機動戦士ガンダム Marionette   作:オリシロ

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ガンダルワ 

『星1号作戦、開始です!』

 

 オペレーターの上擦った声がサラミスのブリッジに響きわたり緊張感とアラートが一気に空気を伝染して走る。

 

『ミサイル一番から四番、目標はDポイント!』

 

 他の艦にサラミス級『トリスル』艦首から放たれたミサイルとほぼ同時に僚艦から放たれた膨大な弾頭がア・バオア・クー目掛けて突っ込む。

 

 数秒遅れて光が膨れ上がり大半はSフィールドの防備が厚く地表を叩く事は叶わなかったが敵を幾らか浮足立たせる事は出来た筈だ。

 

 艦の後方からパブリク突撃艇の隊列がア・バオア・クーに向けて突進する。

 

 ソロモンの二番煎じ、ギレン・ザビ相手に通るはずも無い。

 

 しかし、今や連邦は敵の強力な戦略兵器によって戦力の40%とレビル将軍を喪った首無しの臨時編成、即断即決を望まれる戦場で僅かな望みに縋って活用せざるを得ない。あの突撃艇の内に幾らも還っては来れないだろう…

 

 事実、即座に展開されたア・バオア・クーの戦力が機能し始め目標地点に到達する前にパブリク級の大半が敵の砲火に晒され、散っていった。

 その光景に目を背ける事は出来ない、出来る事は彼等の犠牲を無駄にしない為に次の行動に移る事だ。必ず勝利して見せる。

 

『MS隊の出撃急げ、展開後の十秒後に援護射撃を艦隊に通達。一息に押し通るぞ!』

 

『艦長、アイリーン少尉から……』

 

『機体トラブルか?』

 

『いえ……『愛している!』…と…返答はいかがなさいますかね?』

 

 その言葉に一瞬、顔の表情が引きつった。

 ブリッジクルー達の背後しか見えていないがいずれのニヤケ顔が目に浮かぶ。

 

『さっさと、アイリーン機を、発進させろッッ!!』

 

 アイリーンの悪戯っぽい笑みが目に浮かぶ、戦場だと言うのに緊張感がまるでないがこれが俺に欠けているものなんだ、と常々アイゼンワー教官から言われていたのがふと脳裏によぎる。

 

 そんな言葉に返答する必要はない、作戦が終わって運良く生き残る事があれば俺からも伝える事がある。それまではお互いどう勝つかを考えていればいい…勝つ事……だけ…を……

 

 

 

 

 シリュウの意識に重力が押し掛かり、引き戻されたシリュウは額から流れ落ちる冷や汗を拭う。

 自室の椅子から立ち上がってデスクから取り出した錠剤を口に放り込み、ある筈も無い左腕の痛みに顔をしかめるシリュウの横顔を窓から射す登りゆく陽が照らした。

 

 

 

 

 

 

 ガンダルワは地上4000mにあり今現在は南アメリカ大陸へと向かう航路にある。

 

 ガウ改級は一年戦争後にジオンの技術を転用して開発された巨大な航空空母であり、そのジオンの技術の色濃さ故にティターンズから敬遠されたからこそ、連邦の特殊作戦にこうして組み込まれ、シムーン隊の母艦として起用されている。

 

 我々の目的、ティターンズ部隊の追撃と地上のエゥーゴ組織カラバの掩護が任務であり、連邦議会で私腹を肥やしてきた官僚たちの急務であった。

 

 ガンダルワ艦内の一室、ブリーフィングルームにてシリュウから作戦行動を説明されるのは先の戦闘のパイロット達だけではなかった。

 

 ガンダルワの格納庫には4機のMSの他先行偵察とガンダルワの防空を務める偵察用MS3機のパイロット達とベースジャバーのパイロット達もまた席につく。

 

 この作戦の第一フェーズとして、エゥーゴに対して連邦軍の動きを示す事にあり、手始めとして投降の最後通告を無視したティターンズ所属基地の強襲である。

 

 基地の規模としては小規模であるが地上の立地からしてキャリフォルニアベースの中継として機能していた基地で少なくとも2個小隊が配備され警備のMSも旧式が配備されている事が先行して偵察を終えた部隊から知らされている。

 

「出撃は1600、以上。」

 

 全員起立した後、退出するシリュウを敬礼にて見送る。

 

 ドアが閉まった後、始まるのは他愛のない軽口と相場が決まっている。

 

「なぁホブ、お前はあのシリュウって指令どう思う?」

 

 口火を開いたオックスはホブに喰ってかかるとホブもまた、薄く笑いかける。

 

「切れ者だって噂はきいてるけどな…」

 

 オックスとホブは歳も近く、今の連邦に階級による下士官同士の敬意は余り意味を為さない。

 

「ホブ?あんたがホブ・ロイジャーか?《人喰い鰐》の?」

 

 オックスの言葉を聞きつけたベースジャバーのパイロット達がホブの元へ集まってくる様子をユアンとリオンも少し離れた場所で様子を見ていた。

 

「聞いた事あるぜ、獲物に喰らいついて絶対に逃さない、一度捕まえた敵をなぶり殺して遊ぶ《死神》だってな。」

 

 パイロットの言葉にオックスもまたホブの顔を見やるがホブは微笑を崩さず立ち上がり、ベースジャバーのパイロットと正面から向き合い、その瞳孔を真っ直ぐ刺す様に見据える。

 

「そうだ。俺がホブ・ロイジャー、だけど《人喰い鰐》でも…まして《死神》でもない。」

 

 異様な気に圧されたオックスは身震いしベースジャバーのパイロットは気圧されて後ずさる不意に差し出されたホブの右手の意味がわからずにいた。

 

「戦場であんた等に助けられる事もあるだろうからな、よろしく頼む。」

 

 苦笑するホブとベースジャバーのパイロットはやっと握手を交わし、冷え切った場に僅かに熱が灯る。

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