「と、トバル君!?」
ここに居ることがあり得ない人物がいることに、アスナは驚く。
「久しぶりだな、アスナ。それにしても、凄い格好だな。キリトが見たら、卒倒しそうだな」
「そんなことは今いいでしょ!?それより、どうしてここに?」
「訳は後で話す。今は逃げるぞ」
「おい、何シカトしてるんだ!」
《ブルスラッグ》の姿をしてる2人の研究者は、その姿を妖精の姿へと変え、手には一本の剣を持った姿になっていた。
「どんな手段で侵入したか知らねぇが、テメーも実験動物にしてやるよ!」
手にした剣で、トバルに襲い掛かる。
「トバル君!」
アスナはトバルに叫ぶ。
「邪魔だ」
トバルは蠅でも払う様に刀を振る。
その一撃で、研究者の持つ剣は折れ、胴体を一刀両断される。
「「ぐあああああああああああ!!」」
胴を斬られた研究者たちは上半身だけで、のたうち回る。
「なんでだよぉ!?なんでこんなにイテェんだ!!?」
「ペインアブソーバーは機能してるはずなのに!?どうしてぇぇぇぇぇ!!?」
「こっちだ!」
「あ、ちょっと!?」
のたうち回る研究者を放置し、トバルはアスナを連れて走り出す。
「全く、少しはこっちの都合も考えて欲しいもんだぜ。本当なら、今日の午後3時決行予定が、台無しだ」
「どういうこと?決行って何を?」
「この世界、ALOの真実を暴いて、囚われてるSAOプレイヤーを解放する………つまりSAOを真の意味で終わらせるための作戦だ」
走りながらトバルは、アスナに作戦を話した。
当初の予定では、今日のメンテナンス明け午後3時に、トバルがアスナを鳥籠から解放し、そのまま世界樹の外へと連れだす。
連れ出すと同時に、世界樹の外で待機していた他のメンバーにアスナを引き渡し、アスナの安全を確保する。
そしたら、世界樹攻略を始め、その真実を暴く。
「その予定が、お前さんが勝手に動き出したせいで大幅に変更せざるを得なくなったって訳だ」
「そうだったんだ……ごめん、私の所為で………」
「いや、むしろそれでこそアスナって感じだ。あのまま囚われのお姫様でいる訳ないもんな、お前さんは」
どこか懐かしく感じるやり取りに、トバルもアスナも嬉しくなり思わず笑顔になる。
だが、その時、喧ましい警報音が鳴り、白い通路を赤いランプが点滅する。
「チッ!警報鳴らしやがったか!人体への影響が出ない様に手加減したが、こんなことなら細切れにするべきだったか………!」
警報が鳴ると同時に、トバルとアスナを囲う様に頑強そうな鎧に身を包み、手には剣や斧、槍を持ったNPCガーディアンが出現する。
「トバル君、
「悪いな。生憎、時間が無くて自分の武器を作るだけで精一杯だ。一気に突っ切るから、しっかりついてきやがれ!」
トバルは手にした刀に力を籠め、前方のNPCガーディアンを斬る。
体勢が崩れると、そのまま足蹴にし通路を確保して、走り出す。
アスナも遅れずに、その後を走る。
NPCガーディアンたちは、侵入者であるトバル、そして脱走者のアスナを捕まえるべく追跡をする。
「ここまでだな」
するとトバルは逃げるのを止め、後ろを向く。
「アスナ、このままこの通路を真っすぐに行け。そしたら、T字廊に当たる。そこを右に曲がって進むと、転送室がある」
そう言い、トバルは逃げる際にコンソールから抜いたカードをアスナに渡す。
「コイツがあれば転送機が使えるはずだ。ソイツを使って世界樹の外に出るんだ。出たら、外でお前を保護してくれる奴が居るから、ソイツと合流しろ」
「ちょっと待って!トバル君は、どうするの!?」
「俺はNPCガーディアン共を引き付ける。少しでも時間を稼ぐ」
「駄目だよ、そんなの!一緒に逃げよう!」
「…………アスナ、俺はな、ずっと後悔してるんだ」
トバルは刀を鞘に収め、居合の構えを取り、腰を落とす。
「俺が鈍ら刀なんぞ打っちまったから、カイは死んじまったって。ずっと後悔してる」
悲しみと悔しさが混じった声に、アスナは思わず何も言えなくなる。
「これはな、カイへの贖罪なんだ。アイツが成し遂げようとしたSAO全プレイヤーの解放。ここで逃げだしたら、アイツに顔向けできねぇんだよ」
「トバル君………」
「行け、アスナ!」
「………トバル君、無理しないでね」
その言葉を最後に、アスナは走り出した。
トバルの覚悟を受け取り、それ以上何も言わず、後ろも振り向かず走り出した。
「無理するな………か」
トバルは、こちらに向かって進んでくるNPCガーディアンの軍団を見て、不敵に笑う。
「ま、無理する気はないけどよ…………別に倒しちまっても構わないよな!」
そう叫び、トバルはNPCガーディアンの軍団へと突っ込んだ。