ちゃんと雰囲気を再現出来てればいいのですが…
よろしくお願いしますね。
追記
評価、お気に入り登録ありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです!
誤字報告もありがとうございます!非常に助かります!
マチカネフクキタルの担当トレーナーになって2週間程がたった。
フクキタルへのトレーニングだが、本人が
「あのー、今日の運勢はイマイチなので、トレーニングはお休みにしませんか?」
なんてゴネる事もあるが比較的順調だ。
「今日の俺の運勢はバッチリだから大丈夫だ!」とか言えば(渋々ながらも)ちゃんとトレーニングしてくれる。
正しいフォーム、正しいカーブの曲がり方、ペース配分にスパートのタイミング…
トレーニングすることは山のようにあるが、焦りは禁物。
やり過ぎてケガだけはさせないように気を付けつつ、この調子でメイクデビューまでにしっかり仕上げていこうと思う。
自分の仕事環境にも変化があった。
担当を持った事で、小さいながらもトレーナー室が借りられるようになり、
トレーニングメニューの作成や成果内容の報告書作成、レースの研究等のデスクワークはここで出来るようになったのだ。
仮眠出来そうな長ソファーもあるし、忙しい時期はここで寝泊まりするのもアリかな。
そんなある日、その日のトレーニング内容を考えつつ新聞を読んでる最中に電話が鳴る。
連絡先は…理事長室…!?
「質問ッ!貴公がなぜここに呼ばれたか、心当たりはあるか!?」
「…いえ、これと言って特には…」
「トレーナーさん、本当に何も思い当たりませんか?」
「本当に何もありませんよ!あの…俺、何かやっちゃいましたか…?」
電話の内容は理事長室への呼び出しだった。
詳しい事は会ってから話すと言われて。慌てて駆け付けた後はこんな感じである。
目の前にいるのは理事長の秋川やよい嬢。幼そうな見た目に対して仰々しい話し方をする、年齢不詳の自分の上司の上司のそのまた上司だ。
見た目によらずその手腕は確かなもので、このトレセン学園の運営も彼女があってこそのものだと言われる。
その隣には理事長秘書である駿川たづな女史が笑顔で立っている。だがその笑顔がなんか怖い。
容姿端麗頭脳明晰、才女という言葉がピッタリくる敏腕秘書。
またフィジカル面も強く、多くの問題児も彼女相手には白旗を振ると聞いている。
そんな二人に今まさに身に覚えのない事で問い詰められている。
しかもその聞き方が女が男に「私が何で怒ってるか判らないの?」と聞いてくるアレだ。
正直生きてる心地がしない…胃が痛い…口から虹出ちゃう…。
「…本当に何も知らないみたいですね」
「あの…何があったんですか?説明して頂きたいんですが」
正直なところ、当の本人に説明無しで「何か身に覚えが無いか」なんて聞かないでほしい。
呼び出されたからには俺にも詳細を知る権利はある!ハズだ、多分。
二人は少し顔を見合わせ、たづなさんが言いにくそうに答えてくれた。
「えぇとですね、実はあなたに妙なウワサが立ってまして…」
「妙なウワサですか」
「その、あなたの担当しているウマ娘、マチカネフクキタルさんですよね。その子と…関係を持っているとか…」
「関係」
「はい…。恋愛は自由だとは思いますが、学生とトレーナーとが関係を持ち、それが公になるのは色々問題がありまして…」
「驚天ッ!最近の子は進んでいると聞くが、時期尚早ではないか?」
「……いやいやいやいや!?ないですよ!ありませんよ!ありえませんよ!」
話の内容を理解するのに数秒かかった。
出会って1ヶ月もたってないのに俺とフクキタルがいきなり恋人同士?いやいやないわー。
自慢じゃないが俺のルックスは平々凡々。人を魅了する美声の持ち主でも無い。
どこかの英雄とかが持ってる、溢れ出るカリスマだのフェロモンだのに最も縁遠いパンピーである。
そんな簡単に恋愛関係に発展する訳がない。
そもそも俺はナンパの為にトレーナーになった訳ではない。断言するぞマジで。
「疑惑ッ!火のない所に煙は立たぬ!何かしらの要因があったと考えるべきである!」
「そうですね…。トレーナーさん、必要以上に担当ウマ娘とコミュニケーションやスキンシップなどとってたりしませんか?」
「うーん…いや、何も思い当たらないです」
本当に思い当たるフシが無い。
ラッキースケベだの急な雨の相合傘イベントだの風邪を引いてのお見舞いイベントだのそんなモノは一切なかった。
トレーニング後に疲れて座り込んでるフクキタルに手を貸したり、タオルやドリンクを渡したりする程度のいたって健全な毎日だったハズだ。
…少なくとも俺的には。
コレがアウトなら全男性トレーナー全員アウトじゃない?
「本当ですか?頭をなでたり、ハグしたり、お弁当を作ってあげたり、自室の掃除をさせたりとか、そういう事はありませんね?」
なんだその具体的な例え。
特に最後。
実際にそんな前例でもあったのか。
などと言いたくて仕方なかったが、ぐっと言葉を飲み込んだ。これ以上この場をややこしくするのは得策ではない。
「とにかく、ウワサ話が大きくなるとフクキタルさんも傷つくことになると思います。気を付けて下さいね」
「は、はい…」
結局身に覚えのない事で注意勧告を受けてしまった。
…まぁ、二人が生徒たちを大事に思っているのは間違いない。
新人トレーナーが在学中の担当ウマ娘に手を出した、なんて事になったら一大事だ。
俺への厳しい言及も、噂話が元とはいえ釘を刺しておこうという対処なのだろう。
…いや、それでも俺が何かしたって決めつけてなかった?ちょっと凹むなぁ。
・ ・ ・ ・ ・ ・
「おやおや?トレーナーさんじゃないですか。どうしたんですか目の前を黒猫とカラスがいっぺんに横切ったような顔をして」
肩を落としながらトレーナー室に戻る途中、フクキタルに声を掛けられた。いやそれどんな表情?
「あー、フクキタルか。まぁなんだ、確かに不幸な出来事はあったな…」
「それはそれは災難でしたね。それでは今度黒猫とカラス除けのお守りを差し上げますね」
「そんなピンポイントなお守りあるのか。そもそも本当に黒猫とカラスが同時に横切った訳じゃないぞ?」
「HEY!フクキタル!」
二人で漫才みたいなやり取りをしている最中、別の方から声を掛けられた。
声のする方に顔を向けると、二人のウマ娘がこちらに向かってきているのが見えた。
一人は濃いオレンジ色の長いストレートヘアーが綺麗な、体のラインもストレートなウマ娘。
もう一人はウェーブがかった金髪を後ろで纏めている、体のラインの強弱がはっきりしているウマ娘。
なんというか…色々と対照的だな、うん、色々と。
「あ、タイキさんとスズカさん!」
「こんにちはフクキタル。…そちら方は、フクキタルのトレーナーさんかしら?」
「Wao!ひょっとして例の彼デスネ?」
「紹介しますねトレーナーさん。こちら友達のサイレンススズカさんとタイキシャトルさんです」
「はじめまして。サイレンススズカです」
「Hello!タイキシャトルデース!」
線が細い方がサイレンススズカ、線にメリハリがあるのがタイキシャトルか。
二人とも相当な実力者だと聞いたことはあるが、フクキタルの友達だったとは思わなかったな。
機会があったら今度並走トレーニングとかお願い出来ないかなぁ。
「そしてこちらが私のトレーナーさんです。以前も言いました私の運命の人です!」
「二人ともはじめまして、フクキタルのトレーnっておいぃ!?」
トレーニングの方に意識を割いてたらとんでもない紹介をされて思わず声が上擦ってしまう。
まさか、まさかとは思うが…
「お、お前…もしかして友達とかに俺の事を話す時、運命の人だとかで紹介してたのか!?」
「え?そうですけど?」
「お前が火元か!!」
思わずフクキタルの脳天にチョップを叩き込んでしまった。
「んぎゅ!?何をするんですかトレーナーさぁん!」
フクキタルの抗議の声をスルーし、両肩を掴んで真顔で向き合う。
俺の真剣な雰囲気に、フクキタルは文句をひっこめた。
「いいかフクキタル、さっき言ってた俺に起きた不幸の内容を端的に説明するから、よーく聞くんだ」
「は、はい」
「さっき理事長室に呼び出しを食らって、俺とフクキタルが恋人同士だというウワサが流れているから気を付けろと注意された」
「へ?私と、トレーナーさんが…?」
「そしてお前は、俺を運命の人だと吹聴していた。これがどういう事か分かるよな?」
「…えーと、つまり、私が、トレーナーさんを、運命の人と説明してたのが…間違って伝わっているってコトですか…?」
「間違っても何も…普通はそう思うだろ」
「ンー、ワタシもトレーナーサンはフクキタルのフィアンセだと思ってマシタ」
「…ほれみろ」
タイキシャトルの同意で確定した。
フクキタルは『神様のお告げ的な意味での』運命の人と言っていたつもりなのだろうが、
聞き手は『一目惚れ等、ドラマチックな出会い的な意味での』運命の人だと捕えたのだろう。
そして多感な年齢の少女たちにとって、この手の話題は大好物だ。
今ではあることないこと脚色されている可能性も十分考えられる。
…うわー、どんな内容になってるか想像したくねぇー。
「あわわわわわ…あわわ…はわわわわわわわ…」
フクキタルの顔がみるみる内に赤くなっていく。自分がとんでもない事を言っていたのを自覚したのだろう。
いつも眩しいぐらいキラキラと光ってる目も、今はグルグル渦を巻いている…ように見える。
「そそそそそんなつもりじゃなかったんですよ!?運命の人というのはそういう意味での運命の人ではなくてですね!
もっとこうスピリチュアルでお告げ的な繋がりと言いますか何と言いますか…ス、スズカさん!スズカさんはちゃんとした意味で理解してましたよね!?」
「え!?…えーと…」
しどろもどろなフクキタルの問に、サイレンススズカは曖昧な笑顔のまま沈黙で否定した。
「…ほぎゃーーーー!?私はなんてことをーーー!!トレーナーさんに会わせる顔がありませぇーーーーん!!」
羞恥の限界を超えたのか、フクキタルは奇声を上げながらすごい勢いで走り去り、あっという間に姿が見えなくなった。
「まぁ、すごい逃げ足…」
「フクキタル、RadicalGoodSpeedデース!」
「えー…どうすりゃいいんだコレ」
・ ・ ・ ・ ・ ・
その後、寮の自室に引きこもったフクキタルを引っ張り出すのにも苦労したのだが、それはまた別の話。
件のウワサについては…人のウワサも七十五日、時が解決してくれるハズだ。多分。
その時、ふと閃いた!このアイディアは、マチカネフクキタルとのトレーニングに活かせるかもしれない!
「ふぎゃー!?こんなのを活かないで下さいー!!」
『全身全霊のヒントLvが1上がった!』