桜才学園での生活   作:猫林13世

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あの人が脅かしたら怖いだろ……


肝試し

 森さんのキスと比べたら、私の密着など津田君の中ではそれほど大事件では無いのかもしれない。でも、少なくとも私の中では大事件なのだ。だって、男性恐怖症で触る事はおろか、近づくだけで震えていた私が、津田君に抱きついたのだから。

 

「(慌てていたのもありますが、あれは間違いなく私が津田君に触れるという証明になります)」

 

 

 何で津田君だけ触れるのかは分かりませんが、津田君なら私とお付き合い出来ると言う事なのでしょうね。

 

「(って! 何を考えてるんですか私は! 風紀委員長が自ら校則を破ろうとするなんて!!)」

 

 

 桜才学園は校内恋愛禁止です。だから私と津田君がお付き合いするにしても、私が桜才学園の生徒では無くなる来年から……と言う事です。

 

「(でも、それだと最初から桜才学園の生徒ではない森さんや魚見さんとなら、今すぐにお付き合い出来ると言う事になるんですよね……それは悔しいです)」

 

 

 さっきから津田さんは天草会長や七条さんの相手をしていて私など気にしてる様子は無いですけど、さっき一瞬だけ目が合ったら津田さんも気まずそうに視線を逸らした、ように見えました。それはつまり……

 

「(津田君も私を意識してくれていると言う事)」

 

 

 そうなら良いな。でも、校則もあるし……

 

「何かお悩みですか?」

 

「コトミさん……いえ、ちょっと考え事をしていただけです」

 

「タカ兄との子供の名前ですか?」

 

「こ、子供!?」

 

「あれ? 違ったんですか? カエデ先輩はムッツリだから、絶対そうだと思ったのになー」

 

「誰がムッツリですか!」

 

 

 私の叫び声が聞こえたのか、津田君と森さんがこちらに来てくれて、そのままコトミさんを回収していってくれた。その際に、津田君は一切私の方を見ようとも、森さんの方を見ようともせず、ただ一点にコトミさんを見ていたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 散々海で遊んだが、まだまだ遊び足りないので、日が完全に落ちたのを確認して私たちは山に来ている。

 

「それでは、まず脅かす側と驚かされる側に分けるぞ」

 

「やらせ感満載ですね……」

 

「普通に歩くだけじゃつまらないだろ!」

 

 

 つ……タカトシの零した言葉に私は過剰に反応した。私だって心の中では思ってたけど言わなかったんだ、我慢してほしかったんだ!

 

「じゃあこのくじを引くんだ!」

 

「……毎回思いますが、準備早いですね」

 

「そこだけは感心します」

 

 

 タカトシとサクラがしみじみと呟いた言葉に、他のメンバーも頷く。

 

「そんなに褒めるな。濡れるだろ! ……あっと、照れるを噛んでしまった」

 

「えっ、今のって噛んだの?」

 

「さすが津田、的確なツッコミね……出来れば部屋を代わってほしいわ」

 

「ごめん、さすがに畑さんとコトミと一緒の部屋は俺も嫌だ」

 

「とにかく! 早くくじを引くんだ!」

 

 

 これでタカトシとペアに……

 

「俺は脅かす側ですね」

 

「何っ!?」

 

「な、なんですか。いきなり大声だして……」

 

 

 バカな……タカトシは脅かされる側で、私とペアになるように仕掛けたのに……

 

「シノ会長は私とペアですねー」

 

「お前かコトミー!!」

 

 

 完璧な計画の邪魔をしたのは、タカトシの妹だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 脅かす側と言われても、特に何かをするわけでもなく、人が来たら不気味な声を出すか木々を揺らすかのどちらかだろうな。

 

「どうしましょう?」

 

「タカ君を襲うってのはどうです?」

 

「全力で却下します」

 

 

 ペアになったカナさんに相談したのが間違いだったな……てか、この人が真面目に脅かすとも思えないし……

 

「最初は横島先生とスズポンですね」

 

「また難儀な人相手だな、萩村……」

 

 

 最近の萩村の運はどうなってるんだろう……完全について無いと言い切れるくらいの酷さだ……

 

「ではターゲットはスズポン」

 

「いや、二人でしょ……」

 

 

 萩村に狙いを定めたカナさんは、手始めに近くの木を揺らしだした。

 

『ヒィ!?』

 

『落ち着け萩村、唯の風だろ』

 

 

 案の定、萩村はこれだけでも怖がっている……てか、萩村は辞退すると思ってたんだけどな……

 

「では次は……クスクスクス」

 

 

 萩村たちからは見えない角度に移動して、カナさんが不気味な笑い声を上げる。

 

『もう嫌! 私は帰ります!』

 

『なんだ、萩村。濡らしちゃったのか?』

 

『そんな事言ってねーだろ!』

 

 

 萩村、リタイア……まだアリアさんと出島さんのペアが脅かすのに……

 

「所詮スズポンなどこれくらいで撃退出来ます」

 

「いや、そんな誇らしげにされても……」

 

 

 胸を張り、両手でピースをするカナさんを見て、俺は呆れてしまった。

 

「……はっ! ダブルピースならアヘ顔をしなきゃ駄目でしたね! やり直します」

 

「結構です……」

 

 

 意味は良く分からなかったけど、どうでもいい事だと言う事だけは分かった……俺も帰りたいな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノ会長と二人で夜の山に入り、タカ兄たちの脅かし方を楽しみにしながら歩いて行く。

 

「こんなはずでは、こんなはずでは……」

 

 

 隣にいるシノ会長が、さっきから念仏のようにブツブツと何かを呟いているのだけども、これはこれで少し怖い。でも楽しいのでツッコミは入れない。

 

『クスクスクス』

 

「おっ? カナ会長の声ですね」

 

 

 早速脅かしが始まったので、私はどんなものかと評価する事にした。

 

「カナ会長では、私を驚かす事は出来ないようですね!」

 

 

 胸を張り勝ち誇った顔をして、何処にいるか分からないカナ会長に勝ちを宣言した。

 

『クッ、殺せ!』

 

「おお! 囚われの女戦士!」

 

『……来月のコトミの小遣い、半分カット』

 

「ヒィ!?」

 

 

 ぼそっと呟かれたタカ兄の言葉に、私は腰を濡らして……じゃなかった、抜かしてしまった。

 

「タカ兄、それだけは勘弁してください!」

 

 

 何処にいるか分からないタカ兄に土下座をして、お小遣いの確保を計る。だって半分も減らされたら私の楽しみが満喫出来ないから。

 

「うわぁー! 私はコトミと百合関係になどなりたくない!」

 

『……何言ってんの、あの人』

 

 

 影からタカ兄の呆れ声が聞こえてきた。私も会長が何を言ってるのかさっぱり分からないよ……私は近親○姦願望はあるけど、百合願望は無いんだけどな……




色々と残念……

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