桜才学園での生活   作:猫林13世

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失礼しました……同じミスを二回も……


お泊り 後編

 急に静かになったと思ったら、森さんは寝てしまっていた。座ったままだったので、俺は森さんを持ち上げ横にして布団をかけた。

 

「さて、俺は残りの宿題でも片づけるとするか」

 

 

 おそらく……いや、絶対に夏休みの終わりらへんにコトミが泣きついてくるのだ。自分の分はさっさと終わらせておかないと面倒だからな。

 

「って、助けてやるの前提で考えてちゃ駄目だな」

 

 

 コトミの為を思うなら、本当なら手助けせずに自分でやらせるのが一番なのだが、それだと終わらないって開き直って遊び出す可能性があるからな……

 

「何で俺がアイツの宿題で頭を悩ませなきゃいけないんだ……」

 

 

 森さんが寝ているので愚痴も小声で。だけど改めて思うまでも無く、俺はコトミに甘い気がするのだ……なんだかんだ言っても最終的には手伝ってしまうし……

 

「いっそ実家を出て一人暮らしでも……いや、この家がゴミ屋敷に成りそうだしな……」

 

 

 掃除も洗濯も料理も人並み以下のコトミ一人をこの家に残すのはかなり怖い。家を出たのに俺にクレームの電話がきそうだし……

 

「はぁ……とりあえず宿題やろ」

 

 

 既に残り僅かになっている宿題を前に、俺はもう一度ため息を吐いた。最近ため息の量が増えてるように感じるのだが、俺の幸せは残っているのだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきまで騒がしかった会長と魚見さんだけども、津田が来て注意されて大人しくなった。まぁ半強制的に大人しくさせられたんだけど……

 

「シノッチ、まだ起きてます?」

 

「一応は……今日は手加減してくれてたようだ」

 

 

 津田、手加減なしで黙らせてくれた方が私が楽だったのに……

 

「相変わらずあの目は興奮します。Mに目覚めてしまったようですね」

 

「分かるぞ! あの目やあの言動は実にM心を刺激してくれる」

 

「あの、もう寝ませんか?」

 

 

 普段なら私はとっくに寝ている時間。なのに起きているのはこの二人が騒がしいからだ。

 

「何を言う、萩村! 夜はまだまだこれからだろ」

 

「でもシノッチ、スズポンはお子様だからおねむなんですよ」

 

「よっし、朝まで起きてやろうじゃないか」

 

 

 相変わらずすぐ挑発に乗ってしまう……分かってはいるんだけども如何してもね……これは治らないだろうな。

 

「じゃあ朝まで誰が起きてられるか勝負ですね」

 

「うむ。負けた人は津田の前で全裸になるってのは如何だ?」

 

「シノッチ、勝つ気が無くなりそうな罰ゲームは駄目ですよ」

 

「えっ!? それで勝つ気が無くなるの?」

 

 

 正直恥ずかしくて寝られなくなると思ったのに……

 

「だが、津田に裸を見られても普通に注意されそうな気がするのは私の気のせいだろうか?」

 

「……まぁシノッチやスズポンの裸じゃそうでしょうね」

 

「「喧嘩売ってんのかー!」」

 

 

 魚見さんの視線と言葉から、完全に喧嘩を売ってるんだと言う事を確信した私と会長は揃って立ち上がる。そのタイミングでリビングの扉が開かれた。

 

「お前ら……何時まで騒いでれば気が済むんだ……」

 

「「あっ……」」

 

「しかも萩村、お前まで一緒になって……」

 

「ごめんなさい……」

 

 

 よほど騒がしかったんだろう。津田の目が本気で怒ってる……

 

「手加減したのが間違いだったようだな」

 

 

 そういって津田は会長と魚見さんを強制的に寝かせた。

 

「萩村ももう寝ろ。それとも、お前も強制的に寝かしつけられたいか?」

 

「い、いえ……普通に寝れるので大丈夫です」

 

 

 寝られるだろうけども、津田のあの顔が夢に出てこないかが心配になってきた……別に怖いとかじゃないんだけども……

 

「じゃ、お休み」

 

 

 津田は会長と魚見さんを布団の中にしまいこみリビングから出て行った。そういえば森さんはもう寝てるのかしら?

 

「まぁ、津田なら間違いが起こるなんてありえないでしょうけども」

 

 

 現にパジャマ姿の会長や魚見さん、七条先輩らがワイワイやってる時に部屋に帰ったんだから……ん?

 

「まさか、その隙にソロプレイを……って、私は会長や七条先輩か!」

 

 

 自分自身にツッコミを入れて、余計な事を考えずに寝る事にした。

 

「はぁ……思考が徐々に毒されてるよ……」

 

 

 自分がだんだん思春期脳になってきているのに気付き、人知れずため息をこぼしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何となくまぶしいと思い私は目を覚ました。昨日は確か津田さんの部屋に泊まって……あれ? 私、布団に入ったの何時だろう……

 自分が何時寝たのか、そもそもちゃんと布団に入ったのかも思いだせない中で、私は辺りを見回した。

 

「あれ? 津田さんがいない……」

 

 

 時計に目をやれば、今はまだ六時前。普段でもまだ起きてないような時間だった。

 

「津田さんは何処に行ったんだろう……」

 

 

 机には既に終わっている夏休みの宿題が置かれている。この量を既に終わらせているなんて、ホントに凄い人ですね……

 

「? なんだか良い匂いが……」

 

 

 下からでしょうか。何やら良い匂いがこの部屋までしてきます。私は好奇心から匂いの許を探る為に部屋から出ました。

 

「キッチンからですね」

 

 

 誰かが朝食の準備をしているのでしょうか。時間的に考えれば早めに寝ると噂されている萩村さんでしょうか? それともこう言った事には真面目な天草会長か魚見会長でしょうか?

 私は誰が朝食を作っているのかを確かめる為に、まだ誰か寝ている可能性があるリビングの扉を開け中に入りました。

 

「えっ、津田さん?」

 

「ん? 森さん、おはようございます」

 

「お、おはようございます」

 

 

 そこにいたのは、現在この家の家主であり間違いなく私より後に寝た津田さんだった。

 

「随分と早起きですね。まだ六時前ですよ?」

 

「いえ、それは津田さんも同じですよ……そもそも私より後に寝てるんですから」

 

 

 津田さんの作る料理の匂いにつられてか、次々と目を覚ましてキッチンに人がやってくる。せっかく津田さんと二人だけだったのに……

 

「昨日着ていた服はもう乾いてますので。着替えるならどうぞ」

 

「いや、このままで良い。帰ってから着替える」

 

「そうですか。では何か袋でも用意しますね」

 

「ありがと~」

 

 

 よくよく考えると、津田さんに私たちの下着を洗濯してもらったんですよね……それで顔色一つ変えずに私たちと付き合える辺り、津田さんは主夫なんだなぁと実感させられました。朝食も凄く美味しかったですし……

 

「ところで津田、コトミは如何したんだ?」

 

「まだ寝てるんでしょうね。アイツは夏休みのこの時間に起きるなんてありえませんから」

 

 

 まだ七時前ですが、私たちは朝食を済ませてそれぞれの家に帰る事にした。本当に津田さんにはお世話になった一日でしたね。




ホントスミマセン……

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