僕がチルドレンのママになるんだよ!   作:はっぽーしゅ

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グーテンモルゲン。すっかり寒くなりましたね。
私はエヴァの常夏パワーでぽかぽかです(熱暴走)

今回でやっとこさサキエル戦……戦闘シーン書くの難し過ぎてパーンてなりましたね、頭が(満身創痍)
そろそろタグのオリジナル設定がぶいぶい火を噴いてきます。オリジナル武器が出てきますがクッソ情けない激安兵装ですのでご安心(?)ください。

あと、サブタイトルのサキエル登場〜は、平成ウルトラマンシリーズでサブタイトルが出るときの〇〇怪獣〇〇登場みたいなアレです。私の趣味だ、いいだろう?(戦極並感)




えぴそ〜ど9:リフトオフ!絆の巨人は少女と共に(第3使徒サキエル登場)

 

 

 

 広大な中央指令室の最上階で、碇司令とシンジくんが緊張感たっぷりに見つめ合っている。

 僕はシンジくんの隣に待機しながら、そわそわとその行く末を見守っていた。

 

「父さん」

 

 緊張に喉を震わせながらも、気丈に父を見上げて目を逸らさないシンジくん。自分を威圧的に見下ろす強大な存在に負けまいと、その黒い瞳で真っ直ぐに父を見据え、薄いサングラスの向こう側をしっかりと射抜いている。

 

「どうして、僕を呼んだの」

 

 親としての言葉を望む息子に対し、父である碇ゲンドウ司令は、その黒々としたオーラを一切薄める事なく、威厳たっぷりに息子を見下ろし続ける。

 

「必要になった。だから呼んだまでだ」

「……ッ」

 

 無感動で淡々とした、切り捨てる様なその態度に、シンジくんはギリッと苦しげに顔を歪ませた。

 って、ちょっとー!?おとうさーん!?

 

(あーもうっ!何でそんな冷たいんですか碇司令!?ハッ、ま、まさか緊張しておいでですか!?息子さん相手に!?)

 

 上官が見せたあまりにあんまりな態度に、僕は彼に対しても必死に目線でエールを送った。

 もうっ!もっと頑張ってください碇司令!お子さんが根性見せてるんだから、貴方もしっかりお子さんと向き合わなきゃメッ!ですよ!

 

「はぁ……全くこの男は……」

 

 司令の傍に控える冬月副司令が、呆れた様に小さくため息をこぼす。副司令も僕と同じ気持ちの様だ。

 ……僕は施設育ちで、色んな事情を抱えた子どもたちとその親御さんたちを沢山見てきたから、なんとなく分かるんだ。碇司令は、きっとシンジくんを嫌ってる訳じゃない!多分、久しぶりに会うシンジくんと何を話せばいいのかわかんなくて、ぶっきらぼうな態度しかとれないんだ!……そう思いたい!そうであって欲しい!

 ……これは、本気でどっちも応援しなきゃ!

 

(ガンバ!ガンバですよ碇司令!大丈夫、司令はやれば出来る子です!だってレイちゃんにはちゃんと優しく笑えてるじゃないですか!ねっ!大丈夫大丈夫!頑張れ、頑張れっ!)

 

 僕はカッと目を見開き、更に目力を込めて碇司令に無言のエールを送りまくった。でも司令には全く届いていない様で、依然変わりなくシンジくんを威圧している。あーもうそんな態度じゃぁ!?

 

「なんだよそれ……っ!」

 

 ほら!シンジくん怒っちゃったじゃん!せっかく頑張って歩み寄ろうとしてたのにぃ!

 

「ふざけないでよ!何を今更なんだよッ!」

 

 堰き止めていたダムが決壊したかの様に感情を溢れさせたシンジくんは、荒々しい表情で父に詰め寄り、その黒い胸ぐらを乱暴に掴んだ!

 ……って、えぇっ!?胸ぐら掴んだ!?シンジくん、かわいい顔して実はアグレッシブな昭和系男子だったの!?

 

「なんだよ!必要になったって、なんなんだよ!僕は、僕はずっと!ずっと父さんが必要だったのに!」

「……っ」

 

 儚げな童顔を憤怒に歪ませた息子の言葉に、ほんの小さく息を飲む父。副司令は、おや?という目で彼らを見ていた。

 

(シンジくん……)

 

 僕はシンジくんの意外な爆発力に驚きながらも、しっかりと自分の気持ちを相手に伝えたシンジくんに、大きな安堵と労いと、狂おしい程の愛おしさを覚えた。

 碇司令のあんまりな態度にプッツンして、喧嘩上等な剣幕で掴みかかっていったけど、その怒りは愛故だと、自分には貴方が必要だと、そうハッキリ言ってのけたんだ!エレベーターで静かに宣言した通り、シンジくんは一歩も逃げなかった!

 あぁ、えらい!えらいよシンジくん!強い子!いい子!よく頑張ったね!今すぐぎゅーって抱きしめて、おでこにいっぱいちゅーしてあげたいっ!

 

「しんじくぅぅぅぅん……!」

 

 今にも殴り合いの喧嘩を始めそうな雰囲気の親子を見守りながら、僕は早くも涙ちょちょぎれ状態になってしまった。グスグスと鼻を啜る僕を、冬月副司令は何故か楽しげに目尻を下げて観察している。

 

 息子に胸ぐら掴まれて黙り込んでいるグラサン中年とバチギレ少年。そしてそんな二人の傍でメソメソ涙を流すパツキン青年とニヤニヤ笑う長身老人。特務機関NERVの心臓部は、なんとも言えないカオスな空気に包まれていた。

 

(頑張れ頑張れ!どっちも頑張れーっ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えぴそ〜ど9:リフトオフ!絆の巨人は少女と共に(第3使徒サキエル登場)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……シンジ」

 

 表情の見えない眼でサングラス越しに僕を見る父さんは、僕の手を払う事もせずに淡々と言葉を紡ぐ。

 

「お前が戦う相手は私ではない、使徒だ」

「……シト?なんだよそれ、一体なんの」

「シンジ」

 

 意味がわからず眉を顰める僕に、父さんは二の句を告げる事を許さず重々しい口調で畳み掛けてきた。

 

「使徒だ。ヤツがここに辿り着いた時、我々人類は滅亡する」

「ヤツを倒さぬ限り、人類に未来は無い。使徒の殲滅、その為に我々NERVはここにいる」

「シンジ。お前には使徒を唯一打倒せしめる決戦兵器エヴァンゲリオンに搭乗し、人類を破滅から救うメシアになってもらう。お前を呼んだのはその為だ」

「エヴァに乗れ、シンジ」

 

 怒涛の勢いで押し寄せてきた、意味不明な単語の数々。

 

「な……え……?」

 

 僕は思わず父の服から手を離してしまった。あまりの難解さに怒りも冷めてしまったのだ。この人は一体何を言っている?

 

「なんだよそれ……わかんない、父さんが何を言ってるのか、わかんないよ!ねぇ、どういうことさ!?教えてよ父さん!」

「説明を受けろ」

「ッ……ミナトさん!」

 

 突き放す様な父の態度に更に困惑を深めた僕は、縋る様な想いで隣に立つミナトさんの袖を掴んだ。

 

「ミナトさん、父さんは何を言ってるの!?使徒とかエヴァとか、わけわかんないよ!」

 

 声を荒げて青い瞳を見上げた僕は、ミナトさんの様子がどこかおかしい事に気づいた。

 

「———」

 

 ミナトさんは唖然とした様子で目と口をあんぐりと開け、カタカタと身体を震わせながら父さんを凝視していた。

 

「ミナトさん……?」

 

 僕の声が届いたのか届かなかったのか、ミナトさんは震える腕を僕に伸ばしてぎゅうっと力強く抱きしめてきた。いい匂いのする薄い胸元に顔が埋まって、視界が完全にゼロになる。

 

「えっ、ちょ、ちょっと……」

「碇司令……」

「っ……ミナトさん……?」

 

 底冷えする様な低い声を発したミナトさんに驚き、恐る恐る顔を上げる。ミナトさんはギリギリと歯を食い縛って、その美貌を怒りとも恐怖ともつかない複雑な色に染めながら父さんを睨みつけていた。

 

「司令。シンジくんを呼んだのは、この子をエヴァに乗せる為ですか?その為に司令はシンジくんを……息子さんを、この街に呼び出したって言うんですか?」

「ソレにしか出来ない事だからな。碇シンジは"サードチルドレン"だ」

「ッ!」

 

 鋭く息を呑んで、ミナトさんは更にキツく僕を抱きしめた。彼のドクドクと激しい鼓動を顔面に叩きつけられた僕は、益々混乱してしまう。

 

(な、なにが起きてるの!?父さんは意味不明だし、ミナトさんはいきなりハグしてくるし!く、くるしぃ……前が見えない……!)

 

 僕はミナトさんの細い背中に手を回し、ポンポンとそこを叩いて解放を要求した。

 

「シンジくん……」

 

 ミナトさんは少しだけ力を緩めて、胸元に埋まる僕を泣きそうな顔で見下ろした。目に涙を浮かべて切なげに唇を震わせるその悲痛な表情に、キュッと胸が締め付けられる。

 

「ミナトさん……?」

 

 どうしてそんな顔をするの?ミナトさんは何を知ってるの?父さんは僕に、一体何をさせようって言うの?

 そんな想いを込めてミナトさんを見上げていると、再び父さんが口を開いた。

 

「シンジ、今回のお前は"予備"だ。今から起こる事を彼と共にそこで見ていろ」

 

 ミナトさんに抱かれたまま後ろを振り返ると、父さんは既に椅子に座って前方の巨大なモニターへと向き直っていた。無機質な背もたれに隠れた父の背中からは、僕にこれ以上構っている暇は無いという冷たい意志がこれでもかと溢れ出ている。

 

「予備って……」

「冬月、レイの様子はどうだ」

「安定しているよ、少々機嫌は悪いがね」

「出撃できるならば問題はない」

「そうか?まあ入江くんを取り上げられて拗ねているだけだからな……ふふ、すっかり父親離れされてしまったな、碇?」

「……初号機パイロットを主モニターに映せ!」

『了解!パイロットを主モニターへ!』

 

 隣に寄り添う背の高い老人と不可解な会話を続ける父さんの背中を、僕はやりきれない想いで睨みつけた。

 僕は、ちゃんと伝えたんだ。父さんに会いたかったって、必要だって、そうハッキリ言ったんだ。なのに……

 

「なんなんだよ……っ!」

 

 父さんは訳の分からない事を言うだけ言って、僕をほっぽり出した。昔とちっとも変わってない、僕を先生の所に捨てて何処へともなく消えていったあの日から、ちっとも。

 

「うぅっ……」

「シンジくん……?」

 

 僕はミナトさんに向き直って、再びその優しい香りのする胸元に顔を埋めた。温かな胸に自ら抱かれに行った僕は、感極まってボロボロと熱い涙を零してしまう。

 

「いらないんだ……父さんは僕が、いらないんだ……っ!」

「……っ」

 

 湧き出る悲しみを堰き止める事なく溢れさせ、今日会ったばかりの大人の胸に必死に縋り付いた。この人に励まされたから、僕は父さんと正面から向き合えたんだ。なのに、なのに、なのに!

 

「くっ、ぅぅっ……ちくしょう……っ」

「あぁ……シンジくん……」

 

 そうして情けなく嗚咽を漏らす僕を、ミナトさんはすっぽりと包み込む様に抱き直した。

 

「よし、よし、頑張った、頑張ったね……」

 

 僕の頭をあやす様に撫でつけながら、声を震わせて慰めてくれるミナトさん。あぁ、泣いている。この人は今、僕の為に泣いてくれている……

 そう、彼の優しさに縋って甘え込んでいた、その時だった。

 

『何をしているの』

 

 せせらぐ水の様に静やかな声が、広い館内にそっと、しかしハッキリとした音量で響き渡った。

 

「「へ?」」

 

 揃って間抜けな声をあげた僕たちは、何事かと正面のモニターへと顔を見上た。そこには……

 

『……』

 

 澄んだ空色の髪の、陶器の様に白い肌をした華奢な少女が、じとっとした半目でこちらを見ている映像がでかでかと映し出されていた。

 

『……貴方、誰』

 

 いや、貴方も誰……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『三尉』

「レ、レイちゃん!?あぁっ、レイちゃん、レイちゃんっ!大丈夫!?緊張してない!?お腹痛くなったりしてない!?」

『そこで何をしているの』

「へ?」

『貴方は私の保護者。所用が済んだのなら至急私の側に戻るべき。それが三尉の任務でしょう。どうしてまだその子の側にいるの』

「え、いやあの、これも僕の任務っていうか……あの、レイちゃん?」

『……もういい、通信終りょ』

「あぁぁぁぁ待って待って待って!?ごめんごめん!ごめんって!謝るから!ごめんなさい、ごめんなさいっ!」

『どうして謝るの、任務なんでしょう』

「そ、そうだけどっ!それでもごめん!レイちゃんの側にいれなくって、ホントにごめんね!寂しかったよね?怖かったよね?よしよし、よく我慢できたね!頑張ったね!えらいね!」

『……別に、頑張ってない。私は寂しくなんてないもの』

「えぇっ!?寂しくなかったの!?僕はとっても寂しかったのにっ!」

『そう。子どもなのね』

「なんですとぉ!?」

 

 人類の存亡を賭けた闘いにいざ挑もうと準備を進めているNERV中央指令室で繰り広げられる、なんとも気の抜けた親子漫才。そのバカバカしく微笑ましいやりとりに、作業中のオペレーターたちはクスクスと笑いを零しながら萌えに萌えていた。

 

 ……なんなのよ、この緊張感の無さは。

 

「リツコ、コーヒーないのコーヒー。なんかもう砂糖吐きそうなんだけど」

 

 胸焼けにも似たなんとも言えない感覚にため息を吐きつつ、私は隣に立つ親友の知的な相貌を見やった。

 

「あるわけないでしょう……はぁ、仮にあったとしても、あの甘さの中和は無理ね。まるで海外産のチョコレートみたい」

 

 リツコも私と同じ気持ちだった様で、酷く呆れた顔でタバコを咥え、緩慢な動作で火を点けていた。気怠そうに吐き出された紫煙は、優れた空調システムにあっという間に吸い取られ、余韻も残さず室外へと消えていく。

 

「ふぅー……私もパイロット運用の効率化を考えて、多少レイへの対応を変えてみたのだけど……ちょっと加減を間違えたかしら……」

 

 意味深に呟くリツコを横目に、主モニターに映るレイの仏頂面……に見せかけて、実はかなり楽しそうに弾んでいる様子の幼い顔を、感慨深く眺める。この一ヵ月で、本当にあの子は感情豊かな子に変わった。それも随分と甘えん坊で、独占欲の強い子に。

 

 ……いやまぁ、いいんだけどサ。でもちょっち変わり過ぎ……変わり過ぎじゃない?

 

「まぁ、確かにぃ?入江くん優しいしぃ?料理も美味しいしぃ?顔も結構いいけどさぁ?でもあの綾波レイがあそこまで入れ込むってリツコ、あんた信じられる?なんかヒミツでもあるんじゃないの?」

「ミサトこそ何か知らないの?お隣さんでしょう、貴方」

「知らないわよ、あの子たち私よりペンペンに夢中だもの……てか、なんで入江くんまで私よりペンペン推しなワケ!?こーんな美人を何っ回も自宅に連れ込んどいて、彼ったら口説き文句のひとつもないのよ!?ペンペンにはあんっっっっなにベッタベタのデレッデレなクセして!なんなのよもう、ゲイなんじゃないの彼!?」

「そう、無様ね……ふぅー……」

 

 つれないリツコに歯噛みしつつ、最上階に立つ入江くんとサードチルドレンを見上げる。陰気な司令と副司令の少し後ろに立つ入江くんは、サードチルドレンを抱っこしてその小さな頭を優しくナデナデしながらニコニコ笑顔でレイと話している。主モニターに映る綾波レイは、彼の手がシンジくんの頭を一撫でする度にこめかみをピクピクさせていた。ぷはっ、あーりゃ相当妬いてるわね。

 

「レイ」

 

 と、ここで遂に碇司令がエントリー。どんな時でも厳ついオーラを崩さないNERVの最高司令官が、温かな父性に溢れた優しい声でレイの名前を呼んだ。途端にレイの仏頂面がパッと明るくなり、花咲く様にその小さな顔を綻ばせた。

 

『碇司令』

「出撃だ、いけるな?」

『はい』

 

 ……なんちゅーか、何度聞いても鳥肌立つわ、碇司令の猫撫で声。レイはレイで司令にデレっデレだし、大丈夫なのかしらアレ?絵面がモロに犯罪なんだけど。

 

「ていうか、実の息子ほっぽり出して他所の女の子に首ったけって、ホンットどーいう神経してんのかしら、あのヒゲオヤジは」

「……そうね。でもパイロットの機嫌とりは必要でしょ?」

「シンジくんだってどうせパイロットにするんじゃないの!今回はレイが乗るけど、あの子もいつかはエヴァに乗るのよ!?それなのに、折角再会できた父親にあんな態度されてたんじゃ、シンジくんが可哀想よ……」

「あら、まだ話もしてないのに、もう情が湧いたの?入江くんに影響されたのかしら」

「……いっそ、シンジくんの面倒も入江くんが見ればいいのよ。彼ならきっと……」

「従順なパイロットに躾けてくれる?」

「リツコ!」

「冗談よ」

 

 昏い瞳でタチの悪い冗談を飛ばす友人に、そういう性格だと分かっていてもつい声を荒げてしまう。私たちは、使徒を倒す為にレイやアスカ、シンジくんたちを犠牲にしようとしている。だったらせめて、戦う事以外では精一杯幸せになって欲しい。そう願う事って可笑しい事?

 

(そんな事願う資格、私にはこれっぽちもありはしないけど、それでも……)

 

 やるせない想いで入江くんを見上る。入江くんはレイと碇司令のやりとりに顔を綻ばせながら、腕の中のシンジくんを飼い猫の様に撫で続けていた。

 

(彼なら……入江くんなら、レイも、シンジくんも、アスカだって、幸せにしてくれるかもしれない。大人の都合で無理やり戦わされるあの子たちの、帰るべき場所として……)

 

「あ、そうそうレイちゃん!紹介するね、この子が碇シンジくん。碇司令の息子さんで、レイちゃんと同い年。シンジくん、彼女が綾波レイちゃん。さっき話した、僕といっしょに暮らしてる子。どう?とってもかわいいでしょ!」

『……はじめまして。綾波レイです。好きな動物はペンギンです』

「は、はぁ。どうも、碇シンジです……えっと、好きな動物?は……え、なんだろう……猫とかかな……」

「猫ちゃん好きなの!?」

「はい?」

『……碇くんは、子どもなのね』

「……え?こ、こども?」

『さっきから、ずっと三尉に抱きしめられてる。本で読んだわ、子どもは大人に抱きついて甘える。三尉に抱かれる貴方は、子ども』

「なっ……い、いきなり何言うんだよ!?」

「あ痛っ!?」

「綾波は僕と同い年だろ!子ども扱いしないでよ!」

『なら三尉から離れて』

「離れたろ!」

『もっと』

「うぅぅ……シンジくんが……シンジくんが僕の手をペシってした……あんなにぎゅってしてたのに……あんなにナデナデしてたのに……しくしく、よよよ……」

 

(……幸せにして、くれるわよね!うん!ヨシッ!)

 

 止まらないアホアホ漫才に考える事をやめた私は、心の中でビシッと指差し確認をして無理やり意識を切り替えた。そうだ、使徒倒そう。

 

「碇司令!そろそろよろしいでしょうか!」

 

 レイとシンジくんの漫才を無言で眺めていた碇司令に声を張り上げる。碇司令はサングラスをギラリと光らせながら、威厳たっぷりに頷いた。

 

「出げ……」

「あーっ!待って待って!すいません待ってくださいちょっとだけ待って!」

「……」

 

 と、そこに入江くんが慌てて割り込んできた。碇司令は怪しく輝くサングラスをクイっと無言で掛け直した。い、意外と気が利くおっさんだわ……

 

「レイちゃん」

『三尉?』

 

 モニターに映るキョトンとした表情(つってもほぼ無表情だけどネ)のレイに、入江くんはそっと口元をマイクに寄せて、囁く様に言葉を贈った。

 

「頑張って。愛してる」

 

 蕩けるようなウィスパーボイスに、何人かのオペレーターが悩ましげにため息を吐いた。男の声が何人か混じっていた気もするけど……まあ入江くんは性別入江くんだからヨシッ!

 

『……』

 

 モニターのレイは二度三度と大きな目をぱちくりさせてから、ふっと小さく、小さく小さく本当に小さく、ニコ、と笑った。

 

『はい、いってきます』

「うん、いってらっしゃい。ちゃんと帰ってきてね、遅くなっちゃやだよ?」

『わかってる。いい子で待ってて』

「あはは……うん、待ってる」

 

 微笑みながら、噛み締める様にレイを見つめた入江くんは、ありがとうございますと頭を下げて元の位置に戻った。

 ……なるほど、ありゃ独占もしたくなるわ。

 

「……葛城一尉」

「はっ!……エヴァンゲリオン初号機、発進準備!」

 

 特務機関NERVの作戦部長として、高らかに宣言する。私の一声で、職員たちはすぐさま戦士の顔となって一斉に動き出した。

 

『発進準備!』

『第1ロックボルト外せ!』

『解除確認!』

『アンビリカルブリッジ移動開始』

『第2ロックボルト、外せ!』

『第1拘束具除去、同じく第2拘束具を除去』

『1番から15番までの安全装置を解除!』

『解除確認!』

 

 ケージ内の巨大な拘束装置が解除され、エヴァンゲリオン初号機の紫色の巨体が徐々に露わになっていく。全長40mにも及ぶ巨大なヒトガタの鬼の姿が、モニター越しに私たちを見下ろした。

 

「レイのシンクロ率は?」

「現在、41.5パーセントで安定。ハーモニクスも全て正常です」

「結構、流石は我らのファーストチルドレンね。槍の方は?」

「発進リフトに3本を固定、すぐにでも使用できます」

「よろしい。ま、あんな鉄パイプでも無いよかマシよね、リツコ?」

「鉄パイプではなく超鋼フルメ……」

「あーはいはいメタルでもパンクでもブルースでもいいわよ。ったく、折角のエヴァンゲリオンなのに肝心の武器があんな竹槍とチャチなナイフ一本だなんて、悪い冗談だわ。ゲリラかっつーの」

「無駄口が多いわね葛城一尉。あと竹槍ではなく超鋼フルメタル……」

「発進準備完了しました!碇司令、よろしいですね!?」

「……」

 

 リツコのネチネチした抗議を無視して声を張り上げる。ぬぁにが超鋼フルメタルランスよあんなもん先っぽ尖らせただけのデカい鉄パイプでしょうが。チャカ寄越しなさいよチャカ。

 

「出撃」

 

 司令の声に頷き、私は再び腹に力を込めて怒鳴り上げた。

 

「エヴァンゲリオン初号機、発進!」

 

 瞬間、初号機が固定されているリフトが勢いよく発射し、レールに火花を散らしながら地表へと突き進んでいく。モニターに映るレイは、急上昇に伴う凄まじい縦Gに苦悶の表情を浮かべている。

 

「見てごらん、シンジくん」

 

 入江くんの声が聞こえる。初号機は地上に辿り着き、ガッシャンと派手な音をたてながら大地に立った。

 

「あれが、僕たちNERVの最後の希望——」

 

 燃える様な夕陽に立つ一本角の巨神兵。その遥か前方には、国連軍のN2兵器で負った傷を回復させた第3使徒が、ズシン、ズシンと、一歩ずつ近づいてきている。

 

「——エヴァンゲリオン初号機。レイちゃんと、僕たちみんなの、絆の巨人だよ」

 

 人類と使徒の、15年越しのリベンジマッチが、遂に始まるのだ。

 

「リフト・オフ!」

 

 肩部ユニットの拘束が外れ、リフトの縛めから解き放たれた紫色のエヴァ初号機が、グンッと前傾姿勢になる。初号機はすぐさまリフトに固定された黒い槍を引き抜き、その鬼の様な顔を油断なく使徒に向けながら、ジリジリとビルの陰に身を隠した。

 

(死なないでよ、レイ)

 

 透化したLCLに空色の髪を揺らめかすレイの無事を祈りつつ、私はブリーフィング通り遮蔽物に隠れながら使徒に接近する様レイに指示を飛ばした。

 

 レイ、必ず勝つのよ。そしてすぐに帰ってらっしゃい。入江くんも、私たちも、みんな貴方の帰りを待ってるんだから。

 

 

 

 

『その道をそのまま直進、突き当たったら右折よ。姿勢は常に低くして、いいわね?』

「了解。移動を開始します」

 

 葛城一尉の指示通り、初号機の身を屈ませながら第3新東京市のビル街を縫う様に進む。敵、第3使徒には熱光線による遠距離攻撃能力があるが、現状此方には飛び道具が無い。従って、此度の迎撃戦は遮蔽物を利用して身を隠しながら接近し、リーチに優れるこの槍で敵の弱点に奇襲をかける暗殺戦法となった。

 

(大丈夫、大丈夫)

 

 急造品の無骨な槍の感触を、エヴァンゲリオンの巨大な手指越しに確かめる。技術開発部の苦心の末に完成したこの"超鋼フルメタルランス"は、筒状に形製された特殊な鋼材を鋭利な形状に切り分けて各種コーティングを重ねただけの、非常にシンプルで安価な兵装だ。葛城一尉曰く"デカい鉄パイプ"。または"竹槍"。

 

 正規武装の配備が間に合っていない現状に対して、赤木リツコ開発主任が苦肉の策で生み出したこの槍。習熟訓練の際、赤木博士は人型兵器の有用性を明確に証明する素晴らしい武装よと昏い笑顔で語っていたが、次は弓でも作ってやろうかしらあの老人ども、という呟きからして恐らく不本意な開発だったんだろう。パイロットの私としては、リーチがあって扱いも容易なこの槍は中々に好ましい兵装なのだけど。

 

「ケーブルパージ。ソケットを交換します」

 

 エヴァの背中から伸びるアンビリカルケーブルがビルに絡まない様、一度切り離す。巨大なソケットが降着用のブースターで勢いを弱めつつ道路に落ち、アスファルトをめくりあげた。近くに乗り捨てられていた数台のバイクが、ふらふらと姿勢を崩してバタバタ倒れる。ごめんなさい。

 

 近くの給電用ビルから新しいケーブルを取り出し、ソケットを背中のコネクターに接続する。エヴァは内部電源の容量が非常に少ない為、こうして常に電力供給に気を遣わなければならない。まだまだ稼働率の低い第3新東京市の迎撃システムだが、アンビリカルケーブル用の給電ビルだけは最優先で整備され、稼働に漕ぎ着けていた。

 

『ストップよレイ、もうじき使徒がそのストリートに出てくるわ。槍を構えてその場で待機、合図をしたら即時ATフィールドを展開しつつ攻撃をしかけて、いいわね?』

「了解、ですが先にフィールドを展開した方が操縦が確実です」

『敵に勘づかれる恐れがあるわ。難しいでしょうけど……』

「了解しました。攻撃と同時にATフィールドを展開、敵ATフィールドを中和しコアを破壊します」

 

 初号機の身をぐっと低くし、いつでも槍を突き刺せる様力を溜めて構える。ズシン、ズシンと、重々しい振動がシートに伝わってくる。心臓が煩いくらいに激しく脈動し、額には冷や汗が湧いた。湧き出た汗はすぐさまLCLに溶け、また新しい汗が湧いては消え、湧いては消える。シートに伝わる振動が、いよいよ激しいものになってきた。もう、すぐそこだ。

 

 私が無意識にごくりと喉を鳴らしたその時、遂にビルの陰から巨大な黒い影が、のっそりと私の前に姿を現した。

 

『———』

 

 ずんぐりした、首から上の無い、少しだけ緑がかった黒色の、不恰好な人型。太い胴体に対して腕は細長く、首元の辺りにはハチドリの様な形状の二つの仮面が張り付いている。第3使徒が、私の存在に気づかず本部の直上方向へと歩を進めていく。

 

『今よッ!』

「っ!」

 

 葛城一尉の怒号に応え、初号機の脚を力強く踏み出させる。踏みしめたアスファルトを粉々に砕けさせながら、私と初号機は猛然と第3使徒に突撃した。

 

「フィールド展開っ……!」

 

 意志を込める様に呟き、突き出した槍の穂先に"穿つ"イメージを集中する。ストロー状の穂先に不可視の力場が発生し、ごく僅かにオレンジ色の光を放つ。これが、私と初号機のATフィールド。使徒のATフィールドを貫き、その巨体を刺し穿つ為の心の槍。

 

『———!』

 

 私の存在に気づいた使徒が、ガバリと大柄な身体を翻す。使徒はその勢いのまま左手を構え、掌に眩い光を灯した。

 ……アレが来る!

 

『しゃがんで!』

 

 葛城一尉の指示より早く、初号機の体勢を低くして更に突っ込む。使徒の掌から発射された光の杭が初号機の右肩を掠め、機体とシンクロした私の肩に火傷の様な痛みが走る。だが、戦闘による昂揚でアドレナリンが大量に分泌されている今の私には、何の問題もない。

 

『初号機、シンクロ率上昇!』

「……ふっ!」

 

 ガラ空きの胴体、その中央に光る赤い球体に向けて、鋭く槍を突き出す。槍は一瞬不可視の膜に阻まれパチパチとオレンジの光を瞬かせた後、ずぶりとその膜を貫いて、使徒の身体にその鋭利な穂先を突き立てた。

 

『———ッッッ!!』

 

 だが、使徒も簡単には刺されてくれなかった。使徒は槍が突き刺さるギリギリでなんとか身体を拗らせ、コアへの直撃を回避したのだ。穂先が掠めたコアにビシリとヒビは入ったが、完全な破壊は出来ていない。

 

(しくじった———ッ!)

 

 私はすぐさま槍を引き戻そうとした。しかし、使徒はその異形の両手で私の槍を素早く掴み、仮面に彫られた洞穴の様な昏い瞳をギランッ!と激しく発光させた。

 

『目標内部に高エネルギー反応!』

『レイ避けて!』

「はっ!?」

 

 私は咄嗟に初号機の両手を槍から離させ、両腕を顔の前でクロスさせた。熱った頭で必死に"守る"イメージを集中し、全力でATフィールドを展開する。

 

『ッッッ!!!』

 

 使徒の仮面から、極太の破壊光線がゼロ距離で発射された。激しい光の奔流に晒されて、初号機の身体が勢いよく後方に吹き飛ばされる。

 

「くぅっ!?」

 

 初号機は一気に100メートル以上吹き飛ばされ、背後に聳え立つ高層ビルに猛烈な勢いで叩きつけられた。背中に鈍い痛みが走り、半壊したビルの破片がバラバラと周囲に降り注ぐ。道路脇に停められていた複数台の車が全てひっくり返り、道沿いに建てられた電柱が粉々に折れ崩れる。砕け散った電柱が、バチバチと激しい火花を散らしながら千切れた電線を振り乱した。

 

『レイ!大丈夫!?』

「……問題、ありません」

『初号機のシンクロ率は!?』

『48.9パーセント!いけます!』

 

 破壊された街が巻き起こす鈍色の砂埃の中、素早く初号機の体勢を立て直す。ATフィールドのおかげで機体の損傷は無い。千切れた電線が飛び散らす黄色い火花が、初号機の足元でパチパチと弾けた。

 

『———ッ』

 

 使徒は両腕を大木の様に膨らませ、私から奪った槍を真っ二つにへし折り、投げ捨てた。何十メートルの高さから投げ捨てられた2本の残骸が、激しい音をたてながら道路を跳ね飛び、ひっくり返っていた車たちを次々と押しつぶしていく。ひしゃげた車たちは爆音を轟かせながら次々に爆発炎上し、夕陽に照らされた街を更に明るく破滅的に彩った。

 

『ッ!』

「また——っ!」

 

 使徒は攻勢を緩めず、再び熱線を発射してきた。私は反射的に初号機を側転させ、交差点の陰に身を隠した。使徒の光線が直撃したビルが、砂糖細工の様に粉々に砕け散る。

 

『後退して!仕切り直すわよ!』

「了解……!」

 

 幸いケーブルは無事、作戦行動に支障は無い。私は初号機をゆっくりと後退させながら、震える右手でインダクションレバーを操作した。

 

『肩部ユニット展開!プログレッシブナイフ、アクティブ!』

 

 獣の様に身を屈めながら、左肩のウェポンラックに収納されたプログレッシブ・ナイフを取り出した。プログナイフを起動し、超振動を発する白い刃を逆手に持ち替える。

 

『何をする気!?』

「……もう一度、奇襲をしかけます。接敵と同時にケーブルと肩部ユニットを排除。ATフィールドを展開し、最大稼働で敵を殲滅します」

『なっ!?……レイ待ちなさい!』

『初号機のシンクロ率更に上昇、52.5パーセント!いえ、53、54、55……!』

 

 全身の神経が、エヴァンゲリオンと同化していく。感覚が研ぎ澄まされ、ナイフの刃先を撫でる敵の殺意を手に取る様に感じ取っていく。

 

『レイ!』

『やらせろ、葛城一尉』

『碇司令!?』

『レイ』

 

 通信越しに、碇司令の声が聞こえる。碇司令が、私を呼んでいる。

 

『やれるな』

 

 静かな、優しい司令の声。手の震えが、ピタリと治まった。

 

「……はい」

 

 私の胸に、トクンと温かな火が灯った。そんな私に呼応する様に、初号機が肉食獣の様な唸り声をあげる。固く閉じられた初号機の顎部装甲が、ミシミシと疼き始めた。

 

(貴方も、期待に応えたいのね)

 

 初号機の闘争心に呼びかける様に、目を閉じて意識を集中する。私とエヴァンゲリオンの心が重なり、真の意味でシンクロしていく。硬い紫色の装甲の中で、初号機の筋肉がボコボコと膨張するのを感じた。

 

『……レイ、タイミングはこちらで指示するわ。合図を出したら、手前のビルを飛び越えて使徒に強襲しなさい。初号機のスペックなら可能な筈よ』

「わかりました」

『頼んだわよレイ。貴方を信じるわ』

「……はい、葛城一尉」

『ミサトでいいわ、長いでしょ?』

「……ミサト、さん」

 

 葛城……ミサトさんの声に感じる、確かな信頼と覚悟。レバーを握る両手に、自然と熱い力が篭った。

 

(みんなが、私を信じてる。みんなが私を、見守っている。碇司令も、ミサトさんも、赤木博士も……三尉も、きっと)

 

 ミサトさんのカウントがプラグ内に響く。私は初号機の脚腰にぐっと力を溜めながら、脳裏に三尉の柔らかな笑顔を思い浮かべた。

 

"愛してる"

 

(愛……愛って、なんだろう)

 

 鈍色のビル越しに、少しずつ近づいてくる黒い殺意。ミサトさんのカウントが、切羽詰まったものになっていく。

 

(わからない、愛って、何?わからない、わからない。わからない、だから……)

 

 ふ、と小さく息を吐く。ほんの小さな気泡が口から漏れて、LCLに溶けていく。

 

(……ちゃんと、帰って、三尉に、聞く!)

 

 ギラリ、と初号機のキレ長の瞳が輝く。脳裏の三尉はニッコリと笑って姿を消し、私の心に溶け込んだ。

 

『今ッ!』

「———っ!!」

 

 鋭く響いたミサトさんの声と共に、初号機の電源ソケットと両肩のウェポンラックがパージされる。活動限界までのタイムリミットが凄まじい速度で近づくなか、私は身軽になった初号機を全力で跳躍させ、目の前のビルを高らかに飛び越えさせた。

 

 景色が一瞬で移り変わり、第3新東京市の街並みが眼下に広がる——使徒は私に反応しきれていない——跳躍の勢いのままに宙返りをして、更に力を溜める。

 

「ATフィールド———!」

『グゥゥゥゥ———!』

 

 初号機の顎部装甲がバキンと音を立てて解放され、闘争本能剥き出しの唸り声が夕方の街に恐ろしく響く。真っ赤な太陽を背にした私と初号機は、真っ黒な悪魔の影になった。

 

(決める……っ!)

 

 破壊された街に立つ異形の敵に狙いを定め、私と初号機は紫色の弾丸となって鋭く右脚を突き出した!

 

「———全開ッッッッ!!」

『グゥゥォォォォォォォォォッッッッ!!』

 

 眩い八角形のエネルギーを纏った初号機の飛び蹴りが眼下の使徒に向けて矢の様に突き刺さり、使徒のATフィールドを容易く貫いた。緑色の右足底が二つの仮面を踏み砕き、背後のビル群に向けて豪快に蹴り飛ばす。無惨に顔面を崩壊させた使徒は、半壊したビル群にぐったりと倒れ込んだ。

 

『今よ!』

「———っ!」

 

 その隙を見逃さず、着地してすぐに大地を蹴って使徒に突撃する。逆手に持ったナイフを振り上げ、赤く光る使徒のコアに今度こそ刃を突き立てた。

 

『———ッッ!?』

 

 超振動する鋼の刃が深々と突き刺さり、赤い球体が激しい火花を散らす。私は初号機の左手をナイフの柄に添え、更に力を込めて押し込んだ。

 

「くうぅぅぅぅぅっ!」

『ウォォォォォォォォォォォッ!』

 

 紅に燃える街に、私と初号機の唸り声が木霊する。ナイフは更に激しくコアを傷つけ、深いヒビをバキバキと広げていく。

 

『活動限界まであと30秒!』

『レイ!』

 

 その時、使徒の肉体に変化が起きた。黒々とした巨体がスライムの様に液状化し、一瞬で初号機の全身に纏わりついた。視界が真っ暗になり、すぐさま眩い白い光に照らされる。これは……!?

 

『まさか!?』

『自爆する気!?』

 

 赤木博士とミサトさんの声にハッとする。白い光が視界を焼いていくのが、ひどくスローに感じられる……

 

(私、は……)

 

 ここで、死———

 

『レイちゃんっ!』

 

 ———ッ!

 

 

 

 

 

 

『パ、パターン青、消失!目標は完全に消滅しました!』

「……勝ったな」

「……あぁ」

 

 大爆発を起こした、シトとかいう怪獣。巨大なモニターが真っ白になって、ザラザラの砂嵐状態になる。

 

「あ……あぁ……ぁぁ…………っ」

 

 隣に立つミナトさんは、真っ青な顔でカタカタ震えながらぎゅっと胸元を押さえて、食い入る様にモニターを凝視している。

 

(なんだよ、これ……綾波は、どうなったの?)

 

 僕は、目の前で繰り広げられた常識を遥かに超えた激戦に声も出せず、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。あの子は……綾波レイは、怪獣が起こした大爆発に、モロに巻き込まれてしまった。あのエヴァンゲリオンとかいう巨大ロボットも、あんな爆発を間近で食らってしまったら、流石に……

 

『映像、回復します!』

 

 男性オペレーターの声と共に、モニターの画面が戻った。見るも無惨に破壊されたガレキの街の中、あの怪獣の姿はどこにもない。そして、綾波は、エヴァンゲリオンは……

 

『っ!しょ、初号機、健在!パイロットのバイタル正常!機体の損傷、ありません!』

 

 ワァッ!と発令所中が沸き立った。破壊し尽くされた街の中、両肩の板を失くしてスリムになった紫色のエヴァンゲリオンが、燃える夕陽を後光の様に背負いつつ、2本の脚でしっかりと立っていた。バッテリー切れなのかピクリとも動かないけれど、モニター脇に表示されたウィンドウには、目を閉じて静かに呼吸を整える綾波の姿が、しっかりと映っていた。綾波レイは、生きていた。

 

「あぁ……!」

 

 ミナトさんは感極まった声をあげて、ぺたりと座り込んでしまった。

 

「よかった、よかった、あぁ、よかった……っ!」

 

 内股座りのまま、背中を丸めて鼻をすするミナトさん。思わずその背中に手を添えると、ガバッと勢いよく抱きつかれてしまった。

 

「うわぁぁぁぁぁよがっだぁぁぁぁよがっだよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「う、うわぁ…‥.」

 

 自分の胸の中で大泣きする成人男性の姿に、なんとも言えない気分になる。でも、そんなミナトさんの真っ直ぐに娘を想う深い深い愛情に、僕はじんわりと温かい気持ちになった。

 

「あはは……うん。よかったね、ミナトさん。綾波は、ちゃんと生きてるよ」

「う"わ"あ"ぁぁんレイちゃぁぁぁぁん!」

「うん、うん」

 

 びーびー泣き叫ぶミナトさんの金髪をなんとなく撫でながら、モニターに映るエヴァンゲリオンを見つめる。夕陽に立つエヴァンゲリオンは、物言わぬ白い瞳で、自分が守り抜いた輝く街を堂々とした立ち姿で睥睨していた。

 

 

 

 つづく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うわぁぁぁぁん!』

『あはは、よしよし』

「……」

『よくやったわレイ!大丈夫?ケガはない?』

「……」

『レイ?レーイー?大丈夫?』

「……おしおき」

『へ?』

「……なんでもありません。機体を回収してください」

 

「……ばか」

 

 

 

 ……つづく。

 

 

 

 




今回はとにかく書きたいものを詰め込めるだけ詰めっ、詰め込もうぜ?って感じのお話でした。

◯レイちゃん
・クソつよ先輩パイロット。綾波レイの戦績を盛る事もこの作品の目的の一つ。つまり今後もゴリゴリに活躍する。ユーアーナンバーワン!(レリエルフラグ)
自分が忙しい時に新参者のシンちゃんとイチャついてる(語弊)ミナトくんと、自分のモノである(語弊)ミナトくんを誑かす(語弊)シンちゃんにぴきぴきキているご様子。お母さん取られたらヤだもんね、仕方ないね、というお話。かわいい。

◯初号機くん
・初めての戦いで緊張したけど頑張った。最後の方はだいぶテンションあがった。カッコよく武装パージしてくれたのでメカニックたちのテンションもあがった。ダメージも全然無かったのでゲンドウくんもテンションあがった。中にいる例のあの方は今のところ静か。レイちゃんが好き。かわいい。

◯急造品の無骨な槍くん
・竹槍。または鉄パイプ。超鋼フルメタルランスとかいうそれっぽい名前のデカいパイプ。いくら武装準備中でも人型なんだから武器のやりくりなんていくらでもやりようあんだろという作者のロボットアニメ脳から生み出されたオリジナル武器。登場して早々にサキエルくんにへし折られた。でも安物なのでNERVの懐はあんまり傷まなかったし誰も彼の死を悼まなかった。間違いなくエヴァ史上最弱の槍である。生きろ。

◯サキエルくん
・連載開始から一年近くかけてようやく登場したと思ったらあっけなく瞬殺された。でも怪獣特撮っぽく街を破壊できたので作者は満足した。サキエルくんは泣いた。生きろ。

◯ミナトくん
・シンちゃんとゲンドウくんの親子関係とかレイちゃんの死闘とかでもう情緒がしっちゃかめっちゃか状態。手元にいる子どもをとりあえず撫でる癖がある。そういうとこやぞ。
魅惑の愛してるボイスでNERV本部男性職員数名の性癖を破壊した。どんな声なのかは作者にもよくわらからないけど多分エッチな声だと思う。そういうとこやぞ。

◯シンちゃん
・まさかの初戦スルー。原作よりいい環境だけど状況の意味不明さは原作以上というわけわからん状態。この作品では割と短気だったり強気だったりと男らしい側面がフィーチャーされる傾向にある。でもミナトくんにはオギャるし最後はミナトくんに抱きつかれて母性にも目覚めた。お前もママになるんだよ!(迫真)
レイちゃんの戦績が盛られる影響でどうしても戦績は下がる。でもその分ミナトくんにはアホほど溺愛される。お前のママになるんだよ!(二撃必殺)
……わんこくんは猫が好きなんだにゃ〜?(乳メガネの意志)


チカレタ……戦闘シーン書くの……ほんとチカレタ……(瀕死)

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