グーテンモーゲン(すごい上手い発音)
遅くなってすみません。ゆるしてください何でもゆるしてください(?)
今回はミナトくんオンリー回です。トウジとシンちゃんのガンダムファイトはまた次回…
…一応書いておきますが、今回はちょっちラブコメ注意です。
NERV本部内、はかせのお部屋。
今日は毎週恒例の、レイちゃんとシンくんに関する定期報告の日だ。
「それでそれでっ!シンくんがですね?特売のめんたいこをふたつも」
「はいストップ」
「えー」
「えーじゃない」
今日もはかせはクール&ドライ。気怠げにタバコをスパスパしながら、容赦なく話を遮ってくる。うーん悲しみ…もっとはかせとお話したいんだけどなぁ。
「それにしても意外ね」
「意外?」
短くなったタバコを灰皿に押し付けながらそう言うはかせに、はてと首をかしげる。
「シンジくん。もう学校で友達を作ったって」
「そうなんですよ!矢口くんに神永くんに、高屋さんに天野さ」
「はいストップ」
「えー」
「えーじゃない」
はかせカッターの切れ味がすごい。うーんフリーズドライ。
…いちいち盛り上がっちゃう僕が悪いんだけどね。
「続けていいかしら?」
「はーい…」
「はいは伸ばさない」
「はいっ!」
ピンッ!と丸椅子の上で背筋を伸ばすと、はかせははぁーっとため息をひとつ吐いてから、新しいタバコに火をつけた。
「ふぅー…私の所感だと、シンジくんって友達を作るには少し不向きな性格に見えたから」
「あ、意外ってそういう…」
「NERVでの様子だけ見てると、どうしてもね」
…確かにシンくんは、対人関係についてはほんのちょっぴり難儀な子かもしれない。そこまで重い人見知りではないけど、人の顔色を伺いがちというか、遠慮しがちな感じというか。今朝もレイちゃんに食べたい物を聞かれて、僕はなんでもいいよ〜なんて曖昧に笑って、目を逸らしていた。
…まだまだ日も浅いし、仕方がないけど、寂しいよね。
「…優しい子なんです。もっとワガママ言って、甘えてもいいのに、我慢して…とってもいい子で、賢い子です」
「そうね。でも臆病とも言えるわ」
「それはっ…そう、ですね」
はかせのハッキリした物言いに、思わず言い返しそうになってしまったけど、我慢した。
はかせははかせなりに、シンくんの事を慮ってくれている。あくまでエヴァンゲリオンの開発者、NERVの技術主任としての立場からではあるけど、それがはかせの仕事なんだ。チルドレンの精神性を客観的に把握する事は、エヴァの運用において最も重要とも言える事項。だから変に入れ込み過ぎない様に、フラットな目線を徹底してるんだと思う。
そんなはかせの言葉なんだから、僕はしっかりそれを受け止めないといけない。肝に銘じないといけない。はかせの意見を正しくアウトプットしてチルドレンを導く事が、僕の仕事なんだから。
でも、それってそんなに難しい事じゃない。簡単じゃないけど複雑じゃない、とってもシンプルな事。
それは僕たちが、『家族』になるって事なんだ。
「明日はシンくんのお弁当に、おっきいハンバーグ入れちゃいます、ハンバーグ弁当」
「ハンバーグ?」
「はいっ!」
お互いにお互いを思いやりながら、伝えたい事ははっきりと、甘えたい時は遠慮なく。与える愛情は、深く大きく真っ直ぐに。そんな優しい家族に、僕はなりたい。
…なりたい、じゃない。なってみせる。というか、なっちゃうもん!なっちゃうもんね!
「シンくん、ちっちゃい頃の事はあんまり覚えてないみたいなんですけど、ハンバーグは昔から好きみたいで!」
「ストップ、ストップよ入江くん。ストップ」
「あ!もちろんレイちゃんには特製豆腐ハンバーグを!」
「ス ト ッ プ よ ?」
「はーい…」
無念、はかせカッター斬鉄剣が如し。吸い終わったタバコをもみ消しながら、片手間にバッサリ斬り捨てられてしまった。試合終了です…
「はぁ…まったく、貴方と話していると自信を失くすわ」
「へ?」
「だって、そうじゃない」
そう言ってはかせは、薄く口紅が塗られた唇を、ほんのちょっぴりツンと尖らせた。
「私も私なりにあの子たちを分析して、我ながら冷たい事も言っているつもりなのに。貴方ときたらいつもそうやってニコニコ受け取って、怒りも凹みもしないで、頑張ります、なんて言ってくれて。どうしてそんなに頑丈なのよ、貴方」
「えーっと…もしかして、褒めてくれてます?」
「部分的にそうね」
「部分的に!?」
突然アキネイターと化してしまったはかせ。ぶすっとした不貞腐れた様な表情が、なんだかすごく子どもっぽくて、可愛くて。
「…ふふっ」
「?」
真面目な話をしながらも、僕はこっそりドキドキしてしまった。
「はかせはかせっ」
「なにかしら?入江三尉」
いつも以上にツンツンした声。三尉、だなんて。わざとらしく冷たい言い方をするはかせが、すごくかわいい。
「部分的にって事は、ちょっとは褒めてくれてるんですよね?僕のコト」
「ちょっとだけよ。あまり調子づかないで頂戴。鬱陶しいわ」
「わ、ひどい」
つっけんどんに返して、そっぽを向いてしまうはかせ。
…かわいい。かわいい人。ちょっぴりクールでこわいけど、とんがった針の向こうにある柔らかな優しさが、こんなにも温かくて、愛らしい。
「はかせって、なんだかヤマアラシみたいですね」
「…ヤマアラシ?」
三本目のタバコを口に咥えたはかせが、訝しげに片眉をあげながらライターを点ける。
ふわりと立ち昇った紫煙を眺めながら、僕は怒られないかとちょっぴり怯えながらも、ついつい想いのままに話してしまった。
「ヤマアラシってトゲトゲしてて、ツンツンしてて、ちょっぴりだけど、怖いでしょ?でもホントは優しい動物で、仲間や家族相手には針をぺた〜って倒して、すりすり〜ってくっつくんです!かわいいですよね!」
「……」
「戦うだけの動物じゃない、目に見える以上に優しくって、強い動物!」
「……」
「正にモア・ザン・ミーツ・ジ・アイズ!ねっ、ねっ!はかせにぴったりじゃないですか、ヤマアラシ!」
「ふぅー…っ」
はかせは遮る様に紫煙を吐き出して、そのままクルリと椅子を回して後ろを向いてしまった。
「入江くん」
「はい!」
「なんで英語で言ったの?」
「好きなフレーズなので!」
「そう。これはアドバイスだけど、変に横文字を混ぜるのはやめなさい。逆にバカに見えるわ。バカにね。バカ」
「三回もバカって言った!?」
「すうー…」
はかせは僕に背を向けたまま、背もたれにもたれかかってタバコを吸い込み、呟いた。
「ブザマね…」
「へ?」
「お疲れ様入江くん。今日は上がっていいわよ。一応、発令所にも顔を出しておくこと。いいわね」
「はぁ」
振り返ったまま顔を見せてくれないはかせ。もっとお話したかったけど、暗にもう帰れと言われてしまった。
「わかりましたっ!」
でも、僕はちっとも悲しくない。あと一週間経てば、またここではかせに会えるんだから。
「ふふっ…♪」
照れたらツンとそっぽを向いて、耳を真っ赤にしてヘソを曲げてしまうかわいい人。トゲトゲで愛らしい、ヤマアラシの様なこの人に。
「入江三尉」
「はーい!では失礼します、赤木博士!」
ちょっぴり熱くなってしまった頬と、ドキドキと甘く高鳴る胸の鼓動を楽しみながら。
僕ははかせの、僕と同じ色をした小さな後ろ髪に、またねのウィンクをこっそり贈った。
「…えへへ♪」
つづくっ!
◇
『緊急警報発令!総員第一種戦闘配置!』
「はえっ!?」
…つづくっ!?
シャムシエルくん「ラブコメの波導を感じたので襲来しました。通してください」
ヘブンズドア「いやです…」