機動戦士ガンダム Marionette   作:オリシロ

5 / 7
デモンストレーション

『クソ、何なんだよ。ジオン?昨日今日と暇な連中だな!』

 

 ホバートラックから伝えられた命令、海岸における所属不明機の偵察を命じられた中、オックスの嘆きがユアンのコクピットに響く。

 

「ぼやくなオックス。戦闘になるかはわからん。シムーン隊、模擬戦用のマガジンを換装して俺に続け。」

 

 ユアン駆るハイザックが海岸に向け走るとルイズとホブ、少し遅れてオックスのジムが追従する。

 偵察命令、昨晩現れたジオンの残党ならば即刻撃破しても構わないが、今海岸に現れた部隊が万が一作戦行動中のエゥーゴ或いはカラバのMSであればそれは問題だ。

 例え相手が18mの機動兵器で武装したテロリストといえど誰何しなければいけない立場の弱さが今の連邦軍にはある。

 

「こちらは地球連邦第64特別編成特務小隊。貴隊等は連邦軍演習施設へ侵入している、所属と作戦内容を明らかにされたし。」

 

 応答は無かった。

 

 ユアンは機体を小高い丘の上へジャンプさせて目標を視認した。

 ジオン公国が運用していた水中用MS、ズゴックタイプ2機ゴックタイプ1機はユアン駆るハイザックを視認するやいなや撃ち落とさんと両腕部のメガ粒子砲を連射する。

 

「グッ!」

 

 ハイザックは空中で回避運動を取りつつ、丘の影に着地した。

 

『ユアン隊長!』

 

「行儀の悪い連中だ、ホブは俺と敵を惹きつける。ルイズ機はオックスを連れて迂回して側面からだ。」

 

 敵のMSは旧式だが戦中に運用されていたMSではなくAEのグラナダ工場から残党に向けて秘密裏に製造、供給されているもので状態はかなり良い事に加えてシムーン隊は演習中であり、実戦用のマガジンを携行していたものの弾数は少なく、ビーム兵器までは携行していなかった為に性能的なアドバンテージはほぼ無い。

 

 残党の動きは素早い。

 

 二手に分かれる動きを察知した残党はルイズ、オックス機にズゴックタイプの一機を差し向け、ゴックタイプと残るズゴックタイプはユアン機に急激に接近すると機体の装甲とパワーにものを言わせてハイザックの装甲を引きちぎりにかかる。

 

 しかし、その腕はハイザックのシールドに防がれ、押し倒されまいとハイザックもスラスターを噴射させる。

 ズゴックがその間隙に自らの腕をハイザックに突き刺そうとするも傍らの機体を見逃していた事を後悔する事になった。

 横合いから回り込んだジムストライカーが背後から炎を噴き出しながら間合いを詰め、その手に持った大鎌の刃を現出させる。

 

「遅いッ!」

 

 爆発的な推力で間を詰められ、たじろいだズゴックタイプの腕部が宙に飛び、次いで薙払われた脚部を置き去りにズゴックタイプの胴体は地に崩れ落ちた。

 すかさずジムストライカーの脚がその胴体を踏み潰し、コクピット諸共ひしゃげたズゴックの胴体は完全に機能を停止した。

 

 その光景に気を取られるもハイゴックは腹部のバルカン砲を出鱈目に乱射し、その弾丸はシールドを焦がしながらハイザックのコクピットに迫る。

 

 しかしユアンの表情はどこか余裕がありまるで癇癪を起こす子供を見る大人の様な表情で眼前のゴックを嘲る。

 

 ハイザックは不意に姿勢を屈めるとゴックタイプは行場を無くした力をそのままに大きくのめりだしハイザックに抱えられる形となった。

 

 モノアイを右往左往するゴックタイプは為す術もなく岸壁に凄まじい勢いで叩きつけられ、腕を力なく持ち上げたのを最後に活動を停止した。

 

「片付いたな、ルイズ達はどうだ」

 

 ユアンがそう言うが早いかほぼ同時に両腕を喪ったズゴックタイプが命からがらといった体で遠くの海岸に着地した。

 

『クソッ!チョコマカ動くな、核融合炉に当たるだろうが!』

 

 オックスの声と同時に更に遠方から放たれたビームの線が海岸の砂浜を焦土に変え、掠めたビームの粒子がズゴックの装甲を真っ赤に焼く。

 

「残党機に次ぐ。離脱は不可能だ、即刻機体を降りて投降しろ、死んでしまうぞ!」

 

 ルイズのジムカスタムから発されたその言葉に一瞬躊躇ったのかズゴックが動きを止めたのをルイズは見逃さなかった。

 

 すかさずルイズ機は即座に装備されたライフルの正確な射撃でモノアイを撃ち抜きながらズゴックに詰め寄る。

 

 最早、狂乱状態に陥ったズゴックのパイロットは力なく機体をのけぞらせるもその刹那にジムカスタムはズゴックのコクピットにサーベルの筒を叩きつけ、次の瞬間に残党のパイロットを跡形もなく蒸発させた。

 

『うわぁ…』

 

 オックス機から発された言葉はルイズの心に冷えた水を浴びせられた様な感覚を覚えさせたが即座に振り払い思考を切り替えた。

 

『ユアン隊長、こちらは片付きました。』

 

『確認した、アリョーナ伍長』

 

「周囲に敵影を感知出来ません。」

 

「部隊に帰還指示を出せ。」

 

 振り返るアリョーナに対してそう告げ上官である不敵な微笑みをこぼすシリュウを横目にアリョーナはその青灰色の瞳に疑念と軽蔑を滲ませていた。

 

 それに気付かずシリュウは自らが預かる部隊がティターンズに対抗し得る人材達であることを確信した。

 いや、そうでなければ《ティターンズ狩り》など酔狂でしかないだろう。

 たとえ困難だとしてもアイゼンワー少将の立場を守る事こそ自らの首を守る事に繋がるのだ。

 

 そう。生き残ればいい、一年戦争の時の様に。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。