方や自身を巻き込まないように控えるだろう」

 

「OK。今、速攻で作戦立てた」

 

その言葉に、3人が目を丸くして驚く。

 

こんな短時間で作戦を立てれたことに驚いたのだ。

 

「よく聞いて」

 

ミトは手早く3人に作戦を話す。

 

その作戦内容に、更に3人は目を丸くした。

 

「む、無茶過ぎます!一歩間違えたら全滅ですよ!」

 

ミトの作戦に、リーファは消極的だった。

 

「いや、俺は乗るぞ」

 

そんな中、キリトはミトの作戦に乗り気だった。

 

「私が立てておいてなんだけど、いいの?」

 

「ああ。元よりリスクは承知だ。1%でも生き残れる確率があるなら、意地でもその1%を掴んでやるさ!」

 

キリトはにやりと笑い言う。

 

「……分かった。俺も賛成だ」

 

すると、ジークも賛成の声を上げた。

 

「ジーク!?本気なの!?」

 

「ああ。他の者なら少々悩むが、ミトとキリトなら信じられる。リーファ、この作戦に賭けよう」

 

「う~………ああもう!こうなったら腹くくるしかないわね!」

 

リーファは気合を入れるように頬を叩き、剣を仕舞う。

 

「よし!なら、作戦通りに行くわよ!リーファ、ジーク!貴方達のタイミングで防御魔法を使って!」

 

そう言うとミトとキリトは走り出した。

 

「隊長!闇妖精族(インプ)影妖精族(スプリガン)が突っ込んできます!」

 

「ふん!作戦通りだ!(タンク)隊!防御だ!」

 

隊長格のメイジが指示を出し、(タンク)隊の3人は盾を構える。

 

「キリト!」

 

ミトが叫ぶと、キリトはスピードを上げ、(タンク)隊目掛け斬りかかる。

 

闇妖精族(インプ)とは距離があるな。……メイジ隊!標的は影妖精族(スプリガン)だ!メイジ隊前列3名は火炎魔法、用意!中衛の3名は(タンク)隊の回復用意!残りは俺と共に爆裂魔法の準備だ!」

 

隊長メイジにより、3人のメイジが一斉に火炎魔法の詠唱をする。

 

「はあああああああ!!」

 

キリトは勢いよく“ダークリパルサー”を振り、(タンク)火妖精族(サラマンダー)を攻撃する。

 

それにより、(タンク)火妖精族(サラマンダー)のHPが1割ほど減る。

 

だが、HPが減ると同時に、回復魔法を唱えていた3人のメイジが(タンク)火妖精族(サラマンダー)を回復させる。

 

そして、すかさずキリトに向かって残りの3人のメイジが火炎魔法を使う。

 

火球がキリトに向かって、放たれる。

 

キリトは防御が取れず、火球が直撃する。

 

「くっ!?」

 

「キリト君!?」

 

リーファはやられたキリトを見て、咄嗟に回復魔法を使いそうになった。

 

「リーファ、落ち着け!」

 

そんなリーファをジークが制した。

 

「作戦を忘れたか?俺たちがするのは、しかるべきタイミングで防御魔法を使う事だ。ミトの作戦を……キリトを信じろ」

 

「……そうね。ごめん、冷静じゃなかった。もう、大丈夫だから」

 

落ち着きを取り戻し、リーファは防御魔法の詠唱に入る。

 

「距離は十分に離した!爆裂魔法だ!奴らもろとも吹き飛ばせ!」

 

隊長メイジと他4人が詠唱を終え、爆裂魔法が放たれる。

 

その威力はキリトを含め、ミト、ジーク、リーファを倒すには十分だった。

 

「ジーク!」

 

「ああ!」

 

その瞬間、ジークとリーファは同時に防御魔法を使う。

 

二重に張られた防御魔法は、流石に高レベルの土魔法を使える手練れのメイジたちの魔法攻撃だけあって完全に防ぐことは出来なかったが、威力を抑えることは出来た。

 

爆裂魔法が終わり、辺りが黒煙で満たされる。

 

「直前で防御魔法を使ったみたいだが、流石に完全には防げなかったみたいだな。それに、あの威力の爆裂魔法を防いだんだ。もう回復魔法を使うだけのマナは残ってないだろう。まぁ、念には念を入れて遠距離からの魔法でトドメを刺そう。メイジ隊、再度爆裂魔法の準備!」

 

隊長メイジが、爆裂魔法の準備を指示する。

 

全員が、最初のスペルを唱えた瞬間だった。

 

「悪いけど、2度目はないわよ」

 

ミトの声が、火妖精族(サラマンダー)達の背後からした。

 

「え?」

 

隊長メイジは後ろを見た。

 

そこには鎌を構え、今にも斬りかかるミトが居た。

 

「はああああああああ!!」

 

ミトの鎌の一振りは、後列に居たメイジ3人を一気に斬り割いた。

 

3人の内、2人は即死し、1人は生きているもHPはレッドに落ち虫の息だった。

 

「な、何故後ろに!?一体どうやって!?」

 

「あら?闇妖精族(インプ)の特性、お忘れかしら?」

 

鎌を肩に担ぎ、ミトは不敵に笑う。

 

「そうか!暗中飛行か!」

 

「正解よ」

 

ミトの選択した闇妖精族(インプ)は、暗視と暗中飛行が得意な種族。

 

本来、洞窟の様な暗闇での飛行は、翅の飛翔力の消費が激しく、また洞窟内は飛翔力に必要な日光や月光がないため回復も出来ない。

 

だが、闇妖精族(インプ)は光の射さない暗闇の中でも他の種族と比べて飛翔力の消費が少なく、また時間は掛かるも暗闇内でも飛翔力が回復する。

 

ミトの立てた作戦はこうだった。

 

まず、最初にキリトを突貫させ、ミトから敵の意識を外す。

 

そして、敵が大技の魔法を使ったらジークとリーファの2人で二重に防御魔法を発動し、ダメージを抑える。

 

そして、大技の魔法を使った時の爆炎や黒煙に紛れ、ミトは橋から飛び降り、敵に見つからない様に水面ギリギリで飛行し、そのまま火妖精族(サラマンダー)の背後を付く。

 

もしかしたら、最初の攻撃でキリトがやられる可能性があった。

 

さらに、水面ギリギリでの飛行も、水中にいる水竜型モンスターにミトが襲われる危険もあった。

 

大技を使うタイミングを外し、リーファとジークの防御魔法が間に合わない危険もあった。

 

何処を見ても危険過ぎる作戦だったが、ミト達はそれを見事熟した。

 

「一歩間違えれば全滅しかねないぞ………!正気か………!」

 

「十分正気よ。そして、アンタたちの負け」

 

「はああああああああああ!!」

 

その瞬間、キリトが(タンク)役の重戦士3人をねじ伏せ、陣形を崩した。

 

そして、後方に控えていたリーファとジークも飛び出し、剣を抜いて重戦士3人を倒した。

 

そのまま火妖精族(サラマンダー)の部隊は崩壊し、次々と倒されていく。

 

隊長メイジは、なんとか逃げようと湖に飛び込むも、水竜型モンスターの餌食になった。

 

そして、火妖精族(サラマンダー)の部隊はメイジ一人を残して、全員が倒された。

 

「さあ、誰の命令とかあれこれ吐いてもらうわよ!!」

 

リーファは剣先をそのメイジに向け、尋問をしようとする。

 

「こ、殺すなら殺しやがれ!」

 

だが、メイジも意地があるのか口を割る気はないらしく強気に出る。

 

「この……!」

 

「いや~、危なかったな」 

 

今にも、リーファが火妖精族(サラマンダー)を斬りそうなピリピリした空気の中、キリトは笑いながら近づく。

 

「よう、ナイスファイト!良い作戦だったな。俺一人だったらやられてたぜ」

 

「は?」

 

キリトは尋問しようとする所か、火妖精族(サラマンダー)達の作戦を褒め始めた。

 

「ちょ、ちょっと、キリト君?」

 

「まぁ、見てな。それで、ものは相談なんだけど」

 

そう言い、キリトは先程の戦闘で得たアイテムの取得画面を見せる。

 

「これ、今の戦闘で俺がゲットしたアイテムとユルドなんだけど、俺たちの質問に答えてくれたらコレ全部上げようかな~なんて」

 

「え?…………まじ?」

 

「まじまじ。ちなみに言うと、後ろの風妖精族(シルフ)の2人と、そこの闇妖精族(インプ)の人が手に入れた物もだ。どうだ?」

 

そこで、メイジの火妖精族(サラマンダー)とキリトはにやっと笑った。

 

「やっぱ情報得るなら鞭より、飴よね」

 

そんな光景に、ミトはにこやかに笑った。

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