ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第12話 黒の剣士VS猛炎の将

しばらく飛ぶとノアとユイが叫んだ。

 

「プレイヤー反応です!前方に大集団、60人!おそらく火妖精族(サラマンダー)の強襲部隊です!」

 

「さらにその向こうに14人!風妖精族(シルフ)及び猫妖精族(ケットシー)の会議出席者と予想されます!双方が接触まで後50秒!」

 

雲を抜けると、遠くに火妖精族(サラマンダー)の強襲部隊を捉えることが出来た。

 

接触までの残り時間を聞いたあたりからジークとリーファも薄々思っていたが、やはり間に合わなかった。

 

「間に合わなかったね……ありがとう、ここまででいいよ」

 

「2人は世界樹へ行ってくれ……短い間だったけど楽しかった」

 

ジークとリーファは、ミトとキリトに世界樹に向かう様に言う。

 

「…………ここで逃げ出すのは性分じゃないんでね」

 

「一緒に領主を救おうって言ったでしょ」

 

「え?」

 

「なに?」

 

そう言うとミトとキリトは急角度のダイブを始めた。

 

「な、何よそれぇ!」

 

「俺たちも急ごう!」

 

ジークとリーファも叫びながらダイブする。

 

そして、今にも風妖精族(シルフ)猫妖精族(ケットシ-)火妖精族(サラマンダー)に襲われそうになる一触即発の中に隕石の様に突っ込んだ。

 

「「双方、剣を引け!」」

 

ミトとキリトは風妖精族(シルフ)猫妖精族(ケットシー)の前に立ち、火妖精族(サラマンダー)に向かって叫ぶ。

 

遅れて降り立ったジークとリーファは、風妖精族(シルフ)の領主《サクヤ》の近くに立つ。

 

「リーファ!?それにジークも!?どうしてここに……!いや、そもそもこれは一体……!」

 

突如現れたミトとキリトに加え、その直後にやって来たジークとリーファにサクヤは、普段からは想像がつかないような慌てぶりをする。

 

「簡単には説明できないの。ただ1つ言えるのは………」

 

「俺たちの運命は、あの2人に託されたと言う事だ」

 

そう言い、ジークとリーファは、ミトとキリトを見つめる。

 

「指揮官と話がしたい」

 

キリトの言葉にレアアイテムと分かる防具と武器を持ったプレイヤーが前に出る。

 

影妖精族(スプリガン)闇妖精族(インプ)が何の用だ?どちらにせよ殺すには変わりないが、その度胸に免じて話は聞いてやる」

 

「俺の名はキリト。影妖精族(スプリガン)=闇妖精族(インプ)同盟の大使だ」

 

「私はミト。こちらの大使の護衛よ」

 

影妖精族(スプリガン)闇妖精族(インプ)が同盟だと?それに、護衛がたった1人………俄かには信じ難いな」

 

「ここにはさらなる同盟交渉の為に来ただけだからな。だが、この会談が襲われたとなれば風妖精族(シルフ)猫妖精族(ケットシー)とも同盟を組み、4種族で火妖精族(サラマンダー)に戦争を仕掛けるぞ」

 

「すでに影妖精族(スプリガン)闇妖精族(インプ)、両種族は世界樹攻略に向けて万全の態勢を整えてるわ。世界樹攻略前に、余計な戦いはしたくないけど………それも仕方ないわよね?」

 

ハッタリをかますキリトに、それに堂々と乗っかるミト。

 

嘘だと分かっているリーファとジークは冷や汗を掻く。

 

そんな中、火妖精族(サラマンダー)の指揮官だけは、2人を値踏みするように見る。

 

「………見た感じ、中々の武器を持っている様だな。それ程の武器を持っているならそれなりに腕の立つプレイヤーなのは明白。だが、貴様ら2人の顔に見覚えはない。貴様らの話、信じるには些か情報が足りない」

 

そう言うと、指揮官火妖精族(サラマンダー)は、背中の剣を抜く。

 

「構えろ。俺の攻撃に30秒間耐えれたら、貴様を大使として認めてやろう」

 

「気前がいいな」

 

そう言い、キリトは《ダークリパルサー》を抜く。

 

「ミト。奴らが約束を守らない可能性もある。領主たちの護衛、任せたぞ」 

 

「ええ。気を付けて」

 

ミトにそう言い、キリトは宙に飛ぶ。

 

影妖精族(スプリガン)……貴様の名は?」

 

「キリトだ」

 

「そうか……俺はユージーン。悪いが、本気で行くぞ」

 

「こっちも、最初からその気さ」

 

互いに剣を構え、踏み出すタイミングを計る。

 

上空の雲が流れ、隙間から太陽の日が差す。

 

その瞬間、ユージーンはその日を手にした剣の刀身で反射させ、キリトの目に当てる。

 

キリトは、一瞬眩しさで目を閉じてしまう。

 

その隙を逃さず、ユージーンは斬り掛かる。

 

咄嗟に剣で受け止めようとキリトは剣を振るが、ユージーンの剣が《ダークリパルサー》の刀身をすり抜けた。

 

「なっ!?」

 

それに驚いていると、ユージーンの剣はキリトに当たり、キリトの身体を斬りつける。

 

当たった瞬間、翅を震わせ、後ろに後退したお陰で体を撫でる様に切られただけで済んだが、キリトは今何が起きたのか分からず、困惑した。

 

「剣が剣をすり抜けた……一体………」

 

「特別に教えてやろう」

 

キリトの疑問に、ユージーンは手にした剣を掲げ、言う

 

「この剣の名は《魔剣グラム》。今のは特殊効果の《エセリアルシフト》だ。剣や盾で受け止めようとも剣が非実体化し、すり抜け、すり抜けると再び実体化し、相手にダメージを与える」

 

「反則級だな」

 

「気に食わんか?」

 

「まさか。良い武器だよ。だけど………武器の性能が勝敗を決めるとは限らないんだよ!」

 

そう叫び、キリトはユージーンに向かって、翅を震わせ突貫した。

 

「あの剣、まさか《魔剣グラム》か!」

 

キリトとユージーンの戦闘を見てサクヤが声を上げる。

 

「《魔剣グラム》って、両手剣スキルが950ないと装備できない、あの伝説武器(レジェンダリーウェポン)!?」

 

「と言う事は、あの男がユージーン将軍か」

 

ジークはそう言い、宙を見上げる。

 

「ねぇ、そのユージーンって奴は強いの?」

 

「ああ火妖精族(サラマンダー)領主、“モーティマ”の弟で、リアルでも兄弟。知の兄に対して、武の弟。純粋な戦闘力なら、全ALOプレイヤー中最強だ」

 

そう言いながら、ジークはユージーンから視線を外さなかった。

 

上空では、キリトはユージーンに連撃を繰り出していた。

 

防御が取れない以上、攻めて攻めて攻めまくって、攻撃する隙を与えない様にするしかない。

 

だが、ユージーンのプレイヤースキルは凄まじくキリトの連撃を的確に弾き返し、キリトの連撃に僅かの間が開くと、そこを狙い攻撃を繰り出す。

 

「くっ………!効くなぁ………おい!もう30秒経ったんじゃないか!」

 

「すまないが、斬りたくなった。俺の首を取るまでに変更だ!」

 

「この野郎……!絶対泣かす!」

 

そう言いつつ、キリトは再びユージーンへと攻撃を開始した。

 

(《ダークリパルサー》だけだと、連撃回数が少な過ぎる……!《二刀流》で行けば…………!)

 

キリトは心の中でそう呟き、無意識に意識を背中へと向ける。

 

かつて、そこにあったもう一つの剣《エリュシデータ》。

 

一応、《クイックチェンジ》のスキルで瞬時に、装備するように設定はしてあるが、やはりキリトは《エリュシデータ》を抜くことが出来なかった。

 

(アスナを救うって決めたのに………カイの死を無駄にさせないって決めたのに………!俺は…………!)

 

「捕らえた!」

 

キリトが意識をユージーンから外した瞬間、ユージーンが火妖精族(サラマンダー)の真骨頂とも言える重突進でキリトに攻撃を仕掛ける。

 

「しまっ!?」

 

意識をユージーンから外してしまったことに、キリトは自身に舌打ちし回避する。

 

(くそっ!強過ぎる………このままじゃ……!)

 

キリトの眼前に、ユージーンが迫る。

 

その時だった。

 

「………あ」

 

唐突に、あることを思い出した。

 

そして、キリトの行動は早かった。

 

キリトは右手を突き出し、出来る限りの高速で口を動かし、今使える魔法のスペルを詠唱する。

 

すると、突き出した右手から黒煙が吹き出し、キリトとユージーンを包んだ。

 

「時間稼ぎのつもりか!」

 

ユージーンは剣を一振りし、一気に黒煙を吹き飛ばす。

 

黒煙が晴れると、空の何処にもキリトの姿はなかった。

 

「いない?」

 

「まさか、逃げたんじゃ……」

 

リーファたちの背後で、誰かがそう呟いた。

 

「そんなわけないでしょ」

 

すると、ミトがそう言った。

 

「キリトはね、誰よりもこの世界を、VRMMOの世界を生きてるの。遊んでるんじゃない。だから、キリトは誰も裏切らないし、強いのよ」

 

そう言うミトの目には確信の色があった。

 

そして、ミトがそう言い終わると同時に、ユージーンの頭上に、小さな影が落ちる。

 

ユージーンが見上げると、そこには太陽を背に、キリトがユージーンを目掛け、急降下していた。

 

普通のプレイヤーなら太陽光を避ける為に水平移動をし、そこを叩かれる。

 

だが、ユージーンは自身に降り注ぐ太陽光を無視し、再び重突進を仕掛け、《魔剣グラム》の剣先を向ける。

 

「はああああああああああ!!」

 

対して、キリトは《ダークリパルサー》を強く握りしめ、大上段から剣を振る。

 

突きと大上段からの振り下ろし。

 

どちらが先に相手に当たるかは、明白だった。

 

重突進のスピードに加え、《魔剣グラム》の刀身の長さ。

 

明らかに、ユージーンの攻撃が先に当たる。

 

更に言うと、キリトの攻撃は大振り過ぎて、剣が背中に隠れていた。

 

その行動に、ユージーンは(苦し紛れの攻撃か)と詰まらなさそうに笑う。

 

《魔剣グラム》の剣先が、キリトに刺さる。

 

その瞬間、ユージーンの《魔剣グラム》はキリトから見て、左から何かの衝撃によって軌道がズレ、キリトに当たらなかった。

 

「なっ!?」

 

《魔剣グラム》の軌道を変えたのは、キリトが左手に持った《ダークリパルサー》だった。

 

背中に剣が隠れるほどの大振りをした時、キリトは右手から《ダークリパルサー》を離し、そのまま背後に回した左手で逆手にキャッチした。

 

そして、ユージーンが自身の剣が右手にあると思い込み、確実に《魔剣グラム》での一撃が入ると確信を持った瞬間に、意識外からの攻撃で《魔剣グラム》を弾いた。

 

「くっ!舐めるな!」

 

だが、ユージーンは終わらなかった。

 

仮にもALO最強プレイヤーと言われる身だ。

 

何とか持ちこたえ、キリトに向け《魔剣グラム》を振る。

 

が、その直後ユージーンの右側頭部に衝撃が走る。

 

キリトが左足でユージーンの右側頭部に蹴りを入れたからだ。

 

流石のユージーンも、これには体勢を崩した。

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

そして、すかさずキリトは右手に持ち直した《ダークリパルサー》である技を放った。

 

かつてアインクラッドでよく目にした技で、キリト自身使ったことはないが、キリトの相棒である彼が使った技。

 

刀スキル、突進技《紫電一閃》。

 

そして、その前に使ったのは体術スキル《弦月》。

 

《弦月》からの《紫電一閃》は、カイが最も得意としたコンボだった。

 

(まさか、こんなタイミングでお前との決闘(デュエル)を思い出すとはな……!)

 

そのまま《ダークリパルサー》はユージーンの心臓を貫き、キリトはありったけの力とスピードを籠めて急降下する。

 

「ぐおおおおおおっ!!くっ……舐めるな!」

 

ユージーンは負けじと、火炎魔法を詠唱し、キリトを吹き飛ばす。

 

吹き飛ばされた衝撃で、《ダークリパルサー》はユージーンの身体から抜け、更にキリトの手からも飛ばされる。。

 

「うおおおおおおおおおお!!」

 

だが、キリトは武器が無くても諦めようとせず、最後の力を振り絞り、ユージーンへとしがみ付いた。

 

「なっ!?」

 

「このまま……一緒に落ちてもらうぞ!」

 

ユージーンの身体にしがみ付いたまま、キリトは急降下し、そのまま地面へと、ユージーンと共に激突した。




エリュシデータを使うのに躊躇いがあるので二刀流を使わずに、キリトを勝利させました
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