キリト達がアルンに向け、再び出発した頃。
アスナは未だに鳥籠の中に居た。
ALOの世界では、1日が16時間で過ぎる。
毎日決まった時間にしかログインすることが出来ないプレイヤーへの配慮だった。
その為、アスナには今の正確な時刻は分からない。
だからこそ、自身の体内時計を信じて、アスナは現在は真夜中だと推測した。
真夜中なら、須郷も寝ていて鳥籠にやって来ることはない。
「動くなら今だ」
そう呟き、アスナは鳥籠の扉に近付く。
扉を開けるには暗証番号が必要で、アスナはその暗証番号を知らない。
また須郷が扉を開けようとする所を見ても、遠近エフェクトによってディディールが減少し、どのボタンを押しているのかは分からない。
だが、仮想世界では、鏡などを通してみると遠近エフェクトが機能せず、高解像度のピクセルで詳細に映る。
そこまで知らなかった須郷は、安易にベッドの天蓋を支える壁に鏡を貼っており、アスナは須郷が何度も鳥籠を訪れて出て行く度にその鏡を通して、扉の暗証番号の確認をしていた。
「8……11……3……2……9……」
番号を一つ一つ丁寧に押し、最後の一つを押すと大きく金属音が鳴り、扉が開く。
「開いた……!」
扉が開いたことに喜びを感じ、アスナは鳥籠の外に出る。
「キリト君……私、頑張るから」
小声でそう呟き、アスナは巨木の幹までつながる太い枝を走り出す。
「動きやがったな」
その様子を、何者かが見ていた。
「俺も行くか」
そう言い、後を付けるその何者かの腰に差した刀が僅かにカチャっと音を鳴らした。
同時刻、ALOの
「
領主館前までやって来た少年に、作戦から帰って来たユージーンが対峙し尋ねる。
「貴方が、
「領主は俺の兄者だ」
「では、領主に取り次いで下さい。お話があります」
「随分と舐められたものだな。ただの一般プレイヤーが、それも
そう言い、ユージーンは《魔剣グラム》を抜刀する。
「他種族の領内では、攻撃が出来ないんでしたね。でも、貴方から俺は攻撃できる。いいですよ。例えダメージが入らなくても、貴方が参ったと言うまで耐久戦をするだけですから」
そう言うと、
「よし、これで準備は終わった」
そう言い青年はPCの画面を見る。
そこには、およそ数十人の人間とのチャットのログがあった。
『無論参加する!』
『今度こそ終わらせよう』
『戦えなくても支援ぐらいさせてくれ!』
などなど、何かの戦いに参加する意思表示が多くあった。
「あとは、今日の午後3時。そこで全て終わる」
そう言い、青年はスマホを見る。
「あの時、動けなかった俺とは違う。今度こそ、騎士として戦い抜く!」
届いたメッセージを見つめ、青年は今度こそ戦い抜く決意を固めた。
ALOと
それが、一つの物語が終わるキッカケとなる。
それを知る者は、恐らくあの世界の本当の神だけだろう……………