桜才学園での生活   作:猫林13世

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こんな責任者じゃダメだろ……


文化祭開始

 何とか文化祭の準備は終わったが、結局は泊まりになってしまった。どうやら殆どのクラス、委員会も泊まりがけで作業していたらしく、開催当日の生徒の大半は寝不足で目が開いていなかった。

 

「萩村、そろそろ開始時刻だし見回りに行こう」

 

「そうね……」

 

「眠い?」

 

「うん、ちょっと……」

 

 

 普段は午後九時には眠くなると言っていた萩村だが、昨日は日付が変わるくらいまで起きて作業していたのだ。少し眠そうでも仕方ないよな。

 

「生徒会室で仮眠でも取れば? 見回りは俺一人でも大丈夫だから」

 

「ありがとう……でも大丈夫よ」

 

「そう? 辛かったら言ってよね」

 

 

 普段から萩村には世話になってるから、こんな時くらいは俺が萩村の代わりを務めても誰も怒らないだろう。そもそも萩村に頼ってる人は他にも大勢いるだろうしな。

 

「まずは三年生の出し物か。そう言えば会長たちに朝一に来るように言われてたっけ」

 

「会長たちが店員をやってるからじゃないの?」

 

「そう言えば俺、会長たちがどんな出し物をやってるのか知らないや」

 

 

 自分のクラスの準備と、各クラスからの応援要請やら何やらで忙しく、会長たちのクラスの出し物を確認する時間が無かったのだ。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様……?」

 

「会長? どうかしましたか?」

 

「ふむ、男性客はどのようにもてなせばいいのか、と思ってな」

 

「シノちゃん、男色の気分でもてなせばいいんだよ!」

 

「なるほどな!」

 

「責任者を出せ! ……あっ、こいつらか」

 

 

 とてつもなくサイテーな事を言い出した会長と七条先輩の事を言い付けようと思ったが、このクラスの責任者はこの二人だ。つまり上に言い付けようにも本人たちの言動なので、どうしようもないのだ……

 

「あら? 天草さんたちはどうして男装してるんですか?」

 

「執事喫茶だ! 普通ではつまらないって事でな。男装する事になったのだ。五十嵐も入って行くか?」

 

「男装なら、五十嵐さんも大丈夫なんですよね?」

 

 

 男性恐怖症だからといって、男装までダメなわけじゃないだろうし、こういった事から慣れていけばいずれは男性恐怖症も治るかもしれないしな。

 

「リアリティーを求めて、店内はイカ臭いけどね!」

 

「遠慮させていただきます」

 

「そもそも何だそのリアリティーは……」

 

 

 そもそも男子ってイカの匂いするのか? 確かめようにも、女子に聞くのはセクハラ臭いし、男子に確かめるのもなんだかな……

 

「ところで津田君」

 

「はい? なんですか」

 

「この間の休みの日、何処かに出かけませんでしたか?」

 

「この間の休み? ……カラオケに行った日ですかね」

 

「カラオケ? 誰と一緒でした?」

 

「……五十嵐さん、あの時近くにいましたよね? わざわざ答えなくても知ってるんじゃないですか?」

 

「それは……」

 

 

 サクラさんとカラオケに行った日、待ち合わせの傍のカフェには五十嵐さんもいたのだ。チラッと視界に入ったので知っているし、何となくつまらなそうに呟いた五十嵐さんの声も、俺の耳には届いていた。

 

「あれはただのストレス解消です。それ以上の事は何もありませんよ」

 

「本当ですね?」

 

「ええ。それに校内恋愛でも無いですし、五十嵐さんが気にする事は無いと思いますけど」

 

 

 そもそも恋愛では無いのだし、風紀的に問題あるわけでもないのだ。

 

「分かりました。それでは私はこれで」

 

「ええ」

 

 

 さてと……この三人の視線はどう処理すればいいんだろうか……てか五十嵐さん、爆弾を放り投げておいて無視は無いんじゃないですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノっちに誘われて、私とサクラっちは桜才学園文化祭を見学しに来ている。我が英稜高校も文化祭が近いので、参考に出来ればいいなと思っているのですが、なかなかハイレベルな文化祭ですね。

 

「会長、天草さんたちのクラスは何をしてるんですか?」

 

「シノっち達は執事喫茶をしてるそうです。男装してもてなしているとか」

 

「男装……ですか」

 

「サクラっち、今シノっちの胸を思い浮かべましたね?」

 

 

 あの胸なら、男装の際にサラシをきつく巻きつける必要もなさそうですし、シノっちは楽そうですしね。

 

「いえ、女子高だった時ならいざ知らず、桜才学園も共学化して二年目ですからね……普通にメイド喫茶で良かったのではないかと思いまして」

 

「確かにそうですね……校外からもお客さんが来るので、シノっちやアリアさんのメイド姿が見られるとなれば、それなりに客は見込めそうですしね……」

 

 

 別に利益が出るわけでは無いのですが、確かにサクラっちの言う通りですね。何故シノっちとアリアさんは男装をしてもてなそうと思ったのでしょうか?

 

「あれ、タカトシさんじゃないですか」

 

「ん? サクラさん。それに魚見さんも。こんにちは」

 

 

 サクラっちの事は名前で呼んでいるのに、私の事は苗字で呼ぶんですか……

 

「タカ君? ちゃんと名前で呼んでください」

 

「そうは言われましても……生徒会メンバーの事も普通に苗字で呼んでますし」

 

「でもサクラっちの事は名前で呼んでますよね?」

 

「苗字で呼ばれれば苗字で呼びます」

 

「私はどちらも使ってますからね」

 

「とにかく、今日一日は私の事も名前で呼んでください」

 

「はぁ……分かりましたよ、カナさん」

 

「よろしい! ……ところで、シノっちたちは何処です?」

 

 

 別行動かもしれないけど、タカ君の腕には生徒会の腕章が巻かれているので見回りの最中だろう。そうなると二人一組が普通のはずだ。

 

「新聞部の畑さんの策略で、三人はミス桜才に参加する事になりまして、今そのエントリーをしているところです」

 

「面白そうですね。私たちも見学していきましょう!」

 

「そうですね。タカトシさんも見ますよね?」

 

「来るように言い付けられましたし……」

 

 

 若干――いえ、かなり嫌そうな顔を浮かべているタカ君だったけども、私たち二人に挟まれて嫌な顔をしてるわけじゃ無かったから、とりあえずは善しとした。それにしても、久しぶりのタカ君の隣で、若干濡れちゃいましたね。




原作でも森さんがタカトシ争奪戦に参加し始めた模様……

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