僕がチルドレンのママになるんだよ!   作:はっぽーしゅ

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グーテンモルゲン。お久しぶりです。
本当に、お久しぶりです(土下座)

今回が初戦闘の予定でしたが、すみません次回になりました。すみません次回はちゃんとブンドドします!必殺綾波キック炸裂します!

もう信用ゼロだとは思いますが、次回はホントに早めに更新するので!私もはよ初号機ブンドドしたいんじゃ!


あと、もしかしたらシンジくんのキャラ解釈に違和感があるかもしれません。予めご了承くださいませ。






えぴそ〜ど8:ミナトとシンジ!冬月コウゾウのチルドレンオギャらせ計画

 

 

 

「それで僕ずっと圧力鍋が欲しかったんですけど、流石に手が出なくて……」

「圧力鍋ねぇ〜良い値段するもんねぇ〜」

「ミナトさんなら買えるんじゃないですか?大人だし」

「あはは、それが最近ちょっと散財気味でねー。テレビとか冷蔵庫とか」

「引越しですか?」

「そうそう」

 

 ケーちゃんを通常の3倍(の気分)のスピードでかっ飛ばして、ようやく辿り着いたジオフロントの入口。そこで乗り込んだカートレインに揺られながら、僕はシンジくんとの緊張感皆無なおしゃべりを楽しんでいた。

 

「え、じゃあその女の子と……ど、同棲?」

「ぷふっ!同棲って!やめてよもぉ、僕お父さん代わりなんだよぉ?」

「はぁ……でもその……かわいい子、なんですよね?」

「うん!すっごいかわいい!」

 

 状況が状況だから最初は僕も結構気を張ってて、とにかく早くシンジくんを逃がさなきゃ!って気持ちが先走ってたんだけど、なんだかブルーな気持ちが滲み出てるシンジくんのか細い声を聞いて、もっとこの子とお話しなきゃって気持ちがぐわっと湧いてきた。今日会ったばっかりの他所の子だけど、この子が何か大きな辛さを抱えてこの街に来た事だけは分かる。だから少しでも楽にしてあげたいと思って、まずは何気ない雑談で雰囲気を和ませようとおしゃべりを始めたんだ。

 

「お隣さんのペンギンと仲良しでさ〜」

「へぇ、ペンギン……え、ペンギン?」

 

 で、気づいたらそんな雑談でフツーに盛り上がっちゃって今に至ると。歳は結構離れてるハズなのに、不思議と波長が合う感じがするんだよなぁ。

 

(話し易い子で良かったなぁ)

 

 葛城さんからは、ちょっち控えめな子らしいから優しくしてあげて?なんて言われてたから、あんまり人嫌いな子だったらどうしようかな〜なんて考えてたんだけど。実際に会ったシンジくんは、控えめに見せかけて結構気が強いというか、我が強い子だった。

 確かに、最初はちょっと顔色伺ってるなぁって感じだった。でも気になる事はちゃんと聞くし、気に入らない事にはハッキリ怒る。楽しい話をすればコロコロ笑うし、自分から冗談だって飛ばす。まだほんの短い時間しかお話してないけど、シンジくんは静かにしっかりと自分を主張するタイプの子だと思う。

 

(レイちゃんに似てるかも)

 

 レイちゃんも、一見無感動に見えるけどホントは感情豊かで芯のある子ってタイプだもんね。学年も一緒だし、こんな事態でもなければ是非紹介したいんだけどなぁ。

 

 そこまで考えて、僕は本部に置いてきてしまったレイちゃんの事を思い出した。まるで頭に電撃が走るみたいに、瞬時に。与えられた任務を遂行しなければと、無意識に目を逸らして逃げていた喪失の恐怖が、僕の頭と心を埋め尽くした。

 

「ぁ……」

「?」

 

 助手席に座るシンジくんのほっそりした顔に、インターフェイスユニットを付けたレイちゃんの影がぼんやりと重なる。そして、そのあどけない白い顔が、使徒の激しい攻撃によって痛々しく歪まされた。

 幻のレイちゃんは、ミシミシと軋むエントリープラグの中で、必死に痛みを堪えながら使徒を睨みつけている。やがてプラグ内は甲高い電子音と共に真っ赤に染まり、レイちゃんは使徒の巨大な手にその小さな身体を絡め取られた。黒ずんだ異形の手に握り込まれたレイちゃんは、声にならない悲鳴をあげながら少しずつメキメキと小さく圧縮され、掠れた声で愛する人の名を呟いた。

 

『碇司令……』

 

 あぁ、ダメだ……やめて、おねがい、いかないで……僕を、置いていかないで……一人にしないで、死なないで……好きなんだ、家族なんだ、大切なんだ……どうか、どうか……!

 

「ミナトさん?ミナトさん!」

「っ!……あっ、あぁ、うん。ごめんね、大丈夫、大丈夫……すぅ、はぁ……」

 

 シンジくんに肩を揺さぶられて、僕はなんとか正気に戻った。額をステアリングに乗せて、小さく深呼吸を繰り返す。ホームセンターのカー用品コーナーで買った安物のハンドルカバーのおかけで、多少のクッション性がある僕の愛車のステアリングホイール。まさか枕にする時が来るとは思わなかった。

 

「どうしたんですか?急に……」

 

 訝しげに、そして心配そうに僕の顔を覗き込むシンジくん。近くで見ると、なるほど碇司令の息子だとわかる。目元だ。いつだったか、色の薄いサングラス越しにふと見えた、あの意外にも穏やかさを湛えていた碇司令の目元と、よく似ている。でも全体的な雰囲気は、どこかレイちゃんに似ていた。

 

「……心配なんだ、ウチの子が」

 

 大切な家族を思わせるその少年の相貌に、僕は情けなくも、決壊したダムみたいに泣き事を漏らしてしまった。

 

「あの子今、とっても危ないトコにいて」

「遠くに逃してあげたいんだけど、ダメで」

「側に居たいのに、抱きしめたいのに、できなくて。どうしようも、なくて。つらくて」

「ごめんね、今は、君に集中しなきゃダメなのに」

「シンジくんも、きっと、大変、だよね。いきなりこんな、ワケわかんないトコ、連れてこられて。不安だよね、怖いよね」

「僕もね、怖いんだ。あの子に、何か、あったらって、思ったら、もう、ダメ、なんだ。胸が、ギュッて、締まって、痛くて、ツラくて、ざわざわって、するんだ」

「ごめん、ごめん、ごめんね……君に甘えちゃダメなのに……僕は大人で、君の護衛役なのにね……」

「家族がいるって、幸せで、ツラいね……」

 

 いきなり情緒不安定になってメソメソ涙を流し、初対面の歳下相手にみっともなく縋ってくる情け無い大人。シンジくんから見ればきっと今の僕はそんな存在だろう。本当に申し訳なくって、恥ずかしい。僕はどこまで幼いんだ。

 

 でも、もうどうしようもなかった。再び家族を失う事への、底知れない恐怖と絶望。僕は娘である筈のレイちゃんに、亡くなった両親の存在を重ねてしまっていた。

 15年前。爆発で吹っ飛ばされ横転したミニバンの後部座席から、血塗れになった両親がゆっくりと事切れて逝く様をこの目に焼き付けた。その両親の亡骸に、どうしても白いプラグスーツが重なって見えてしまう。

 また喪う、失ってしまう。そんな予感が止められない。守るって、支えるって、応援するって決めたのに。いざその時が来て、僕の弱さがはっきり露呈した。今はもう、レイちゃんをエヴァンゲリオンから遠ざけたくて仕方がない。

 

 あの子は今、自分の意志で闘おうとしている。僕はNERVの戦士として、ファーストチルドレン綾波レイの、その小さな背中を押さなきゃダメなのに。押したその先が、紫色の巨大な棺桶に見えてしまって……まるで、自分の手であの子を絞め殺している様な気にすらなってしまう。少しずつ、少しずつ絆を育んできた新しい家族を、この手で。

 

「……」

 

 シンジくんは、そんな僕の醜態を黙って見守ってくれた。優しい子。困ってるだけかもしれないけど。

 

 そんな中、カートレインが要塞都市のぶ厚い複層装甲を抜けて、別世界の様に美しいジオフロントの景色が窓越しに僕たちを迎え入れた。   

 僕は袖で涙を拭い、ドアポケットに挟んでいたティッシュで思いっきり鼻をかんだ。

 ……さっ、そろそろ切り替えろよ〜入江ミナト。お前の仕事を思い出せっ!

 

「っはぁ!よし、切り替え完了!ごめんねシンジくん、困らせちゃって」

「あ、いえ……大切なんですね、その子のこと」

「うん!なんたってもう、大好きだからね!あ、シンジくんシンジくん」

「はい?」

「ありがとね、話聞いてくれて。シンジくんに会えて、良かった」

「へ……?」

 

 ポカンとするシンジくんの気を逸らす様に、僕は窓の外に広がる幻想的な景色を指差した。

 

「あっ、ほら見て見て!ジオフロントだよシンジくん!」

「え……あっ、ホントだ!ホントにジオフロントだ!」

「そう!ようこそ僕らの秘密基地へ!どう?とっても明るくて綺麗でしょ!」

「うん、すごい!地面の下なのに、まるで空みたいだ!」

「あははっ!すごいでしょー?木も生えてるし湖もあるんだよー!あとスイカもー!」

「うわぁ、すごいや!……スイカ?」

 

 子どもっぽくはしゃぐシンジくんに、ほんわかと胸が暖かくなる。

 そうだ、この世界には、こんな子どもたちが沢山生きてるんだ。施設のみんなも、レイちゃんも、そんな尊い命の中の一人なんだ。  

 僕たちは、この子たちの未来を必ず守る。その為のNERV、そしてその為のエヴァンゲリオンなんだ。僕ももう、メソメソなんてしてられない。あの日葛城さんに誓った様に、僕に出来る事を全力でこなすんだ!

 

 地下世界に目を輝かせるシンジくんの肩に両手を置いて寄り添いながら、僕は胸で燻る行き場の無い感情を飲み込んだ。

 守る事と、闘う事。終わりの無いジレンマに振り回される僕は、一体どこへ行くのだろう?そんな不安は尽きないけれど……

 

「なんでスイカなんですか?」

「あはは、やっぱ気になる?本部の部隊に高雄さんって人がいてね?なんかドイツから種が送られてきたーって言って、敷地に畑作っちゃってさ。そこにその種をもう、うわーっていっぱい蒔いてたんだけど、そしたらもうすんごいペースでぐんぐん育って……」

 

 ……それで立ち止まってしまったら、きっと後悔すると思うから。大切な人を、何も出来ずに見殺しにするのは、もう、イヤだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えぴそ〜ど8:ミナトとシンジ!冬月コウゾウのチルドレンオギャらせ計画

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長い長いカートレインがようやく止まって、僕が乗る軽自動車はSF映画の秘密基地みたいなメカニカルな内壁に囲まれた。

 運転席に座るミナトさんに促されて車を降り、リュックから父さんから送られてきた書類とIDカードを取り出す。ミナトさんにその一式を渡すと、ミナトさんは一瞬、その長い睫毛をぴくりと揺らした。僕は気づかないフリをした。きっと引かれたから。

 

 ミナトさんはそのぐしゃぐしゃの紙に何も言わず、僕を連れてセキュリティゲートの座哨と親しげに言葉を交わして受け入れを済ませた。優しい人だな、と僕は思った。ゲートの人とも仲良さげだったし、きっとみんなに好かれているに違いない。

 

「ちょっと遠いとこまでいくから、はぐれないようにね。あ、手つなごっか!」

「……子どもじゃないんですけど」

「あはは、だよね。ごめんごめん。さ、いくよ〜」

 

 コロコロと笑うミナトさんと共に、広大な館内を進む。巨大なレーンに乗って工場の部品みたいに対岸へ運ばれたり、嘘みたいに長いエスカレーターで何分もかけて上に昇ったりと、今まで全く経験の無い移動方法ばかりだ。

 そんな落ち着かない道中でも、ミナトさんは休まず僕に話しかけてきた。といっても話す内容はさっきまでの雑談の延長の様なもので、気づけば僕も彼と一緒に笑っていた。

 正直、押しの強い人はあんまり得意じゃないんだけど……ミナトさんはなんというか、心地良い距離感を守ってくれる人だった。怖くなる程近づいては来ないし、寂しくなる程遠ざかりもしない。居て欲しい距離に居てくれる、そんな話し易いお兄さんだ。

 

「おっと、終点だね」

「あ、はい」

 

 いつの間にか長いレーンの終わりまで着いていた。おしゃべりしてたからかな、距離は長かったけど、あまり時間は感じなかった。もうすぐ父さんに会わなきゃならないって思うと気が重くなるけど、この人が案内人になってくれたのは不幸中の幸いかも。

 

 レーンを降りて、今度はエレベーターに乗り込んだ。これを降りたらもうすぐ着くよ、というミナトさんの言葉に、僕は思わず俯いてしまった。

 

「シンジくん」

 

 柔らかい笑みを浮かべたミナトさんが、膝に手を当てて軽くしゃがむ。

 

「緊張してる?」

 

 優しい声でそう僕を気遣うミナトさんは、そっと小さく首を傾げて、頬に垂れた金色の髪をサラリと耳にかきあげた。その優美な所作が妙に色っぽく女性的に見えて、僕は頬を熱くしながら目を逸らしてしまう。この人の顔は心臓に悪い。

 

「あの、ミナトさん」

「うん?」

「僕、何を話せばいいのかな……」

「……」

 

 不思議な温かさを湛える青い瞳をチラッと伺いながら、僕は縋る様な気持ちでそう問いかけた。

 車の中で、ミナトさんは家族の事を想って泣いていた。初対面の大人に突然泣かれて正直困ってしまったけど、彼の見せた弱さは、家族というものに対していい感情を抱けない僕には、とても眩しく、好ましく、羨ましいものに見えた。

 僕もこんな人の家の子どもだったら、捨てられずに済んだのかな。どうしてこの人は、血の繋がりもない家族の為に泣けるのかな。これから実の父である筈のあの人に会う僕は、どんな顔で、何を話せば良いのかな。どうすれば父さんは、僕を見てくれるのかな。

 

(この人に聞けば、何かわかるかもしれない)

 

 親が子に求めるもの、それを教えて欲しいと思った。子どもの為にあんなに大泣きできるこの人なら、きっとわかってくれるから。

 

「シンジくん」

 

 ミナトさんは、不安に震える僕の両手をそっと手に取った。

 

「"正直に"。それだけでいいんだよ」

 

 包み込む様なその声色に、僕は顔をあげた。青い瞳に、僕の泣きそうな情けない顔が映る。

 

「お父さんに会いたかったとか、ムカついてるとか、寂しかったとか、さ。シンジくんが伝えたい事、言いたい事を、正直に」

「でも……」

「うん……不安だよね。ずっと会ってなかったんだもん。よく頑張って会いに来たね。えらいよ、シンジくん」

 

 僕の手を握る力が、ぎゅっと優しく強くなる。ミナトさんはニコリと笑みを深めた。

 

「大丈夫、僕が側に居るよ。もしホントに辛くなったら、僕と一緒に逃げちゃおう。シンジくんが辛くなったら、必ず僕が連れ出してあげる」

「いいの……?」

 

 僕はますます泣きそうになった。他人からこんなに甘い言葉を貰うのは、本当に久しぶりだった。

 

「もちろん。だからね、シンジくん。あとちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、頑張ってみよう?僕がシンジくんのお父さんだったら、きっとどんな言葉をぶつけられても、嬉しいって思うから。一番悲しいのは、なんにも言われない事だから」

「言われない事……」

「うん。大人ってね、ホントは子どもよりも子どもなんだ。大事な人の気持ちがわかんないと、怖くて一歩も踏み出せない。傷つく痛みを知ってるから、尻込みしちゃうんだ。自分だけが好きだっていう孤独がイヤで、相手の気持ちを確かめたくて。でも、もしそれでホントに嫌われてたら?って、つい考えて、結局なんにも言えなくて……そんな、情けない堂々めぐりをやめられないんだ、僕たちってさ」

 

 どこか自嘲する様な苦笑とともに、ミナトさんは歌う様に僕にそう語った。ミナトさんの歌は、まるで僕の心そのものだった。

 確かにそうだ。僕も父さんが怖い。なんで怖いのか、それはきっと、父さんが何を考えてるのかわからないからだ。父さんがどんなつもりで僕を呼んだのか?僕の事をどう思っているのか?気になって気になって仕方がないけど、もし本当に父さんが僕を愛していないとしたら……そんな不安ばかりが大きくなって、余計話すのが怖くなる。正にミナトさんの言う、情けない堂々めぐりそのものだ。

 

「ミナトさん、僕は……」

「うん」

「父さんが、怖い……」

「うん……好きなんだね、お父さんが」

「好き……?」

「嫌いだったら、不安にならないよ」

「ぁ……」

 

 その言葉に、僕は自分の鬱屈とした気持ちの正体が少しだけ見えた気がした。

 僕は、父さんに愛されたいのかもしれない。

 

「僕といっしょだね。僕も、僕のお父さんが好きだから」

 

 そう笑うミナトさんの瞳に映る僕は、ポカンと口を開けていた。

 

(この人は、本当に僕を逃してくれる人なんだ)

 

 自分で自分の心がわからない、ざわざわして気持ち悪い不安感から、ミナトさんは僕を逃してくれた。僕が何の為にここまで来たのか、自分でもわからなかった本当の理由を、この美しい人は教えてくれた。

 僕は、父さんの気持ちを確かめに来たんだ。

 

 だったら。

 

「……逃げちゃ、ダメだ」

 

 包み込まれた両手を見つめて、僕は覚悟を決めた。ミナトさんは、ただ嬉しそうにふんわりと目を細めた。柔らかく繋げた両手を通して、僕の中の何かが、彼と繋がった気がした。

 

 

 

 

 

 

 慌ただしく状況報告が飛び交う中央指令室。その最上層に位置する指揮官席の傍らで、冬月は実の息子とウン年ぶりの再会を果たした元教え子の黒い背中を見つめていた。

 

「ご苦労だった、入江三尉」

「はっ!」

 

 無機質な声で形ばかりの労いをかけるゲンドウにキリリとした礼を返すのは、最近なにかと各所で話題にあがる時の人。元は保安警備隊のマスコット的存在で、今はファーストチルドレンの保護者という大役を任されている、コーカソイド系の男性士官。眩しい金髪と眩しい笑顔がトレードマークの人気者、入江ミナト三尉だ。

 何故綾波レイの保護者たる彼がここにいるのか、それは冬月自身が指名したからに他ならない。

 

「……久しぶりだな、シンジ」

「父さん……」

 

 高圧的に息子を見下ろす元教え子と、明らかに臆した様子のその子ども、碇シンジ。シンジはごくりと唾を飲み、隣に立つミナトにチラリと目線を向けた。

 

『だ い じょ ー ぶ』

 

 シンジの視線に気づき目を合わせたミナトは、口の動きだけでシンジにエールを送り、パチンとウィンクして微笑んだ。

 シンジはこくんと小さく頷き、再び父に目線を戻した。

 

「……久しぶり、父さん」

 

 息子の思わぬ堂々とした態度に、目の前の冷血漢が僅かに動揺した気配を感じる。思惑通りに事が進み、冬月は心の中でほくそ笑んだ。

 

(やはり、彼に任せて正解だったな)

 

 自分たちが裏で進めている"計画"についてはもちろんそれが最優先だし、その為に手段を選ぶつもりはない。だが、目下対処すべきは使徒の殲滅だ。

 今回の対第3使徒戦については、ファーストチルドレン綾波レイがエヴァ初号機に搭乗し、作戦行動をとる。だが、いずれはこの碇シンジがサードチルドレンとして初号機に乗り込み、幾度となく現れるだろう使徒たちと闘う事になる。

 なので、パイロットたる碇シンジには闘う事に対して前向きになって貰う必要がある。その為には、父であり指揮官である碇ゲンドウとの確執を取り払ってやるのが一番手っ取り早い。そう冬月は考えたのだ。

 

「父さんに、会いたかった」

「……」

 

 キツく拳を握って小刻みに震えながらも、真っ直ぐに父を見据えて気持ちを伝えるその少年の、強い意志の篭った黒い瞳。対するゲンドウは、未だ口を噤んだままだ。全く、いくつになっても不器用な教え子である。

 

(ふっ、しかしここまで上手く作用するとはな)

 

 冬月は対面に立つ入江ミナトに、それとなく目線を投げた。よくやった、という純粋な労いと、どうやった?、という不躾な好奇心を込めて。

 ミナトはその目線には全く気付かず、待機姿勢のままチラチラと忙しなくシンジに目を向けている。どうやらすっかり親心が芽生えた様だ。

 

(シンジくんの滞在先は、決まったな)

 

 朧げに脳内で建てつつあった冬月の秘密計画が、いよいよ綿密な骨子を持ち始めた瞬間だった。

 内容は至ってシンプル、"入江ミナトにチルドレン全員預けて従順なパイロットに躾けてもらおう計画"、である。

 

(まだ推測でしかないが、どうやら彼は打算なく他人の子どもを愛し慈しむ事が出来る、そんな稀有な精神性を持っている様だ。そのうえ大変子どもに好かれやすく、生活能力も上々。組織への忠誠心も高いうえ、有事の際には自身と子どもを守れるだけの戦闘訓練も積んでいる。パイロットの身柄を預ける上で、これ以上適切な人材はそう居ないだろう。委員会絡みの策謀を知られでもすればその限りではないだろうが、良くも悪くも単純な青年だ。隠し通す事は雑作もない。レイ自身が彼に秘密を打ち明ける可能性もあるが、その際の対処法も一通り用意してある)

 

 穏やかに目を細めた知的な相貌の裏で、冬月はミナトをチルドレン各位の保護者兼調教師として徹底的にこき使おうと決心した。

 彼の保護下に置けばチルドレンの精神は安定し、エヴァンゲリオンとのシンクロにも好影響を及ぼす。開発責任者の赤木リツコの話を要約すれば、エヴァのシンクロに必要なのは"安定"と"集中"、そして"甘える心"だそうだ。実際、ミナトの甘やかな愛情をこれでもかと注がれつつある綾波レイは、初号機とのシンクロ率を爆発的に上げた。碇シンジも、いずれ来日するドイツのセカンドチルドレンも、皆が皆家庭環境に問題を抱えた不遇な少年少女たちだ。間違いなく同様の効果が期待出来るだろう。一石が二鳥どころか三鳥。棚からぼた餅と一緒に熱いお茶まで付いてきた。こんな都合の良い展開があるだろうか。

 

(言うなれば、チルドレン補完計画か)

 

 パイロットの保護と育成を人手を割く事なく任せられ、おまけに自身の知的好奇心を満たす観察対象にもなる。老齢の副司令官は、この女性的な可憐さと柔らかさを持つ美青年を、決して自分の手元から離さぬ様入念に懐柔して行く事を決めたのだった。

 

 

 つづく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくしょいっ!」

「あら、風邪?」

「んーいや、なにかしらねー。なーんか寒気というか、私の見せ場がごっそり減った気配というか……」

「何の話か知らないけど、貴方の見せ場はここでしょう?集中なさい、葛城一尉」

「わかってますー。いやーでもホント何かしら?ちょっち肩凝りが良くなったような……くしゃみしたから?」

 

 

「……三尉が、来ない」

 

 

 ……つづく。

 

 

 

 





冬月「お前がママになるんだよ!」
ミナトくん「なんだこのおじいさん!?」
シンジくん「ママ……(即落ち)」
アスカちゃん「いきなり不遇とか喧嘩売ってんの!?」

ウチの冬月先生はいい人だけど悪い人です。
ウチのシンジくんはいい子だけどチョロいです。
ウチのゲンドウくんは悪い人だけどちょっといい人でちょっとチョロいです。
ウチのアスカちゃんはまだまだ出番まで遠いけど多分チョロいです。
ミナトくんはママです。


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