「キリト君、ミト君。彼の事は知ってるよね?」
戦闘の様子を見ながら、後ろにいるミトとキリトに尋ねる。
「ついこの前、彼から運営にある訴えが来たんだ。『領主による不当な追放処分を受けた』ってね」
ワインを一口飲み、須郷は言う。
「稀にこう言う訴えはあるけど、基本的に運営はプレイヤー間での揉め事には介入しない。今回もお決まりの文章で返信する予定だったけど、メッセージには面白い文があったんだ」
背後に視線を映し、須郷はニタリと笑う。
「『黒い剣士と、鎌使いの女の、それも他種族の持ち込んだ偽の情報に踊らされるプレイヤーに領主は務まらない』ってね。黒い剣士と鎌使い………前者はキリト君の二つ名だっけ?それで、ミト君は鎌を使ってた。偶然にしては、出来過ぎてる。だからこそ、僕は彼に接触することにした。そしたらどうだい!見事、君達2人だった!愚かにも、僕の世界に踏み込んだ君たちを是非ここに招待したくてね。どうだい?僕の作った世界は?」
「………胸糞悪い世界だよ、須郷」
「………世界樹の上に天空都市があるとか嘘ついて、よくも全プレイヤーを騙してたわね」
「ふん、何とでも言えばいいさ。この世界に、神たる僕にその王妃以外に
須郷は罪悪感を感じず、スクリーンに向き直る。
「ぐあっ!!」
どういう訳か、欠損部位の回復が出来ず、殆どのプレイヤーは四肢を落とされ、身動きの取れない状態となっている。
「この男………ここまで強かったのか………!」
ユージーンは《魔剣グラム》を構え、肩で息をする。
「いや、確かにシグルドは
「それに、種族的に
シグルドの異常な強さに、アリシャはチートを予想した。
「チートだって?そんなもの使わない」
アリシャの予想に、シグルドはすぐさま否定した。
「今の俺はオベイロン様の忠実な僕だ。この力は、全てオベイロン様が与えてくださった物。貴様ら如きが敵う訳ない!」
「そんなのってあり!?」
今のシグルドは、須郷によって全パラメーターを全種族より遥かに上回っており、また与えられた装備も所謂ぶっ壊れ性能で、武器は武器の耐久値回復させるリジェネ機能に、ATK・DEFのバフ効果、防具には
おまけにHPの即時回復機能もついている。
「そこまで堕ちたか、シグルド!」
かつての部下にして同胞の姿に、サクヤは叫ぶ。
「俺がこうなったのはお前の所為だ、サクヤ。それに、堕ちたという表現は止めろ。俺はいずれ、オベイロン様と同じ
「完全に暴走しているな………」
ディアベルが、後方のガーディアン達の相手をしながら、シグルドを見てそう言う。
「どうすんだよ、ディアベル!このままじゃ、こっちの体力が持ちそうにねぇぞ!」
クラインがガーディアンを一体斬り伏せながら、ディアベルに言う。
「
「ああ、分かってるさ。考えはある。クライン、ガーディアンの相手を頼めるか?」
「おう、任せとけ!」
「すまない!もう少しだけ、持ち堪えてくれ!」
ディアベルはそう叫び、サクヤたちの所へ移動する。
「皆さん!」
「……どうした?」
「時間を稼ぐことに集中してください」
「なんだと?」
「稼ぐのはいいけど、時間を稼いだ所でシグルドには敵わないヨ?」
「何か策を立てねば………」
「ええ、その策があるんです。だから、後5分。5分だけ持ち堪えてください。そうすれば、流れを変えることは出来るはずです」
「………5分でいいのだな」
ディアベルの言葉に、ユージーンが尋ねる。
「はい!」
「承知」
ユージーンは短くそう答え、《魔剣グラム》を握り直す。
「
「「「「「「「「「「イエッサー!」」」」」」」」」」
ユージーンの命で、
「ハッ!時間稼ぎが何の意味があるんだ!」
シグルドは、驚異的な攻撃を繰り出すも、攻撃が当たる傍からHPを回復していき、中々
「しょ、将軍!マナが足りなくなりそうです!」
「次の攻撃以降、もう回復が!」
だが、
「踏ん張れ!あともう少しだ!」
ユージーンは味方を鼓舞するも、陣形が持たない事に気づいている。
「終わりだぁ!!!!」
シグルドが最後の一撃を放とうと、剣に力を込めた。
その時だった。
「はあああああああああああ!!」
突如、シグルドの背後から1人の
「がっ!?」
予想外の攻撃に、シグルドは攻撃の手を止め、体勢を崩す。
「な、何が!?」
シグルドは何が起きたのか、背後を見る。
そこには、短剣を持った
「ディアベルさん!こちらも参戦します!」
「助かったぞ、レオ君!」
ディアベルはその
カイの弟子にして、準攻略組だったレオだ。
「貴様は!?あの時の
「どうもです、ユージーンさん」
レオはユージーンに挨拶をする。
実は、《世界樹攻略》の為にディアベルは
だが、普通に言っても協力はしてくれない。
そこで、本来は回復・支援タイプの
その交渉人には、レオが選ばれた。
交渉後は、ディアベルが万が一に備え、別動隊としレオを隊長として待機させていた。
そして、ディアベル率いるSAO攻略組による第一陣が突入後、10分後に第一陣が戻って来る気配がなければSAO準攻略組の第二陣が突入するように指示していた。
「半数はポーションの配布と回復・支援魔法を!残りは、俺と共に攻撃開始!退路の確保と敵の排除!行きます!」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」」」」」
レオがそう言い、SAO準攻略組も雄たけびを上げ、作戦を開始する。
「これが狙いだったか」
「ええ。決定打にはならないかもしれませんが、戦いの流れを変えることはできたはずです。このまま、士気を維持しつつ撤退します!ここが正念場、頼みます!」
「了解した!」
「分かったヨ!」
「承知!」
ディアベルの言葉に、サクヤ、アリシャ、ユージーンは力強く頷く。
実際、レオ達準攻略組の介入により、ディアベル率いる攻略組、そして、
いくら、シグルドがチートをしていても、隙をついての突破ぐらいは可能と思えた。
「……………チッ!うるさい羽虫が集まりやがって」
そう言うと、シグルドは持っていた剣を手放した。
その行動に、誰もが不思議に思った。
「面倒だ。まとめて、葬り去ってやる」
そう言うと、シグルドのアバターが突如、膨れ上がり、体中から骨や肉がまるで形を作り変えてるかのような音を立てる。
物の数秒で、シグルドのアバターは人と言う形を留めていなかった。
更に数秒で、その大きさを巨大ガーディアンと同じぐらいにまでなり、更に数秒後、背中から翼が生え、手には鋭利な爪、口には獰猛な牙、体は鱗で覆われた。
1分にも満たない時間で、シグルドはその姿を人から別のモノに作り替わった。
「ど、ドラゴン………!?」
シグルドのその姿を見て、アリシャは思わずそう言った。
アリシャの言う通り、シグルドは