機動戦士ガンダム Marionette   作:オリシロ

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風火

 しかし、その一方でブリーフィング脇の通路で隊長であるユアンとルイズの間には緊迫感が走っていた。

 

「とぼけるなよ、ルイズ少尉。俺が見逃すとでも思ったのか。」

 

「ユアン隊長、自分は…」

 

「先の戦闘、見事だった…敵を揺さぶり、センサーを潰して速やかに接近し、核融合炉の損傷と誘爆を避けて確実にパイロットを排除する。重力下における奴等の戦術教本通りだ。」

 

 ルイズは黙して立ち去ろうとするルイズの背中に言葉を浴びせる。

 

「ルイズ・ストレンド、お前の様な奴がなぜここにいる?何が目的だ?」

 

 ユアンの目にこもる僅かな敵意がルイズに向けられ、ルイズはたまらず目を逸らす。

 

「どうした、中尉。」

 

 そう呼び掛ける男にユアンとルイズは一瞬硬直したが即座に姿勢を正し、敬礼を返す。

 

「シリュウ少佐。お答え頂きたい事が御座います。」

 

 そう発するユアンの言葉を被せる様にシリュウの口から言葉が返される。

 

「彼は《ティターンズ》の所属だった。」

 

 やはり。ユアンの眉が深く沈む。

 

「それが何か問題かな?」

 

「……敵に寝返る可能性がある者を…部下には置けません。」

 

「寝返る可能性があるもの……か…」

 

 シリュウは自嘲気味の笑みを漏らし肩をすくめる。

 

「ア・バオア・クーの大戦の後、多くの戦死者が出た、〘M・I・A〙も。そういった者がある日、突然発見され、原隊に復帰する…戦後の混乱の中で肌の色や顔が違っても気付きようがないまま…そんな素性の怪しい者の寄り合い所帯が今の連邦だ…知らん訳ではないだろう?このガンダルワの中にもそんな人間がどれ程居ると思う?」

 

 そういった連中も今や大半がエゥーゴやカラバに流れていっただろうが事実、初期のティターンズは地球出身でなければ入隊する事は出来なかった。

 ティターンズが内部の検閲活動も熱心に取り組んでいた時期もあったがそれもまた、ティターンズの戦力の増大に置ける戦力拡充で少々有耶無耶になってしまったが。

 

「君のティターンズを憎む気持ちはわからんでもないが我々の持ち得る手札は少なく、事実ルイズ少尉は戦力になる。」

 

「……はっ。」

 

「上手く使え、ユアン中尉。」

 

 そう言って踵を返すシリュウを見送るユアンとルイズの思いは曇りを拭えずに作戦時間は刻一刻と近づいていった。 

 

 

 

 

 格納庫ブロックの喧騒はマシンの機動音、スタッフ達の怒声で溢れ返らんばかりであった。

 

『ユアン機、ルイズ機、ホブ機はベースジャバーにライディング、現在オックス機の発進準備を急がせています。』

 

「ブリッジ了解、指示あるまで待機願います。」

 

 アリョーナ他オペレーター達の伝達事項を流し聞きしながら雲の裂け目から覗く目標の基地を睨むシリュウ。

 

「艦長、アンタは相手方の動きをどう見る?」

 

 その横に座るモズル・ハインゲル大尉は実戦を直前にして水筒のグリーンティーを口に含み、まるで緊張感からかけ離れた表情で艦長席に座る。

 

「まぁ、なんというか……遅すぎますなぁ。」

 

 やっと水筒から手を離し、肘掛けに手を掛け背もたれに大きく沈む初老の男はやつれた瞳をシリュウに向けた。

 

「既にこちらを捕捉しているにも関わらず、先遣隊の威力偵察を許し、目前に迫る我々に対してもMSを基地の手前に置いたまま…虚仮威しと見ているのでしょうな…」

 

 シリュウは満足そうに頷いた、落ちぶれたとはいえアイゼンワー少将の軍人を見抜く目はまだ活きている。

 

 連邦軍に対する漫然など大変結構、喜ばしい事だ。

 

 

 

「ハインズ隊は第2防衛ラインへ至急、出動せよ。」

 

 けたたましいサイレンと共に基地の歩兵と共にティターンズの象徴である濃紺の塗装を施された『ジムクゥエル』で構成された部隊が基地設備を飛び出す。

 

 その基地の司令部にて基地司令は自らのデスクを叩きつけ、ティターンズの制服に腕を通す。

 

「おのれ連邦政府め、散々ぱら我々を残党狩りに駆り出し、大局を見るやいなやスペースノイドに靡いて航空空母をよこしてくるとはな。しかし所詮は連邦軍内の無能共だ。」

 

「奴等はカカシだ!それよりも周囲の敵影に気を配れ、恐らく本命のエゥーゴ部隊が居るはずだ。メガ粒子砲台の発射準備を…」

 

 基地指令がそう発した途端、眼前の点にも満たない連邦の航空空母から放たれたミサイルが凄まじい轟音と共にメガ粒子砲台地点に突き刺ささり炎が膨れ上がった。

 

 振動に尻餅をついた司令は唖然とした表情でつぶやく。

 

「馬鹿な…奴等……正気なのか?」

 

 

 

「ミサイル、目標に命中ッ!」

 

 高揚して振り返るアリョーナのビロードの様な髪が揺れる。

 

「よし。目標を第2に切り替えるぞ。発進したシムーン隊に再度砲撃の勧告を。」

 

 

 

 ユアン率いるシムーン隊は低空を飛行し上空から追い越していくミサイルの群れを視認すると浮ついた基地施設へ一気に接近する一番槍のユアン駆る〘ハイザック〙はベースジャバー上から防衛設備に急襲をかけ、すれ違いざまにハンドグレネードを放り投げると的確に目標を破壊していった。

 

『クソッ、調子に乗るなエゥーゴの犬がッッ!』

 

 態勢を立て直した〘ジムクゥエル〙のMS隊は頭に血が登って既に離脱態勢に入っている〘ハイザック〙を撃ち落とさんと躍起になる。

 

 しかし、その間隙を突いたルイズ駆る〘ジムカスタム〙に装備されたライフルの弾丸が〘ジムクゥエル〙の装甲を貫いた。

 

『波状攻撃だッ!』

 

 ルイズはユアン同様に敵施設を攻撃するが今度は離脱せずベースジャバーから飛び上がり、ティターンズ軍旗の一つに狙いを定め撃ち抜く。

 

 その様に激昂したパイロット達は〘ジムカスタム〙に狙いを定め正確な射撃で射線を集中させる。

 

 自由落下する〘ジムカスタム〙は弾雨をシールドで弾きながら着地し、敵の施設に身を隠す。

 

 そして別方向から高台に狙撃態勢をとったオックス機の〘ジム2スナイパーカスタム〙の狙撃が敵MSを襲い、最後に基地上空から降下した〘ジムストライカー〙が〘ジムクゥエル〙の一機をズタズタに切り裂くと敵の防衛戦力を沈黙させるにそう時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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