夏休みもいよいよ最終日となり、明日からまた学校が始まる。
「お前、去年も同じ事してなかったか?」
「ハイ、申し訳ありません」
俺は今、コトミの部屋でコトミの宿題を見ている。
「スミマセン、私まで頼んじゃって」
「いや、時さんはしょうがないよ。昨日まで宿題ここに忘れてたんだから」
自分で言っててフォローになって無いと感じるが、時さんは夏休み序盤にウチで宿題をして、そのまま持って帰らずに忘れてたらしい。コトミも部屋を掃除しなかったから物に埋もれてて気づかなかったのだ。
「タカ兄、ここってどうやるの?」
「お前、少しは自分で考えたらどうなんだ?」
宿題といっても、殆どが復習に当たるはずなのに、コトミはまともに解けた問題が皆無と言っていいほどの酷さだ。このままじゃ休み明けにあるテストで赤点を取るかもしれないな……
「少しは八月一日さんを見習ったらどうだ?」
「マキは真面目だもん」
「だから見習えって言ってるんだよ……」
謎の開き直りをしたコトミに拳骨を喰らわせ、解説を始める。時さんも真剣に聞いてるって事は、同じところが分からなかったんだろうな……
夏休みが終わり、休み明けのテストも終えた放課後、生徒会室では津田と萩村がバテていた。
「何だ、だらしない。生徒の見本となるべき生徒会役員が休みボケか?」
「いえ、テスト前だったのでコトミたちに特別補習を……」
「私は母親の相手で昨日大変だったんですよ……」
「それは災難だったが、やはりしっかりと身を引き締めなければダメだぞ!」
生徒の見本としてしっかりとしてなければ、他の生徒たちもよりだらけてしまうかもしれない。
「私みたいに、身から締めてみたら?」
そういってアリアが何処からとなく縄を取りだした。
「おぉ! それはいいかもしれないな!」
「ダルイからツッコまない……」
「ほら、見回りに行くぞ!」
津田と萩村を気合いで立たせ、私たちは校内の見回りに出た。ペアは私とアリア、津田と萩村だ。
「シノちゃん。また苗字呼びに戻ってるよ?」
「私はこっちの方がしっくりくるんだよ」
「そうなんだ~」
アリアと他愛の無い話をしながら見回りを続ける。校内は冷房が利いているから涼しいが、外に出るとやはり暑いな……
「今日も日差しが強いな」
「そうだね~」
「眩しいな……」
日差しを遮ろうと手を翳した瞬間、何処からかシャッター音が聞こえてきた。
「何か風俗写真みたくなったけど、これはこれで良いか」
「良くないだろ」
木陰にいた畑にツッコミを入れる。コイツは何時いかなる時でもブレないな……
「そういえば皆さん、あれから津田副会長とは進展ありましたか?」
「特には無いな……アリアは?」
「私も特にないな~。だって花火大会以降はタカトシ君に会ってないし」
「確かに。津田はあの後からバイトやら勉強やらで忙しかったらしいからな」
萩村に勝とうと津田も勉強に本腰を入れていたらしい。あの学年は萩村と津田が突出してるからな……それでも二人で高めあってるから、三位の人間との差が凄まじい事になってるとか……
「私が仕入れた情報では、英稜のお二人と津田副会長が仲良くカフェに行っていたとの事ですが」
「カナと森は津田とバイト先が一緒だからな。帰りに一緒しててもおかしくは無い」
「ですが、英稜の副会長は、津田副会長とキスしてますし、魚見会長は津田副会長を愛称で呼んでますので、少なくとも会長よりは津田副会長との仲は進展してると思いますけどね」
「う、うむ……確かにそうかもしれん」
カナは津田の名前をもじった愛称で呼び、森は苗字だったり名前だったりと固定はされてないが、名前を呼ぶ時は実にスムーズに呼んでいる。
「そして、萩村さんが最近津田副会長と仲良く話しこんでいる場面も複数目撃されています」
「そうなのか!?」
「はい。ま、色気のある感じでは無いそうですがね」
「スズちゃんとタカトシ君だもんね。勉強の話とか生徒会の話とか色々あるもんね」
確かに、私たちの跡を継ぐ二人だもんな。生徒会の行事などの話合いをしていてもおかしくは無い。
「そして、五十嵐風紀委員長ですが、津田副会長以外の男子との接触が前以上に減りました」
「つまり?」
「津田副会長以外の男子との間には、より溝が出来たという事ですね。このままでは津田副会長に本気でアタックするかもしれませんね~」
「何だと!? 我が校は恋愛禁止だぞ!」
「校内恋愛がダメであって、別に外でイチャコラするのは問題無いですよ?」
畑の冷静なツッコミに、私は言葉を無くしてしまった……そうか、五十嵐も敵なのか……
休み明けテストの結果も、廊下に貼り出される。私は津田と一緒にその結果を見る為に廊下に出た。
「今回は万全じゃ無かったから、もしかしたら何問か間違えたかも」
「珍しいね。何かあったの?」
「ほら、私のお母さん、あんなだし……」
「コトミとあまり変わらなかった気がするんだけど」
津田は昔からコトミの相手で慣れてるんでしょうけども、私はお母さんの相手を何時まで経っても慣れないのよね……まぁ、わざと慣れないようにしてるんだけども……
「萩村が間違えたっていっても、それほどじゃ無いんじゃない? 俺も前日コトミたちの勉強を見てたから」
「それでもしっかりしてるアンタはエライわよ……」
人だかりを抜け、結果が見える位置までやって来た。普段と違って今回は上位五十名の名前が貼り出されるのだ。
「あら、一年の三十位、八月一日さんじゃない」
「あれだけ勉強してたからね」
「教え子の結果はどう?」
「そんな大した事はしてないって」
下級生の結果を見てから、私たちは自分たちの結果を見た。
一位 津田タカトシ 490点
一位 萩村スズ 490点
三位 轟ネネ 416点
「おっ、同点か」
「やっぱり間違えてたわね」
「それでもこの点数……さすが萩村」
「アンタだって立派じゃない」
ちなみに、五十位まで名前が載っているのに、コトミの名前は無かった。まぁ当然かもしれないけど、津田に教わってるのに赤点ギリギリってのはどうなのよ……
萩村不調でついに同率首位に! それでもこの位置にいる萩村っていったい……