ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

86 / 132
第11話 相棒ならきっと……

火妖精族(サラマンダー)の話によると、今日の夕方に先程の隊長メイジのジータクスから強制召集の連絡が来て、集まるとミト達4人を14人のパーティーで襲うと言う話を聞いたとのことだった。

 

「どうして私たちを襲うの?」

 

その話を聞き、ミトが尋ねる。

 

「なんでも、作戦の邪魔になるからだってさ」

 

「作戦?」

 

「俺みたいな下っ端には知らされないさ。ジータクスさんからも、上からの指示だとしか言ってたし。でも、かなり大きい作戦みたいだ。今日ログインした時、すっげぇ数の大部隊が北の方に向けて飛んでくのを見たよ」

 

「北って、まさか世界樹攻略に?」

 

「まさか!ついこの間、全滅したばっかで、今は資金集めの最中なんだぜ。少なくとも全部隊に古代武具(エンシェントウェポン)級の装備が支給できるまでは資金集めだ。お陰でノルマが厳しいのなんのって………でも、まだ目標の半分も貯まって無いらしい」

 

火妖精族(サラマンダー)が嘘をついてるようには見えないので、4人は火妖精族(サラマンダー)を解放し、約束通り入手したアイテム全てを渡した。

 

火妖精族(サラマンダー)の大部隊が北に向かっていて、その目的は世界樹攻略じゃない。さらに、俺たちが作戦の邪魔になるか………気になるな」

 

鉱山都市《ルグルー》に入って、ミト達がアイテムの補充をしてる中、ジークはずっと先程得た情報について考えていた。

 

「ジーク、そんなにさっきの情報が気になるの?」

 

そんなジークが気になり、リーファが声を掛ける。

 

「ああ、やはり大部隊が北に向かってったのは少し気になる。……………気になると言えば、レコンからのメッセージはどうなった?」

 

「あ、忘れてた」

 

リーファはそう言って、メッセージウィンドウを確認する。

 

「う~ん、回線がトラブって切れたのかと思ったけど、何の続きも来てないなぁ。それに落ちてるみたい」

 

「なら、向こうで連絡を取ろう。少し落ちる」

 

「え?いいの?」

 

ジークから、レコンに直接リアルで連絡を取ると言われ、リーファは驚く。

 

「あまりここでのことは、向こうに持ち込みたくないんだろ?俺は、偶にレコンとALOの事を話すから、問題はないからな」

 

「そっか……じゃあ、悪いけど頼める?戻ってくるまで待ってるから」

 

「ああ。少し頼んだ」

 

ジークはそう言って、近くのベンチに座り、ログアウトした。

 

ログアウトすると、順樹は枕元に置いてあるスマホを手に取る。

 

「ん?なんだ?」

 

見ると、スマホの画面には長田から10件ほどの不在着信が入っていた。

 

家族や警察、病院からの緊急タグ付きの電話なら、アミュスフィアと連動し、自動ログアウトするが長田の電話番号はそれに含まれてはおらず、無視する形になっていた。

 

もっとも、普段から長田から連絡が来ることは月に一回あるかどうかなので、然程重要な連絡先ではないのもある。

 

余談だが、長田は直葉には週に二、三回連絡をするもその大半は無視されてる。

 

珍しく長田からの大量コールを疑問に思いながらも、順樹は長田へと連絡をする。

 

すると、1コールする間もなく電話が繋がった。

 

「あ、花部!ようやく出た!君も直葉ちゃんも電話に出るのが遅いよ!」

 

「すまなかった。電話には今気づいたんだ。ところで、桐ヶ谷さんに送ったあのメッセージのことなんだが」

 

「そうだ!それだけど、大変なんだ!シグルドの奴、僕たちを……風妖精族(シルフ)を裏切ったんだ!」

 

 永田のその言葉に、順樹は目つきを鋭くした。

 

「どういうことだ?」

 

「シグルドの事が気になるって言っただろ?それで、あの後、《ホロウ》を使って後を付けたんだ」

 

《ホロウ》とは《ホロウ・ボディ》と言う術の事で、高位の隠蔽魔法と《隠密》スキルをマスターすることで使える、自身を透明化する術で、レコンが得意としてる術だ。

 

「そしたら、路地裏で透明マントを羽織って地下水道に降りたんだ。何かあると思って、そのまま後を付けたらアイツら、火妖精族(サラマンダー)とそこで密会してたんだよ!」

 

「馬鹿な。透明マント程度じゃ、NPCガーディアンの目は誤魔化せない筈だ」

 

「《パス・メダリオン》だよ。あいつら、それを持ってやがったんだ」

 

《パス・メダリオン》とは、厳しい審査の上で発行される通行証で、それがあればNPCガーディアンに襲われずに発行元の他種族の領へと入ることが出来るアイテムで、風妖精族(シルフ)では、領主のサクヤを始め、執政部のメンバーに発行権がある。

 

「なるほど……シグルドなら内密に発行し、火妖精族(サラマンダー)に渡すことが出来るか」

 

「それで、そのまま聞き耳を立ててたら、今日、サクヤ様は猫妖精族(ケットシー)との同盟調印のために、数名の護衛と共に極秘で中立域に向かってるそうなんだ。シグルドの奴、火妖精族(サラマンダー)にその調印式を襲わせるつもりなんだよ!」

 

そこまで聞き、ジークは通話口に怒鳴る様に言う。

 

「レコン!調印式の場所は何処だ!?それと時間は!?」

 

「時間は1時から!詳しい座標までは……でも、《蝶の谷》を抜けた先の所らしいよ」

 

「分かった!俺とリーファは今、《ルグルー》居る!洞窟を抜ければまだ間に合うと思う!」

 

「サクヤ様を頼むよ!僕、アイツらに見つかって麻痺毒で動けないんだ!」

 

最後の長田の声を無視する形で、順樹は通話を切り、素早くアミュスフィアを被り、再びALOにログインする。

 

「あ、お帰り、レコンの奴なんだって?」

 

ベンチの隣に座っていたリーファにそう聞かれるも、ジークは急ぎ気味にリーファの手を取る。

 

「え!?ちょ、ちょっと!?」

 

「リーファ!サクヤたちが危険だ!急がないと!」

 

「お、おい。どうしたんだ?」

 

「何か問題発生?」

 

急に大声を出す、ジークに露店を見ていたキリトとミトもやってくる。

 

「キリト、ミト……すまない。案内はここまでだ。すぐに行かないといけないところが出来たんだ。本当に、すまない」

 

申し訳なさそうに謝るジーク。

 

すると、キリトはミトと頷き合い、ジークを見る。

 

「じゃあ、移動しながら話そう」

 

「え?」

 

「どっちにしろ、ここを出ないといけないしね」

 

そう言い、4人は急いで《ルグルー》を飛び出した。

 

走りながらジークはレコンからシグルドが風妖精族(シルフ)を裏切っていた話をし、風妖精族(シルフ)猫妖精族(ケットシー)の同盟調印を火妖精族(サラマンダー)に襲わせる計画を立てていることを説明した。

 

シグルドが裏切ると言う話に、リーファは「あいつ……!」と怒りを露わにする。

 

「一つ聞いてもいいか?」

 

「なんだ?」

 

火妖精族(サラマンダー)風妖精族(シルフ)猫妖精族(ケットシー)の領主を討った場合のメリットは?」

 

「まず、同盟を邪魔できる。それが、風妖精族(シルフ)側から漏れた情報となれば、風妖精族(シルフ)猫妖精族(ケットシー)で戦争になるかもしれない。それと、領主館に蓄積されてる資金の三割の入手。そして、10日間街を占領して、自由に税金を掛けることが出来る」

 

「そんなことができるのか」

 

「なら、急いで止めないと」

 

話を聞き、ミトはそう言い、キリトも頷く。

 

すると、ジークとリーファが突如歩みを止めたので、キリトとミトも足を止める。

 

「…………これは、風妖精族(シルフ)の問題だ。それに2人を巻き込むつもりはないし、2人が付き合う理由はない……。この洞窟を出れば《アルン》まではもうすぐだ。最後まで案内出来なくて、すまない」

 

「2人の腕ならきっと《アルン》までいけるはずだから。それじゃあ、また何処かで」

 

「………ここまで来て、2人を他人と思える程、俺は薄情じゃない」

 

すると、キリトがそう呟いた。

 

「俺にとって、2人はもう友達なんだ。友達の守りたいモノは俺の守りたいモノじゃないかもしれないけど、共に守ろうとする理由には十分だ」

 

キリトはリーファとジークに笑いかける。

 

「………って、俺の相棒ならきっとそう言うと思うんだ」

 

付け加えるようにそう言って、キリトは笑った。

 

そのセリフに、ミトは懐かしそうに笑う。

 

「そうね。きっとそう言うわ。それで、相棒が決めた事ならそれに付き合う。そう言う事でしょ、キリト?」

 

「ああ。よく分かるな」

 

「当然でしょ。貴方達の事は、ずっと見てたからね。羨ましいぐらいの関係よ、貴方たちは」

 

「そりゃ悪かったな。………ま、そう言う訳だ」

 

キリトとミトは、ジークとリーファに向き合う。

 

「付き合うよ、最後までな」

 

「一緒に領主たちを救いましょ」

 

温かみを持った、優しい言葉にジークもリーファも心が温かくなるのを感じた。

 

「2人とも……ありがとう」

 

「君達には助けられてばっかだな……ありがとう」

 

「………っと、しまった。時間無駄にしちゃったな。ユイ、走るからナビよろしく!」

 

「ノアはモンスターの索敵よ!」

 

「「了解しました!」」

 

「それでは」

 

「お手を拝借」

 

そう言い、ミトはリーファ、キリトはジークの手を取る。

 

「「え?」」

 

「飛ばすわよ!!」「飛ばすぞ!」

 

次の瞬間、ジークとリーファは体が引っ張られ、洞窟内を走り抜けた。

 

強烈なスピードに2人が洞窟の湾曲に沿ってコーナーリングをするたびに、ジークとリーファは右に左に体が大きく揺れる。

 

道はユイがナビをし、モンスターとの接触はノアの索敵で回避し、接触を最小限にとどめる。

 

それでも、十数体のモンスターのタゲを取ってしまい、4人の背後には大量のモンスターを引き連れていた。

 

「出口だ!」

 

光が見え、全員一斉に外に飛び出し、飛び出すと同時に翅を出し飛ぶ。

 

「寿命が縮んだわよ!」

 

「時間短縮になっただろ」

 

「俺が言えたことじゃないが、次からは事前に言ってくれ」

 

「次の機会があったらそうするわ」

 

ジークとリーファは2人の行き成りの行動に驚き文句を言い、ミトとキリトはケラケラと笑っていた。

 

「あっ」 

 

その時、リーファが声を上げた。

 

リーファが向いてる方を見ると、そこには高くそびえる世界樹が見えた。

 

《アルン》までは距離的に20㎞近くまだあるが、その距離からでも途轍もなく大きく見える為、近くで見たらどれほどの大きさになるのか予想できなかった。

 

「……ジーク、領主会談の場所はどこ?」 

 

今すぐ《アルン》まで飛んでいきたい衝動を抑え、ミトはジークに尋ねる。

 

「あ……ああ、北西のあの山の奥。猫妖精族(ケットシー)領に繋がる《蝶の谷》の内陸側ので口で行われる。あそこだ」

 

ジークが指を指して、方角を示す。

 

「残り時間は?」

 

「………20分」

 

「なら、急ぎましょう!」

 

「間に合ってくれ!」

 

全員で頷き合い、更にスピードを上げて4人は《蝶の谷》を目指した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。