僕がチルドレンのママになるんだよ!   作:はっぽーしゅ

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グーテンモーゲン(夜)。
シン・仮面ライダー面白かったですね。私はクモオーグさんが一番好きです。登場から退場までぜんぶ面白いものあの人。あとビジュアルがステキ。声も。

今回途中から煮詰まり過ぎ&長くなり過ぎたので、急遽前編後編スタイルになってしまいました。出来るだけ早く後編仕上げます(虚言癖)のでゆるし亭ゆるして。



いやほんと遅くてすみません…(素)








えぴそ〜ど11:ウェルカムシンくん、ぜんぺん!

 

 

 

 

 

「うへへへへ、シンちゃぁ〜ん♪」

「うぅ…」

 

 さっき会ったばかりのお姉さんが、柔らかい身体にお酒の臭いをたっぷり纏わせて、僕の右腕にくねくねと絡みついてくる。

 

「えへへ、シンくん…♡」

「うぅぅ…」

 

 左腕には、昨日会ったばかりのお兄さんが、やっぱり酒臭い吐息とともに、人懐っこいネコみたいにすりすりと擦りついてくる。

 

「クエ〜♪」

 

 そんな僕たちを眺めながら、テーブルの反対側に座った謎のペンギンが、ちゅうちゅうと缶ビールを味わっている。ストローで。

 

「……」

 

 そして、そんなペンギンを膝に乗せた女の子が、死んだサカナの様な眼でリビングのテレビをぼーっと眺めている。

 

「あ、あの…綾波…?」

 

 僕は彼女に助けを求めた。この地獄の様なリビングにおいて、僕以外で唯一シラフを保っている最後の希望に。

 

「たすけ…」

「…シュワちゃん」

「…へ?」

「そう…シュワルツェネッガーだから、シュワちゃんなのね…」

「……」

 

 生気を失った眼でボソボソと呟く綾波。僕の背後のテレビからは、ドドドドド!と激しい機関銃の銃声が発されている。今夜の◯曜洋画劇場は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のアクション映画『プレデター』だった。

 

「ねーえシンちゃぁん?シンちゃんもぉ、こぉんなオカマみたいなおにぃさんよりぃ、ワタシみたいなぁ、いろっぽぉ〜いおねぇさんとぉ、ふたりっきりでど・う・せ・い、したいでしょぉ〜?」

「シンくん?シンくんはもうウチの子だからね?えんりょなんかしないで、い〜っぱい甘えていいからね?シンくんがシてほしいコト、なんでもシてあげるから…ね?」

 

 だらしなく緩んだ赤ら顔で、好き勝手に言い寄ってくる両隣の酔っ払いたち。右側では、ミサトさんがわざとらしく身体をくねらせながらウヘヘと笑い、左側のミナトさんは、僕にぴったり身体を寄せて、耳元でぽそぽそと妖しく囁いてきている。

 

「うぅ…あ、あやなみぃ…?」

 

 僕は再び綾波に助けを求めた。綾波はこのへべれけたちと親しい仲なんだ、きっとこんな時の対処法だって熟知しているハズさ。

 

「……」

 

 綾波は、派手な銃撃戦が繰り広げられているテレビからチラリと目線を外し、情けなく眉毛をハの字にしている僕を静かに見やって。

 

「…これが、ウチだから」

 

 それだけ言って、再び洋画観賞に戻ってしまった。

 

「えぇ…」

 

 一丁前にビールを嗜むペンギンを静かに撫でながら、全てを諦めた様にただテレビを眺め続ける綾波。悟りきった雰囲気を醸す赤色の瞳が、この酔っぱらいたちに対して対処法など存在しない事を言外に語っていた。

 

「シンちゃん♪」

「シンくん♡」

「シュワちゃん…」

「クエーッ!」

 

 味方など一人としていやしない、絵に描いたような四面楚歌。僕は明るくて広々とした知らない天井を見上げながら、そっと胸中で呟いた。

 僕は、どうしてここにいるんだろう。いや、ホントに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えぴそ〜ど11:ウェルカムシンくん、ぜんぺん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 用意された無機質な個室で、落ち着かない気持ちのまま一晩を明かした翌日。

 共用部にあった大浴場で適当に身支度を整えた僕は、昨日もお世話になったあの金髪碧眼の男性士官、入江ミナトさんに連れられて、NERV本部の最上層、父さんの執務室へと足を踏み入れた。

 だだっ広くて薄暗い、とてもデスクワークには向かなそうな室内。その最奥にぽつんと置かれた大きなデスクに、父さんは座っていた。昨日少しだけ話した、あの老齢の副司令官を側に従えて。

 

「ご子息をお連れしました!」

「ご苦労、楽にしろ」

「はっ!」

 

 キビキビと敬礼するミナトさんに対して、威厳たっぷりに声だけで答礼を返す父さん。まだイマイチ実感がないけど、僕の父親は本当に組織のトップらしい。

 一礼したミナトさんが、そっと半歩後ろに下がった気配を側に感じる。僕はぐっと眼力を込めて、怪しくサングラスを光らせる父さんを睨んだ。

 

「来たか、シンジ」

 

 口元を隠す様に両手を組んだ父さんの、冷たく淡々とした声。なんてことない小さな声が重たく響いて、僕は思わず唾を飲んだ。

 

「冬月」

「あぁ」

 

 父さんの声に応えた冬月副司令が、小ぶりなタブレットを片手に僕の前まで歩いてくる。

 年齢を感じさせない壮健な立ち姿に少しだけ圧せれつつ、僕は手渡された赤いタブレットを受け取った。

 タブレットの液晶には、真っ黒な画面のまんなかに、白い明朝体で『部外秘』とだけ大きく映し出されている。その他には、メニューバーもシークバーも何もない。スライドか何かだろうか?

 

「理由が知りたいと言ったな」

 

 重く低い父さんの声。するとそれに呼応するかの様に、タブレットの画面が自動でスライドした。

 映し出された画面に映るのは、何処かの工場か実験施設か何かの静止画像と、その中心にポップした再生マーク。そして、その画面の左上に挿入された、『2000.9.13』の数字。

 

「これって…」

 

 それは、僕たち少年少女が生まれてから何度となく、なんなら少しくどいくらい目にしてきた、この世で最も忌むべき数字…と、大人たちが口にするモノ。

 

「セカンドインパクト…?」

「そうだ」

 

 再びタブレットが自動で操作され、動画が再生されはじめる。流れる音声は音割れが酷く、時折『ピーッ』と修正音も差し込まれていて、映像自体も、所々がモザイクで隠されている。

 

「我々人類と使徒、そのファーストコンタクトの日だ。そして」

 

 そんな加工まみれの古びた映像から、僕は目が離せなかった。

 

「敗戦の日でもある」

 

 側に立つミナトさんが、小さく息を呑む音が聞こえた。でも、気のせいかもしれない。

 

「……ッ!?」

 

 だって、そんな小さな音なんて聞こえる筈もないくらい、僕の心臓は早鐘を打っていたんだから。

 

 

 

 

 重苦しい雰囲気の面会を終えた僕たちは、ロビーに設けられたソファースペースに並んで腰掛け、紙コップ片手にひと息ついていた。

 あったかくて甘いミルクティーが、少しでもシンジくんの気持ちを落ち着けてくれればと、精一杯の気休めをしながら。

 

「大丈夫?」

「なにがですか」

 

 両手で紙コップを持って、ちびちびとミルクティーを飲むシンジくんに声をかけると、驚くほど冷たい声が返ってきた。

 

「別に、何もないですよ。この街に引っ越して、あのエヴァンゲリオンってのに乗って、使徒と戦えばいいんでしょ?やりますよ。どうせ他にやる事もないし、やりたい事もありません。あっちに戻ったって、僕に居場所なんてないですから」

 

 だから気を使わないでください、とちょっぴり早口で言い切ったシンジくんに、僕は思わず眉をひそめてしまった。

 

「…そっか」

 

 昏い影を落とす黒い瞳に、ギュッと胸が締めつけられる。

 あの部屋でシンジくんは、様々な極秘情報を畳み掛ける様にぶつけられた。

 セカンドインパクトの真実、使徒とエヴァンゲリオンの正体、NERVの目的、マルドゥック機関…そして、チルドレン。

 

(強い子だな…強くて賢い、立派な子…)

 

 突然見せつけられた世界の根幹を揺るがす大機密と、半ば無理やり背負わされたパイロットという重責。

 正しく理不尽としか言えない父からの、世界からの仕打ちを、シンジくんは気丈にも飲み込んでみせた。

 強がりとか、不貞腐れとか、ひょっとしたらただのヤケクソ根性なのかもしれないけど、それでもシンジくんはこの異常事態を受け入れた。受け入れてしまった。

 いや、『受け入れてくれた』んだ。そう思わなきゃ、感謝しなきゃ。シンジくんが、レイちゃんが、子どもたちがエヴァンゲリオンに乗ってくれないと、僕たちはみんな死んでしまうんだから。

 …でも、そういう『チルドレン』としての実感は、ひょっとしたらまだ無いのかも。今シンジくんが一番気にしているのは、きっと…

 

(ホントは、一緒に居たかったよね、お父さんと…)

 

 副司令の采配で、シンジくんは僕とレイちゃんの家で一緒に暮らす事になった。

 同じパイロット同士親睦を深められるだろうし、年ごろの男女とはいえ実質主夫(正直フツーに出勤したい気持ちはあります!)の保護者が常に監視しているのだから、そうおかしな間違いも起きないだろう、という判断らしい。

 まぁ単に管理が楽だからというのも本音だがね?と冗談めかして笑う副司令に、いや百パーそれが本音ですよね?とツッコむのを我慢した僕はちょっぴりえらいと思います。

 

 そんな話の最中、副司令はシンジくんにこう言った。

 

『だが、最も優先すべきはシンジくん、君自身の意思だ。シンジくん、君が望むなら、君は入江くんと綾波レイとではなく、君のお父さんと一緒に暮らす事も出来る』

 

 どうするかね?と尋ねる副司令の声に、シンジくんは小さく肩を震わせて碇司令を見た。

 

『……』

 

 碇司令は、何も言わなかった。遠く離れたデスクに座る司令は、サングラスと口元で組んだ両手に隠れて、一切の表情が見えない。

 

『…っ!』

 

 そんな司令の態度が、シンジくんはショックだったんだと思う。自分に興味が無いんだって、本当に愛してないんだって、そう感じてしまったのかもしれない。

 …本当のところどうなのか、それは僕には分からないし、詮索すべき事じゃない。僕が居た施設でも、家族との問題を抱えた子どもたちは沢山いた。こういう問題はとってもデリケートで、誰もがナーバスになってしまう。簡単に口出しなんて、出来るはずもない。

 でも、このままハイそうですかで済ませていいワケもない。問題を解決しよう!なんて厚かましいマネは出来なくても、問題に苦しむ心をケアする事は出来る。

 僕は、この健気な少年の心を守りたい。小さな背中を支えてあげたい。僕たち大人の代わりに重荷を背負わされてしまったこの子の為に、全身全霊で尽くしてあげたい。

 僕に出来る事なんて正直たかが知れてるだろうし、無用なおせっかいなのかもしれないけど、それでも僕は尽くしたいし、愛したい。

 肉親との軋轢と、使徒との戦い。二つのストレスに苦しむシンジくんが、せめて健やかに日々を過ごしていける様に。僕は保護者として、精一杯のまごころを贈る。それが今の僕に出来る事で、やるべき事なんだ。

 

(…なら、もう考える必要はないよね)

 

 僕は空になった紙コップを脇に置いて、俯くシンジくんの横顔に語りかけた。

 

「ありがとう、シンジくん」

「え?」

「一緒に住むって決めてくれたの、嬉しかった。お父さんとの事は残念だけど…僕は、嬉しいな」

 

 胸の奥のココロを笑顔に変えて、好きって気持ちをただ伝える。

 難しい建前はしゃべらない。っていうか、しゃべれない。口下手だし、遠回しな話は苦手だから。

 昨日この子と出会って、おしゃべりして、事情を知って、抱きついて…は、いいとして。とにかく、僕はこの華奢な少年が、すっかり大好きになっていた。一緒に居たい、守ってあげたいと、そう強く想えるほどに。

 

 …ひょっとしたら僕は、問題を抱えるシンジくんを憐んで、ただ上から目線で庇護しようとしてるだけかもしれない。子どもを戦わせる事に負い目を感じて、せめてもの罪滅ぼしにと優しくしてるだけなのかもしれない。もしくは、その両方か。

 僕は汚くて、ちっぽけな大人だから。そうやって無自覚に作りあげたニセモノの好意に酔って、この子が好きだと、愛おしいと、勝手に思い込んでるだけなのかもしれない。

 でも。

 

(そんなの、かまうもんか)

 

 仮にそうだったとしても、関係ない。僕はこの子が好きなんだ。一緒に居たいって思うんだ。笑顔が見たいって思うんだ。理屈なんて関係ない、好きなものは好きなんだ。

 我ながら、馴れ馴れしいにも程があるとは思うけど、許してね。だって僕は、君のことが好きなんだもの。

 

「……」

 

 シンジくんは何も言わずに紙コップの中身を飲み干して、クシャっと小さく縁を潰し、投げやりにそっぽを向いた。

 

「いいですよ、気を使わなくて。先生の家でもずっとひとりでしたから、自分の世話は自分で出来ます。迷惑かけないようにちゃんとしてますから、僕の事はほっといてもらえれば、それでいいです」

 

 頑なな声で言い切って、ツンと唇を尖らせるシンジくん。なんともつれないその態度に、僕の心のスイッチがカチリを作動した。作動してしまった。

 マズい、マズいよシンジくん。そんなツンツンしたお顔を見せられたら、僕止まれなくなっちゃうよ?

 

「んー、それはダメかな?」

「え」

 

 潰れたカップごとシンジくんの手をとり、ぎゅっと両手で包み込む。

 

「ほっとかないよ。ぜったいね」

「ちょ、ちょっと…」

 

 目を丸くするシンジくんの顔を覗き込んで、僕は笑った。

 

「ふふふっ。僕ね?好きな子には尽くすタイプなんだ」

「は?」

 

 怪訝な顔をするシンジくん。うんうん、そんな顔も可愛いね…っと、いけないいけない、これじゃショタコンのヘンタイさんだ。

 でも、しょうがないよね?だってシンジくん、とってもいい子で可愛いんだもの!

 こんなに可愛いくてしっかりしたいい子が、今日から僕の家族になってくれるなんて!そんなの、そんなの、とっても嬉しいに決まってるじゃないか!

 今日は良い日だ!とっても良い日だ!レイちゃんと一緒になったあの日とおんなじくらい、すっごくすっごく良い日になった!

 

「シンジくんがヤダって言っても、いーっぱいかまっちゃうから。かまってかまってかまい尽くして、ぜったい僕の事も好きになってもらうから。ふふっ、これからよろしくね?シンジくん」

 

 そう笑って、僕はキュッと両手に力を込めた。僕の好きって気持ちが、シンジくんに伝わる様に。

 そう、僕は決めた。これからはもう、うっとおしいくらいシンジくんをかまい倒す!おはようからおやすみまで、シンジくんの生活ぜんぶに寄り添い尽くしちゃうからね!

 

「ミ、ミナトさんって…」

 

 そう胸の中でフンスフンスと息巻く僕に、シンジくんはヒクヒクと口元を引き攣らせながら、ぬっと顔を反らせた。

 

「…ゲイなの?」

「え"」

 

 ビシリ、と固まる僕から顔を背けながら、シンジくんは控えめに拒絶のオーラをダダ漏れにしはじめた。

 

「僕、男の人はちょっと…」

「なっ!?ちが、ちがうよ!?ヘンな意味じゃなくって、ただ僕は純粋に」

「じゃあこの手は?」

「え、好きな子の手は握りたいでしょ?」

「やっぱりゲイじゃないか!」

「あー違うって!」

 

 広いロビーで二人っきり、両手を繋いだままギャーギャー騒ぐ僕たち。

 そんな僕たちの前に、小さな白い影がぬっと現れた。

 

「うるさい」

「「ッ!?」」

 

 制服姿のレイちゃんが、いつの間にか僕たちのすぐそばにぬぼーっと立っていた。ホいつの間に!?

 

「三尉、前に言ってたわ。人前ではマナーを守りなさいと。どうしてうるさくしてるの」

「ご、ごめんなさい…」

 

 無表情で見下ろしてくるレイちゃんの迫力が、控えめに言ってめちゃすごい。僕は思わずシンジくんの手を離して、両手を膝に置いた。

 

「悪い事をしたら、反省する。これも三尉の言葉。反省して、三尉」

「はい、反省します、はい…」

 

 ぬ、ぬぅ…いい大人が情けない…隣のシンジくんからの視線も痛い…っていうかイタい…僕今めっちゃイタい大人だよコレ…

 自分のイタさに消沈して視線を床に落としていると、レイちゃんはシンジくんにも声をかけた。

 

「碇くん」

「は、はい」

 

 咄嗟に敬語で返してしまうシンジくん。うんうんわかる、レイちゃんって謎の圧があるんだよ。もはやイメージ的にはちっちゃいハマーン様かなんかだよ。俗物が!とか言ってきたらやだなぁ…

 で、そんな小さき女傑レイちゃん様、以外にも僕のフォローをしてくれる様で。

 

「三尉は、男が好きな人ではないわ」

「え」

「レイちゃん…!」

 

 僕はパッと顔を上げた。レイちゃんの素っ気なくも温かいフォローに、じんと胸が熱くなる。

 

「三尉は…」

 

 あぁ、ウチの子はなんて優しくて良い子なん…

 

「子どもが好きなの」

「うわっ…」

「ってちがぁぁぁぁぁぁうっ!」

 

 訂正!ぜんっぜん優しくないよこの子は!人に小児性愛者のレッテルを貼るじゃありませんッ!

 

「すみません、やっぱり僕一人暮らしで…」

「ノゥ!シンジくんノゥ!真に受けないで、僕はヘンタイさんじゃありません!」

「でもさっき僕の事好きって」

「え、うん。好きだよ?」

「やっぱりヘンタイじゃないか!」

「あー違うって!」

 

 ドン引きした目で遠ざかろうとするシンジくんに、再び縋りつく20代の成人男性。

 

「うるさい」

「あでっ!?」

 

 そんな男性の頭を、容赦なく引っ叩く10代女子。か、家庭内暴力ッ!?

 

「でぃ、DV反対ッ!」

「暴力じゃない、しつけ。前に本で読んだもの。これで正解のはず」

「しつけェ!?なにそれ、なんて本さ!?」

「ダメ犬解体新書」

「ダメ犬解体新書!?」

 

 な、なんて恐ろしい書物を!?

 

「ってコラァッ!大人をワンちゃん扱いするんじゃありません!」

「よしよし」

「わぁい♪…ってナデナデ禁止ッ!」

 

 流れる様にナデナデしてきた小さな手をスパッと遮る。レイちゃんはちょっぴり不満げだ。いやなんでそんな僕の頭好きなの…?

 

「お、女の子に犬扱いされて喜んでる…」

「シュワット!?」

 

 ってマズい!またシンジくんが僕にドン引いてる!

 ちゃうねん!ちゃうねんなシンジくん!僕は断じて子どもに貶されて嬉しくなっちゃうヘンタイさんではありませんッ!

 

「ホントにヘンタイなんだ…」

「いや喜んでないよねどう見ても!?」

 

 だーもう!シンジくんもシンジくんだよ!どんだけ!?どんだけ僕をヘンタイにしたいのさこの子は!?

 うぅ。おかしい、おかしいよ…さっきまであんなに真面目な雰囲気だったのに…あっという間にイジられギャグみたいな空気になっちゃったよ…レイちゃん、シンジくん、なんて恐ろしい子たち…!

 

「さぁ、帰りましょう、三尉」

「ぐ、ぐぬぬ…」

「ハウス」

「ってコラァッッ!!」

「…ぷっ、あははっ」

 

 

 

 

 昨日も乗った白い軽自動車の、ちょっぴりせまい後部座席に身体を押し込めて。僕はまだまだ見慣れない都会の景色を、小さな車窓からぼんやり眺めていた。

 

「二人とも、今晩何食べたい?今日はお祝いだからね、美味しいのいっぱい作るよ!」

「私、ギョーザと味噌汁」

「ギョーザかぁ。ならお味噌汁よりわかめスープとかに」

「味噌汁」

「アッ、ハイ」

 

 昨日から今日までの間で色んな事が起きすぎで、正直よくわからないけれど。とにかく僕は、このにぎやかな親子と一緒に暮らす事になった。

 いきなり他所の家に引っ越すなんて、正直わずらわしいというか、面倒くさいって思うけど。先生の所に戻ったところで、あそこも僕にとっては他所のお宅でしかないし。ただ住む場所が変わるってだけで、僕はずっと独りだ。

 …それに、正直それどころじゃない。父さんの事もそうだし、使徒とか、エヴァとか、チルドレンとか…

 …僕、僕は……

 

「シンジくんは?」

「…っ、へ?」

 

 そんな事をぼんやり考えていたせいで、二人の会話を全然聞いていなかった。

 思わず間抜けな返事をする僕に、ミナトさんはクスクスと笑った。

 

「聞いてなかったなぁ〜?」

「ご、ごめんなさい…」

「あはは、なんてね。晩ごはん何がいい?今日はおサイフの紐ゆるゆるデーだから、何でもリクエストしていいよ」

 

 昨日の騒ぎの影響からか、車通りが少ない大きな道路をスイスイ進む。

 流れる電線を意味もなく目で追いながら、僕は平坦な声で返してしまった。

 

「なんでもいいです」

 

 しまった、と言ってから思った。メニューを聞かれて『なんでも』と答えられるのが一番困るって、そんなのよく言われてるじゃないか。これからお世話になる人に対して、そんな失礼な事をしたら、無駄に印象を悪くしてしまう。

 

「なんでもかぁ。ふふっ、そっかそっか」

 

 でも、ミナトさんは怒るどころか、ひたすら楽しそうだった。

 

「じゃあみんなで作ろっか!今日はみんなで手作りギョーザパーティで!決定決定ハイけってーい!」

 

 いぇーい!と軽やかにハンドルを叩くミナトさん。助手席の綾波は、何も言わずに真っ直ぐ前を見据えている。うん、すごい温度差。絵に描いたような凸凹コンビだ。

 

(二人とも正反対って感じなのに)

 

 楽しそうなミナトさんの鼻歌を聞き流しながら、ぼんやりと前席二人の後ろ姿を眺める。

 

(どうしていっしょにいられるんだろう、仲良くなれるんだろう)

 

 思い出すのは、NERV本部でのやりとり。

 

『一緒に住むって決めてくれたの、嬉しかった』

『ほっとかないよ。ぜったいね』

『ぜったい僕の事も好きになってもらうから』

 

 あの時は、あまりにもあけすけに好意を伝えてくるミナトさんに面食らい過ぎて、つい憎まれ口を叩いてしまった。

 でも、しょうがないじゃないか。昨日会ったばかりの人にいきなりあんな事言われたら、誰だってびっくりするし、こわいとか、きもちわるいとかって思うよ。きっと僕だけじゃないよ、うん。

 …でも、たしかに、ちょっとは。

 

(嬉しかった…の、かな…?)

 

 感じたのは、全身がむずむずするみたいな、ちょっぴり変なくすぐったさ。正直、ふつうに引いちゃったのは引いちゃったんだけど、確かにイヤな感じでは無かった…と、思う。でも…

 

(僕は…どうなりたいんだろう、この人たちと)

 

 再び陥る、ぼんやりとした意味の無い思考ループ。気づいた時には、もうスーパーの駐車場に着いていた。

 ミナトさんに促されて、こじんまりした後部座席からのそりと降りる。小綺麗に整備された灰色の空間には、昨日の怪獣騒ぎの余韻なんて、これっぽっちも残っていなかった。

 僕の頭には、今もあの非現実的な巨影同士の殺し合いが、べったりとこべりついているというのに。

 

「碇くん」

「あ、うん、ごめん」

 

 ミナトさんの隣に立つ綾波に呼ばれて、そそくさと二人の元に駆け寄る。そうすると、やっぱりミナトさんはニコリと優しく微笑むし、綾波は相変わらず鉄面皮だし。

 …綾波。綾波レイ、か。

 

(綾波は平気なのかな。使徒とか、エヴァとか、戦いとか…)

 

 あんなに恐ろしい敵と命懸けで戦っていたのに、綾波は昨日モニターで見た時から顔色ひとつ変わっていない。取り乱したり怖がったりしてたのは、むしろミナトさんの方だった。

 

(強いんだな、僕と違って)

 

 ショッピングカートを押すミナトさんの側をちょこちょこと着いて離れない綾波の、小さくてほっそりした背中。その背中が、この時の僕にはとても大きくて、ひたすら遠いものに感じられた。

 

(僕は、どうしてここにいるんだろう)

 

 こんなすごい女の子といっしょだなんて、僕には…

 

(…重いんだ)

 

 荷も心も、なにもかもが…重い。

 

 

 ……つづく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エッ!?お肉高ッ!?」

「肉はいらない」

「でもギョーザのタネだよ?」

「じゃあいる」

 

「……」

 

 …なんでギョーザはセーフなんだろう。

 

 

 





ミナトくん「いっぱいちゅき♡」
シンジくん「やっぱりホモじゃないか!」
マヤさん「キテル…」
カヲルくん「ステンバーイ…」

今やってる江戸前エルフってアニメほんますこすこのすこ(金髪色白フェチ)





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