桜才学園での生活   作:猫林13世

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自分の高校は犬ではなく雀が校舎内に入ってきたな……


学園ハプニング

 生徒会室で作業していたら、新聞部の畑がやってきた。相変わらずの神出鬼没だな……

 

「桜才新聞アンケート。彼氏の部屋からエロ本が出てきたらどうする?」

 

「いや、そんな相手いないんだが……」

 

「……ん?」

 

 

 チラッと津田の方を見たら、その視線に気づいた津田が私の方を見て来た。ただそれだけなのに、私は恥ずかしくなって津田から視線を逸らした。

 

「もしもの話で良いので」

 

「じゃあやってみようか」

 

 

 そう言ってアリアは没収した本を取り出して満面の笑みを浮かべた。その行動を見て、津田と萩村が揃ってため息を吐き、見なかった事にして作業を再開した。

 

「そうだな……じゃあアリアが彼女役で」

 

「分かった~」

 

 

 何やら楽しそうに頷いてから、アリアは演技を始めた。

 

「もー! 私というモノがありながら、こんな本をオカズにしてー!」

 

「何を言ってるんだー。君は、主食さー」

 

「えっ!」

 

「……五月蠅いんで、遊んでるなら外に出てってください」

 

 

 畑とアリアと一緒に、津田に生徒会室から追い出されてしまった。確かこの部屋の長は私だった気がするんだがな……

 

「じゃ、私はこれで」

 

「仕方ない、我々は見回りにでも行くか」

 

「そうだねー。じゃあ私はコッチに行くね」

 

「うむ。それでは後で落ち合おう」

 

 

 アリアと別れて私は校内の見回りをしていく。途中で何人かに挨拶をされるが、それ以外は大した事も起きずに半分以上が過ぎた。

 

「あれは……トッキー。またシャツを外に出してるな」

 

 

 見た目ヤンキーのドジっ娘、トッキーこと時が私の目の前を歩いている。相変わらずの服装だったので、私は注意する為にトッキーに声を掛けた。

 

「こら、トッキー! シャツを外に出すんじゃない! ッ!?」

 

「私の後に立たない方が良い、危険だから」

 

 

 急に振り返って物凄い睨まれたので、私は思わず立ち竦んでしまった。

 

「つまりする時は正常位か」

 

「それは日本語か……?」

 

 

 津田や萩村に比べるとツッコミレベルは低いが、トッキーは学園でも数少ないツッコミポジションのようだ。偶にツッコまれてるけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室で作業していたら、お母さんから電話が掛ってきた。津田に視線で出ていいか訊ねて、許可をもらったので電話に出る。

 

「もしもしお母さん? 何かあったの?」

 

『スズちゃん! ボアがいなくなっちゃったの!』

 

「落ち着いて。私も探してみるから」

 

『お願いね!』

 

 

 お母さんからの電話を切り、私は津田に事情説明をするために生徒会室へと戻った。

 

「何だったの?」

 

「ボアが――ウチで飼ってる犬がいなくなっちゃったらしいの。だから私も探しに行ってくるわね」

 

「分かった。こっちは俺に任せてくれて良いから、見つかるまで探してて良いから」

 

「ありがとう。行ってくるわね」

 

 

 津田に生徒会業務を任せて、私は大急ぎで下駄箱まで移動した。もちろん、廊下を走るなんて事はしなかったけど。

 

「何だか騒がしいわね……」

 

 

 昇降口を出て校門まで向かう途中、やけに騒がしい事に気がついた。何かあったのかしら……

 

「あっ、ムツミ」

 

「スズちゃん」

 

「何かあったの?」

 

 

 丁度通りかかったムツミに訊ねた。

 

「校内に犬が入り込んだらしいよー」

 

「学校ハプニングの三本の指に入る出来事ね……」

 

 

 まさかそんな出来事が自分が通ってる学校で起こるなんて思っても無かったわよ……でも、どんな犬なのか気になるわね……

 

「あっ!」

 

「スズちゃん、どうかしたの?」

 

「……ウチの犬だ」

 

 

 女子生徒たちに囲まれていた犬は、あろうことか先ほどお母さんから行方不明になったと連絡を貰い、今から探しに行くはずだった愛犬のボアだった……

 

「この子、スズちゃんの犬なの?」

 

「うん……」

 

 

 とりあえず見つかったのでお母さんに連絡を……あれ?

 

「おかしいな……出ないや」

 

 

 何度コールしても、お母さんは携帯に出てくれなかった……どうしよう、この状況……

 

「仕方ないわね。教師の権限で、今日一日ここにいられるようにしましょう」

 

「良いんですか?」

 

 

 横島先生が何時の間にか現れて、珍しく生徒の為に動いてくれるらしい。

 

「私も犬好きだし」

 

「ありがとうございます!」

 

「それに、公の場で『ちんちん』って言えるからね」

 

「ウチの子に十メートル以内に近づかないでくださいね」

 

 

 横島先生を遠ざけて、とりあえず生徒会室に戻る事にした。何時までも津田一人に仕事を押し付けるわけにもいかないし、このまま家に帰るのも二度手間だしね……

 

「萩村、その犬はどうした」

 

「ウチで飼ってるボアです」

 

「知ってるよ~。でも、どうしてボアちゃんがここに?」

 

「実は、勝手に来てしまいまして……」

 

「そうなんですか……可愛いですね」

 

 

 五十嵐先輩がボアの頭を撫でる。その行動に会長と七条先輩が驚いた表情を浮かべた。

 

「五十嵐、その犬、男の子だぞ」

 

「? 別に平気ですけど」

 

「そっか……」

 

「まぁ、愛の形は人それぞれだからな……」

 

 

 くだらない事を考えている二人を置いていって、私は生徒会室に戻ってきた。

 

「ただいま」

 

「お帰り、早かった……なるほど」

 

「相変わらず察しが良いわね」

 

 

 ボアを引き連れて来た私を見て、津田は納得したように一つ頷いた。

 

「書類整理は終わったんだけど、あとは会議の予定だけなんだけど……会長と七条先輩は?」

 

「さっき外にいたけど、当分は帰って来ないわね、あれは……」

 

 

 概要を津田に教えて、私はため息を吐いた。

 

「仕方ないか。萩村、お茶でも飲む?」

 

「ありがとう」

 

 

 会長たちが帰ってくるまでの間、私は津田と二人きりだったのだ。まぁ、ボアはいたけど、それなりに満足の行く時間だったな。




横島先生はやっぱり邪な人間だったのか……分かってはいたけど……

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