かみさまのいうとおり   作:YouCan@毘

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あつい なつのひととき

季節は7月後半。夏休み、青春真っ盛り。

 

ある者は部活動に汗を流し、

ある者は図書館等で己の学力を磨き、

ある者は海だの山だのプールだの夏祭りだので遊び倒し、

ある者はエアコンの効いた自室に引きこもりゲームやネット、アニメや漫画にのめり込む。

どんな形であれ、夏休みは様々な事が出来る絶好の時期だ。

 

当然それはトレセン学園のウマ娘達にも当てはまる。

クラシック級、シニア級の有力メンバーは合宿に向かい、その場でしか出来ない高度なトレーニングで己を磨いている。

ジュニア級はトレセン学園で鍛錬を続け、経験を積むためにレースに出場したりとこれもまた忙しい。

特に未勝利組はこの時期にレースで勝たないと後々面倒な事になるのでみんな必死だ。

 

もちろん我が担当ウマ娘のマチカネフクキタルも例外ではなく、本来なら夏休みを生かしてトレーニングに精を出してもらいたい。

もらいたいのだが…

 

 

「トレーナーさん、今日もいい天気ですねぇ」

 

「そだな」

 

「今日の最高気温は、ななななんと!37度を超えるそうですよ!」

 

「暑いな」

 

「こう暑いともー色々とやる気も出てこなくなりません?」

 

「口を動かす前に手と頭を動かせー」

 

「せっかくの日常的トークをバッサリ!?なんてひどい!!」

 

「ひどいのはフクの成績だぞー」

 

 

只今朝の9時20分、場所は自分のトレーナールーム。

部屋には俺とフクキタルの二人だけ。

これだけなら別段なんともない状況なのだが、問題は机の上の教科書や参考書一式。

そして一番の問題は、部屋のホワイトボードに貼られた3枚の期末試験解答用紙である。

 

 

「あのー、トレーナーさん…あの解答用紙、しまっちゃダメですか?」

 

「ダメ」

 

「ひどい!!公開処刑ですよこんなの!!」

 

「そんな公開処刑な点数とったお前が悪い」

 

 

各解答用紙の内容がこちら、ドン!

 

現国:32点 数学:24点 英語:39点

 

見事な赤点三兄弟。

ココには貼ってないが、他も教科も赤点ギリギリ回避な点数ばかりである。

 

トレセン学園は文武両道をモットーとしており、ただレースで好成績を出せばいい訳ではない。

レースを理由に学業を疎かにしてはいけないのだ。

 

期末試験後、また理事長室に呼び出しを食らって「指導!!トレーナー監督不行届きである!」とお説教食らいました。

 

説教だけならよかったのだが、赤点にはそれ以上の問題がある。

何せ来週の追試でフクキタルが結果を出さなければ、夏休みの間は日中ずっと補習となり、トレーニングは補習後の短い時間しか出来なくなる。

当然レースへの出場などもっての外、トレセン学園は甘くないのだ。

トレーニングに集中できない、レースにも出られない。つまり他の同期に差を付けられてしまう。

そんな状況で重賞、さらにはG1レースで勝てるかと言えば否である。トゥインクルシリーズも甘くないのだ。

故に何としてもココでの補習は回避しなくてはならない、という状況である。

 

といったワケで、こうして朝からトレーナー室でフクキタル勉強を見ているのだ。

 

 

「ぐにゅにゅにゅにゅ…」

 

 

まぁ、当の本人は参考書の問題が難しいのか、それともやる気が出ないのか、眉毛を八の字にして謎の声を口から発しているのだが。

 

 

「ともかく、英語は記憶力勝負だ。英単語を覚えて、文章を読んで、それっぽい答えが大体正解だからな?」

 

「私は日本生まれの日本育ち、今後も海外に出るつもりもないので英語なんてできなくていいのに…」

 

「海外のレースに出る事になったらどうするんだよ。英語で『調子に乗るな!』って相手を挑発することも出来ないぞ」

 

「そんな事する必要あるんですか!?そんな事したウマ娘がいたんですか!?」

 

「物の例えだ物の例え!レース前に誰彼構わず喧嘩売るヤツがいるか!」

 

 

…いかん、また脱線してる。この調子だと本気で補習ルート待ったなしだ。

おいコラ鉛筆を転がすな出た数字で解答を決めるなテストまで運任せはやめろやめろ。

 

 

「そうですトレーナーさん!補習回避したら何かご褒美をくれませんか?そうすれば私のやる気も昇り竜、学力向上待ったなしです!」

 

「ほほう、そう来たか。だが追試の時点で本来ならご褒美なんてもらえる立場じゃないんだぞ?」

 

「ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!まさに正論!!ですがこのままでは私のモチベーションが上がりません!私の補習回避の為、ひいては今後のトゥインクルシリーズ出走スケジュールの為!神様仏様シラオキ様トレーナ様、なにとぞ!なにとぞぉー!!」

 

 

手を合わせて必死に懇願してくるフクキタル。耳も尻尾もへにゃんとへたり込んでしまってる。

…ここで断るのもさすがに気の毒な気だよな。うん、飴と鞭だ、飴と鞭。そういう事にしよう、うん。

 

 

「…補習回避出来たらな」

 

「ホントですか!?さっすがトレーナーさん、話がわかるっ!」

 

 

さっきまでの悲痛な声は何処へやら。コロッと笑顔になって耳も尻尾も元気満々でぴこぴこ動いている。

我ながら甘いかなぁと思いつつも、この笑顔につい絆されてしまっている自分がいる。

 

 

「それで何が欲しいんだ?太宰府天満宮の学力成就のお守りとか言われたらちょっと困るぞ?福岡までは流石に遠い」

 

「んー…それは追試前の今現在一番欲しいモノですねぇ。補習回避のご褒美としてはちょっとハズレてるかと」

 

「…そりゃそうか」

 

 

ただこの調子だと年末の試験でもフクは追試になりかねないからな。そっち方面に行くことがあったら確保しておこう。

 

 

「…んんんー…ご褒美…欲しいモノ……あっ!」

 

 

しばらく人差し指でこめかみをグリグリしながら考えてたフクキタルだが、まるで頭の上でピコーンと豆電球が点灯したかの如く何か閃いたようだ。

 

 

「そうですトレーナーさん!ご褒美内容決まりました!トレーナーさんの休日を私に1日下さい!」

 

 

…なんて?

 

 

「…なんて?」

 

 

想定外の要望に思わず聞き直してしまう。

そういえば海外の会社では自分の有給を同社の他人の為に使えるという制度があったハズだが…

俺の休みを譲渡?なら俺が学園で授業を受けて、フクキタルは休み?…違うよな?さすがに?

 

 

「あれ?説明不足でしたか?つまりトレーナーさんのお休みの日に私に付き合ってもらいたいと、そういう事なのですが…」

 

「え、あ、おう…そんなんでいいなら、わかった…」

 

「いいんですね?よろしいのですね!?言質頂きました!では細かい事は追試をパスしてからという事で!ムッフー!!俄然やる気が湧いてきましたよー!」

 

 

え?ご褒美ってこんな事でいいの?休日に付き合えって…?若い男女が休みの日に仕事云々関係なくお出かけ…ひょっとしてコレは…デートなのでは?マジか?彼女いない歴=年齢な俺、デートとか初体験なんだが!?え?でもいいのか?相手はフクキタルだぞ?数か月前に理事長やたづな女史に思いっきり釘を差されたばかりなのに一緒にお出かけとかして大丈夫なのか!?いや待て慌てるな、どうせフクキタルの事だから有名なパワースポットだの縁起の良い場所だのに連れまわされるだけかもしれん。…それも普通にデートだよな?ええええええ俺でいいのか?俺なんかでいいのかぁ!?いやよくないだろ。外で一緒にいるところを目撃されてまた変な噂が広まったらそれこそトレーナー業クビとか言われかねない。あーでも靴だのスポーツウェアだの蹄鉄だの一緒に見て厳選するってのなら仕事だと思われるだろうし別段変なことも無いよな?…出かける先が映画とかお洒落な喫茶店とかだったらマズくないか?いや待て慌てるな、どうせフクキタルの事だから有名なパワースポットだの(以下ループ)

 

 

大混乱に陥ってる俺を気にも留めず、フクキタルは今までで一番集中した状態で勉強を進め、後日の追試を突破(なんと三教科とも80点台!!)。

外出の約束も「次の日曜日朝9時に校門前で宜しくお願いします!」とあれよあれよと決まってしまった。

なんてこった、もう逃げられないぞ。

 

 

 

 

その時、ふと閃いた!これは俺の新しい服を買う機会になるかもしれない!

 

 

『逃げ牽制のヒントがLv1になった!』







拙者、パロネタを入れないと死んでしまう病。今回は多すぎた気がしないでもない。
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