桜才学園での生活   作:猫林13世

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みんな頑張った


テストの結果は

 津田がコトミちゃんたちの勉強を見ていると聞いて、私も手伝う為に放課後は図書室や生徒会室を使って勉強会を開いていた。

 

「明日からテストなのに、全然分からない……」

 

「お前、ちゃんと勉強してたのか?」

 

「トッキーだってあんまり変わらないじゃないかー!」

 

「騒ぐ余裕があるなら、さっさと勉強しろ。本番前の確認を込めて、この後テストするんだから」

 

「テスト前日にテストなんてしたくないよー!」

 

 

 コトミちゃんが泣きごとを言っているけど、兄である津田には全く効かず、容赦なく時計を見ている。

 

「コトミも諦めて勉強しなよ。津田先輩の時間を貰って私たちは勉強を教えてもらったんだから」

 

「でもさー! マキは出来るから良いよ。私とトッキーは出来ないんだから」

 

「一緒にするな!」

 

 

 時さんも何でコトミちゃんと友達をやってるんだろうと思う時もある。でも、人間関係は他人が口出しするべき事ではないし、何となく波長があったから一緒にいるんだろうしね。

 

「萩村、私たちも勉強してるから、何かあったら携帯を鳴らしてくれ」

 

「分かりました」

 

 

 会長たちは生徒会室ではなく図書室を使うようで、窓から外を見れば、英稜の二人も既に来ていた。

 

「それじゃあテストを始める。筆記用具以外はしまえ」

 

「タカ兄、あと十分!」

 

「悪あがきは意味をなさないから止めるんだな。伸ばした分コトミの試験時間は減っていくだけだからな」

 

 

 津田の悪魔のような笑みに、コトミちゃんは顔面を蒼白にして教科書を鞄にしまう。この兄妹の力関係は非常に分かりやすいわね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシさんと萩村さんに挟まれて、私も最後の仕上げとばかりに勉強を必死にしているのだが、隣の二人の表情は実に涼しげで、必死になっている私がバカみたいな光景が出来あがってしまっている。

 

「そう言えば萩村、さっき会長から何か渡されて無かった?」

 

「ああ、会長が作った二年生用の確認テストよ」

 

「やる?」

 

「そうね。五教科あるし、確認するには丁度良いかもしれないわね」

 

「サクラさんもやりますよね?」

 

「えっ? ……もちろんです」

 

 

 二人と比べれば大した事の無い成績の私は、二人のあまりにも余裕な雰囲気に気圧されながらも問題用紙と解答用紙を受け取った。

 

「制限時間は五十分ね」

 

「そうだね。コトミたちもそうだし、俺たちも本番のつもりでやるか」

 

 

 タカトシさんと萩村さんの意見に賛成して、私も問題を解き始める。二人に比べたら解く速度も遅いので、私は二人の事を視界から追い出して集中する事にした。

 そして五十分後――

 

「終わったわ」

 

「うん、終わった」

 

「私も終わりました……えっ!?」

 

 

――私は一教科、二人は五教科分を五十分で終わらせていたのだった。

 

「早過ぎですよ!」

 

「そう? 何時も通りなんだけど」

 

「簡単だったしね。サクラさんだってやろうとすれば出来ると思いますけど」

 

「無理ですよ……」

 

 

 出来ても二教科くらいでしょうか……とにかく私には五十分で五教科分のテストを終わらせる、などと言う荒業は出来そうにありません。

 

「コトミ、お前たちはもう五十分経ってるだろ。何時まで解いてるんだよ」

 

「後一問だけ!」

 

「ダメだ。さっさと採点して次のテストに行かないと、お前だけ今日は寝れないなんて事になるぞ」

 

「うぅ……」

 

 

 タカトシさんの脅しに屈したコトミさんは、大人しくペンを置きました。萩村さんも思ってる事でしょうが、タカトシさんとコトミさんの兄妹は、どうしてこんなにも出来が違うのでしょうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 津田先輩に勉強を見てもらったおかげで、私は今回のテストはかなり自信がある。一学期のまぐれまでは行かなくとも、結構上位にはイケたんじゃないかなと思うくらいの手応えを感じているのだ。

 

「コトミはどうだった?」

 

「補習にはならなかったと思うけど、上位には絶対名前なんて無いね」

 

「今回からは上位五十人だっけ? でも何でいきなり五十人になったんだろ……」

 

「別に私には関係ないだろうし、トッキーも関係ないよね?」

 

「ウルセェ。まぁネェけどな」

 

 

 トッキーとコトミと一緒に結果が貼られている廊下を目指す。二年、三年の上位は何時も通りでしょうけども、同じ場所に貼ってあるからついでに見て行こうという事になっているのだ。

 

「やっと見える位置にこれたねー」

 

「さて、マキの名前はあるのか?」

 

「さすがに無いと思うけど……?」

 

 

 上から名前を見て行くと、見覚えのある名前が見つかった。

 

 13位 八月一日マキ  662点

 

「うわぁ! マキ凄い!」

 

「800点満点でこんなにとれるのかよ」

 

「津田先輩や萩村先輩のおかげだよ……」

 

 

 一位の人の点数は710点だから、それほど離れている訳ではない。自分でもこんなに点数がとれるなんて思ってなかったので、かなり驚いている。

 

「あっ、タカ兄! マキが凄いよ!」

 

「そうだな。おめでとう、八月一日さん」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

 津田先輩に頭を下げ、視線を上げた先には、二年生の結果が貼られていた。

 

 一位 萩村スズ   800点

 一位 津田タカトシ 800点

 三位 轟ネネ    725点

 

「ついに津田も満点ね」

 

「今回は会長のテストのおかげかな」

 

「次元が違い過ぎるぞ、この先輩たち……」

 

 

 トッキーが言ったように、三位の轟先輩が一位でもおかしくは無い点数だ。

 

「会長たちだって凄いんだけど」

 

「へ?」

 

 

 コトミが間の抜けた声を上げたので、私たちはコトミの視線を辿り、三年生の結果を見る。

 

 一位 天草シノ   773点

 二位 七条アリア  765点

 三位 五十嵐カエデ 758点

 

 

 ……一年の成績って、そんなに良い物じゃ無いんじゃないだろうか。と思いたくなるような結果がそこにもあった。何で上位が団子状態なんだろう、一年生は……

 

「テストも終わったし、冬休みに温泉でも行かない?」

 

「なんだいきなり」

 

「温泉が当たったんだー」

 

「福引にでも当たったんですか?」

 

「運が良いですね」

 

「ううん、掘り当てたの」

 

「「………」」

 

「その運分けてくれ!」

 

 

 私たちが絶句している隣では、生徒会の先輩たちが日常会話をしている。この結果に満足していた自分が恥ずかしくなってきたな……




一年だってレベル高いのですが、上級生の上位三人の点数を見るとね……

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