ソードアート・オンライン~焔の剣聖~   作:ほにゃー

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第22話 堕ちた英雄

「キリト君、ミト君。彼の事は知ってるよね?」

 

戦闘の様子を見ながら、後ろにいるミトとキリトに尋ねる。

 

「ついこの前、彼から運営にある訴えが来たんだ。『領主による不当な追放処分を受けた』ってね」

 

ワインを一口飲み、須郷は言う。

 

「稀にこう言う訴えはあるけど、基本的に運営はプレイヤー間での揉め事には介入しない。今回もお決まりの文章で返信する予定だったけど、メッセージには面白い文があったんだ」

 

背後に視線を映し、須郷はニタリと笑う。

 

「『黒い剣士と、鎌使いの女の、それも他種族の持ち込んだ偽の情報に踊らされるプレイヤーに領主は務まらない』ってね。黒い剣士と鎌使い………前者はキリト君の二つ名だっけ?それで、ミト君は鎌を使ってた。偶然にしては、出来過ぎてる。だからこそ、僕は彼に接触することにした。そしたらどうだい!見事、君達2人だった!愚かにも、僕の世界に踏み込んだ君たちを是非ここに招待したくてね。どうだい?僕の作った世界は?」

 

「………胸糞悪い世界だよ、須郷」

 

「………世界樹の上に天空都市があるとか嘘ついて、よくも全プレイヤーを騙してたわね」

 

「ふん、何とでも言えばいいさ。この世界に、神たる僕にその王妃以外に光妖精族(アルフ)はいらないのさ」

 

須郷は罪悪感を感じず、スクリーンに向き直る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!!」

 

風妖精族(シルフ)のプレイヤーがまた1人倒される。

 

どういう訳か、欠損部位の回復が出来ず、殆どのプレイヤーは四肢を落とされ、身動きの取れない状態となっている。

 

猫妖精族(ケットシー)の最高戦力の飛竜もすべて落とされ、火妖精族(サラマンダー)もその人員を半分以下にまで落としていた。

 

「この男………ここまで強かったのか………!」

 

ユージーンは《魔剣グラム》を構え、肩で息をする。

 

「いや、確かにシグルドは風妖精族(シルフ)でも屈指の実力者だ。だが、これだけの大人数を相手に戦える程の技量はなかったはず………」

 

「それに、種族的に火妖精族(サラマンダー)にパワー負けするはずなのに、あの強さ………まさか、チート!?」

 

シグルドの異常な強さに、アリシャはチートを予想した。

 

「チートだって?そんなもの使わない」

 

アリシャの予想に、シグルドはすぐさま否定した。

 

「今の俺はオベイロン様の忠実な僕だ。この力は、全てオベイロン様が与えてくださった物。貴様ら如きが敵う訳ない!」

 

「そんなのってあり!?」

 

今のシグルドは、須郷によって全パラメーターを全種族より遥かに上回っており、また与えられた装備も所謂ぶっ壊れ性能で、武器は武器の耐久値回復させるリジェネ機能に、ATK・DEFのバフ効果、防具には古代級武器(エンシェントウェポン)以下の武器の攻撃及び上級以外の魔法のダメージ無効化。

 

おまけにHPの即時回復機能もついている。

 

「そこまで堕ちたか、シグルド!」

 

かつての部下にして同胞の姿に、サクヤは叫ぶ。

 

「俺がこうなったのはお前の所為だ、サクヤ。それに、堕ちたという表現は止めろ。俺はいずれ、オベイロン様と同じ光妖精族(アルフ)になる。貴様らは、この俺が光妖精族(アルフ)となり、あの大空を自由に飛び回る姿を地上から無様に見上げるんだよ」

 

「完全に暴走しているな………」

 

ディアベルが、後方のガーディアン達の相手をしながら、シグルドを見てそう言う。

 

「どうすんだよ、ディアベル!このままじゃ、こっちの体力が持ちそうにねぇぞ!」

 

クラインがガーディアンを一体斬り伏せながら、ディアベルに言う。

 

水妖精族(ウンディーネ)を選んだ奴らからの回復支援があっても、MP回復ポーションが底を尽いたら終わりだ!このままだと!」

 

「ああ、分かってるさ。考えはある。クライン、ガーディアンの相手を頼めるか?」

 

「おう、任せとけ!」

 

「すまない!もう少しだけ、持ち堪えてくれ!」

 

ディアベルはそう叫び、サクヤたちの所へ移動する。

 

「皆さん!」

 

「……どうした?」

 

「時間を稼ぐことに集中してください」

 

「なんだと?」

 

「稼ぐのはいいけど、時間を稼いだ所でシグルドには敵わないヨ?」

 

「何か策を立てねば………」

 

「ええ、その策があるんです。だから、後5分。5分だけ持ち堪えてください。そうすれば、流れを変えることは出来るはずです」

 

「………5分でいいのだな」

 

ディアベルの言葉に、ユージーンが尋ねる。

 

「はい!」

 

「承知」

 

ユージーンは短くそう答え、《魔剣グラム》を握り直す。

 

火妖精族(サラマンダー)よ!!重装部隊を前に、メイジ部隊は回復支援!時を稼ぐぞ!」

 

「「「「「「「「「「イエッサー!」」」」」」」」」」

 

ユージーンの命で、火妖精族(サラマンダー)たちはルグルー回廊で見た陣形で、シグルドに対抗する。

 

「ハッ!時間稼ぎが何の意味があるんだ!」

 

シグルドは、驚異的な攻撃を繰り出すも、攻撃が当たる傍からHPを回復していき、中々火妖精族(サラマンダー)たちのHPを減らすことが出来なかった。

 

「しょ、将軍!マナが足りなくなりそうです!」

 

「次の攻撃以降、もう回復が!」

 

だが、火妖精族(サラマンダー)の防御陣を以てしても、シグルドを抑え込むことが出来ず、回復へ回すMPが無くなり欠けていた。

 

風妖精族(シルフ)猫妖精族(ケットシー)、そして元SAO組も回復や支援をするも、シグルドの前にはあまり効果は薄かった。

 

「踏ん張れ!あともう少しだ!」

 

ユージーンは味方を鼓舞するも、陣形が持たない事に気づいている。

 

「終わりだぁ!!!!」

 

シグルドが最後の一撃を放とうと、剣に力を込めた。

 

その時だった。

 

「はあああああああああああ!!」

 

突如、シグルドの背後から1人の水妖精族(ウンディーネ)が現れ、シグルドを背後から斬り裂いた。

 

「がっ!?」

 

予想外の攻撃に、シグルドは攻撃の手を止め、体勢を崩す。

 

「な、何が!?」

 

シグルドは何が起きたのか、背後を見る。

 

そこには、短剣を持った水妖精族(ウンディーネ)を筆頭に100人程のプレイヤーがいた。

 

「ディアベルさん!こちらも参戦します!」

 

「助かったぞ、レオ君!」

 

ディアベルはその水妖精族(ウンディーネ)をレオと呼んだ。

 

カイの弟子にして、準攻略組だったレオだ。

 

「貴様は!?あの時の水妖精族(ウンディーネ)!」

 

「どうもです、ユージーンさん」

 

レオはユージーンに挨拶をする。

 

実は、《世界樹攻略》の為にディアベルは火妖精族(サラマンダー)にも協力要請を頼もうとした。

 

だが、普通に言っても協力はしてくれない。

 

そこで、本来は回復・支援タイプの水妖精族(ウンディーネ)を、交渉人とし向かわせ、一騎打ちと言う条件付きで協力要請を頼んだ。

 

その交渉人には、レオが選ばれた。

 

交渉後は、ディアベルが万が一に備え、別動隊としレオを隊長として待機させていた。

 

そして、ディアベル率いるSAO攻略組による第一陣が突入後、10分後に第一陣が戻って来る気配がなければSAO準攻略組の第二陣が突入するように指示していた。

 

「半数はポーションの配布と回復・支援魔法を!残りは、俺と共に攻撃開始!退路の確保と敵の排除!行きます!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」」」」」

 

レオがそう言い、SAO準攻略組も雄たけびを上げ、作戦を開始する。

 

「これが狙いだったか」

 

「ええ。決定打にはならないかもしれませんが、戦いの流れを変えることはできたはずです。このまま、士気を維持しつつ撤退します!ここが正念場、頼みます!」

 

「了解した!」

 

「分かったヨ!」

 

「承知!」

 

ディアベルの言葉に、サクヤ、アリシャ、ユージーンは力強く頷く。

 

実際、レオ達準攻略組の介入により、ディアベル率いる攻略組、そして、風妖精族(シルフ)猫妖精族(ケットシー)火妖精族(サラマンダー)たちはHPとMPの回復、そして、アイテム補充が出来て、士気は向上していた。

 

いくら、シグルドがチートをしていても、隙をついての突破ぐらいは可能と思えた。

 

「……………チッ!うるさい羽虫が集まりやがって」

 

そう言うと、シグルドは持っていた剣を手放した。

 

その行動に、誰もが不思議に思った。

 

「面倒だ。まとめて、葬り去ってやる」

 

そう言うと、シグルドのアバターが突如、膨れ上がり、体中から骨や肉がまるで形を作り変えてるかのような音を立てる。

 

物の数秒で、シグルドのアバターは人と言う形を留めていなかった。

 

更に数秒で、その大きさを巨大ガーディアンと同じぐらいにまでなり、更に数秒後、背中から翼が生え、手には鋭利な爪、口には獰猛な牙、体は鱗で覆われた。

 

1分にも満たない時間で、シグルドはその姿を人から別のモノに作り替わった。

 

「ど、ドラゴン………!?」

 

シグルドのその姿を見て、アリシャは思わずそう言った。

 

アリシャの言う通り、シグルドは(プレイヤー)から(モンスター)となった。

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