かみさまのいうとおり   作:YouCan@毘

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幕間1 ~特に意味のない日常~

「邪魔をするぞ」

 

 

昼休みの突然の来訪者は、生徒会副会長のエアグルーヴだった。

赤いアイラインが特徴的なキツめの目元が普段以上に吊り上がってる気がする。

その声は怒りと呆れを足して2で割ったような響きで、その声だけで何となく察せた。

 

 

「あー…ひょっとしてまたフクがなんかやっちゃいましたか?」

 

「…只今現在進行形でやってる最中だ。今すぐついてこい」

 

「昼飯のうどんが伸びるんでこれ食ってからでいいでs分かりました行きます行きますから額に青筋立てないで下さい」

 

 

あぁ…さらば俺の赤いきつね生卵入り…

 

 

実はこうして副会長様が来るのは初めてではなかったりする。

原因は大体フクキタルの奇行だ。

校門前に占い小屋を建てたり、校舎の壁に自称ありがたいお札を張ったり、空き教室におまじないの魔法陣らしきものを描いたりと…

そのつど「監督不行届きだ!」とお叱りの言葉と共に後始末をやらされてる。

副会長様のお怒りはもっともだ。俺だって怒る。誰だって怒る。

 

尚占い小屋に関しては生徒達に好評だったが、それ故にまた面倒な事になった。

小屋の取り壊しを命じられた際に多くの生徒が反対を唱え、折衷案として隔週に一度トレーナー室が占い部屋に使われるようになってしまった。

…その度に部屋の模様替えをさせられてる俺への救いは無いのですか!?

 

閑話休題

 

俺もフクには「他人の迷惑になるような開運行為の禁止」と言い聞かせているんだが…最近また暴走が増えてきているのだ。

 

 

「で、今日は何をやらかしてるんですか?」

 

「あそこだ」

 

 

心地よい秋風が吹く校庭を抜けた先にあるトレーニングコース、副会長が指差した先には、

ダートコース第4コーナーの外ラチの一角でクワを振り下ろしてるフクキタルの姿があった。

ご丁寧に麦わら帽子まで被って。

 

 

「…何やってるんだアイツ?ダートを畑にでもする気か?」

 

「そんなものは私が聞きたい…とにかく行くぞ」

 

 

そういって歩き出すエアグルーヴ。

俺はこの後の事を想像し、苦笑を浮かべつつ付いて行くことにした。

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

「むっふっふー、いい感じに耕せましたねぇ。後はこの幸運を呼ぶ種を植えれば」

 

「植えれば、どうなると言うんだ?」

 

「それはもちろん風水的に吉方位な東側に緑が茂る事で運気上昇大願成就!シラオキ様も大喜びでハッピーカムカム福よこー……い?」

 

「この…たわけ!!他人の迷惑になるような事はするなと何度言えば気が済むんだ!!」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛痛い痛い痛いですホント痛い!!」

 

 

 

──エアグルーヴの両拳がフクのこめかみを容赦なくグリグリしています。しばらくお待ちください。──

 

 

 

えー、しゃがみ込んで植物の種を植えようとしてるフクの背後から話しかけたら、見事に勝手に全部白状しました。

まー大方の予想通りではあったけどね。こういう事するときのフクの原動力は大体運絡みだし。

 

 

「トレーナーさん…私の頭の形おかしくなってません?瓢箪みたいになってませんかぁ?」

 

「安心しろ、いつものフクの顔だ」

 

 

折檻からようやく解放されて、痛む頭を抱えるフクキタル。

さて、次は俺の番か。副会長様が「貴様もちゃんと言い聞かせろ」と無言の圧をかけてきてるからね。

 

 

「あのな、流石にダート一角の緑化はやり過ぎだぞ?いやこれ以外も結構やり過ぎてる事もあるけど」

 

「…はて?そこまでひどい事はしていないかと思っているん…デスケド」

 

「三女神像の噴水での行水未遂」

 

「うぎゅ!?」

 

 

シラオキ様のお告げなんです!!三女神様のご加護をこの身に浴びればー!と水着で噴水にダイブしようとするフクを止めるのはとても骨が折れた。

比喩的な意味だけでなく物理的に骨と腰が折れるかと思った。

 

 

「それに校舎裏の木の洞お清め事件」

 

「あ、あれはですね…!あの場所には様々なウマ娘達の負の感情が溜まってまして、それを浄化しようと思い…」

 

「それは私も聞いた。だからといって周りが白くなるまで塩を撒くんじゃない。草木を全部枯らすつもりか!」

 

 

エアグルーブが眉間を揉みながら口を開く。

正にカルタゴ農法。フクの顔も青菜に塩とばかりにしぼんでる。

尚この撒かれた塩は俺が掃除機一台ダメにして何とか除去しました。

 

 

「それに今回はダート緑化計画?ダートに草を生やすなダートの意味が無くなるだろ」

 

「で、ですが…」

 

「…この辺りに緑があればいいんだろ?それなら鉢植えやプランターを置けばいいんだよ。何か言われてもすぐ移動できるだろ」

 

「おぉー!その発想はありませんでした!トレーナーさん冴えてますねぇ!」

 

「オイたわけ共」

 

 

あ、やべ、聞こえてましたか副会長様。

真面目にやりますので諦め調子でかぶりを振らないで下さいスミマセン。

 

 

「しかしまた何で急に風水?前は風水とか方角とか言ってなかったじゃないか」

 

「それはですね!風水に非常に詳しいコパノリッキー先生から色々教わりまして!」

 

「それで今回の行動か…。そういうのはトレーナー室とか自分の寮の中に収めておけって。俺になら前もって話しておけばいくらでも迷惑かけてもいいんだぞ」

 

「トレーナーさん…」

 

 

そんなやり取りの最中に昼休みの終わりを告げる予鈴が学園に響く。

 

 

「はぁ…まったく。時間もないから手短に言うが、今後は勝手にコースを耕す事はやめる事。いいな?」

 

 

そう言いながら校舎の方に足を向ける生徒会副会長様。

まだ色々と言いたげだったが、未遂であったから五限目の遅刻と引き換えにするほどではないと判断したのだろう。

 

 

「寛大な処置に感謝します!今後はこのような事を起こさないようフクにはしっかりと釘を刺しておきますので!」

 

「ごめんなさいエアグルーヴさん!」

 

「わかったわかった。このままだと授業に遅刻するからな。早く戻るぞ」

 

 

こうして大きなお咎めもなく、今回のダート緑化未遂事件は幕を閉じることになった。

…そう、思ってたんだがなぁ…

 

 

「ところでフクキタル、植えようとしていたのは何の植物の種だ?」

 

「おや?エアグルーヴさんも気になります?花言葉は美徳と効能、誰でも簡単に育てられてお手入れも不要の…」

 

「おいまさか」

 

「ミントです!」

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

その後俺達はエアグルーヴから追加の説教をまるっと1時間近く受ける事になってしまった。

なんでもミントは繁殖力が高く駆除も大変なのだとか…。

園芸が趣味の副会長様にとっての逆鱗だったんだろう。

「あんなに怒ったエアグルーヴさんを見るのははじめてです」とフクが涙目で震えてた。

ぶっちゃけ傍に居た俺も滅茶苦茶怖かった。

 

 

エアグルーヴを本気で怒らせてはいけない。もう一度言う。エアグルーヴを、本気で怒らせては、いけない。

 

 

 

『束縛のヒントがLv1になった!』

 




ようやく繁忙期が終わって執筆に時間が割けるようになりました。
お待たせして申し訳ありません。
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